「草一つ生えない不毛の地アフガン。彼女はそこに居た。 目次」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

草一つ生えない不毛の地アフガン。彼女はそこに居た。 目次」(2009/09/21 (月) 13:01:42) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

417 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/14(月) 11:30:59.69 ID:vhXdn7wLO 「ハァ……ハァ……」  草一つ生えない不毛の地アフガン。彼女はそこに居た。 背負ったバックパックは鉛が詰まっているかの様に重く、肩から提げた水筒の水は既に底を突いていた。  ここで死ぬにはいかない。仲間と再び出会うまでは。仲間と祖国へ帰るまでは。そう、彼女は戦争に来ていた。 419 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/14(月) 11:47:54.09 ID:vhXdn7wLO  彼女が今の状況に至るまでは、彼女とその仲間、そして戦争至るまでの経緯を話しておかねばならないだろう。  西暦2013年、ゾロアスター原理主義を掲げた、拝火団代表『麦茶』は日本における革命をアラブ圏の諸国と実行。 警察、自衛軍による懸命の抗戦により、革命は失敗に終わる。この革命によって、麦茶及び、幹部には内乱罪、並びに外患罪で死刑判決が下される。  死刑判決から1年後、麦茶の公開処刑日にゾロアスター原理主義に賛同する国内の潜伏戦闘員によって麦茶は逃亡。国外逃亡を果たす。  それから国際指名手配にするも行方が分からぬまま、3年が過ぎた。 420 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/14(月) 12:16:50.70 ID:vhXdn7wLO  麦茶がアフガン・カンダハルに潜伏しているという情報を掴んだ日本国政府は麦茶を生死を問わず、日本へ連行するように国際指名手配犯専門部隊、通称『アメノムラムモ』を送る。  そしてアメノムラクモから精鋭メンバーが先遣隊として送られた。先遣隊隊長としてコードネーム『BASE LINE 秋山澪』。 強襲、ゲリラ専門部隊からは『MADDY SISTER 平沢憂』『ASSULT BUTLER 斎藤』。 偵察、測量部隊からは『SEVENTY-SIX 琴吹紬』『CLEVER DISTANT 真鍋和』が選ばれた。  同年、数十に及ぶブリーフィングを終え、7月14日○二三○に佐世保飛行場から出発。同、一一○三にアフガン上空に到着した。 435 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/14(月) 13:41:06.12 ID:Zfb31HZy0 「それじゃ最後の確認だ。この後一一二五にはカンダハル上空に到着する。そしたらHALO(ヘイロー)で敵拠点付近まで一挙に詰める」 「隊長。迎撃の可能性は?」 「今回の事は相手には伝えてないとは聞いている。ただウチの御偉いさんが外交気にして言わない筈もない。が、可能性は低いだろう」 「……低い、ねぇ。HALOとはいえ、これだけの人数。敵さんも気付かない程馬鹿じゃないだろう」 『Arrived in Kandahar over two minutes later. Please Standby』  機内に降下準備の放送が流れ、各員が物資と機器の最終確認に入る。 「防寒良し、酸素補給良し、装備良し。……Cockpit.」 『Sir.』 「Already standby.」 『Roger. I will open hatch.』  機内後部のハッチが開き、赤ランプが付く。外気と空気が混じり合う。  ランプが緑色へと色が変わり、澪の檄が飛ぶ。 「Go! Go! Go! Go!」 「みんな! 地上でまた会いましょう!」 「旦那様、お嬢様は 「お姉ちゃん……行ってきます!」 「紬、出ます!」  4人が降下し終わり、1人残る澪。もう一度操縦室と通信をする。 「律……日本でまた会おうな……」 「Roger. ……靖国で会おうなんて考えないでくれ。お願いだから生きて帰ってきてくれ」 「勿論」  マスクを嵌め、ハッチの前に立つ。 「アメノムラクモ 秋山澪、出る!」 498 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/14(月) 21:16:28.00 ID:Zfb31HZy0  高度10,000m。それは低酸素、低温の世界。そこから自由落下で高度300mまで降下、パラシュートを開き着地する。これがHALOだ。また、視認しにくくする為に頭は常に地面を向くようにする。 「こちら、BASE LINE。各員、状況を伝えてくれ」 『ザッ、こちらASSULT。オールグリーン。オーバー』 『SEVENTY-SIX、同じく問題無し。オーバー。ザザッ』 『MADDY………高度計に異常。無線によるカバーを要請……』 「了解。