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854 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/06(日) 22:11:05.67 ID:ZaB02qfTO さて。 一度、状況を整理しようか。 そう言うぼくを見て、未だ落ち着きを取り戻せずにいる澪が話しかけてきた。 澪「本当に…凪…なのか?律はどうなったんだよ?」 だから、目の前にいるじゃんか。 …まあ、今の澪じゃ理解が追いつかんのも無理ないけど。 紬「でも、どうしてこんな事に…?」 唯「どうすれば元に戻るの?」 だから、それをこれから調べるんだろ? 梓「よく冷静でいられますよね。さすがというか、なんというか…。」 最初は驚いたさ。 驚かない筈が無い。 ぼくが。 あたしが。 入れ替わっていたのだから。 数日前 ぼく達は、練習を早めに切り上げ、楽器店へと向かった。 ぼくの新しいギターを買いに行く事になったのだ。 因みに、現在ぼくが使っているものは、ジョーから拝借しているものである。 864 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/06(日) 22:59:07.71 ID:ZaB02qfTO 凪「済まないね皆。わざわざ買い物に付き合ってもらっちゃって。」 律「気にすんなよ。あたしも新しいスネア見たかったし。」 澪「今日は…レフティフェアの日なんだ…ウフフ。」キラキラ はは…。 レフティフェアのコーナーから動かなくなる澪が安易に想像出来るよ。 唯「可愛いギターがあるといいね!」 梓「…使いやすさで選びましょうよ。」 そういえば、唯があのギターを買った理由は、『可愛いから』だったな。 何とも唯らしい理由だな。 楽器店に着いたぼく達は、脇目も振らずレフティフェアのコーナーに向かう澪に苦笑しつつ、ギターコーナーに行く。 凪「う~ん。どれも甲乙付け難いな。」 唯「う~ん。どれも可愛いけど、やっぱりギー太が一番可愛いなあ。」 梓「あっ!コレなんてどうですか?」 彼此言いながらギターを品定めするぼく達。 38 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 01:10:26.16 ID:+1hOVXi1O 凪「此にしようかな。」 見た目も使い易さも申し分ないギターを見つけ、購入する。 16万円を現金で出したので、皆が驚いていた。 唯「凪ちゃんってお金持ちなんだね~!」 凪「まあ、うちの事務所は結構儲かっているからね。」 紬さんの一件以来、琴吹グループからの依頼が定期的に入る様になった、というのがこの羽振りの良さの一因である事は、敢えて伏せておこう。 律「澪~。帰るぞ~?」 澪「やだ!!」 律「はいは~い。また今度来ましょうね~。」 澪「やだ~!!もっと見てる~!!」 案の定動かなくなった澪を引っ張り、ぼく達は楽器店を後にする。 帰り道の途中、横断歩道で信号が変わるのを待っていると。 突然、猛スピードで車が歩道に突っ込んで来た。 皆は慌てて逃げるが、突然の出来事に硬直する律に車が迫る。 いけない、律が危ない! ぼくは咄嗟に律を庇った。 が、諸共車に衝突されるぼく達。 紬「きゃああ!」 唯「凪ちゃん!」 澪「律!」 47 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 01:30:09.82 ID:+1hOVXi1O …………… あたしはどうなったんだ? 確か、車にひかれそうになって、凪が庇ってくれて…。 …てか、ここどこだ? そこに、看護士らしき人が入ってくる。 看護士「えっ死体が動い…キャアアア!」 し、死体!? あたし死んでたの!? じゃあ、ここは霊安室か? 状況を確認するため、部屋から出てフラフラ歩いていると。 ???「こっち、来い!」 見知らぬ日系人が呼びかけてきた。 とにかく、この人について行くか。 大瀧探偵事務所 どこかで聞いた名前の所に通されるあたし。 ???「凪、無事で、良かった。」 え?凪? なんであたしが凪と勘違いされてんだ? あたしは、偶然近くにあった鏡で自分の姿を確認する。 ………!! な、何で!? あたしは愕然とした。 鏡に映し出されたのは、あたしじゃなく、凪の姿だった…! 154 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 20:54:33.20 ID:+1hOVXi1O …………… 此処は…何処だ? ぼくは確か、律と共に車に…。 しかし、運の良い事に、まだ生きている様だ。 という事は、此処は病院か。 澪「お、おい、大丈夫か?私が分かるか?」 目を覚ましたぼくに、涙目の澪が話しかけてくる。 どうやら、見舞いに来てくれていた様だ。 ぼくは頷き、澪の名前を呼ぶ。 澪「良かった…たいした事なくて…グスッ…本当に…グスッ。」 全く、心配性だな澪は。 ふと、疑問が浮かぶ。 澪なら、ぼくよりも真っ先に律を見舞う筈だ。 なのに何故、ぼくの所にいるのだろう? …まさか。 ぼくは恐る恐る消えたテレビの画面を見る。 其処には、ぼくではなく、律の顔があった。 やはりか…。 何故かは分からないが、どうやらぼくと律の魂が入れ替わってしまった様だ。 157 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 21:17:34.88 ID:+1hOVXi1O 仕方ない。 元に戻る迄、律のフリをしておくとしよう。 …澪相手では、直ぐにバレそうな気もするが。 凪「まったく、生きてたんだからもう泣くなよ。…って、凪は?