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813 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 19:16:13.95 ID:RIW+eYUUO 『桜高少女』これまでのあらすじ ひょんなことから唯たち軽音部は自分たちにしか倒せない改造人間と戦うことになる。 とうとう敵の親玉が現れ律、澪、紬はなす術なく敗れ去ってしまった。改造人間は唯を連れて自分達の本拠地へ来いと言い残し帰っていった。 囚われた梓とさわ子を救い出すため、四人は決死の覚悟で本拠地へやってきた。 815 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 19:23:02.67 ID:RIW+eYUUO 梓「・・・あなた達の目的はなんですか!!」 アリ「けけけ…」 梓「なんとか喋りなさいよ!!」 ?「無駄ですよ、彼等は言語能力を有していない」 梓「じゃあどうしてあなたは喋れるのよ!!」 ?「それは私だけは特別な存在だからです…」 さわ子「何その某キャンディーのCMみたいな台詞は…」 ?「ふ…」 梓「…」 『桜高少女』第八話「救出!」 817 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 19:34:23.54 ID:RIW+eYUUO 「ここよ…」 町外れの古びた商店街に紬がやってきた。その後ろには唯、律、澪の3人も一緒だ。 「けったいな場所だねぇ」 律が相変わらず能天気に場所の感想を述べたことが気に触れたのか、澪は若干語気を荒げている。 「おい律、もしかしたら死ぬかもしれないんだぞ…」 「澪ちゃん!絶対みんなで帰るんだよ!だからそんなこと言わないで!」 唯の悲しそうな顔に澪は慌てて発言を訂正する。 「いやあのそれぐらいの気持ちでいくぞって意味だ今のは!!」 「みんな!あの巨漢の男よ!!」 おおよそ場に合わぬ和やかなムードであったが紬の一言により相応の空気となる。 「ラッキー!アイツどっかに出て行ったぞ!!」 律が指をパチンと鳴らす。 「今のうちに入りましょう!」 紬の号令に従い彼女たちは敵の総本山へ足を運んでいった…。 鬱蒼とした中、はるか昔に寿命の尽きた白熱灯がぶら下がる地下には改造人間らしき物質は何もなかった。あるのは新たに取り付けられた蛍光灯がチカチカちらついているだけだ。 「先ほどの総攻撃により、すべて改造人間は使い果たしてしまったのかしら…」 以前との違いに戸惑う紬であるが律はあまり関心がないのか 「まあいいじゃん、それより今はとっとと梓たちを連れ戻そうぜ。」 こう言葉をかけるだけであった。 しばらく歩いていると鉄で出来たいかにも重たそうなドアが彼女たちの目の前に現れた。そのドアに手を掛け 「部屋はここだけよ。」 紬は一言発した。 「ここにいるよな…」 澪はそう言いながら紬と二人がかりでドアを押し開ける。 819 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 19:46:21.78 ID:RIW+eYUUO 「先輩!」 そこに、梓がいた。 「あずにゃーーん!!」 われ先にと唯が拘束されている梓に抱きつき頬を摺り寄せる。 「唯先輩!そーゆーのは帰ってからしてください!」 「うう、あずにゃんが冷たい…」 唯がしょんぼりしている内に梓の身を自由にしてやった律が梓に問いかける。 「さわちゃんはどうした?」 そう、ただ一つの部屋であるこの場所に顧問の姿が見えないのだ。 「わかりません…アリに連れられどこかへ行ってしまいました…そしてその後ここのリーダーも…」 「巨漢の男だろ?」 梓の見た人物と律たちの対峙した人物はどうやら同一のようだ。 「とりあえずここにはいないみたいね…そしたら帰りましょう!!」 紬の建設的な提案に駆け足で出口へ向かうという全会一致を行動で示し、5人は今来た道を引き返す。 そして、出口がすぐそこに見える元飲食店の一階…それなりに大きな飲食店であったのか、一般的な個人経営のそれとは比べ物にならないほど大きな空間である。 