開傘のタイミングはこちらから伝える。そのまま待機」 『了解……ザッ』 『CLEVERオールグリーン。少し横向きに空でも眺めようかしら』  確認をしている間にも高度は既に8,000mを切っていた。この高度まで降りてくると、自由落下による加速と空気抵抗との均衡が取れ、約300km/hで安定する。そして上空2,000m地点に達した頃だった。 『ザザッ……こちらMADDY。発光体を確認』 「発光体って! まだ上空2,000mよ!? 相手がそんな視認出来るはず……」 『いやはや、どうやら見つかってしまった様ですぞ。私めも発光体を確認しました』 『これだから外交問題っていうのは困るわ……』 「このままだと一網打尽だわ! 各自散開! ポイントAlphaで合流よ!」 『『『『了解!』』』』 563 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/15(火) 02:33:48.11 ID:+QQnECDw0  ……そして散開から今に至る。  空高く光り輝く太陽は彼女から体力を削り、その反射熱は彼女の精神力を殺ぐ。もうどれ位歩いただろうか? もうどれ位の時間がたっただろうか? PDAに表示されたポイントに到着しても良い頃だ。 「まだ……なの……?」  額に張り付いた前髪をかき上げる。作戦当初輝いたブロンドの髪は今となってはどこか色褪せた色へと変わっていた。 『ゴゴゴ……』  地鳴り、自動車の走る音だ。その場に伏せ、四方の確認に入る。 「太陽から見て7時、距離は1km位かしら。砂塵は……車両が2つ……」  車両の数から判断するに、敵の数は最低でも4人。1人で4人以上を相手にするのは危険極まりない。何より今は集合地点に行くことを最優先しなければならない。この場をやり過ごす為に匍匐状態を崩さずに息を殺す。 『ゴゴゴ……キキッ』  ブレーキ音が聞こえた。バレたのかだろうか。 「ッ……こんな時に!」 「!?????」 (敵だ!)  敵が車から降りてくる。数にして10人余り。が、此方に向かってくる気配が見られない。 「みんな……!」  残り少ない体力を振り絞り、敵背後へと走る。まだ紬に敵は気付いて居ない。この状況ならまだ不意を打てる。  敵背後、距離にして400m。敵は正面に気を完全に取られていた。 「間に合って……!」  敵に見つからないように匍匐状態でバックパックにしまってある、FN FALを取り出す。狙撃用にカスタマイズされたソレはセミオートのみになっており、軽量化と精度の向上がされていた。レールマウントにスコープを固定し、覗き込む。 「数15、死亡3。お願いだからみんな生きててね……!」 『ガウン!』  FN FAL独特の銃声が響き、敵が1人倒れる。 「??? ?????! ?」(どこだ!?) 『ガウン! ガウン!』  そしてまた1人、また1人と倒れていく。 「!??? ?? ????. ????? ?????? ?? ???? ??」(知るかよ隠れてやがるんだ!) 「!??????」(畜生が!)  それが彼らの最後の会話だった。その一言が今際の言葉となるとは知るはずもなかったろう。しかしこれが戦争である以上、何時死ぬのも不自然ではないのだ。 『ザザッ! SEVENTY! 聞こ…るか!?』 「その調子だと大丈夫そうね。背後から片付けてるからそのまま注意引き付けて」 693 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/16(水) 02:02:46.35 ID:q4SDgp8k0  それから数分後銃声は消え、風の走る音だけが聞こえるようになった。 『ザザ……ザッ、こちらBASE LINE。SEVENTY-SIX聞こえるか? オーヴァー』 「えぇ、大丈夫だったかしら? オーヴァー」  無線機の向こうからは元気な隊長の声が聞こえる。どうやら仲間は無事なようだ。 『あぁ、御陰様ってところだな。取り敢えず敵の車両と武器を鹵獲しよう。今ので相当無駄弾使う羽目になった。オーヴァー』 「了解。車の所で会いましょう。ところで皆無事よね?」 『ザッ……勿論だとも』  紬は高台に上り、四方を確認する。敵影は見えない。問題はないようだ。 「……ふぅ」  乱雑に髪をかき上げ、砂を大雑把に振り落とす。御嬢様としての姿はもうそこにはない。そこに居るのは鉛を銃で売買する1人の兵士だった。  --  敵車両の無線からはスピーカーが割れんばかりの勢いで叫び声がしていた。 『Supply! Supply! Request short count! Again! Request short count!』(補給部隊! 補給部隊! 応答しろ! 繰り返す応答しろ!) 「ASSULT、対応お願い」 「畏まりました」  斉藤が引っ掛けられたマイクを取る。 「HQ,HQ. This is Supply. Over.」(本部、本部。こちら補給部隊。どうぞ) 『Supply,Supply. This is HQ. What's up!? Over.』(補給部隊、補給部隊。こちら本部。どうした!? どうぞ) 「Find the enemy. The annihilation of it. To return immediately. Break over.」