あいつはどうなったんだ?」 一応、体の安否を確かめなければ。 澪「凪…ヒック…死んじゃっ…グスッ。」 死んだ、という事は、ぼくの体は今霊安室の中か。 凪「そっか。あたしがぼーっとしてたから…。」 澪「律のせいじゃないよ!車の運転手が悪いんだ!」 どうやら気付かれていない様だ。 まあ、随分気が動転しているみたいだし、気付く筈も無いか。 ん? なんだか病室の外が騒がしいな。 澪「何かあったのかな?ちょっと様子見てくるな。」 澪が病室から出て行く。 幸い、律の体は大した怪我をしていない様だし、恐らく直ぐに退院出来るだろう。 しかし、一体何故魂が入れ替わったのか…。 161 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 21:47:43.21 ID:+1hOVXi1O 暫く考え込んでいると、澪が血相を変えて病室に飛び込んで来た。 澪「たっ大変だ!凪が…凪が…凪が…!」 喜びと驚きが交じった表情で、必死に状況を伝えようとする澪。 ただ、病室を出る時以上に気が動転している。 自分でも今一事態が飲み込めていないのだろう。 其処に、紬さんと唯がやって来る。 唯「あ、あのねりっちゃん!凪ちゃんがね、死んでね、起きてね、いないの!」 凪「なんだそりゃ?どういう事だよ?」 紬「凪ちゃんが霊安室で生き返ったのよ!それで、外国人らしい人に連れて行かれたらしいわ!」 凪「なっなんだてー!」 …つまり、ぼくの体に律の魂が入ったって事か。 恐らく、外国人と言うのはジョーの事だ。 ぼくが死んだと言う連絡を病院から受け、身元確認に来たのだろう。 彼ならこの異変に気付いてくれるかも知れないな。 163 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 22:06:31.67 ID:+1hOVXi1O 大瀧探偵事務所 なんてこった! あたしと凪が入れ替わってる! いや、落ち着けあたし。 そういえば凪のやつ、ジョーっていうハイスペックな先輩がいるって言ってたな。 多分、この日系人がジョーなんだろうな。 今のあたしは凪。 怪しまれないように、凪のフリしとくか。 律「さっきは有難う、ジョー。」 ジョー「気にするな。でも、病院では、もう、騒ぎになってるはず。」 ??「だろうね~。」 後ろから声がする。 振り返ると、そこには白いスーツを着た中年男がいた。 この人が例のサボリ魔所長の大瀧って人なんだろうな。 ジョー「所長、おかえり。」 大瀧「おう、ただいま~。」 凪「今日は珍しく早いお帰りですね。」 大瀧「別にサボった訳じゃないよ~?」 凪「そんな事、言ってませんよ。思ってはいますが。」 大瀧「全く、一言多いっての。ところで…君は誰だい?」 164 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 22:24:21.61 ID:+1hOVXi1O え?あれ? この人まさか…。 ジョー「所長、働き過ぎて、ぼけたか?彼女は、凪だろう。」 律「部下の顔を忘れるとは、随分働き詰めた様ですね。やはり、ぼくがやっていた方が…。」 大瀧「あ~無理に真似とかしなくていいから。…ジョーもさ、気付いてんだろ?この子が『ハヅキ』じゃない事ぐらい。」 少し間を置いて頷くジョーさん。 ハヅキ? ああ、そういえば。 凪のやつ、探偵の時は葛葉ハヅキって名乗ってるんだっけ。 …って、ちょっと待て。 やっぱりこの人…! 律「いつ…気付いたんですか?」 大瀧「見りゃ分かるよ。魂が違うからね。」 律「魂が…見えるんですか?」 大瀧「ま~ね。こんなんでも、一応ハヅキの目付役だからさ。そんぐらいの芸当は出来ないと。」 驚いた。 このオッサン、実は凪よりすげーんじゃねーのか? 大瀧「買いかぶりだよ。コレしか能がないし。」 …ナレーションにツッコむ能力も追加したら? 大瀧「ちなみに、それモノローグだから。」 だからツッコむなっての! 165 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 22:42:35.68 ID:+1hOVXi1O あたしは自己紹介と、これまで起きた事の次第を2人に説明した。 大瀧「なるほどねえ~。でも、事故に遭って魂が入れ替わるなんて話、聞いたこと無いなあ。」 ジョー「しかし、実際、起きた。ハヅキと律、入れ替わった。」 大瀧「う~ん。他のとこに行って、過去の事例に似たようなのが無いかあたってみるよ。」 律「すいません、お願いします。あと…学校、行かない方がいいですよね?」 さすがに生き返った奴が来たら、ゾンビだとか怨霊だとか騒がれかねない。 みんなに会いづらくなるし、それはヤバいからなあ。 大瀧「いや、行った方がいいだろう。魂が入れ替わってるんなら、君の体をハヅキが使ってるハズだ。」 ジョー「どこかで、ボロが出る。そしたら、友達、混乱する。」 ああ、そりゃマズいわ。 凪はまだドラム出来ないだろうし。 出来たとしたって、あたしみたいに走り気味に叩くなんて、あいつの性格じゃやりそうもないしなあ。 律「分かりました。とりあえず、学校には行きます。」 167 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 23:00:52.20 ID:+1hOVXi1O 翌日 普通に登校するあたし。 諸々の荷物はジョーさんがいつの間にか持って来てくれてたみたいで、全て揃っている。 凪らしい行動を心がける為、普段よりも早く学校に来た。 澪「な…凪。本当に…生きてるのか?」 後ろから澪の声がする。 律「ああ、大丈夫だ。ちゃんと生きてるよ。」 振り返りながら返事をする。 うおっ!涙目だし! 澪「よかったあ!