「さっさとズラかろうぜ!さわちゃんのことはとりあえず後回しだ!」 律が再度全員に声をかけ、出口へ駆け出した…瞬間 「おや、せっかくの飲食店ですから…何か召し上がられてはいかがですか?」 いるはずのない存在が、そこにいた。 820 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 20:02:03.42 ID:RIW+eYUUO 「うそ…」 澪の口からやっとの思いで言葉が漏れる。 2Mを超え、その巨体は運動能力から鑑みるにヘビなどと比べるのが失礼であるほど戦闘に特化し、存在そのものが対峙者を死の観念へと突き落とす…巨漢の男がいた。 「…さっき出て行ったのは…」 冷静に紬が状況を判断するために、それに声をかける。常人であれば声をかけることですら、それに命を奪われる行為であると錯覚を覚えるほどの存在である。 それに声をかけられたのは、偏に彼女の彼女たる所以であった。 「ええ、あなた方をもてなすために食材を仕入れていたのですが…予想よりも早く到着されたようでしたので…戻ってまいりました。」 おおよそ見た目と口調が釣り合わぬ巨漢の男は一礼を彼女たちに向けた。いや、彼が一礼をかけ敬意を払った相手は正確には一人だけだ。 「巨漢さん…!」 その相手、平沢唯は相手の圧倒的なまでの存在感に恐怖していた。 一度たりとも対峙していなかった彼女がそうであるのだから、既に拳を交えた他のメンバーの気持ちは察して知るべきである。 「平沢様と中野様、よろしければ地下へお下がりください…。苦楽を共にした存在が無惨な姿になる過程は、人でない私でも心に堪えられないものが在ると存じます。」 その巨漢の男はそう二人に言い放ち、残りの人間の処刑を宣告した。 現在彼女たちと男の距離は4メートルほどであるが、背を向けた瞬間彼女たちのその華奢な背中は骨をむき出しにされ砕かれるであろう。 それのスピードにかなう者は誰一人としていないのだから…。 「おい、一つ聞いていいか?」 律が平素と変わらぬ口ぶりで巨漢の男に言い放った。 「私たちに用はないらしいけど梓と唯にはお熱みたいだな。二人には何か特別な力でもあるのか?」 声のトーンも日ごろの彼女と変わらぬ穏やかなものである。冥途の土産にとでも思ったのか、意外にも巨漢の男は自分達の目的を語りだした。 「ええ、正確にはその体が必要なのです。我々ナート人は情報なのです。肉体を持たず意識だけで存在するね…。 故に個人などの存在はなく、ただ延々に意識が宇宙を漂うのみ…人間の言葉は素晴らしい意思表現方法だとは思いますが…。 言葉で我々の歴史や思想をお伝えすることは出来そうにありません。」 822 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 20:17:40.74 ID:RIW+eYUUO 男は独白を続ける。 「ところが偶発的に私は肉体を持つことに成功した。偶然飛来した物質を意識のよりしろとして利用することができたのです。 これは奇跡以外のなにものでもありません。そして広い宇宙を探しているうち、私の肉体となった物質に近い存在を発見することができました。 しかし似た存在でしかなかったからか、意識のよりしろとしても不完全なものとなった…。 あなた方がアリやトカゲと呼ぶ改造人間の正体がそれです。」 その事実は極限状態であるこの場であっても衝撃的な内容だった。 「じゃあ…私たちが今まで倒してきたアリたちにも…意識があったのか!?」 澪は思った。もしアリたちが目の前の敵と同じように言語を操っていたら…果たして戦うことが出来たのであろうかと。 「ええ、ただ人との意識とは次元が違いますので…意思疎通は不可能ですがね。我々は未知の物質により肉体を手に入れることはできた。 しかし、私のように意識レベルに取り込めるよりしろは他にないのかさらに探したのです…。そして見つけたのがあなた方なのですよ…平沢様、中野様…。」 巨漢の視線は唯と梓に向けられていたが、独白に横槍を入れたのは律であった。 「なるほどねん。それでその二人が必要だったってわけか。他の人間をさらったり和で試したのは実験だったのか?」 