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168 : ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 21:43:34.86 ID:Qgdk9uOTO -桜が丘高校。 その屋上に1人、喇叭を吹く少女が。- ぼくの名は細野凪。 と言っても、それはあくまでも表の世界での名だ。 元々その名前ではあるが、ぼくにはもうひとつの名がある。 尤も、その名を知る者は、裏の世界に生きる者、若しくは表と裏の仲介役、という事になる。 つまり、普通に暮らしていれば、その名を聞く事などまずないし、知る事もないだろう。 …前置きが長くなった。 そろそろ名乗るとしよう、ぼくのもうひとつの名を…。 182 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:04:56.17 ID:Qgdk9uOTO 2ヶ月前、某所 巨樹の前に、1人の少女が跪いている。 「新たな召喚師を目指す者よ。我が葛葉の一族となり働けるか否か……。今よりそれを裁断す。汝の召喚師としての力、見事示してみよ!」 少女は試練の場へと赴いた。 …………… 「汝の腕、見せて貰った。その力を認め、約束通り、新たなる葛葉の分家として生きる事を許そう。葛葉としての名を名乗るがいい。」 「私は…。」 数時間前、桜が丘高校 律「なあ聞いたか?転校生が来るらしいぜ!」 唯「そうそう!しかもうちのクラスだって!」 澪「しかし、変な時期に転校してくるもんだな、その子も。」 紬「どんな人か楽しみだわ~。」 188 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:30:37.25 ID:Qgdk9uOTO さわ子「はーいみんな静かにー!ホームルーム始めるわよー。」 唯「きりーつ!れー!着陸!」 ズコッ 澪「お約束なボケかますな!」 律「てか古っ!」 唯「てへへ、間違えちゃった。」 さわ子「え、えーと…早速だけど、転校生を紹介するわ。入って来て。」 ぼくは教室の中に入り、黒板に名前を書いた。 無論、表の名を。 凪「細野凪です。宜しく。」 さわ子「じゃあ凪ちゃんの席は…。」 唯「せんせー!私の隣があいてまーす!」 さわ子「じゃあ、あそこに座ってちょうだい。」 凪「分かりました。」 廊下側から2列目、後ろから2番目。 悪くない位置だ。 206 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:12:00.97 ID:Qgdk9uOTO ホームルームが終わると、クラスメート達がぼくを取り囲んでの質問タイムが始まる。 恒例行事、というやつだろうか。 ひと通り質問に答え、ほっと一息つき、授業の準備に取り掛かる。 …………… そして現在、屋上にて。 喇叭を吹くぼくのもとに、小さな光が近寄って来る。 ???「な~ぎ!ガッコにはもう慣れた?」 凪「学校には、ね。で?何か用?アカネ。」 アカネ「ぶー!相変わらず無愛想なんだから!」 今アカネと呼んだ彼女は、ぼくのパートナーとして師匠から頂いた、ハイピクシーという悪魔だ。 アカネ「てか、人見知りも相変わらずなのね。」 224 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:48:24.70 ID:Qgdk9uOTO 凪「…用件は?」 アカネ「オヤゴコロってやつが分かんないのかな~この子には…。」 凪「貴女を親に持った覚えは無いけど?」 アカネ「そ~んな事分かって…!誰か来た!じゃね!」 そう言うとアカネは彼方へと飛び去った。 その僅か後、屋上の扉が開く。 律「お、やっぱここにいたか。」 凪「田井中律さん…だっけ?何か用?」 律「ラッパの音したから、ここじゃねーかと思ったんだ。」 凪「…用件は?」 律「なあ、凪は軽音楽とかきょ 259 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 02:15:00.87 ID:WD4LdIzuO おっとミス 律「なあ、凪は軽音楽とか興味ないか?」 凪「無い。」 律「(バッサリだ~!)でも、なんかしら部活には入りたいだろ?」 部活…か。 525 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:20:48.64 ID:WD4LdIzuO 学生の本分とも言えようそれも、残念ながらぼくには体験する暇もない。 凪「実は住み込みでバイトをしていてね。学校が終わったら直ぐ帰らなきゃならないんだ。」 詳しい内容は敢えて話さず、端的に事情を説明した。 まあ、どの道そう深く追及しては…。 律「なになに?どんなバイト?住み込みって事は…まさかの新聞奨学生!?」 しまった。 まさか、食い付いて来るタイプだとは思ってもみなかった。 人を見た目で判断するのは、ぼくの悪い癖だ。 凪「否、そうじゃないよ。実家が遠くてね。この学校の近くで働き口があったんで、事情を説明して、住み込みで働かせて貰うことになったんだ。」 536 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:35:53.82 ID:WD4LdIzuO 律「ん~、残念。うちの部に入ってもらおうと思ったんだけどなあ。そういう事ならしゃーねーか。」 律は踵を返すと、そのまま出入り口まで歩いていった。 途中で此方を振り返り、一言。 律「気が向いたら覗きに来てくれよ。音楽室でやってるから。一曲演奏してやるよ。」 そう言って、再び出入り口に向かう。 凪「うん。いつかお邪魔するよ。」 律は軽く手を挙げて応える。 律が見えなくなった直後、再びアカネが姿を現す。 アカネ「な~んだ、もう友達いるんじゃない。心配してソンした。」 凪「あの子は、紬さんと仲が良いみたいなんだ。友達の友達も友達…だろ?」 546 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:44:46.44 ID:WD4LdIzuO 放課後、音楽室 律「やっぱダメだったわ。住み込みのバイトしてるんだと。」 澪「へー、あの子仕事熱心なんだな。」 唯「まさか、新聞奨学生!?」 律「あたしと同じ事言ってるし。」 唯「で、新聞奨学生って何?」 律「知らねーで言ったのかよ。」 紬「そうそう、言い忘れてたけど、実は凪ちゃん、探偵さんの助手をやってるのよ。」 唯「おお!カッコイイ!」 澪「探偵?