グスッ…凪…グスッ…生きてたあ!」 まあ、気付いたら霊安室なんぞに入れられてて、生きた心地はしなかったけどな。 すぐ後ろからムギが来る。 紬「凪ちゃん!無事でよかった。でも、本当に大丈夫?」 律「ああ、何とも無いよ。心配かけて済まないね。」 くっ…む、ムズい! 凪はなんであんなスラスラこんな堅苦しいしゃべり方出来るんだよ! 171 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 23:31:11.06 ID:+1hOVXi1O 昼休み そういえば、凪は弁当自分で作ってるんだっけか。 やっべー、食うものねーや…しゃーない、学食行くか。 学食へと向かうあたし。 途中、少し先に同じく学食へと向かうあたし…いや、凪が見える。 律「やあ。律も学食かい?」 自分に自分の名前で呼びかけるのは変な気分だな。 凪「ま~な~。凪も学食か?珍しいな。」 律「うん。たまには悪くないかな、と思ってね。」 に…似合わねー! 必死で笑いを堪えながら返事をする。 凪「ところで…律。」 自分に自分の名前呼ばれるのも変な気分…ん? 律「…そうか、さすがに気付くよな、お前探偵だし。」 凪「鏡を見れば分かる事さ。そうじゃなくても…こうして自分を目の前にすれば、否が応にも気付くだろう?」 律「はは…まあな。しっかし…タメ口似合わねーな。」ニヤニヤ 凪「…其れは言わないでくれよ。」カアア 173 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/08(火) 00:02:52.88 ID:7bDJU+O4O まあ、今のもタメ口って言えばタメ口だけど、あたしみたいな軽い感じのタメ口は、使い慣れてねーと違和感ありまくりだから、なんか笑えるな。 律「そういや、昨日のうちに退院出来たんだな。おかげ様でかすり傷程度で済んだってとこか?」 凪「いや、律の運が良かっただけで、ぼくのおかげって訳じゃ…。」 律「あの時凪が庇ってくれてなきゃ、もっとひでー怪我してたかもだし。マジでありがとな!」 凪「いや…その…う、うん。どういたしまして。」カアア 放課後、音楽室 流石にに今日は練習とはは行かず、代わりに、ぼく達の復帰祝いのお茶会となった。 澪「2人とも、本当に大丈夫か?あんまり無理するなよ?」 凪「だーいじょうぶだって!本当に心配性だなあ、澪は。」 律「心配かけて本当に済まない。」 唯「でも、ホント無事でよかったよ~。」 209 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 21:01:51.18 ID:rjBGeGUeO 律「全くだよ。お互い外傷が殆ど無いなんて、まるで奇跡だ。」 凪「だよなあ。…そういや、あたしらを轢いた運転手、轢くより前に死んでたんだってな。」 紬「ええ。運転手さんの死因は心不全らしいわ。」 …死因不明の場合の常套手段だな。 悪魔の仕業…だとしたら、ぼくが気付かない筈は無い。 だが、それ以外の理由が…。 澪「律、どうした?」 凪「ん?いや、なんか不自然だな~って思ってさ。」 梓「何がですか?」 律「律も気付いたか。…死んだ人間が乗った車が、あんなに真っ直ぐにぼく達の所に…まるで、狙い澄ましたかのように突っ込んで来るだろうか?」 皆ははっとして目を合わせた。 紬「言われてみれば…。」 澪「確かに…運転手が死んでるなら、もっと車がフラフラしそうなもんだよな。」 唯「偶然…にしては変だよね。」 220 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 21:27:48.64 ID:rjBGeGUeO やはり、悪魔の仕業であると考えるのが妥当だろう。 …ぼくに気付かれずにあんな事が出来る悪魔なんて、見た事も聞いた事も…。 …否。 1体だけ、心当たりがある。 凪「そういえばさ、例のムギに取り憑いてた悪魔って、どんなだったっけ?」 澪「なんか、無意識のうちに思ってる事と違う行動をさせるってやつだったよな。確か報告書のコピーが…。」 そう言って澪が、机の中から報告書のコピーを取り出す。 澪「あった。こいつって確か、アマノジャクだったよな。こいつがどうかしたのか?」 律「…アマノジャクは、人間に取り憑く時に、その人間を殺して体を乗っ取る場合が有るんだ。今回の運転手には、その方法で取り憑いたと考えれば合点がいくよ。」 ふう。 昼休みに凪と打ち合わせしといて良かったぜ。 あたしにはこんな知識ないし。 227 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 21:50:15.45 ID:rjBGeGUeO 澪「しかし、律からこんな話切り出してくるなんて珍しいな。…ひょっとして、中身が入れ替わってるなんて事ないよな?」 !! すいません澪さん、大当たりです! やっぱり澪には気付かれちまったか。 あたしは凪に目配せする。 その意味を察した凪は、静かに頷き、話し始めた。 凪「よく分かったね、澪。…その通り、ぼくは凪だよ。」 澪「へ?…は、ははは…変な冗談よせよ、律…。」 律「冗談じゃねーぞ、澪。お前の言うとおり、あたしと凪は中身が入れ替わってるんだ。」 澪「なっ凪まで…止せよ。そんな事…有るわけ…!」 澪は必死で自分の言った事を否定する。 紬さんと唯と梓さんは、ぼく達の突然の告白に、唖然としてぼく達を見つめている。 凪「だけど、現に入れ替わってるんだ。原因は分からないけどね。」 律「まあ、信じたくねーって気持ちは分かるけどな。」 231 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 22:10:36.89 ID:rjBGeGUeO 凪「さて。