「その通りです。あなた方との戦いにおいて、一定の意識レベル向上は図れましたが限界がありました。 他の人間では我々の容量や維持情報不足でその人間たちの自我まで統制および排除ができませんでした。」 律の横槍を待っていたとばかりに男は答えた。 「…つまりアンタと唯、梓をベースに人間たちをのっとって生活しようってわけか。」 そして律が最終確認を巨漢の男に行った。 「その通りです。より優れた存在が劣った存在を駆逐していく…これは地球だけでなく宇宙全体の真理です。」 そう言い終えるや、巨漢の男の手に槍が浮かび上がり実体化した。 823 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 20:29:05.92 ID:RIW+eYUUO 「へ、そうやって最終回直前にベラベラ自分達の内情を話すのは負け宣告と同じだぜ?」 そう言うと律は男の前に立ちふさがった。 「りっちゃん!?」 唯が律の背中に問いかける。 「先行きな。」 それに短く答える律。 「無茶よりっちゃん!さっき…さっき戦ってわかったじゃない!みんなでやらなきゃ!」 律の意図を察した紬が叫び声を上げる。 「みんなでやって駄目だったんだ…。それにここで唯たちを奪われたら今度こそおしまいだしな。」 あくまで普段と変わらぬその元気な声になんと声を返すべきか、3人が悩んでいると幼馴染が言葉を発した。 「律。…少しの間でいいから…足止めをしてくれ。」 一縷の望みをかけて…相手の動きについていけていた彼女の姿を…自分をかばった幼馴染の姿を、彼女は思いだした。 「任せなさい!すぐに追いつくぜ!!」 それにまたいつもの口調で声をかける律にとうとう我慢できなくなった人間がいた。 「駄目よりっちゃん!なら…なら私も戦うわ!!」 ムギは鞭を構え前に出ようとし、澪に静止させられた。 「澪ちゃん離して!!このままじゃりっちゃんが!!」 「ムギ先輩…」 ムギの叫びが反響し消失する。しかしここで切り札を持っているムギを戦わせるわけにはいかないことを唯や澪、それに紬自身もよくわかっていた。 「なあみんな、そんなにもめるなよ。」 いざ先に行けと言われてもそれを実行できずにいた軽音部の面々に何を思ったのか、律はさらに元気を増してこう言った。 「私が一人でバスっと倒してやるから!」 全員硬直である。しかし、ただ一人だけは声をかけることができた。 「律………頼んだぞ。もし…大変そうだったらさっさと帰って来いよ!!そんでお前の家で晩ご飯だからな!!行くぞみんな!!!」 その掛け声と共に澪は唯の手を引き走り出した。 「澪ちゃん…!」 ムギと梓も断腸の思いで未練を断ち切り駆け出した。 824 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 20:37:22.10 ID:RIW+eYUUO 男と対峙する律は辺りを見回し男に話しかけた。 「うちらが話してる間、みんな隙だらけだったのによく攻撃してこなかったな。」 「最期の会話ぐらいさせても罪にはなりませんからね。それに強い者には誰であれ敬意を払うと決めていますので。」 「よく言うぜ。ちゃっかり私も逃げようと思ったのにさ。」 「それは許せません。仲間を逃がし自分自身を犠牲にするその心意気は嫌いではないですよ。」 「それなら逃がしておくれよ…へへ、見逃してくれたら澪へのセクハラぐらい許しちゃうぞ!」 「私に人間の欲求は存在しないので…。その提案を平沢様と中野様をお迎えするという内容に変えてもらえるのであれば戦う必要もないはずですが…。」 「そんな提案するぐらいなら…とっくにさっきわたしてるっつーの!!!」 律は胸元に隠し持っていた拳銃を最短動作で発砲した。 バグシャ!! 炸裂音と砕け散る音が交じり合い室内は閃光に包まれた。弾に以前砕けた剣の全エネルギーを集中させていたため、射出に耐えられず拳銃は大破し無残な姿を晒した。 「余裕ぶっこいて話してるからだこ」 の大ボケ野郎…そう言うまでいかぬうち、律は喉元を貫通したであろう槍を避けていた。 「なるほど、先ほどよりも動けているということですか。」 