あの、ペット探しとか浮気調査とかする?」 紬「そうそうのもやってるみたいだけど、所長さんいわく、本来は『変わったの専門』なんだって。」 律「変わったのって?」 578 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:10:19.05 ID:WD4LdIzuO 紬「幽霊騒ぎとかのいかがわしい系の調査ね。実は私も、それが縁で凪ちゃんと知り合ったの。」 梓「たまたまそうそう場所に居合わせた、とかですか?」 紬「う~ん、ちょっと違うかしら。あまり詳しくは話せないけど。」 梓「なるほど、守秘義務ってやつですね。」 紬「そうなるわね。」 同時刻、大瀧探偵事務所 凪「ただ今戻りました。」 ???「お~う、お帰り~。学校はどうだったよ?」 何処からか言葉が返ってくる。 この声の主こそ、我が探偵事務所の所長にして、自称敏腕探偵の大瀧氏である。 594 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:23:29.50 ID:WD4LdIzuO 大瀧「自称は余計だよ~?」 凪「ナレーションに突っ込まないで下さい。そう言えば、久々に紬さんに会いましたよ。桜が丘に通っているとは知りませんでした。」 大瀧「ああ、あの琴吹のお嬢さんね。調査不足だよ~。」 ???「ドキドキ、多いがいい、だから、わざと、調べなかった、そうか?」 この片言で話す人物は、ぼくの先輩であるジョー・マツモト氏である。 凪「御明察です、ジョー。」 大瀧「ふ~ん。ま、どっちでも良いけどね~。で?他に友達は出来たの~?」 凪「紬さんの友達の方々と仲良く成りましたよ。」 大瀧「ほ~。そんなら、人見知りは克服出来そうだね。」 623 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 02:13:18.62 ID:8TOudOSYO 資料室から所長が出てくる。 資料室の整理をするなんて、随分と所長らしからぬ行動だ。 大瀧「普段怠けてるみたいな言い方しないの。」 凪「だからナレーションに…。」 大瀧「それはそうと…ハヅキ。」 ぼくは姿勢を正す。 そう…ハヅキ。 ぼくのもうひとつの名-葛葉ハヅキ-その名で所長が呼ぶ時は、依頼調査の報告を求める時だ。 この時ばかりは、所長に威厳を感じ、背筋をピンと張ってしまう。 何だかんだ言っても、やはり所長を尊敬しているぼくなのである。 大瀧「学校の幽霊騒ぎの件…何か分かったことは?」 902 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:37:34.51 ID:8TOudOSYO 凪「聞き込みを行った所、幽霊を見たと言っているのは男性教諭が多いようです。出会うのは午後8時頃で、見た目は丁度ぼく等生徒と同い年位の少女だそうです。」 大瀧「自殺した生徒の霊って可能性は?」 凪「校長先生には、そういった事は包み隠さずに話して戴きました。無論、その様な事実はない、との事です。」 大瀧「だとすると、悪魔である可能性もあるって事か。遭遇現場は見てみたのかい?」 凪「はい。しかし、その時点では怪しい気配は感じられませんでした。やはり、遭遇時刻まで待ってみる必要が有りそうです。」 913 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:57:56.67 ID:8TOudOSYO 大瀧「…そうか。まあ、そうじゃないかとは思ったけどな。…よし、ハヅキ。この件、明日から全面的にお前に任せる!報告は調査完了後に書類にして提出するように。しっかり頼むぞ!」 凪「有難う御座います。精一杯調査に当たらせて頂きます。」 ぼくは一礼して、自分の部屋に戻ろうとした。 すると、所長がぼくを呼び止めて言った。 大瀧「時間になるまで暇になっちゃうだろ?部活にでも入って、青春を謳歌するといいよ。」 凪「しかし、依頼が…。」 ジョー「怠け者扱い、イヤ。だから、他の依頼は、自分がやる。所長、そう言いたい。」 大瀧「…言うんじゃないの。ま、そういう事だからさ。」 935 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 22:26:40.62 ID:8TOudOSYO さっきの一言が効いたのか、単にぼくに気を使ってくれたのか。 どちらにせよ、部活が出来るのは正直嬉しい。 ぼくにとっては憧れだからな。 次の日 放課後、音楽室前 ぼくは迷っていた。 律は昨日は気にしない素振りをしていた様だが、「興味が無い」と言い切ってしまったし、入部を渋られたりしないだろうか? 梓「軽音部にご用ですか?」 凪「あ、ああ。ええと…。」 梓「はじめまして、中野梓です。私も軽音部員なんですよ。細野先輩…ですよね。よろしくです。」 凪「ああ。よろしく。」 律「お~、やっと来たか凪~。」 音楽室から律の声が響く。 966 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 23:11:46.01 ID:8TOudOSYO 梓さんに促され、音楽室に入る。 律「待ちくたびれて練習やめるとこだったぜ!」 澪「そもそもやってなかっただろ?」 唯「ティータイムがうちの売りだもんね~。」 律「そんな事より!ムギから聞いたぜ~!凪って探偵なんだってな!」 凪「助手だけどね。」 ふと紬さんを見ると、申し訳無さそうに手を合わせていた。 まあ、隠す様な事でもないし、どの道いつかは話そうと思っていたから、むしろ手間が省けたというものだ。 彼女に怒っていない事を伝える為、笑顔で応える。 澪「幽霊騒ぎとかを調査するんだよな…怖くないのか?」 凪「幽霊は小さい頃から見えていたから、怖いって感覚はないかな。」 113 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 01:29:13.46 ID:SKTnXKvqO 唯「ムギちゃんとはどこで知り合ったの?」 凪「それは…。」 梓「唯先輩。それは凪先輩でも話せませんよ。守秘義務があるんですから。」 唯「ぶ~!あずにゃんのケチー!」 梓「なんでそうなるんですか!?」 唯「だって知りたいんだもん!」 ぼくは紬さんに目配せをして、話しても問題無いか確認を取る。 紬さんはその意味を理解したのだろう、笑顔で応えた。 凪「実はね。ひと月前、紬さんの家からの依頼があったんだ。紬さんが夜な夜な奇怪な行動を取るようになった為、原因を調べて欲しい、とね。」 