一度状況を整理しようか。」 1時間後、大瀧探偵事務所 大瀧「で、結局バラしちゃったんだ。」 大瀧さんは大して驚いてもいない様子で、あたし達のこれまでのあれこれを聞いた感想を言った。 大瀧「律君の事だから、もうちょっと遊んでからだと思ってたんだけどなあ。」 律「いやあ、親友にはバレバレだったみたいで…。」 凪「そもそも遊べる余裕は無いですよ。お互い、口調を真似するのに精一杯でしたから。」 澪「凪が律で、律が凪で…。」ブツブツ まだ混乱してんのかよ。 でもまあ、さすがにツッコむのは止めといてやるか。 唯「わー!可愛いお人形さん!」 大瀧「あ~。その子に触っちゃ駄目だよ~。呪われちゃうから。」 呪いって単語を聞いて、うっかり持ちそうになった手を慌てて引っ込める唯。 いや、てかウロウロすんなよ。 252 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 23:00:02.22 ID:rjBGeGUeO 律「で、所長さん。他の事例の件だけど…。」 さすがに昨日の今日だし、まだ調べがついてるとは…。 大瀧「あったよ、一件だけ。…ハヅキ。前に、紬ちゃんに憑いたサクガミ祓ったよね?もしかしたら今回の一件、そいつが絡んでるかも知れないぜ?」 サクガミ、と言うのアマノジャクの事で、別名であるアマノサクガミから来ている呼び名だ。 凪「どういう事ですか?サクガミにそんな力が有るとは…。」 大瀧「…もしもそのサクガミが、『本物』だったとしたら?」 凪「…!まさか、アマノサグメ…!」 大瀧「ご名答。」 律「いやいや、ちょっと待ってくれ!2人だけで話進められても!」 大瀧「ああ、ごめんごめん。資料見せとこうか。これがその事例なんだけど…さっき言った、アマノサグメが憑いた人の事例な。」 そう言って、あたしに資料を渡してくる大瀧さん。 259 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 23:15:04.51 ID:rjBGeGUeO 読んでみると、魂を抜かれ、アマノサグメが入れ替わったという節の内容が書かれていた。 …なるほど。 確かに、凪とあたしの状況とかなり似てるな。 澪「自分が入るんじゃなくて他人と入れ替えるなんて、やり方がエグいよな。」 おい澪、お前はいつ立ち直ったんだ。 澪「親友がとんでもない事になってるのに、いつまでも混乱していられないだろ?」 あたしが言いたい事を察してか、澪がそう言う。 …割には目が泳いでるけど、見なかった事にしとくぜ。 唯「ムギちゃんから追い出された仕返しなんて、ただの逆恨みじゃん!」 紬「でも、だとしたら、アマノサグメはまだ近くにいるって事になりますよね?」 梓「えっ?何故ですか?離れてしまった方が見つかりにくくなるし、有利なんじゃ?」 梓の言うとおりだよな。 でも、あたしがその、サグメってのだったら…。 そばにいて、凪が苦しむのを見てほくそ笑んでるだろうな。 264 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 23:33:41.65 ID:rjBGeGUeO 夜、事故現場 律「現場は百回見るのが刑事の鉄則だ!」 澪「どこの刑事だよ。」 律と澪の息の合った掛け合いを眺めつつ、事故現場を調べるぼく達。 ふむ…やはり妖気は感じられないな。 アマノサグメは元は神だった身だ。 気配を隠すなど造作も無いだろうな。 だが。 唯「あれ?おねーさん誰?」 ???「…妾が見えるのかい?おかしいね、完全に隠したつもりだったんだが。」 唯が何者かの存在を見つける。 純粋な人には妖怪が見えると言うが、それはどうやら元神にも通じるらしい。 ???「ふん。見つかっちまったならしょうがない。隠れるのは止めだ。」 唯が見つめる先に、不思議な服を着た女性-アマノサグメ-が姿を現す。 サグメ「久しいのう、サマナー殿。体を入れ替えられた気分はどうかな?」
854 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/06(日) 22:11:05.67 ID:ZaB02qfTO さて。 一度、状況を整理しようか。 そう言うぼくを見て、未だ落ち着きを取り戻せずにいる澪が話しかけてきた。 澪「本当に…凪…なのか?律はどうなったんだよ?」 だから、目の前にいるじゃんか。 …まあ、今の澪じゃ理解が追いつかんのも無理ないけど。 紬「でも、どうしてこんな事に…?」 唯「どうすれば元に戻るの?」 だから、それをこれから調べるんだろ? 梓「よく冷静でいられますよね。さすがというか、なんというか…。」 最初は驚いたさ。 驚かない筈が無い。 ぼくが。 あたしが。 入れ替わっていたのだから。 数日前 ぼく達は、練習を早めに切り上げ、楽器店へと向かった。 ぼくの新しいギターを買いに行く事になったのだ。 因みに、現在ぼくが使っているものは、ジョーから拝借しているものである。 864 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/06(日) 22:59:07.71 ID:ZaB02qfTO 凪「済まないね皆。わざわざ買い物に付き合ってもらっちゃって。」 律「気にすんなよ。あたしも新しいスネア見たかったし。」 澪「今日は…レフティフェアの日なんだ…ウフフ。」キラキラ はは…。 レフティフェアのコーナーから動かなくなる澪が安易に想像出来るよ。 唯「可愛いギターがあるといいね!」 梓「…使いやすさで選びましょうよ。」 そういえば、唯があのギターを買った理由は、『可愛いから』だったな。 何とも唯らしい理由だな。 