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「有為天変 あとがき」(2009/08/26 (水) 17:05:55) の最新版変更点
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325 :あとがき :2009/08/17(月) 22:43:26.06 ID:WHe+GH1Q0
恋はいつだって唐突だ。
ありきたりなセリフだと思う。使い古された言い回しだと感じる。
それでも、当時の俺にはぴったりの文言だ。
昔の話。あるクラスメイトのこと。
あいつは、いつでも人の先を行っていた。
まぁその、なんだ。「一を知って十を知る」という諺があるだろう?
あいつはまさにそれを体現していた。
基本中の基本を知るだけで、それをありとあらゆることに完璧に応用できちまう。
まさしく、「神童」。あいつはいつしか周りの人間からそう呼ばれ、畏怖
されるようになった。
しかし、当時のあいつはそう呼ばれることを嫌っていた。
なぜなら――
「私は、できることしかできないから」
これが、あいつの信条だった。
この台詞を聞いた時、俺はガンと頭を殴られたような気分になったね。
越えられない壁、ってのをひしひしと感じたもんだ。
前置きが長くなっちまったな。まあ、こんな完璧超人がいたわけだ。
333 :あとがき :2009/08/17(月) 22:52:02.15 ID:WHe+GH1Q0
さあさ、ここまで来て俺がどんな人間か分かっただろ?
なんとも狂った言い回し。空回りしている表現技法。
そう。彼女の真逆の人間さ。
あいつが「完成品」だとしたら、俺は「欠陥品」。
そんな俺とあいつに、だから接点なんて存在しなかったわけだ。
そう、あの時までは、な。
あれは彼女の犯した痛恨のミス。
ひた隠しにしていた彼女の本性。
偶然がいくつも重なって、彼女と俺はとある秘密を共有しあう仲に
なっちまったのさ。
338 :あとがき :2009/08/17(月) 23:02:09.16 ID:WHe+GH1Q0
いやー、今思い返しても貴重な場面だったね。
「あんなところ」を目撃されるとは予想もしてなかっただろうに。
俺の存在に気付いた時の、あいつの凍りついた姿。
そんな彼女の手に抱えられているのは――
おっと、語りすぎるのは野暮ってもんだな。
さて、ようやっと本題。こんなイカれた文体で見てやってもいいってんなら、
しばしお付き合いを。
まあ、タイトルは――
――よしっ!
「有為天変」
はじまりはじまり……。
348 :あとがき :2009/08/17(月) 23:24:29.37 ID:WHe+GH1Q0
ガラス窓から覗ける外の景色。
校庭では、サッカー部がわっせわっせと走っているし、
中庭では、なんか男と女が戯れてる。
「うらやまし~」
乾いた笑いを漏らしながら、俺は昇降口へと向かった。
外に出て、俺は考える。
このまま帰っていいのか、ということだ。
(なんか、忘れてるような……)
んんっと首を捻ること数秒。
「おおっ、そうだ!」
思い出した。
「今日は校舎の鍵を閉めなきゃいけねえんだった」
実際に言ってみて、間違いないと確信する。
この前帰りに、ゲーセンへ行ったのがばれたのである。
んでその結果が、この罰当番ってわけ。
「んだよ、あの頑固オヤジ。太鼓の達人知らねえのか?」
ブツブツと文句を言いながら、俺は校舎へととんぼ返り。
言うことを聞かないと、またネチネチ言われちまうのが手に取るように分かるからだ。
ほんとだったら、絶対にしたくない。当たり前だ。
もし、この時。後に起こる出来事を知っていたら、嬉々として向かって行っただろうがな。