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137 :添い寝ゆいあずおうち編:2009/07/28(火) 14:06:48 ID:2hFUmMsH
「あずにゃ~ん…」
先輩の甘くとろけるような声で、ぼんやりと意識が浮上してくる。
まるでまどろんでいるかのような感覚。でも先輩が呼んでるのなら、起きなきゃ。
そう思って、浮かび上がってきた意識をそのまま覚醒へと向かわせる。
「あずにゃんはかわいいねぇ」
まだぼんやりとした視界に映るのは、いつもの唯先輩の顔。柔らかくて優しくて暖かな笑顔。なんかほっとして、また眠りに落ちてしまいそうになる。
先輩はぎゅっとわたしの体を抱え込んでくれていて、私の頭を優しく撫でていてくれて、それが本当に気持ちよくて―
―あれ、なんでこんな状況になってるんですか…?
ふとした疑問。そう、なんでこんなことになっているんだろ。まどろんでいる、ということは私は今まで寝ていたと言うことで。
ね、寝起きでこんな…ことしてるなんて、まるで、そう、恋人同士のそれみたいじゃないですか―
「だめだよ、あずにゃん。あずにゃんは今猫なんだから、にゃー以外は禁止」
―な、なんですか、それは。
「ほら」
つーっと唯先輩が指で何かをなぞる。途端にゾクゾクと未知の感覚が体を駆け巡る。
何かと頭頂部に手を伸ばせば、そこにはふにゃっとした感触の何かが。そして同時に、ふにゃっと触られた感覚も伝わってくる。
「こんなにかわいい耳としっぽが付いてるんだよ。だから、あずにゃんはかわいい猫」
そんな唯先輩の台詞の直後に、きゅっと尾?骨を引っ張られるような、そんな感覚が伝わってくる。
「ニャッ…!」
「そうそう、う~ん、かわいいよあずにゃん~」
思わず口から漏れた悲鳴に、それが望んだ形であったことに満足したのか、唯先輩は私のその部分をさわさわといじってくる。
頭頂部にあるという耳とやらは見えないけど、しっぽの方は私も見ることが出来た。先輩に撫でられて、フルフル動くそれは、その猫のしっぽは間違いなく私のお尻から生えていた。
―嘘、本当だったんだ。
驚愕の言葉は、声にならなかった。代わりに私の口から出たのは、ニャアっていう猫みたいな鳴き声だけ。
先輩はそんな私をかわいいと思ったのか、しっぽを撫でる手を止めて、きゅーっと抱きしめてくる。
それがとても気持ちいい。普段は口にしたりはしないけど、先輩にきゅーっとされるのは、私はとても大好きだった。
びっくりしていた気持ちが次第に落ち着いてくる。だんだんそれが、どうでもいいことのように思えてくる。
気が付けば私の喉はゴロゴロとなり、甘えるように先輩の胸元に頭をこすり付けていた。
―ああ、これじゃ本当に猫みたいです、私。でも、先輩の猫にだったら、なってみてもいいです。
「うふふ、嬉しいよぉ~あずにゃん」
迂闊に零れた台詞。唯先輩はそれにはちゃんと反応してくれた。さっきはにゃーじゃなきゃ駄目って言ってたのに。
先輩は、やっぱりずるい。
―そんなずるい先輩は、こうです。
そう言って、猫みたいにぺろぺろ先輩の首筋を舐める。ううん、猫みたい、じゃないか。今わたしは先輩の猫なんだから、そんな言い方はおかしいよね。
「もう~くすぐったいよ、あずにゃん」
「ニャ~…ゴロゴロ…」
喉を鳴らす私に、先輩は小さくくすりと笑うと、反撃とばかりに私をまた撫ではじめた。ぴくりと体が小さく跳ねる。
ぎゅーっとされるのも好きだけど、こうして撫でられるのも私は好きなんだ。ふにゃっと体から力が抜けて、私は行動を中断させられる。
「あ~ずにゃんっ…ふふふ」
そんな私の様子に、先輩は調子に乗って、撫で回す範囲を更に広げていく。体全体、満遍なく先輩の手が触れて行く。その度に、私の体はぴくぴくと震えていく。
―せ…んぱい…もう、調子に…乗りすぎです。
「あずにゃん、にゃー、だよ?」
―もう。
「ニャ…ア」
心地よさに薄れていく意識の中、それでも最後に先輩の要望にこたえようと、私はそう小さく鳴いて。
ふわふわとした眠りの中に意識を落としていった。
138 :添い寝ゆいあずおうち編2/2:2009/07/28(火) 14:07:25 ID:2hFUmMsH
「…はっ!」
気が付くと、私はガバっと身を起こしていた。あわててきょろきょろと周りを見回す。
ここは自室のリビングで、私はソファーの上。どうやらその上で眠ってしまっていたらしい。
私は自分の頭頂部に手を伸ばす。―無い。
次にお尻の方に手を伸ばす。―無い。
うん、無くて当たり前で、むしろあってくれたら色々困ることになってたんだけど。だけど、つまり、そうだということは。
「夢…?」
一瞬にして私の頬が沸騰する。ボッ、なんて音を立てちゃってる。
でも、無理は無い。だって、さっきまでの私は、あんな夢を見ちゃってたんだから。
穴があったら入りたい、とはまさにこんな気持ちなんだろう。
「んぅ…あずにゃ~ん…?」
頭を抱えてソファーに自傷的ヘッドバンキングを試みてる私の耳に、唯先輩の声が聞こえてきた。
―え?