楽器店に着いたぼく達は、脇目も振らずレフティフェアのコーナーに向かう澪に苦笑しつつ、ギターコーナーに行く。 凪「う~ん。どれも甲乙付け難いな。」 唯「う~ん。どれも可愛いけど、やっぱりギー太が一番可愛いなあ。」 梓「あっ!コレなんてどうですか?」 彼此言いながらギターを品定めするぼく達。 38 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 01:10:26.16 ID:+1hOVXi1O 凪「此にしようかな。」 見た目も使い易さも申し分ないギターを見つけ、購入する。 16万円を現金で出したので、皆が驚いていた。 唯「凪ちゃんってお金持ちなんだね~!」 凪「まあ、うちの事務所は結構儲かっているからね。」 紬さんの一件以来、琴吹グループからの依頼が定期的に入る様になった、というのがこの羽振りの良さの一因である事は、敢えて伏せておこう。 律「澪~。帰るぞ~?」 澪「やだ!!」 律「はいは~い。また今度来ましょうね~。」 澪「やだ~!!もっと見てる~!!」 案の定動かなくなった澪を引っ張り、ぼく達は楽器店を後にする。 帰り道の途中、横断歩道で信号が変わるのを待っていると。 突然、猛スピードで車が歩道に突っ込んで来た。 皆は慌てて逃げるが、突然の出来事に硬直する律に車が迫る。 いけない、律が危ない! ぼくは咄嗟に律を庇った。 が、諸共車に衝突されるぼく達。 紬「きゃああ!」 唯「凪ちゃん!」 澪「律!」 47 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 01:30:09.82 ID:+1hOVXi1O …………… あたしはどうなったんだ? 確か、車にひかれそうになって、凪が庇ってくれて…。 …てか、ここどこだ? そこに、看護士らしき人が入ってくる。 看護士「えっ死体が動い…キャアアア!」 し、死体!? あたし死んでたの!? じゃあ、ここは霊安室か? 状況を確認するため、部屋から出てフラフラ歩いていると。 ???「こっち、来い!」 見知らぬ日系人が呼びかけてきた。 とにかく、この人について行くか。 大瀧探偵事務所 どこかで聞いた名前の所に通されるあたし。 ???「凪、無事で、良かった。」 え?凪? なんであたしが凪と勘違いされてんだ? あたしは、偶然近くにあった鏡で自分の姿を確認する。 ………!! な、何で!? あたしは愕然とした。 鏡に映し出されたのは、あたしじゃなく、凪の姿だった…! 154 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 20:54:33.20 ID:+1hOVXi1O …………… 此処は…何処だ? ぼくは確か、律と共に車に…。 しかし、運の良い事に、まだ生きている様だ。 という事は、此処は病院か。 澪「お、おい、大丈夫か?私が分かるか?」 目を覚ましたぼくに、涙目の澪が話しかけてくる。 どうやら、見舞いに来てくれていた様だ。 ぼくは頷き、澪の名前を呼ぶ。 澪「良かった…たいした事なくて…グスッ…本当に…グスッ。」 全く、心配性だな澪は。 ふと、疑問が浮かぶ。 澪なら、ぼくよりも真っ先に律を見舞う筈だ。 なのに何故、ぼくの所にいるのだろう? …まさか。 ぼくは恐る恐る消えたテレビの画面を見る。 其処には、ぼくではなく、律の顔があった。 やはりか…。 何故かは分からないが、どうやらぼくと律の魂が入れ替わってしまった様だ。 157 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 21:17:34.88 ID:+1hOVXi1O 仕方ない。 元に戻る迄、律のフリをしておくとしよう。 …澪相手では、直ぐにバレそうな気もするが。 凪「まったく、生きてたんだからもう泣くなよ。…って、凪は?あいつはどうなったんだ?」 一応、体の安否を確かめなければ。 澪「凪…ヒック…死んじゃっ…グスッ。」 死んだ、という事は、ぼくの体は今霊安室の中か。 凪「そっか。あたしがぼーっとしてたから…。」 澪「律のせいじゃないよ!車の運転手が悪いんだ!」 どうやら気付かれていない様だ。 まあ、随分気が動転しているみたいだし、気付く筈も無いか。 ん? なんだか病室の外が騒がしいな。 澪「何かあったのかな?ちょっと様子見てくるな。」 澪が病室から出て行く。 幸い、律の体は大した怪我をしていない様だし、恐らく直ぐに退院出来るだろう。 しかし、一体何故魂が入れ替わったのか…。 161 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 21:47:43.21 ID:+1hOVXi1O 暫く考え込んでいると、澪が血相を変えて病室に飛び込んで来た。 澪「たっ大変だ!凪が…凪が…凪が…!」 喜びと驚きが交じった表情で、必死に状況を伝えようとする澪。 ただ、病室を出る時以上に気が動転している。 自分でも今一事態が飲み込めていないのだろう。 其処に、紬さんと唯がやって来る。 唯「あ、あのねりっちゃん!凪ちゃんがね、死んでね、起きてね、いないの!」 凪「なんだそりゃ?どういう事だよ?」 紬「凪ちゃんが霊安室で生き返ったのよ!それで、外国人らしい人に連れて行かれたらしいわ!」 凪「なっなんだてー!」 …つまり、ぼくの体に律の魂が入ったって事か。 恐らく、外国人と言うのはジョーの事だ。 ぼくが死んだと言う連絡を病院から受け、身元確認に来たのだろう。 彼ならこの異変に気付いてくれるかも知れないな。 163 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 22:06:31.67 ID:+1hOVXi1O 大瀧探偵事務所 なんてこった! あたしと凪が入れ替わってる! いや、落ち着けあたし。 