201 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 02:55:09.18 ID:SKTnXKvqO 澪「えっ?そうなの?全然気づかなかった。」 紬「私自身もその行動の事覚えてないの。でも、夜中に何してたのかを斉藤に尋ねられて、自分の奇行に気づいたのよ。」 律「それで怖くなって、凪んとこの探偵事務所に依頼したんだな。」 紬「そうなのよ。」 490 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:14:30.49 ID:SKTnXKvqO 唯「それで、原因って結局何だったの?」 凪「それについては…。」 友達の一大事だったのだ、やはり知っておきたいというのは有るんだろう。 紬さんに目配せで同意を求め、頷くのを確認して言葉を続ける。 凪「そうだな、明日報告書の写しを持ってくるよ。口で説明するよりは分かり易いだろうからね。」 唯「ほ、報告書…。」 梓「助手とは言っても、きっちり仕事をこなしてるんですね。」 凪「まあね。そう言えば、律。」 律「ん?」 凪「来たら一曲演奏してくれるんだったよな?」 律「お~そうだった。すっかり忘れてたぜ。」 澪「オイ!」 503 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:41:07.78 ID:SKTnXKvqO …………… 驚いた。 ついさっきまで怠けていたとは思えない、素晴らしい演奏だ。 思わず立ち上がり、惜しみない拍手を送る。 律「どーだ!怠けてたのがウソみてーだろ!」 凪「君は超能力者か。」 律「見りゃわかるよ。だってもうあたし達、友達だからな。」 澪「怠けてるって自覚はあったのかよ。」 紬「澪ちゃん、ツッコんだら負けよ。」 唯「そう言えば、ずっと気になってたんだけど、それって何のケースなの?」 唯はぼくが持つケースに興味津々な様子だ。 凪「これはトランペットのケースだよ。ほら。」 ぼくはトランペットを取り出すと、顔の前に構えた。 510 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:56:24.26 ID:SKTnXKvqO 唯「ぐはあ!」 !? 何故か銃で撃たれた様な素振りをして倒れ込む唯。 律「ゆ、唯!」 血相を変えて唯に駆け寄る律。 唯「りっちゃん…私…もう…ダメかも…。」 律「バカ!弱気になるんじゃねー!今救急車を呼ぶから!」 え…ええっと。 唯「もう…いいから…最期に…クッキー…食べたいな…。」 律「最期なんて言うなよ!そんな悲しい事言うなよ!」 これは…一体…。 律「お、おい!唯!しっかりしろ!唯ー!」 何事…? 梓「気にしないで下さい。いつもの事ですから。」 澪「こらこら、その辺にしとけよ。凪が困ってるだろ?」 519 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 20:28:30.36 ID:SKTnXKvqO …何故演劇部に入らなかったのか、という疑問は、そっと胸にしまっておくとしよう。 紬「ところで、どうしてここに来たの?」 凪「ああ、実は、所長からしばらくは遅くなっても構わないと言われてね。せっかくだから、部活に入ってみようと思ったんだ。その…軽音部に。」 律「あれ~?興味無いんじゃなかったっけ~?」ニヤニヤ 凪「意地悪だな…あんな演奏見せられたら、興味が湧かない訳無いだろう?」 どうやら、大して根に持っていないようで安心した。 律「んじゃあ、今後ともよろしくな、凪。」 紬「そう言えば、凪ちゃんのパートはどうしようかしら。」 唯律澪梓「あ。」 525 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 21:11:29.85 ID:SKTnXKvqO 律「盲点だったぜ。必要なパートはだいたい揃ってるからな…。」 唯「あ、そうだ!マネージャーとして、とかどうかな?」 梓「運動部じゃないんですから…。」 律「ここは凪にベースやってもらって、澪にはメインボーカル…。」 澪「絶対ヤダ!!」 律「ですよね~…。」 やはりか。 まあ、大方予想はしていたが。 ふむ。だとしたら…。 凪「ぼくはサブメンバーでもいいよ。一応、使う楽器をひと通り練習しておくから。」 律「わりいな、こっちから誘っといて。」 紬「じゃあ私、トランペットが入れられそうな曲を考えてみるわ~。」 凪「有難う、紬さん。」 547 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:13:07.01 ID:B8YSvq8oO 皆も練習するだろうし、楽器を借りて練習する訳にもいかない。 という訳で、今日は取り敢えず見学だ。 …と思ったが、結局は皆とのティータイムに費やしてしまった。 午後5時半過ぎ 律「ん~、そろそろ帰るか!」 澪「いつの間にか暗くなってきてるな。」 唯「今日の晩ご飯何かな~?」ワクワク 各々帰り支度を始めるメンバー達。 律「凪、どうした?帰んないのか?」 凪「ちょっと野暮用があってね。また明日ね。」 律「? おう、じゃーな。」 午後7時半、宿直室 教師「ごめんな、わざわざ残ってもらって。」 凪「気にしないで下さい。仕事ですから。」 553 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:30:03.58 ID:B8YSvq8oO 教師「例の幽霊が出る場所は分かるよな?」 凪「はい。放課後そこに行きましたが、昨日の授業の時と同様、やはりそれらしい気配は有りませんでした。」 教師「他の先生が言ってたんだが、あそこにしか出ないみたいでさ。…ヤバそうだったら、すぐ引き返して来いよ。」 凪「大丈夫です。鍛えてますから。」 そう言ってぼくは、宿直室を出る。 ふと、小さな光が近寄って来る。 アカネ「調査は順調?」 凪「まあね。これから出没ポイントに向かう所だよ。」 アカネ「悪魔の仕業って可能性もあるんだから、準備は怠らないようにね。健闘を祈るわ、ハヅキ。」 そう言ってアカネは去っていった。 そしてぼくは、幽霊の出没ポイント、音楽室に辿り着く。 566 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:53:43.84 ID:B8YSvq8oO 意を決し、扉に手を掛ける。 ポンッ 凪「ひっ!」ビクッ 突然肩を叩かれ、思わず声を上げて驚いてしまった。 律「わ、わりい。驚かしちまったか。」 凪「律!どうして…。」 律「いやあ、探偵の仕事ってやつがどーしても気になってさ。