この轟音がサウンドエフェクトでしかなかったかのように巨漢は傷一つなく彼女の喉目掛けて槍を放っていた。 「さすがにそううまくはいかないか…。」 826 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 20:42:38.07 ID:RIW+eYUUO 拳よりも射程距離が長く扱いも難しい槍であるがその2メートル近くある長い棒を室内でどこにもぶつけることなく振るう相手は間違いなく熟練者の腕であった。 「ちっ!槍使いなのかよアンタ!」 的確に急所を狙ってくる槍を両手の夫婦剣ではじき返す律も言葉を発する余裕はある。 「たまたま地球上の武器でこれが一番馴染んだだけですよ!」 轟音を立て槍が旋回する。律はそれをバックステップで交わし手近にあった鉄パイプを投げつける。しかしあっけなく左足で蹴飛ばされてしまった。 「ふふふ、そんな子供騙しでは勝負になりませんよ。」 巨漢は再び目にも止まらぬ速さで槍を突き出してくる。隙がない…律は槍を双剣ではじき返しながらそう思った。受け止めることはできるのであるが反撃に転じることが出来ない。 828 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 20:51:11.14 ID:RIW+eYUUO そもそも敵の懐までもぐりこまなければ彼女の夫婦剣は武器とならない。 一方槍の射程距離は短剣の3倍弱は軽く見積もれる。この勝負ははじめから結果の見えていた勝負でありそれを彼女自身もわかっていた。 「うらぁ!」 先ほどよりも速く、敵の槍を弾いたと同時に斬り付けにかかる律。 「今までの最高速ですね!」 だが敵は弾かれた体勢のまま体を反転しそれを軽々と避けた。 「足元がお留守ですよ。」 そして避けた反動でさらに半回転し槍を律の足元へ払うと鈍い音と共に律が倒れこんだ。 不幸中の幸いか柄の部分がぶつかったため足を失うことにはならなかった。しかし敵は倒れこんだ律に追い討ちをかける。 「つぁあ!!」 顔目掛けて飛んできた槍を体を捻って交わしそのまま飛び起き相手を蹴り飛ばした。 相手はよろめいただけでダメージは期待できない。しかし律は敵との距離を再びとることに成功した。 槍が放たれた場所は粉々に砕け、仮に直撃していれば律の美しい顔はこの世からなくなっていたことだろう。 829 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 21:00:28.58 ID:RIW+eYUUO 「へへ…おい宇宙人!顔は女の命だぜ!覚えとけよ!」 余裕など律にはないが軽口を相手に叩き自分を鼓舞する。 「そうですか。覚えておきましょう。」 短く答えると、再び腰をかがめ相手は律目掛け卓越された槍術を見舞った。 「はあはあ」 深夜、人のいない商店街を走り抜ける少女達がいた。 「きゃ!?」 どさっと鈍い音がし、梓は地面に倒れこんだ。 「梓!大丈夫か!!?」 振り返った澪は梓の異変に気付いた。 「梓…?」 肩で息をし、呼吸は荒い。先ほどまで駆け抜けてきたとは言え、その乱れは異常であった。 「はあ…はあ…さっき力を吸い取られていたみたいで…」 よろよろろする梓の表情に覇気は無い。 「梓ちゃん、これ以上走ったら命に関わっちゃうわよ!」 「わ…私が死んじゃったらかえってあいつらに利用されないからいいんじゃ」 「ダメだよあずにゃん!私たちはみんなで帰るって決めたんだもん!!!」 それぞれが、それぞれの思いを秘めている。 「さ!あずにゃん!ちょっと休んだら行こう!」 「はい…。」 梓を説得した唯は感じていた。 「……りっちゃん…」 律の、命の灯火が風前であることを…。 830 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 21:08:12.54 ID:RIW+eYUUO 豪快な音を立ててテーブルをなぎ倒し、華奢な体は吹き飛ばされた。 「くそ…まともに入ったとは言え槍の柄で払われただけでこれかよ…つあ!!」 間髪いれずに胸を正確に狙ってきた槍を双剣で受け止める。その体のどこにそんな力があるのか、巨漢の男に負けない力でその槍を押し返した。 