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225:唯と梓の憂初生活 プロローグ ◆W4vGdpL0uvBj :07/17(金) 01:22:59.51 ID:kuqFpYpN0 (107) ID AA
ひょんなことから唯先輩の家に二週間ほど泊まることになった。
そういうと、何かとんでもない事が起こったように思えるがけど、そんなことはない。
ただ、ふとした拍子に両親が二週間ほど海外旅行に行くという話をしたら、唯先輩が食いついてきて家に泊まることを提案しただけの話。
最初は遠慮していたのだけど、唯先輩がギターを教えてくれと頼み込んできたからしぶしぶ了承して冒頭に戻る。
「ねえねえ、あずにゃん誰に話してるの?」
「さあ、誰にでしょうね」
227:唯と梓の憂初生活 12月19日 AM8:00 ◆W4vGdpL0uvBj :07/17(金) 01:24:22.57 ID:kuqFpYpN0 (107) ID AA
今日から唯先輩の家での生活が始まる。といっても学校は冬休みに入ったしほとんどギターの練習をするだけになりそうだけど……。
二週間分の着替えとギターを持って唯先輩の家へと向かう。ちょっとした旅行気分だ。
そういえば、唯先輩が私の家に来ることは結構あるけど、私から唯先輩の家に行くのはあんまり無いな……。どうしてだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、もう唯先輩の家の前にいた。本当に近いんだな……。
次の登校日から唯先輩と一緒に登校してみようかな。何だかんだいっても唯先輩と一緒にいると楽しいし。
……何考えてるんだろ、私。早く中に入れてもらおう。
そう思ってチャイムを鳴らそうと指を伸ばすと――
「やっほ~、あずにゃんいらっしゃ~いっ!」
指が触れる前にドアが開けられた……っていうかエスパーですか。
「どうして私が来たって判ったんですか? まだチャイムも鳴らしてないのに」
「ふふふ、教えてほしい?」
「はい、教えてほしいです」
本当にエスパーだったりしたら怖いし。
「それはねー、ズバリ愛の力なんだよっ」
「な、何を言ってるんですか」
いきなり何を言い出すのかと思えば……。これじゃエスパーと変わりないじゃないですか。
「ふふんっ、甘いねあずにゃん。愛の力は――」
「お姉ちゃんまだー? いい加減中に入れてあげてよー!」
「――りょーかいであります隊長!」
隊長って何のことだろうか。唯先輩はたまにおかしなことを言うのが玉に瑕だな。
「それじゃあずにゃん、今日から二週間よろしくねっ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
さあ、気を取り直して二週間頑張ろう!
230:唯と梓の憂初生活 12月19日 AM8:30 ◆W4vGdpL0uvBj :07/17(金) 01:26:05.55 ID:kuqFpYpN0 (107) ID AA
唯先輩に連れられてリビングに行くと、憂がテーブルにトーストと目玉焼きを置いていた。
「うぃ~、あずにゃんを連れてきたよ~」
憂は唯先輩の声に振り向くと、
「梓ちゃんいらっしゃい。今日から二週間だけだけど、私たちを家族と思って接して下さい」
そう言って、床に三つ指をついて深々と頭を下げた。
「え、あ、あの……」
これは私もきちんと挨拶した方がいいのかな……?
「もぉ~。憂ってば、そういう堅苦しい挨拶はしないって約束したのに~」
「え~? でもやっぱりきちんとけじめはつけないとだめだと思うよ?」
「え、へ……?」
な、何なのこれ……。
「ほら、あずにゃんも困ってるじゃない~」
「えー? それはお姉ちゃんのせいだと思うよ?」
何このゆるゆる漫才。こうなったらこちらが何か行動を起こさないと延々と続きそうな気がする……。
「あの、これから二週間お世話になります」
そう言って憂を真似して三つ指をつく。
「あ――あずにゃん?」
「梓ちゃん?」
よし、二人の漫才を止められた。
「いえ、あのままだとずっと漫才を続けるような気がしたので……」
「え? そ、そうだったの?」
「ええ、そんな感じでした」
少しぐらいは突き放さないといつまでも話が進まないから、これぐらいは言っても大丈夫だよね。
「…………」
あ、あれ……? 意外と悩んでる……?