迷惑はかけねーから、しばらく付き合わさせてくれよ。」 凪「全く…仕様が無いな。今回だけだぞ?」 気を取り直して、音楽室の扉を開く。 午後8時 さて、いよいよ幽霊が出る時間だ。 ぼくは周囲に警戒し、何時現れてもいいよう、刀に手を掛ける。 ポーン 突如、キーボードが鳴る。 591 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 01:10:06.53 ID:dfLKJWMWO キーボードの方を見ると、桜高の制服に身を包んだ少女が佇んでいる。 少女「今日は女の人か~。残念。」 凪「何が残念なんだい?」 少女「精気を吸えないのが。」 律「精気…?」 少女が宙に浮く。 見ると、その髪が鳥の翼となって羽ばたいていた。 凪「モー・ショボーか。」 ぼくは刀を抜く。 赤光葛葉。 葛葉の者ならば必ず携行している、基本装備の1つ。 凪「たあっ!」 ぼくはモー・ショボーに斬りかかる。 彼女はヒラリとそれを避けて、小さな風の渦を生み、それをぼくではなく、律に向けて撃ち出してきた。 律「うわあ!」 ぼくはすかさず懐から管を取り出し、それに封印された『仲魔』を喚び出す。 凪「ポルターガイスト!」 599 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 01:34:08.09 ID:dfLKJWMWO 緑色の光の筋が律の前に落ち、其処に愛くるしい姿の悪魔、ポルターガイストが現れる。 ポルターガイストはモー・ショボーが放った風の渦を受け止めて掻き消した。 律「悪魔を…喚んだ…!」 ぼくは更にもう1体の悪魔を喚び出す。 凪「ウコバク!」 ぼくのすぐ傍に、スプーンの上に炎を湛えた小人、ウコバクが現れる。 凪「さあ、行くよ!」 ぼくが刀を構えると、ウコバクはその刃に炎の力を宿す。 そして、ぼくは再びモー・ショボーに斬りかかる。 今度はポルターガイスト、ウコバクとの連携攻撃でモー・ショボーを追い詰めていく。 879 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 18:16:55.55 ID:dfLKJWMWO 今日はいつもより早く投下再開 深い理由はない ぼくはトドメの一撃を加えんと刀を振りかぶる。 律「ちょーっと待ったー!」 突然、ぼくとモー・ショボーの間に律が割って入る。 凪「律…!どいて!」 律「もうそのくらいにしといてやれよ!この子だって悪気があってやってたんじゃねーんだろーしさ!」 律はモー・ショボーの方に向き直る。 律「君もさ、こんだけやられたらもう懲りたよな?これからはもう誰も襲わねーって約束できるな?」 モー・ショボー「うん…ごめんなさい。」 律「よしよし。」ナデナデ ………。 ぼくは仲魔達を管に戻し、刀を納めた。 直ぐに斬りかかった自分が少し恥ずかしくなった。 全く…律には適わないな。話し合いでも解決出来ただろうに、ぼくって奴は…。 896 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 18:45:17.45 ID:dfLKJWMWO 律「悪いな。仕事とっちゃってさ。」 凪「否、要は解決すればいいんだ。…律には礼を言わなくちゃな。」 律「いいよ、お礼言われるような事してないし。」 凪「ぼくは頭に血が上ってたみたいだ。律のお陰で冷静になれたよ。有難う。」 律「だからいいって~!照れるだろ~!」 そんなこんなで、桜高の幽霊騒ぎは終わりを告げた。 2日後、大瀧探偵事務所 凪「桜高の件の報告書です。」 大瀧「おう、ご苦労さん。」 朝起きて直ぐ、昨日作った報告書を所長に手渡す。 凪「では、行ってきます。」 大瀧「行ってらっしゃ~い。」 ジョー「気を、つけて。」 身支度を整え、ぼくは学校へと向かう。 911 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 19:08:14.84 ID:dfLKJWMWO 昼休み 律「なあ凪、ちょっと音楽室行かないか?」 凪「良いけど…?」 紬(2人きりで何するつもりなのかしら?)ワクワク 音楽室 律「うし、誰も来てないな。」 凪「ぼくだけ連れて来たのには、何か理由があるんだよね?」 律「ああ…実はさ…。出ておいで!」 律がそう言うと、小さな風の渦とともに、モー・ショボーが現れた。 モー・ショボー「わ~い!りつおねーちゃんだー!…あ!こないだのこわいおねーちゃん…。」 凪「モー・ショボー!どうして…?」 律「この子、どうもここから出られないみたいなんだ。凪に相談すれば、いい解決策が見つかると思ってさ。」 927 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 19:33:06.20 ID:dfLKJWMWO ぼくはモー・ショボーをよく見た。 怯えて律の後ろに隠れるモー・ショボー。 凪「御免よ、もうあんな事はしないから。…その子、随分律に懐いてるね。」 律「あの一件以来、どうも気に入られちゃったみたいでさ。」 凪「…そうだな。律、彼女と契約してみたらどうだろう?」 律「契約?でもやり方知らねーぞ?」 凪「方法はぼくが教えるよ。尤も、その必要はないかも知れないけど。」 律「あとは封印するだけ、とか?」 凪「ご明察。…律ってさ、ひょっとしてぼく以外のデビルサマナーに会った事ある?」 律「ん?なんだそれ?」 39 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 20:43:58.75 ID:dfLKJWMWO 凪「…悪魔を知ってるみたいだから、ひょっとしたらと思ったけど…。」 律「あ、ああ、まあ、色々あってな…。」 慌てて言葉を濁す律。 まあ、深い事情は敢えて聞くまい。 凪「で、だ。封印する為には、それに応じた道具が要る。律が扱いに長けた物でも構わないけど。何かある?」 律「扱いに長けた…ん~、携帯ぐらいかなあ。」 携帯…か。 まあ、今時使えない子の方が少ないか。 …ぼくはどうも最近の電子機器が苦手なのだが。 報告書の作成も、偶々事務所にあったタイプライターを使わせてもらっている。 律(むしろそれ使える方がすげーよ、ってツッコんだら負けだよな。)