思わずきょとんとして、慌てて佇まいを整える。ここは私の家のリビングのはずで、それなら何故唯先輩の声がするんだろう。
声のしたほうに目を向けると、そこにはソファーの上、気持ちよさそうに寝息を立てる唯先輩の姿があった。
そして、その懐には私ではなくて―また預かることになったあずにゃん2号の姿。
「…あ」
そこでようやく、私の頭は全てを思い出した。ううん、ようやく目が覚めたというべきなのかな。
あずにゃん2号―本当の名前、なんだっけ―を再び預かることになって、それを聞きつけた唯先輩がうちに遊びに来るって言って。
先輩が一人でうちに来るのは初めてだったから、色々緊張したり、期待してたりしてたのに。
唯先輩はあずにゃん2号にかまいっぱなしで、私にはほとんどかまってくれなくて。
挙句にはあずにゃん2号を胸に抱きしめてすやすや眠ってしまったんだ。
私はそれにすっかり腐ってしまって、不貞寝気味に隣のソファーに横になって―
「…それで、だったんだ…」
二重に恥ずかしくなる。つまり私は、あずにゃん2号が羨ましくて、同じようにして欲しくて、あんな夢を見てしまったということなんだろう。
「…馬鹿ですね、私」
眠る先輩に声をかける。当然のことだけど、先輩は返事をしてくれない。だけどその代わりに、先輩は少しだけあずにゃん2号を抱く腕を広げてくれた。
―あずにゃんの分もあるよ。なんて、そう言わんばかりに。
「…本当に馬鹿です、私」
おそらくは私の勘違いだと思う。先輩はちょっと夢見心地に動いただけで、そんな意味は本当は無かったのかもしれない。それでも今は、その妄想を信じていたかった。
「あずにゃー…ん」
ああ、そう思ってしまったこと自体、私は先輩を見くびっていたのだろう。だって、先輩の腕は、寄り添った私のことをちゃんと抱きしめてくれたんだから。
「唯先輩…」
嬉しくなる。嬉しさが溢れて、弾けてしまいそうになる。先輩を力いっぱい抱き返したかったけど。
「にゃあ…」
先輩の胸の中で、私の胸の中で、あずにゃん2号が小さな声を上げる。そうして、私の胸元に甘えるように頭をこすり付ける。
「もう、あずにゃん2号…今だけだからね」
先輩と私の間、少しだけだけど、分けてあげるから。…そう、最初からそうしておけばよかったんだ。先輩と一緒になって、あずにゃん2号と遊んでいればよかった。
嫉妬なんて、必要なかった。だって先輩の腕は、今こうして私を抱いてくれているから。
先輩を抱き返そうと思っていた右手を、そっとあずにゃん2号に添えてあげる。応えるように、あずにゃん2号はくるりと背を丸めて、私の手のひらへその形を合わせた。
「起きたら…一杯遊んであげるからね…唯先輩と一緒に」
そう、一杯遊んであげよう。私と唯先輩の間に、あずにゃん2号がいる時間を楽しもう。それはきっと楽しいし、大切な思い出になるから。
「でも、唯先輩…」
あいていた左手を、そっと唯先輩のほっぺに当てる。んぅ、なんて可愛い反応が返ってきて、私は思わずくすりと笑ってしまう。
そしてこつんと額を当て、視界一杯に広がった唯先輩に、小さく囁いた。
「あずにゃん2号にわけた分、後でしっかり私に返してくださいね…」
それでもそう言ってしまう私は、きっと嫉妬深いってことなんだろうなと、もう一度くすりと小さく笑った。
すばらしい作品をありがとう