「はあ…はあ…」 「肉体ではなく魂で動くことができるようになりましたか…そうでなければその細腕はとっくに千切れていますね。」 劣勢の律を弄ぶかのように悠々と律に声をかけた巨漢の男。そう、いかに受け止める力を律が持っていたとしても、それを受け、返す力はせいぜい10回ほどだ。 畳み掛けるように攻撃を加えればいずれ防げなくなった彼女の体を串刺しにすることなど彼にとっては容易い。 「あなた方は非常に危険だ。平沢様の力があなた方にも反映されている…。そろそろおしまいですね。」 腰を低くし律へトドメを刺すため巨漢の男は突っこんできた。 ザン!カンッ!!キン!! それを全て捌き反撃の機会をうかがう律であるが、それが止まないのにどう反撃をするべきなのか…。 反撃を試みた瞬間自分はもうこの世にはいないということが直感できる。 しかし、神はまだ律を見捨てていなかった。ほんの一瞬、わずかであるが男の槍が地面に擦れた。それがわずかな隙を生み出した。 「うらああああ!!!」 声と共に律は左の黒い剣で槍をはじき、右の白い剣で敵の顔を斬りつける。 831 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 21:13:09.40 ID:RIW+eYUUO 「どこを見ているのですか?」 しかし、バランスを崩されていた巨漢はその体勢のまま律を回し蹴りで吹き飛ばしていた! 「がはぁ!!」 腹部に強烈な一撃をもらった律は端から端へ吹き飛ばされ壁に打ち付けられた。口を切ったのか血が滴り落ちる。 「まだまだ…ですね。」 そして動けない律へ男は近寄り、 「召されなさい。」 彼女の頭を槍で射抜いた。 「人間の女は顔が命でしたね…あなたの意向に沿わず頭を吹き飛ばすのは主義に反しましたが、許したまえ…」 そう告げ頭の吹き飛んだ律の体へ語りかけた。 834 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 21:22:31.44 ID:RIW+eYUUO 「じゃあ男のお前ん頭なら吹き飛ばしてもいいんだな?」 「な」 ぜ生きている…そう発するよりもはやく、巨漢の頭は炎で包まれていた。 「シューティングフレア!!!」 弓に全エネルギーを注ぎ射抜いた的は火柱を立てている。 「とどめ!!グランドクロス!!!!」 そして双剣を十字に繰り出し巨漢の首を狩った。 「へ…お前が斬ったと思ったのは私のブレザーだぜ。身に着けているものを自分の姿に変えられるようになったんだよ…。」 そう語りかけても聞くものはもはやいない。 「確かにこいつの言うとおり、へんな力がどんどん増えてきてるみたいだなぁ…もともと敵のレーダーも備わっていたし…。 まあいいや、もう使うことない力だし…。さ!早く帰って報告だ!!へへ、どーせ私の特攻だと思っていたろーし今頃御通夜ムードだろーなー!うしし~」 律は先ほどと立場が逆の、クビのない巨漢に背を向け歩き出した。 835 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/06(日) 21:31:03.54 ID:RIW+eYUUO 瞬間、殺気を感じたが避けるよりも早く槍が心臓を貫いた。一瞬の油断が命に関わることとなる…彼女は数秒前と逆の立場に置かれた。 どさっ… 倒れこんだ中心から…彼女の命があふれ出した…。 「・・・どっどうして・・・・」 彼女の目の前には絶望が広がっていた。 「ここまでとは驚きましたよ田井中律…。その知恵と勇気に敬意を払います。」 ゆっくり近づく男は槍を構えた。 「マジ…かよ……はは…澪・・・飯、行けないや・・・」 異常者がこの光景を見れば湧き上がる劣情と共に嗜虐心を掻き立てられ、性的興奮を覚えたかもしれない。 しかし巨漢は人の概念では存在し得ない情報体であるため美少女の無惨な姿に感慨などない。 心臓を二度貫かれた少女から温もりが消える。 心音の停止を確認した巨漢の男は店を後にし目的へと歩き出した…。 田井中律―――死亡 『桜高少女』第八話「救出」 終わり

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