168 : ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 21:43:34.86 ID:Qgdk9uOTO -桜が丘高校。 その屋上に1人、喇叭を吹く少女が。- ぼくの名は細野凪。 と言っても、それはあくまでも表の世界での名だ。 元々その名前ではあるが、ぼくにはもうひとつの名がある。 尤も、その名を知る者は、裏の世界に生きる者、若しくは表と裏の仲介役、という事になる。 つまり、普通に暮らしていれば、その名を聞く事などまずないし、知る事もないだろう。 …前置きが長くなった。 そろそろ名乗るとしよう、ぼくのもうひとつの名を…。 182 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:04:56.17 ID:Qgdk9uOTO 2ヶ月前、某所 巨樹の前に、1人の少女が跪いている。 「新たな召喚師を目指す者よ。我が葛葉の一族となり働けるか否か……。今よりそれを裁断す。汝の召喚師としての力、見事示してみよ!」 少女は試練の場へと赴いた。 …………… 「汝の腕、見せて貰った。その力を認め、約束通り、新たなる葛葉の分家として生きる事を許そう。葛葉としての名を名乗るがいい。」 「私は…。」 数時間前、桜が丘高校 律「なあ聞いたか?転校生が来るらしいぜ!」 唯「そうそう!しかもうちのクラスだって!」 澪「しかし、変な時期に転校してくるもんだな、その子も。」 紬「どんな人か楽しみだわ~。」 188 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 22:30:37.25 ID:Qgdk9uOTO さわ子「はーいみんな静かにー!ホームルーム始めるわよー。」 唯「きりーつ!れー!着陸!」 ズコッ 澪「お約束なボケかますな!」 律「てか古っ!」 唯「てへへ、間違えちゃった。」 さわ子「え、えーと…早速だけど、転校生を紹介するわ。入って来て。」 ぼくは教室の中に入り、黒板に名前を書いた。 無論、表の名を。 凪「細野凪です。宜しく。」 さわ子「じゃあ凪ちゃんの席は…。」 唯「せんせー!私の隣があいてまーす!」 さわ子「じゃあ、あそこに座ってちょうだい。」 凪「分かりました。」 廊下側から2列目、後ろから2番目。 悪くない位置だ。 206 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:12:00.97 ID:Qgdk9uOTO ホームルームが終わると、クラスメート達がぼくを取り囲んでの質問タイムが始まる。 恒例行事、というやつだろうか。 ひと通り質問に答え、ほっと一息つき、授業の準備に取り掛かる。 …………… そして現在、屋上にて。 喇叭を吹くぼくのもとに、小さな光が近寄って来る。 ???「な~ぎ!ガッコにはもう慣れた?」 凪「学校には、ね。で?何か用?アカネ。」 アカネ「ぶー!相変わらず無愛想なんだから!」 今アカネと呼んだ彼女は、ぼくのパートナーとして師匠から頂いた、ハイピクシーという悪魔だ。 アカネ「てか、人見知りも相変わらずなのね。」 224 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/05(水) 23:48:24.70 ID:Qgdk9uOTO 凪「…用件は?」 アカネ「オヤゴコロってやつが分かんないのかな~この子には…。」 凪「貴女を親に持った覚えは無いけど?」 アカネ「そ~んな事分かって…!誰か来た!じゃね!」 そう言うとアカネは彼方へと飛び去った。 その僅か後、屋上の扉が開く。 律「お、やっぱここにいたか。」 凪「田井中律さん…だっけ?何か用?」 律「ラッパの音したから、ここじゃねーかと思ったんだ。」 凪「…用件は?」 律「なあ、凪は軽音楽とかきょ 259 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 02:15:00.87 ID:WD4LdIzuO おっとミス 律「なあ、凪は軽音楽とか興味ないか?」 凪「無い。」 律「(バッサリだ~!)でも、なんかしら部活には入りたいだろ?」 部活…か。 525 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:20:48.64 ID:WD4LdIzuO 学生の本分とも言えようそれも、残念ながらぼくには体験する暇もない。 凪「実は住み込みでバイトをしていてね。学校が終わったら直ぐ帰らなきゃならないんだ。」 詳しい内容は敢えて話さず、端的に事情を説明した。 まあ、どの道そう深く追及しては…。 律「なになに?どんなバイト?住み込みって事は…まさかの新聞奨学生!?」 しまった。 まさか、食い付いて来るタイプだとは思ってもみなかった。 人を見た目で判断するのは、ぼくの悪い癖だ。 凪「否、そうじゃないよ。実家が遠くてね。この学校の近くで働き口があったんで、事情を説明して、住み込みで働かせて貰うことになったんだ。」 536 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:35:53.82 ID:WD4LdIzuO 律「ん~、残念。うちの部に入ってもらおうと思ったんだけどなあ。そういう事ならしゃーねーか。」 律は踵を返すと、そのまま出入り口まで歩いていった。 途中で此方を振り返り、一言。 律「気が向いたら覗きに来てくれよ。音楽室でやってるから。一曲演奏してやるよ。」 そう言って、再び出入り口に向かう。 凪「うん。いつかお邪魔するよ。」 律は軽く手を挙げて応える。 律が見えなくなった直後、再びアカネが姿を現す。 アカネ「な~んだ、もう友達いるんじゃない。心配してソンした。」 凪「あの子は、紬さんと仲が良いみたいなんだ。友達の友達も友達…だろ?」 546 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 21:44:46.44 ID:WD4LdIzuO 放課後、音楽室 律「やっぱダメだったわ。住み込みのバイトしてるんだと。」 澪「へー、あの子仕事熱心なんだな。」 唯「まさか、新聞奨学生!?」 律「あたしと同じ事言ってるし。」 唯「で、新聞奨学生って何?」 律「知らねーで言ったのかよ。」 紬「そうそう、言い忘れてたけど、実は凪ちゃん、探偵さんの助手をやってるのよ。」 唯「おお!カッコイイ!」 澪「探偵?あの、ペット探しとか浮気調査とかする?」 紬「そうそうのもやってるみたいだけど、所長さんいわく、本来は『変わったの専門』なんだって。」 律「変わったのって?」 578 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:10:19.05 ID:WD4LdIzuO 紬「幽霊騒ぎとかのいかがわしい系の調査ね。