そういえば凪のやつ、ジョーっていうハイスペックな先輩がいるって言ってたな。 多分、この日系人がジョーなんだろうな。 今のあたしは凪。 怪しまれないように、凪のフリしとくか。 律「さっきは有難う、ジョー。」 ジョー「気にするな。でも、病院では、もう、騒ぎになってるはず。」 ??「だろうね~。」 後ろから声がする。 振り返ると、そこには白いスーツを着た中年男がいた。 この人が例のサボリ魔所長の大瀧って人なんだろうな。 ジョー「所長、おかえり。」 大瀧「おう、ただいま~。」 凪「今日は珍しく早いお帰りですね。」 大瀧「別にサボった訳じゃないよ~?」 凪「そんな事、言ってませんよ。思ってはいますが。」 大瀧「全く、一言多いっての。ところで…君は誰だい?」 164 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 22:24:21.61 ID:+1hOVXi1O え?あれ? この人まさか…。 ジョー「所長、働き過ぎて、ぼけたか?彼女は、凪だろう。」 律「部下の顔を忘れるとは、随分働き詰めた様ですね。やはり、ぼくがやっていた方が…。」 大瀧「あ~無理に真似とかしなくていいから。…ジョーもさ、気付いてんだろ?この子が『ハヅキ』じゃない事ぐらい。」 少し間を置いて頷くジョーさん。 ハヅキ? ああ、そういえば。 凪のやつ、探偵の時は葛葉ハヅキって名乗ってるんだっけ。 …って、ちょっと待て。 やっぱりこの人…! 律「いつ…気付いたんですか?」 大瀧「見りゃ分かるよ。魂が違うからね。」 律「魂が…見えるんですか?」 大瀧「ま~ね。こんなんでも、一応ハヅキの目付役だからさ。そんぐらいの芸当は出来ないと。」 驚いた。 このオッサン、実は凪よりすげーんじゃねーのか? 大瀧「買いかぶりだよ。コレしか能がないし。」 …ナレーションにツッコむ能力も追加したら? 大瀧「ちなみに、それモノローグだから。」 だからツッコむなっての! 165 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 22:42:35.68 ID:+1hOVXi1O あたしは自己紹介と、これまで起きた事の次第を2人に説明した。 大瀧「なるほどねえ~。でも、事故に遭って魂が入れ替わるなんて話、聞いたこと無いなあ。」 ジョー「しかし、実際、起きた。ハヅキと律、入れ替わった。」 大瀧「う~ん。他のとこに行って、過去の事例に似たようなのが無いかあたってみるよ。」 律「すいません、お願いします。あと…学校、行かない方がいいですよね?」 さすがに生き返った奴が来たら、ゾンビだとか怨霊だとか騒がれかねない。 みんなに会いづらくなるし、それはヤバいからなあ。 大瀧「いや、行った方がいいだろう。魂が入れ替わってるんなら、君の体をハヅキが使ってるハズだ。」 ジョー「どこかで、ボロが出る。そしたら、友達、混乱する。」 ああ、そりゃマズいわ。 凪はまだドラム出来ないだろうし。 出来たとしたって、あたしみたいに走り気味に叩くなんて、あいつの性格じゃやりそうもないしなあ。 律「分かりました。とりあえず、学校には行きます。」 167 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 23:00:52.20 ID:+1hOVXi1O 翌日 普通に登校するあたし。 諸々の荷物はジョーさんがいつの間にか持って来てくれてたみたいで、全て揃っている。 凪らしい行動を心がける為、普段よりも早く学校に来た。 澪「な…凪。本当に…生きてるのか?」 後ろから澪の声がする。 律「ああ、大丈夫だ。ちゃんと生きてるよ。」 振り返りながら返事をする。 うおっ!涙目だし! 澪「よかったあ!グスッ…凪…グスッ…生きてたあ!」 まあ、気付いたら霊安室なんぞに入れられてて、生きた心地はしなかったけどな。 すぐ後ろからムギが来る。 紬「凪ちゃん!無事でよかった。でも、本当に大丈夫?」 律「ああ、何とも無いよ。心配かけて済まないね。」 くっ…む、ムズい! 凪はなんであんなスラスラこんな堅苦しいしゃべり方出来るんだよ! 171 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/07(月) 23:31:11.06 ID:+1hOVXi1O 昼休み そういえば、凪は弁当自分で作ってるんだっけか。 やっべー、食うものねーや…しゃーない、学食行くか。 学食へと向かうあたし。 途中、少し先に同じく学食へと向かうあたし…いや、凪が見える。 律「やあ。律も学食かい?」 自分に自分の名前で呼びかけるのは変な気分だな。 凪「ま~な~。凪も学食か?珍しいな。」 律「うん。たまには悪くないかな、と思ってね。」 に…似合わねー! 必死で笑いを堪えながら返事をする。 凪「ところで…律。」 自分に自分の名前呼ばれるのも変な気分…ん? 律「…そうか、さすがに気付くよな、お前探偵だし。」 凪「鏡を見れば分かる事さ。そうじゃなくても…こうして自分を目の前にすれば、否が応にも気付くだろう?」 律「はは…まあな。しっかし…タメ口似合わねーな。」ニヤニヤ 凪「…其れは言わないでくれよ。」カアア 173 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/08(火) 00:02:52.88 ID:7bDJU+O4O まあ、今のもタメ口って言えばタメ口だけど、あたしみたいな軽い感じのタメ口は、使い慣れてねーと違和感ありまくりだから、なんか笑えるな。 