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685 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/08/31(月) 18:35:07.58 ID:x4VPQ9rn0 【踏切】 その日私はいつものように律と下校していた。 律のおちゃらけた話にいつものように突っ込む。 そんなことを幾度繰り返しただろうか。 気付けば私達は踏切の前に立っていた。 けたたましい音を立てながら少しづつ遮断機が降りてくる。 不気味に光る赤いランプ。 危険を表すには十分すぎる。 それは交互に点滅して私達の顔を照らした。 そしてあれは私達の目の前で起きた。 もう1週間も前の出来事が、鮮明に頭の中に蘇ってくる。 687 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/08/31(月) 18:40:12.61 ID:x4VPQ9rn0 向こうから、みすぼらしい中年の男性が遮断機を乗り越えてくるのが見えた。 それと同時に、鼓膜が破れそうなぐらい大きな音で、電車が警笛を鳴らした。 「澪っ!見るなっ!」 電車が通過する瞬間、律はとっさに私の目を塞いだ。 だから、男性がどうなったのかは見ていない。 次に私が見た光景は、電車が踏切上の中途半端な位置で止まっている様子だった。 男性は、見当たらなかった。 689 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/08/31(月) 18:42:58.27 ID:x4VPQ9rn0 「…世の中にはそういうこともあるんですねぇ」 ムギが珍しそうに私の話を聞いていた。 そう、私は唯にせがまれて1週間も前のことを思い出していたのだ。 なぜか手汗をかいていて、自分でも心地が悪かった。 「今の日本は1年間に3万人以上の人が自殺で亡くなる、異常な国なのよ」 「さ、さわちゃん先生っ」 唯がすっとんきょうな声を上げた。 なんだ。さわ子先生、いたのか。 692 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/08/31(月) 18:43:42.86 ID:x4VPQ9rn0 「それにしても、嫌だよな。通学路の途中で自殺なんて」 「じゃぁやっぱり…」 私は胸の内で気にかかっていたことを思わず律に聞いてしまった。 「まぁ、即死…だったらしいな」 「うっ…」 思わず吐き気が込み上げる。 私は口に手を当てた。 「だ、大丈夫ですか?澪先輩」 梓の心配は嬉しかったが、今はこの悪寒が消えるのを待つしかなかった。 693 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/08/31(月) 18:44:31.13 ID:x4VPQ9rn0 しばらく全員は沈黙していた。 私も程なく、気分が良くなってきた。 「ご、ごめんみんな。心配かけちゃって」 「大丈夫だよ澪。それよりごめんな。言わなきゃよかったか」 「いや、私から聞いたんだ。気にしなくていいよ、律」 さわ子が心配そうに私の顔を覗き込む。 「保健室、連れてこっか?」 「いや、大丈夫です。元気ですから」 私はさわ子に精一杯の笑顔を見せた。 私はなんだか自分にイライラした。 694 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/08/31(月) 18:45:29.07 ID:x4VPQ9rn0 もう下校時間も迫っていたので、私達は暗い雰囲気の音楽室を後にした。 「ねぇねぇ、今日は5人で久しぶりに楽器屋さんに行こうよ!」 「そうだなっ!ほら澪、元気出して」 律に背中をたたかれ、思わず私はムキになってしまった。 「痛い!元気だって言ってるだろ!だから叩くな!」 律があっけに取られ、口をぽかんと開けて私の顔を見つめる。 ほどなく、その顔は下を向いてしまった。 「ごめん…」 私はそのまま、律に声を掛けなかった。 他の3人も、黙ってしまった。 695 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/08/31(月) 18:46:09.58 ID:x4VPQ9rn0 駅前の楽器屋は、踏切を越えた少し先にある。 私達は無言のまま、踏切の前に立っていた。 けたたましい音を立てながら少しづつ遮断機が降りてくる。 不気味に光る赤いランプ。 危険を表すには十分すぎる。 それは交互に点滅して私達の顔を照らした。 突然、電車の警笛が聞こえた。 「あああああああああああ!!!!!!」 律が叫び声を上げながら、踏切の中へと走り出した。 両耳に手を当て、ただただ叫んでいた。 電車が来た。 そして、律は消えた。 Fin

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