実は私も、それが縁で凪ちゃんと知り合ったの。」 梓「たまたまそうそう場所に居合わせた、とかですか?」 紬「う~ん、ちょっと違うかしら。あまり詳しくは話せないけど。」 梓「なるほど、守秘義務ってやつですね。」 紬「そうなるわね。」 同時刻、大瀧探偵事務所 凪「ただ今戻りました。」 ???「お~う、お帰り~。学校はどうだったよ?」 何処からか言葉が返ってくる。 この声の主こそ、我が探偵事務所の所長にして、自称敏腕探偵の大瀧氏である。 594 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/06(木) 22:23:29.50 ID:WD4LdIzuO 大瀧「自称は余計だよ~?」 凪「ナレーションに突っ込まないで下さい。そう言えば、久々に紬さんに会いましたよ。桜が丘に通っているとは知りませんでした。」 大瀧「ああ、あの琴吹のお嬢さんね。調査不足だよ~。」 ???「ドキドキ、多いがいい、だから、わざと、調べなかった、そうか?」 この片言で話す人物は、ぼくの先輩であるジョー・マツモト氏である。 凪「御明察です、ジョー。」 大瀧「ふ~ん。ま、どっちでも良いけどね~。で?他に友達は出来たの~?」 凪「紬さんの友達の方々と仲良く成りましたよ。」 大瀧「ほ~。そんなら、人見知りは克服出来そうだね。」 623 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 02:13:18.62 ID:8TOudOSYO 資料室から所長が出てくる。 資料室の整理をするなんて、随分と所長らしからぬ行動だ。 大瀧「普段怠けてるみたいな言い方しないの。」 凪「だからナレーションに…。」 大瀧「それはそうと…ハヅキ。」 ぼくは姿勢を正す。 そう…ハヅキ。 ぼくのもうひとつの名-葛葉ハヅキ-その名で所長が呼ぶ時は、依頼調査の報告を求める時だ。 この時ばかりは、所長に威厳を感じ、背筋をピンと張ってしまう。 何だかんだ言っても、やはり所長を尊敬しているぼくなのである。 大瀧「学校の幽霊騒ぎの件…何か分かったことは?」 902 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:37:34.51 ID:8TOudOSYO 凪「聞き込みを行った所、幽霊を見たと言っているのは男性教諭が多いようです。出会うのは午後8時頃で、見た目は丁度ぼく等生徒と同い年位の少女だそうです。」 大瀧「自殺した生徒の霊って可能性は?」 凪「校長先生には、そういった事は包み隠さずに話して戴きました。無論、その様な事実はない、との事です。」 大瀧「だとすると、悪魔である可能性もあるって事か。遭遇現場は見てみたのかい?」 凪「はい。しかし、その時点では怪しい気配は感じられませんでした。やはり、遭遇時刻まで待ってみる必要が有りそうです。」 913 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 21:57:56.67 ID:8TOudOSYO 大瀧「…そうか。まあ、そうじゃないかとは思ったけどな。…よし、ハヅキ。この件、明日から全面的にお前に任せる!報告は調査完了後に書類にして提出するように。しっかり頼むぞ!」 凪「有難う御座います。精一杯調査に当たらせて頂きます。」 ぼくは一礼して、自分の部屋に戻ろうとした。 すると、所長がぼくを呼び止めて言った。 大瀧「時間になるまで暇になっちゃうだろ?部活にでも入って、青春を謳歌するといいよ。」 凪「しかし、依頼が…。」 ジョー「怠け者扱い、イヤ。だから、他の依頼は、自分がやる。所長、そう言いたい。」 大瀧「…言うんじゃないの。ま、そういう事だからさ。」 935 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 22:26:40.62 ID:8TOudOSYO さっきの一言が効いたのか、単にぼくに気を使ってくれたのか。 どちらにせよ、部活が出来るのは正直嬉しい。 ぼくにとっては憧れだからな。 次の日 放課後、音楽室前 ぼくは迷っていた。 律は昨日は気にしない素振りをしていた様だが、「興味が無い」と言い切ってしまったし、入部を渋られたりしないだろうか? 梓「軽音部にご用ですか?」 凪「あ、ああ。ええと…。」 梓「はじめまして、中野梓です。私も軽音部員なんですよ。細野先輩…ですよね。よろしくです。」 凪「ああ。よろしく。」 律「お~、やっと来たか凪~。」 音楽室から律の声が響く。 966 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/07(金) 23:11:46.01 ID:8TOudOSYO 梓さんに促され、音楽室に入る。 律「待ちくたびれて練習やめるとこだったぜ!」 澪「そもそもやってなかっただろ?」 唯「ティータイムがうちの売りだもんね~。」 律「そんな事より!ムギから聞いたぜ~!凪って探偵なんだってな!」 凪「助手だけどね。」 ふと紬さんを見ると、申し訳無さそうに手を合わせていた。 まあ、隠す様な事でもないし、どの道いつかは話そうと思っていたから、むしろ手間が省けたというものだ。 彼女に怒っていない事を伝える為、笑顔で応える。 澪「幽霊騒ぎとかを調査するんだよな…怖くないのか?」 凪「幽霊は小さい頃から見えていたから、怖いって感覚はないかな。」 113 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 01:29:13.46 ID:SKTnXKvqO 唯「ムギちゃんとはどこで知り合ったの?」 凪「それは…。」 梓「唯先輩。それは凪先輩でも話せませんよ。守秘義務があるんですから。」 唯「ぶ~!あずにゃんのケチー!」 梓「なんでそうなるんですか!?」 唯「だって知りたいんだもん!」 ぼくは紬さんに目配せをして、話しても問題無いか確認を取る。 紬さんはその意味を理解したのだろう、笑顔で応えた。 凪「実はね。ひと月前、紬さんの家からの依頼があったんだ。紬さんが夜な夜な奇怪な行動を取るようになった為、原因を調べて欲しい、とね。」 201 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 02:55:09.18 ID:SKTnXKvqO 澪「えっ?そうなの?全然気づかなかった。」 紬「私自身もその行動の事覚えてないの。でも、夜中に何してたのかを斉藤に尋ねられて、自分の奇行に気づいたのよ。」 