律「そういや、昨日のうちに退院出来たんだな。おかげ様でかすり傷程度で済んだってとこか?」 凪「いや、律の運が良かっただけで、ぼくのおかげって訳じゃ…。」 律「あの時凪が庇ってくれてなきゃ、もっとひでー怪我してたかもだし。マジでありがとな!」 凪「いや…その…う、うん。どういたしまして。」カアア 放課後、音楽室 流石にに今日は練習とはは行かず、代わりに、ぼく達の復帰祝いのお茶会となった。 澪「2人とも、本当に大丈夫か?あんまり無理するなよ?」 凪「だーいじょうぶだって!本当に心配性だなあ、澪は。」 律「心配かけて本当に済まない。」 唯「でも、ホント無事でよかったよ~。」 209 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 21:01:51.18 ID:rjBGeGUeO 律「全くだよ。お互い外傷が殆ど無いなんて、まるで奇跡だ。」 凪「だよなあ。…そういや、あたしらを轢いた運転手、轢くより前に死んでたんだってな。」 紬「ええ。運転手さんの死因は心不全らしいわ。」 …死因不明の場合の常套手段だな。 悪魔の仕業…だとしたら、ぼくが気付かない筈は無い。 だが、それ以外の理由が…。 澪「律、どうした?」 凪「ん?いや、なんか不自然だな~って思ってさ。」 梓「何がですか?」 律「律も気付いたか。…死んだ人間が乗った車が、あんなに真っ直ぐにぼく達の所に…まるで、狙い澄ましたかのように突っ込んで来るだろうか?」 皆ははっとして目を合わせた。 紬「言われてみれば…。」 澪「確かに…運転手が死んでるなら、もっと車がフラフラしそうなもんだよな。」 唯「偶然…にしては変だよね。」 220 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 21:27:48.64 ID:rjBGeGUeO やはり、悪魔の仕業であると考えるのが妥当だろう。 …ぼくに気付かれずにあんな事が出来る悪魔なんて、見た事も聞いた事も…。 …否。 1体だけ、心当たりがある。 凪「そういえばさ、例のムギに取り憑いてた悪魔って、どんなだったっけ?」 澪「なんか、無意識のうちに思ってる事と違う行動をさせるってやつだったよな。確か報告書のコピーが…。」 そう言って澪が、机の中から報告書のコピーを取り出す。 澪「あった。こいつって確か、アマノジャクだったよな。こいつがどうかしたのか?」 律「…アマノジャクは、人間に取り憑く時に、その人間を殺して体を乗っ取る場合が有るんだ。今回の運転手には、その方法で取り憑いたと考えれば合点がいくよ。」 ふう。 昼休みに凪と打ち合わせしといて良かったぜ。 あたしにはこんな知識ないし。 227 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 21:50:15.45 ID:rjBGeGUeO 澪「しかし、律からこんな話切り出してくるなんて珍しいな。…ひょっとして、中身が入れ替わってるなんて事ないよな?」 !! すいません澪さん、大当たりです! やっぱり澪には気付かれちまったか。 あたしは凪に目配せする。 その意味を察した凪は、静かに頷き、話し始めた。 凪「よく分かったね、澪。…その通り、ぼくは凪だよ。」 澪「へ?…は、ははは…変な冗談よせよ、律…。」 律「冗談じゃねーぞ、澪。お前の言うとおり、あたしと凪は中身が入れ替わってるんだ。」 澪「なっ凪まで…止せよ。そんな事…有るわけ…!」 澪は必死で自分の言った事を否定する。 紬さんと唯と梓さんは、ぼく達の突然の告白に、唖然としてぼく達を見つめている。 凪「だけど、現に入れ替わってるんだ。原因は分からないけどね。」 律「まあ、信じたくねーって気持ちは分かるけどな。」 231 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 22:10:36.89 ID:rjBGeGUeO 凪「さて。一度状況を整理しようか。」 1時間後、大瀧探偵事務所 大瀧「で、結局バラしちゃったんだ。」 大瀧さんは大して驚いてもいない様子で、あたし達のこれまでのあれこれを聞いた感想を言った。 大瀧「律君の事だから、もうちょっと遊んでからだと思ってたんだけどなあ。」 律「いやあ、親友にはバレバレだったみたいで…。」 凪「そもそも遊べる余裕は無いですよ。お互い、口調を真似するのに精一杯でしたから。」 澪「凪が律で、律が凪で…。」ブツブツ まだ混乱してんのかよ。 でもまあ、さすがにツッコむのは止めといてやるか。 唯「わー!可愛いお人形さん!」 大瀧「あ~。その子に触っちゃ駄目だよ~。呪われちゃうから。」 呪いって単語を聞いて、うっかり持ちそうになった手を慌てて引っ込める唯。 いや、てかウロウロすんなよ。 252 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 23:00:02.22 ID:rjBGeGUeO 律「で、所長さん。他の事例の件だけど…。」 さすがに昨日の今日だし、まだ調べがついてるとは…。 大瀧「あったよ、一件だけ。…ハヅキ。前に、紬ちゃんに憑いたサクガミ祓ったよね?もしかしたら今回の一件、そいつが絡んでるかも知れないぜ?」 サクガミ、と言うのアマノジャクの事で、別名であるアマノサクガミから来ている呼び名だ。 凪「どういう事ですか?サクガミにそんな力が有るとは…。」 大瀧「…もしもそのサクガミが、『本物』だったとしたら?」 凪「…!まさか、アマノサグメ…!」 大瀧「ご名答。」 律「いやいや、ちょっと待ってくれ!2人だけで話進められても!」 大瀧「ああ、ごめんごめん。資料見せとこうか。