「せ、せんぱい……?」
やっぱりだめだったのかな……。どうしよう、謝ったほうが――
「よしっ! じゃあ次からは30分で終わるようにがんばるね!」
「――ってどうしてそうなるんですかあ!!!!」
やっぱり唯先輩は唯先輩だった。
864:唯と梓の憂初生活 12月19日 AM9:00 ◆W4vGdpL0uvBj :07/18(土) 10:46:14.34 ID:gAby6aW60 (50) ID AA
「いっただっきまぁ~す!」
「はい召し上がれ」
漫才も無事終焉を向かえ、私は平沢家で初めての朝食を食べようとしている。
「もきゅもきゅ……おいしー!」
「そう、よかった」
ここでも、だめだめな姉としっかり者の妹の構図は変わってないのか……。
唯先輩はもきゅもきゅと一心不乱に食べてるし、憂は何だかにこにこしてるし……。
「憂、どうしてそんなににこにこしてるの?」
「うん? それはね――」
「あ、あずにゃんも食べなよ~」
憂が答えようとするタイミングで先輩が口を挟んできた。
……あいかわらず間が悪いんだから。
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
もきゅもきゅ……おいしい。
「やっぱり憂の作った料理はおいしいね」
そう言って憂を見てみると、なぜだか気まずそうに目を逸らされる。
……何で?
865:唯と梓の憂初生活 12月19日 AM9:00 ◆W4vGdpL0uvBj :07/18(土) 10:47:42.47 ID:gAby6aW60 (50) ID AA
「あー、おほん」
わざとらしい咳払いに目を向けてみると、そこにはジト目で私を見てる唯先輩――って
「もしかして、これ唯先輩が作ったんですか?」
ありえないことを確認してしまう。この怠け者の唯先輩が料理をするなんて思えないんだけどな……。
「そうだよー私が作ったんだよー」
物凄い棒読みだ……。
「そ、そうだったんですか……。すみません、あまりにおいしかったので判りませんでした」
「えっ? おいしかった?」
「はい」
「ほ、ほんと? わぁ~い! あずにゃんにおいしいって言ってもらえたよ~」
「よかったね、お姉ちゃん」
とりあえず話題逸らしには成功したけど、また漫才が始まりそうだ……。
「明日からはあずにゃんにも作ってもらうからね~」
「えっ?」
今何かとんでもないことをさらっと言われたような気が。
「あ、あの」
「あ、このジャムおいしいねー」
「でしょ? 隣のおばさんがね――」
……駄目だこりゃ。
とにかく、明日からはこの家の料理も手伝わないといけないってことかなぁ。
当たり前のことか、何せ居候させてもらってるんだし。
――改めて唯先輩と憂に感謝する。
二人とも、ありがとう。
30 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM9:20 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 15:46:16.05 ID:qwjSPNFt0
朝食を終えて。
「じゃーじゃー」
「しゃかしゃか」
「ふきふき」
「ぴかぴか」
平沢姉妹は私に『待て』をやると、一目散に台所へと向かった。
洗い物をするためなんだけど、私はその間暇になってしまう。
「そうだ」
お手伝いをすればいいんだ。
「唯先輩、私もお手伝いしますよ」
とりあえず名乗り出てみる。
すると――
「あー? あずにゃんはお客様だからそのまま待っててー」
返ってきたのは否定の言葉。
「いえ、何だか悪いですし、手伝いますよ」
「あ、無茶しちゃだめだよ~」
……何を?