律「それで怖くなって、凪んとこの探偵事務所に依頼したんだな。」 紬「そうなのよ。」 490 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:14:30.49 ID:SKTnXKvqO 唯「それで、原因って結局何だったの?」 凪「それについては…。」 友達の一大事だったのだ、やはり知っておきたいというのは有るんだろう。 紬さんに目配せで同意を求め、頷くのを確認して言葉を続ける。 凪「そうだな、明日報告書の写しを持ってくるよ。口で説明するよりは分かり易いだろうからね。」 唯「ほ、報告書…。」 梓「助手とは言っても、きっちり仕事をこなしてるんですね。」 凪「まあね。そう言えば、律。」 律「ん?」 凪「来たら一曲演奏してくれるんだったよな?」 律「お~そうだった。すっかり忘れてたぜ。」 澪「オイ!」 503 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:41:07.78 ID:SKTnXKvqO …………… 驚いた。 ついさっきまで怠けていたとは思えない、素晴らしい演奏だ。 思わず立ち上がり、惜しみない拍手を送る。 律「どーだ!怠けてたのがウソみてーだろ!」 凪「君は超能力者か。」 律「見りゃわかるよ。だってもうあたし達、友達だからな。」 澪「怠けてるって自覚はあったのかよ。」 紬「澪ちゃん、ツッコんだら負けよ。」 唯「そう言えば、ずっと気になってたんだけど、それって何のケースなの?」 唯はぼくが持つケースに興味津々な様子だ。 凪「これはトランペットのケースだよ。ほら。」 ぼくはトランペットを取り出すと、顔の前に構えた。 510 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 19:56:24.26 ID:SKTnXKvqO 唯「ぐはあ!」 !? 何故か銃で撃たれた様な素振りをして倒れ込む唯。 律「ゆ、唯!」 血相を変えて唯に駆け寄る律。 唯「りっちゃん…私…もう…ダメかも…。」 律「バカ!弱気になるんじゃねー!今救急車を呼ぶから!」 え…ええっと。 唯「もう…いいから…最期に…クッキー…食べたいな…。」 律「最期なんて言うなよ!そんな悲しい事言うなよ!」 これは…一体…。 律「お、おい!唯!しっかりしろ!唯ー!」 何事…? 梓「気にしないで下さい。いつもの事ですから。」 澪「こらこら、その辺にしとけよ。凪が困ってるだろ?」 519 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 20:28:30.36 ID:SKTnXKvqO …何故演劇部に入らなかったのか、という疑問は、そっと胸にしまっておくとしよう。 紬「ところで、どうしてここに来たの?」 凪「ああ、実は、所長からしばらくは遅くなっても構わないと言われてね。せっかくだから、部活に入ってみようと思ったんだ。その…軽音部に。」 律「あれ~?興味無いんじゃなかったっけ~?」ニヤニヤ 凪「意地悪だな…あんな演奏見せられたら、興味が湧かない訳無いだろう?」 どうやら、大して根に持っていないようで安心した。 律「んじゃあ、今後ともよろしくな、凪。」 紬「そう言えば、凪ちゃんのパートはどうしようかしら。」 唯律澪梓「あ。」 525 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 21:11:29.85 ID:SKTnXKvqO 律「盲点だったぜ。必要なパートはだいたい揃ってるからな…。」 唯「あ、そうだ!マネージャーとして、とかどうかな?」 梓「運動部じゃないんですから…。」 律「ここは凪にベースやってもらって、澪にはメインボーカル…。」 澪「絶対ヤダ!!」 律「ですよね~…。」 やはりか。 まあ、大方予想はしていたが。 ふむ。だとしたら…。 凪「ぼくはサブメンバーでもいいよ。一応、使う楽器をひと通り練習しておくから。」 律「わりいな、こっちから誘っといて。」 紬「じゃあ私、トランペットが入れられそうな曲を考えてみるわ~。」 凪「有難う、紬さん。」 547 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:13:07.01 ID:B8YSvq8oO 皆も練習するだろうし、楽器を借りて練習する訳にもいかない。 という訳で、今日は取り敢えず見学だ。 …と思ったが、結局は皆とのティータイムに費やしてしまった。 午後5時半過ぎ 律「ん~、そろそろ帰るか!」 澪「いつの間にか暗くなってきてるな。」 唯「今日の晩ご飯何かな~?」ワクワク 各々帰り支度を始めるメンバー達。 律「凪、どうした?帰んないのか?」 凪「ちょっと野暮用があってね。また明日ね。」 律「? おう、じゃーな。」 午後7時半、宿直室 教師「ごめんな、わざわざ残ってもらって。」 凪「気にしないで下さい。仕事ですから。」 553 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:30:03.58 ID:B8YSvq8oO 教師「例の幽霊が出る場所は分かるよな?」 凪「はい。放課後そこに行きましたが、昨日の授業の時と同様、やはりそれらしい気配は有りませんでした。」 教師「他の先生が言ってたんだが、あそこにしか出ないみたいでさ。…ヤバそうだったら、すぐ引き返して来いよ。」 凪「大丈夫です。鍛えてますから。」 そう言ってぼくは、宿直室を出る。 ふと、小さな光が近寄って来る。 アカネ「調査は順調?」 凪「まあね。これから出没ポイントに向かう所だよ。」 アカネ「悪魔の仕業って可能性もあるんだから、準備は怠らないようにね。健闘を祈るわ、ハヅキ。」 そう言ってアカネは去っていった。 そしてぼくは、幽霊の出没ポイント、音楽室に辿り着く。 566 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/08(土) 23:53:43.84 ID:B8YSvq8oO 意を決し、扉に手を掛ける。 ポンッ 凪「ひっ!」ビクッ 突然肩を叩かれ、思わず声を上げて驚いてしまった。 律「わ、わりい。驚かしちまったか。」 凪「律!どうして…。」 律「いやあ、探偵の仕事ってやつがどーしても気になってさ。迷惑はかけねーから、しばらく付き合わさせてくれよ。」 凪「全く…仕様が無いな。今回だけだぞ?」 気を取り直して、音楽室の扉を開く。 午後8時 さて、いよいよ幽霊が出る時間だ。 ぼくは周囲に警戒し、何時現れてもいいよう、刀に手を掛ける。 