これがその事例なんだけど…さっき言った、アマノサグメが憑いた人の事例な。」 そう言って、あたしに資料を渡してくる大瀧さん。 259 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 23:15:04.51 ID:rjBGeGUeO 読んでみると、魂を抜かれ、アマノサグメが入れ替わったという節の内容が書かれていた。 …なるほど。 確かに、凪とあたしの状況とかなり似てるな。 澪「自分が入るんじゃなくて他人と入れ替えるなんて、やり方がエグいよな。」 おい澪、お前はいつ立ち直ったんだ。 澪「親友がとんでもない事になってるのに、いつまでも混乱していられないだろ?」 あたしが言いたい事を察してか、澪がそう言う。 …割には目が泳いでるけど、見なかった事にしとくぜ。 唯「ムギちゃんから追い出された仕返しなんて、ただの逆恨みじゃん!」 紬「でも、だとしたら、アマノサグメはまだ近くにいるって事になりますよね?」 梓「えっ?何故ですか?離れてしまった方が見つかりにくくなるし、有利なんじゃ?」 梓の言うとおりだよな。 でも、あたしがその、サグメってのだったら…。 そばにいて、凪が苦しむのを見てほくそ笑んでるだろうな。 264 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/09(水) 23:33:41.65 ID:rjBGeGUeO 夜、事故現場 律「現場は百回見るのが刑事の鉄則だ!」 澪「どこの刑事だよ。」 律と澪の息の合った掛け合いを眺めつつ、事故現場を調べるぼく達。 ふむ…やはり妖気は感じられないな。 アマノサグメは元は神だった身だ。 気配を隠すなど造作も無いだろうな。 だが。 唯「あれ?おねーさん誰?」 ???「…妾が見えるのかい?おかしいね、完全に隠したつもりだったんだが。」 唯が何者かの存在を見つける。 純粋な人には妖怪が見えると言うが、それはどうやら元神にも通じるらしい。 ???「ふん。見つかっちまったならしょうがない。隠れるのは止めだ。」 唯が見つめる先に、不思議な服を着た女性-アマノサグメ-が姿を現す。 サグメ「久しいのう、サマナー殿。体を入れ替えられた気分はどうかな?」 549 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/11(金) 20:10:28.19 ID:bYStA3KWO 凪「悪くはないよ。…この状況を知らない人には、『田井中律』として振る舞う必要が有るから、大変ではあるけどね。」 不敵な笑みを浮かべ、サグメが問いかけてくる。 サグメ「ほう。だったら、そのままにしておいてやろうか?」 律「断る!やっぱお互い、自分の体が一番しっくりくるからな!」 律がサグメを指差して答える。 サグメ「ふふ。どの道、戻してやる気はないがのう。」 紬「私から追い出された腹いせ、ですか。元神様にしてはひどい嫌がらせですわね。」 サグメ「ふん。何とでも言うがいい。… 時に、サマナー殿。」 サグメは凪に向き直り、語りかける。 サグメ「人と言うものは、自分の本心は他人に隠すものじゃ。そうであろう?」 凪「…何が言いたい?」 サグメ「単刀直入に言おう。その者達、本心ではお主を疎ましく思うておるかも知れぬぞ?」 551 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/11(金) 20:32:38.67 ID:bYStA3KWO 凪が目を見開き、あたし達を見る。 が、すぐに首を横に振り、それを否定する。 凪「彼女達とは、何時も本音でぶつかり合っている。疎ましいなんて、思っている筈が無いさ。」 唯「そうだよ!私凪ちゃんの事好きだもん!」 澪「お前なんかに、私達の事をとやかく言われる筋合いはない!」 唯と澪が凪に同意する。 そうだ! あたし達の絆は、そう簡単に壊れないぜ! 律「こんなみみっちい真似するなんて、随分小物だな!カミサマ!」 サグメ「………くだらん。少しも揺るがんのでは、仕返しの意味もないわ。今回は妾が退いてやろうぞ。」 そう言うとサグメは、あたしと凪の前に手を伸ばす。 何かに引っ張られるような感覚の後、気付くとあたしの隣には凪がいた。 ふう、元に戻ったみたいだな。 サグメ「もう一度だけ言っておくぞ。人は、本心を隠して生きるものだ。努々忘れるなよ、サマナー殿。」 そう吐き捨てると、サグメは姿を消した。 552 :(仮名) ◆PzD3ftv2xo :2009/09/11(金) 20:54:20.46 ID:bYStA3KWO 翌日、音楽室 祝勝会と称して、いつものお茶会を始めるあたし達。 律「ふい~。やっぱ自分の体は落ち着くわ~。」 梓「いつも以上にだらけてますね…凪先輩まで…。」 ホントだ。 凪のやつ、机に突っ伏してるし。 唯「まあまああずにゃん、あんな事があった後なんだし、多目に見てあげようよ?」 梓「べっ別に、責めてる訳じゃないです!ただ…だらけてる凪先輩、可愛いなあって…。」 梓のやつ、なんか唯に似てきたな…主に感覚が。 凪「やっと普段通りに出来ると思うと、何だか力が抜けちゃって…。」 紬「あらあら。うふふ。」ニコニコ 澪「しかし、本当に災難だったよな、2人共。」 凪「ああ…戻れなかったらどうしようかと思ったよ…。」 律「全くだよ。もう二度とこんな事はご免だぜ。な、凪?」 凪は目を丸くしてあたしを見る。 律「…凪?」 凪「…あ、ああ…うん。そう…だね…。」 この時、あたしは気付かなかった。 あたしが何気なく言ったその一言が、凪の心を傷つけてしまった事に…。 第4話 入れ替わる魂 完

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