31 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM9:20 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 15:47:16.87 ID:qwjSPNFt0
「しゃかしゃか」
「ふきふき」
「ぴかぴか」
「じゃーじゃーびちゃ」
「きゃっ」
油断していたら、お皿に跳ね返った水が目に入ってしまった。
「……痛い」
目がひりひりする。ちょっとだけ洗剤も混じってるのかもしれない。
「あ、ほら、やっぱり無茶するからだよ~」
「梓ちゃんは休んでていいよ」
そうして、二人に追い出される。
「じゃーじゃー」
「しゃかしゃか」
「ふきふき」
「ぴかぴか」
何だか、二人だけの世界に入ってるみたい。
……ちょっと悔しい。
「いつか、一緒に洗えるようになろう」
そう、心に誓ったのだった。
66 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM9:30 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 16:28:45.69 ID:qwjSPNFt0
食器洗いも終わって、ようやくギターの練習ができる。
だけど――
「あずにゃん、ここがわからないんだけど……」
「あ、ここはさっきも教えましたよ?」
「だ、だって……難しいんだよぅ~」
唯先輩は、あいかわらず頼り癖が治ってなかった。
「はぁ……わかりました。もう一度だけ教えますから、それで覚えてくださいよ?」
そう言って自分のギターを持とうとすると――
「あずにゃんの指を見てるだけじゃ分からないよ~。私の指を持ってそれで弾いて?」
「えっ」
とんでもない提案をされた。
た、確かに、そっちの方が分かり易いんだろうけど……。
「さ、さすがに人の指を持って演奏するのは……ちょっと」
どきどき。
唯先輩の手は……やっぱりぷにぷになのかな。
「え~? そんなの普通だよ~? 澪ちゃんもやってくれたもん~」
先輩もこう言ってるし――へ?
「み、澪先輩にやられたんですか?」
「うん? そうだよ~。入部してから2ヶ月ぐらいは教えてもらってたんだ~」
「そ、そうなんですか……」
澪先輩……まさか唯先輩に気があるんじゃ……。
67 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM9:30 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 16:30:05.91 ID:qwjSPNFt0
「だからあずにゃんもそれで教えて~」
「その理屈はおかしいでしょうっ!」
――でも、澪先輩もやってたんだから私もやっていいのかもしれない。
唯先輩も乗り気みたいだし、私も唯先輩の指に触れて一石二鳥。
「しょうがないですね、特別ですよ?」
そう、唯先輩だから特別。
「え? いいの?」
「はい」
「わぁ~い! あずにゃんありがと~うっ」
だきっ。
「だから抱きつかないでください!」
まったく、スキンシップの量はいつまでも変わらないな……。
……減ったら、少し寂しいからこれでいいか。
299 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM10:00 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 21:57:06.98 ID:qwjSPNFt0
あれからしばらく、唯先輩のぷにぷにの指を堪能して――
「おぉ~! あんなに難しかったのがもう弾けるようになったよ! ありがとうあずにゃん!」
その間に唯先輩の腕はかなり上達していた。
……というか。
「こんな短時間でここまで上達するなんて……」
「え?」
軽く二時間はかかると踏んでたのに。
「やっぱり先輩は才能がありますよ」
「え~? あずにゃんの教え方が上手なんだよ~」
「そうでしょうか……」
やっぱり先輩の才能のおかげだと思うんだけど……。
そんなことを考えていると、
「お姉ちゃ~ん! 今日も頑張ろうね~!」
突然、憂が部屋に入ってきた。
311 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM10:00 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 22:05:19.30 ID:qwjSPNFt0
「えっ?」
「おぉ~う! 憂、こっちおいで~!」
「うん!」
唯先輩はさも当然のように憂を歓迎してるし、憂も何かギターを持って……あれ?
「憂、ギターやってるの?」
「うん! お姉ちゃんと一緒に練習してるよ~」
「憂は上達が速いから私すぐ追い抜かされちゃうよ~」
「そんなことないよぉ~」
なにこれ。
「え、えっと……」
「あ、あずにゃん、今から私憂の練習に付き合わなきゃいけないんだ~」
「え、あ、そうですか……」
「だからあずにゃんは自分の練習をしといてね~」
「あ、はい……」
……なんだろう、この寂しさは。
と、自分の考えに没頭しそうなところで、憂が来て、
「――お姉ちゃんは、簡単には渡さないよ」
と言われた。
「――えっ?」
どういうことかと聞こうとしたときには、既に唯先輩のところに戻ってしまっていた。
……ほんとに、どういう意味なのだろう。
354 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM11:00 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 22:29:42.75 ID:qwjSPNFt0
「あ、もうこんな時間か~」
「……えっ」
すっかり自分の練習に没頭していたので、一瞬誰が何と言ったか判らなかった。
「ほんとだ! もうこんな時間~!」
「お姉ちゃん、買い出しお願いできる?」
「任せなさい~」
「じゃ、頼んだよ~」
「うぃ~」
「え? え?」
いまいち事態の進行に追いつけていない私。
それなのに――
「あずにゃんも一緒に行こ~」
「え、あの、はい」
なぜだか唯先輩には従ってしまう。
……どうしてだろう?