ポーン 突如、キーボードが鳴る。 591 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 01:10:06.53 ID:dfLKJWMWO キーボードの方を見ると、桜高の制服に身を包んだ少女が佇んでいる。 少女「今日は女の人か~。残念。」 凪「何が残念なんだい?」 少女「精気を吸えないのが。」 律「精気…?」 少女が宙に浮く。 見ると、その髪が鳥の翼となって羽ばたいていた。 凪「モー・ショボーか。」 ぼくは刀を抜く。 赤光葛葉。 葛葉の者ならば必ず携行している、基本装備の1つ。 凪「たあっ!」 ぼくはモー・ショボーに斬りかかる。 彼女はヒラリとそれを避けて、小さな風の渦を生み、それをぼくではなく、律に向けて撃ち出してきた。 律「うわあ!」 ぼくはすかさず懐から管を取り出し、それに封印された『仲魔』を喚び出す。 凪「ポルターガイスト!」 599 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 01:34:08.09 ID:dfLKJWMWO 緑色の光の筋が律の前に落ち、其処に愛くるしい姿の悪魔、ポルターガイストが現れる。 ポルターガイストはモー・ショボーが放った風の渦を受け止めて掻き消した。 律「悪魔を…喚んだ…!」 ぼくは更にもう1体の悪魔を喚び出す。 凪「ウコバク!」 ぼくのすぐ傍に、スプーンの上に炎を湛えた小人、ウコバクが現れる。 凪「さあ、行くよ!」 ぼくが刀を構えると、ウコバクはその刃に炎の力を宿す。 そして、ぼくは再びモー・ショボーに斬りかかる。 今度はポルターガイスト、ウコバクとの連携攻撃でモー・ショボーを追い詰めていく。 879 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 18:16:55.55 ID:dfLKJWMWO 今日はいつもより早く投下再開 深い理由はない ぼくはトドメの一撃を加えんと刀を振りかぶる。 律「ちょーっと待ったー!」 突然、ぼくとモー・ショボーの間に律が割って入る。 凪「律…!どいて!」 律「もうそのくらいにしといてやれよ!この子だって悪気があってやってたんじゃねーんだろーしさ!」 律はモー・ショボーの方に向き直る。 律「君もさ、こんだけやられたらもう懲りたよな?これからはもう誰も襲わねーって約束できるな?」 モー・ショボー「うん…ごめんなさい。」 律「よしよし。」ナデナデ ………。 ぼくは仲魔達を管に戻し、刀を納めた。 直ぐに斬りかかった自分が少し恥ずかしくなった。 全く…律には適わないな。話し合いでも解決出来ただろうに、ぼくって奴は…。 896 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 18:45:17.45 ID:dfLKJWMWO 律「悪いな。仕事とっちゃってさ。」 凪「否、要は解決すればいいんだ。…律には礼を言わなくちゃな。」 律「いいよ、お礼言われるような事してないし。」 凪「ぼくは頭に血が上ってたみたいだ。律のお陰で冷静になれたよ。有難う。」 律「だからいいって~!照れるだろ~!」 そんなこんなで、桜高の幽霊騒ぎは終わりを告げた。 2日後、大瀧探偵事務所 凪「桜高の件の報告書です。」 大瀧「おう、ご苦労さん。」 朝起きて直ぐ、昨日作った報告書を所長に手渡す。 凪「では、行ってきます。」 大瀧「行ってらっしゃ~い。」 ジョー「気を、つけて。」 身支度を整え、ぼくは学校へと向かう。 911 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 19:08:14.84 ID:dfLKJWMWO 昼休み 律「なあ凪、ちょっと音楽室行かないか?」 凪「良いけど…?」 紬(2人きりで何するつもりなのかしら?)ワクワク 音楽室 律「うし、誰も来てないな。」 凪「ぼくだけ連れて来たのには、何か理由があるんだよね?」 律「ああ…実はさ…。出ておいで!」 律がそう言うと、小さな風の渦とともに、モー・ショボーが現れた。 モー・ショボー「わ~い!りつおねーちゃんだー!…あ!こないだのこわいおねーちゃん…。」 凪「モー・ショボー!どうして…?」 律「この子、どうもここから出られないみたいなんだ。凪に相談すれば、いい解決策が見つかると思ってさ。」 927 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 19:33:06.20 ID:dfLKJWMWO ぼくはモー・ショボーをよく見た。 怯えて律の後ろに隠れるモー・ショボー。 凪「御免よ、もうあんな事はしないから。…その子、随分律に懐いてるね。」 律「あの一件以来、どうも気に入られちゃったみたいでさ。」 凪「…そうだな。律、彼女と契約してみたらどうだろう?」 律「契約?でもやり方知らねーぞ?」 凪「方法はぼくが教えるよ。尤も、その必要はないかも知れないけど。」 律「あとは封印するだけ、とか?」 凪「ご明察。…律ってさ、ひょっとしてぼく以外のデビルサマナーに会った事ある?」 律「ん?なんだそれ?」 39 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 20:43:58.75 ID:dfLKJWMWO 凪「…悪魔を知ってるみたいだから、ひょっとしたらと思ったけど…。」 律「あ、ああ、まあ、色々あってな…。」 慌てて言葉を濁す律。 まあ、深い事情は敢えて聞くまい。 凪「で、だ。封印する為には、それに応じた道具が要る。律が扱いに長けた物でも構わないけど。何かある?」 律「扱いに長けた…ん~、携帯ぐらいかなあ。」 携帯…か。 まあ、今時使えない子の方が少ないか。 …ぼくはどうも最近の電子機器が苦手なのだが。 報告書の作成も、偶々事務所にあったタイプライターを使わせてもらっている。 律(むしろそれ使える方がすげーよ、ってツッコんだら負けだよな。) 121 :【くずのは!】 ◆PzD3ftv2xo :2009/08/09(日) 21:54:06.35 ID:dfLKJWMWO …………… 封印の儀が終わり、携帯にモー・ショボーが緑色の光になって吸い込まれていく。 モー・ショボー「今後ともヨロシクね、りつおねーちゃん!」 律「ありがとな、凪。んじゃ、そろそろ教室に戻るか。」 気付けば既に昼休み終了2分前。 ぼく達は足早に音楽室を後にした。 第壱話 その名は、ハヅキ 完

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