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そう、少女は人間では無くなってしまったのだ。 ID:epMYwxIw0」(2009/07/22 (水) 13:56:12) の最新版変更点

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264:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:13:36.60 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA 「――あれ……?」  暗闇の中、一人の少女が目を覚ました。  だがしかし、その感覚はいつも味わっているものとはかけ離れたものだった。 「あれ、私、どうしたんだろう……?」  いつものように起き上がろうとしても体が持ち上がらない。  いや、それどころか今自分がどこにいるのかも判らなくなっていた。 「え、やだ、どうなってるの……?」  明らかにいつもと違う感触、いつもと違う風景。  そして何より―― 「羽が生えてる……」  そう、少女は人間では無くなってしまったのだ。 273:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:26:44.41 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA 「え、ちょ……どうして? どうしてこうなったの?」  当然少女は困惑する。何せ急に自分の生態系が変わってしまったのだから。  だが、この少女は賢かった。 「……騒いでてもしょうがない。とにかく自分がどんな生物になったのか確認しないと」  恐らく動物の類では無いことは光沢で判った。  ――となると。 「昆虫、かぁ」  色が見えれば更に特定できそうなのだが、如何せん今は夜中。とてもじゃないが確認できない。 275:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:32:55.64 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA 「とにかくまずはここが何処なのかを確認しないと……」  硬い感触からして自室のベットでは無いだろう。もしかしたら自分の家ですら無いかもしれない。 「……ほんと、手探り状態か……」  このまま朝が来るのを待つのも一つの選択肢だが、少女はそれを選ばなかった。  今は緊急事態なのだ。それを忘れてもらっては困る。 279:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:37:07.32 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA 「と言っても……無闇に動き回るのは危険だろうな」  そう、ついつい忘れがちだがここは未知の領域なのだ。どんな危険があるか分からない。  せめて何かヒントのようなものがあれば―― 「んうぅ……」  真上で、よく知っている声が聞こえた。 281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:41:50.57 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA  なるほど、その声を聞いてしまえば確かにここは知っている場所のような気がしてきた。  何しろ特有の匂いがあるし、雰囲気もなんだかぽかぽかしているような気がする。  そう、この部屋の主は―― 「唯、センパイ……」  如何にも、スキンシップ過多な、唯先輩その人であった。 283:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:46:24.77 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA  場所が判ってしまえば後はもう怖くない。  何せ、もう何十回と来た事のある馴染みの家なのだから。 「さて、後は自分の姿を確認するだけだけど……」  よく見ると、ベッド脇の小さなテーブルに、鏡が置いてあることに気付く。 「あれで確認すれば良いか」  行動を選択し、飛ぼうとする、が―― 「どうやって飛ぶんだろう?」  そう、飛び方が分からないのだ。 286:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:52:17.07 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA  何せ、こんな体験は初めてなのだ。  昆虫になったのも初めてだし、まして羽が生えたことなんて今までに一度も無かった。  どうやって飛べばいいかなど、とてもじゃないが分からない。 「……どうしよう」  さて、困った。飛べなければ鏡に辿り着けない。  辿り着けなければ自分の姿を確認できない。 「それだけは困るなあ」  男は度胸、何事にも挑戦してみるべきだ!  そんな格言がふと頭をよぎった。 「……そうだ。何事もやってみないと始まらないじゃないか」  自分の性別が男ではないことなど関係無い。 「やってやろうじゃないかっ!」  そして少女は羽に力を入れ、地面を蹴った―― 289:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 20:55:52.12 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA 「――お、お、おおおお!!」  すると、見事に羽ばたき、大空を舞う事が出来た。 「こ、これはなかなか気分がいい――はっ!?」  危ない危ない。あまりの快感に当初の目的を忘れてしまうところであった。  すぐに羽ばたく方向を変更し、ベッド脇のテーブルへと向かう。 「……それにしても、飛ぶときって意外と音が出るんだな」  ――それだけが意外だった。 291:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 21:00:07.57 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA  はて、着地するときはどうすればいいのだろうか。 「……困った。まさかこんな盲点があったなんて」  この感覚は人間だった頃にも味わったことがある感覚だ。  初めて自転車に乗ったとき、進みだしたのはいいが止まり方が分からなかった。  今の感覚はそれに限りなく似ている。 「こうなったら、しばらくは止まれない……か」  しかたがない、予定変更だ。  飛びながら鏡に映る自分の姿を確認する。これしか方法は無い。 294:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 21:04:20.16 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA 「うぅん……?」 「!?」  そのまましばらく飛び続けていると、唯先輩の煩わしそうな声が聞こえてきた。 「煩いなぁ……何なの、いった……い――!?」  こちらを見た唯先輩の目は一気に見開かれ、そして―― 「きゃあああ!? ゴキブリ!!!!!?」  悲鳴を上げて、テーブルの上に置いてあった新聞紙で私を叩き落とす。  ……最期に鏡を見ると、そこには真っ黒なゴキブリが―― 295:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :07/15(水) 21:09:46.28 ID:epMYwxIw0 (114) ID AA 「――はっ!?」  そこで目を覚ます。黒い皮膚からは凄い量の液が出ていた。 「あら、やっと起きたのね」  面白そうな声に振り向くと、犬猿の仲であるゴキ子が哂っていた。 「何だよ、何が可笑しいんだ」 「あら、別に可笑しいなんて言ってないわよ?」 「じゃあその哂いは何なんだよ」 「あら失礼」  指摘すると、今まで哂っていたゴキ子は笑みを引っ込めた。 「あなたが珍しくうなされていたからね。どんな夢を見ていたのか気になっただけよ」 「夢――」  そうか、あれは夢だったのか。  どうりでおかしかったわけだ。私は人間になったことは一度もないのだから。 「そうか、私は夢を――」 「今日も敵さんのお出ましみたい。じゃあね」 「えっ?」  ゴキ子が逃げ出した方向と逆を見てみると、そこには新聞紙を構えた一人の人間が―― Fin

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