「ほらほら~」
「あ、待ってくださいよ!」
……まぁ、そのうち解るよね?
368 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM11:10 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 22:42:30.05 ID:qwjSPNFt0
「今日のお昼ご飯は何にしようかな~」
るんるん。
今の唯先輩にはそんな擬音がぴったりだ。
「こっちで決めていいんですか?」
「うん? そだよ~♪ いっつも私が材料を買ってきて、それで憂が何を作るか決めるんだ~」
「あれ、それだと完全にこっちで決められなくないですか?」
「うん? そうだけど、憂は大体のわがままを聞いてくれるからね~」
「ああ、なるほど」
確かにお姉ちゃんラブな憂なら――
……あれ?
どうして憂がお姉ちゃんラブだなんて思ったんだろう?
『お姉ちゃんは簡単には渡さないよ』
――あっ。
371 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM11:10 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 22:44:20.63 ID:qwjSPNFt0
唯「歯ギターができないよぉ」
梓「ちょっと貸してください」
ひょい
唯「あ、ギー太が……」
梓「こうやってですね……」
がりっ
梓「あが!」
唯「え?」
梓「歯が折れました」
唯「なにそれこわい」
381 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM11:10 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/21(火) 22:58:30.53 ID:qwjSPNFt0
「あずにゃん? どうしたの?」
と、そこで唯先輩に声をかけられる。
「あっ……」
「よかった、やっと気がついてくれた」
唯先輩の言い方によると、私はずいぶん長く考え込んでたみたい。
「あの――」
「ほら、もう家に着いたよ」
「えっ」
そ、そんな……。素材屋に着くどころか、Uターンして家まで戻ってきてたなんて、どれだけ考え込んでたの、私。
「まったく……話しかけても反応無いから心配しちゃったよ」
「す、すみません……」
これはさすがに私が悪いから、謝っておかないと。
「……よしっ! あずにゃんもこっちに戻ってきたし、早く家に入ろうっ」
「あ、待ってくださいよ~っ」
……ところで、お昼ご飯は何になったのだろう。
572 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM12:40 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/22(水) 01:45:39.67 ID:aSR+55BB0
唯先輩は家に入って早々に台所へと行ってしまった。
『お昼ご飯は内緒だから見に来ちゃだめだよ~』
そんな言葉を残して。
……そういう訳で、私は現在絶賛暇中。
「何か面白いものとかあるかな……」
がさごそ。
――特に無い。
「どうしよう……寝ちゃおっかな……」
お昼までに出来上がるとは思えないし。
「うん、そうしよう」
そうと決まれば早速ベッドに行かないと。
愛用のギターを持って唯先輩のベッドに潜り込む。
カーテンを閉めてお休みなさい――
はい、お休みなさい
573 :唯と梓の憂初生活 12月19日 AM11:40 ◆W4vGdpL0uvBj :2009/07/22(水) 01:47:01.20 ID:aSR+55BB0
唯先輩は家に入って早々に台所へと行ってしまった。
『お昼ご飯は内緒だから見に来ちゃだめだよ~』
そんな言葉を残して。
……そういう訳で、私は現在絶賛暇中。
「何か面白いものとかあるかな……」
がさごそ。
――特に無い。
「どうしよう……寝ちゃおっかな……」
お昼までに出来上がるとは思えないし。
「うん、そうしよう」
そうと決まれば早速ベッドに行かないと。
愛用のギターを持って唯先輩のベッドに潜り込む。
カーテンを閉めてお休みなさい――
多分半年後に完成したのを貼るんでそれまでほっといてください
by作者