(敵を発見。これを殲滅した。 直ちに帰還する。どうぞ) 『Roger. Careful return. and please Responding quickly. Out. 』(了解。気をつけて帰還しろ。それと今度から早く応答してくれ。通信終了)  マイクを無線機に掛け直す。その顔からは笑いが滲んでいた。 「ホッホッホ。助かりました御嬢様。あのままでは包囲されて終っておりましたな」  陽気な笑い。とても死を覚悟しているような兵士とは思えない笑い声。いや、この男は寧ろ、戦争を楽しんでいるのだろうか。 「……まぁ何はともあれ、これで敵陣まで一気に行けるな。憂! 鹵獲した物はどうだった?」 「えーっと。AK-74が12挺、47が7挺。それに……M82A1が1挺とMinimiしかもMK48 Mod0が1機です」 「……バレットは流通してるとして、米軍特殊部隊の銃まで!? どういうことよ!?」 696 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/16(水) 02:25:38.38 ID:q4SDgp8k0 「分かりません。ただ考えられる事の1つとして、一番考えたくない事が有り得ます」 「米軍が裏で糸を引いてる?」 「……かも知れません。M82といい、MK48といい、米国で使われているものですし、また米国で生産されているものです」 「…………」  黙り込む澪と憂に和が否定する。 「有り得ないわ! 麦茶の起こした軍事行動の時だって米軍は協力したのよ!? なのに麦茶を支援する理由なんてどこにあるのよ!」 「ホッホッホ。米国の事です。日本欲しさに麦茶と手を組んだのやも知れません。彼奴らは自国の利益の為ならばどの様にでもなる玉虫色の国ですからな」 「クッ……如何すればいいのよ! 下手に手を出せば全滅かも知れないじゃない!」  足元の砂を蹴り飛ばす和。米軍への信用とそれを崩す証拠が挙げられたことによる不信との葛藤。そして何よりも国が人質に取られているような嫌な感覚。そんなイラつきを抑えられない和を宥める紬。 「落ち着いて和ちゃん。まだアメリカが裏切ったとは限らないわ。今は麦茶を連行することだけを考えましょう」 「…………」 「ね?」 「…………そうね。この際、アメリカが敵に回ったとしても構わないわ。私は私の信念を貫けば良い。それだけよね」 「それでこそ和ちゃんよ」 「落ち着いたなら、荷物をトラックに載せるぞ。2台で行ってもどうせ直ぐにバレる。夜襲をかけられるように準備しよう」 「「「「了解」」」」
417 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/14(月) 11:30:59.69 ID:vhXdn7wLO 「ハァ……ハァ……」  草一つ生えない不毛の地アフガン。彼女はそこに居た。 背負ったバックパックは鉛が詰まっているかの様に重く、肩から提げた水筒の水は既に底を突いていた。  ここで死ぬにはいかない。仲間と再び出会うまでは。仲間と祖国へ帰るまでは。そう、彼女は戦争に来ていた。 419 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/14(月) 11:47:54.09 ID:vhXdn7wLO  彼女が今の状況に至るまでは、彼女とその仲間、そして戦争至るまでの経緯を話しておかねばならないだろう。  西暦2013年、ゾロアスター原理主義を掲げた、拝火団代表『麦茶』は日本における革命をアラブ圏の諸国と実行。 警察、自衛軍による懸命の抗戦により、革命は失敗に終わる。この革命によって、麦茶及び、幹部には内乱罪、並びに外患罪で死刑判決が下される。  死刑判決から1年後、麦茶の公開処刑日にゾロアスター原理主義に賛同する国内の潜伏戦闘員によって麦茶は逃亡。国外逃亡を果たす。  それから国際指名手配にするも行方が分からぬまま、3年が過ぎた。 420 :目次@携帯 ◆index/9a7s :2009/09/14(月) 12:16:50.70 ID:vhXdn7wLO  麦茶がアフガン・カンダハルに潜伏しているという情報を掴んだ日本国政府は麦茶を生死を問わず、日本へ連行するように国際指名手配犯専門部隊、通称『アメノムラムモ』を送る。  そしてアメノムラクモから精鋭メンバーが先遣隊として送られた。先遣隊隊長としてコードネーム『BASE LINE 秋山澪』。 強襲、ゲリラ専門部隊からは『MADDY SISTER 平沢憂』『ASSULT BUTLER 斎藤』。 偵察、測量部隊からは『SEVENTY-SIX 琴吹紬』『CLEVER DISTANT 真鍋和』が選ばれた。  同年、数十に及ぶブリーフィングを終え、7月14日○二三○に佐世保飛行場から出発。同、一一○三にアフガン上空に到着した。 435 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/14(月) 13:41:06.12 ID:Zfb31HZy0 「それじゃ最後の確認だ。この後一一二五にはカンダハル上空に到着する。そしたらHALO(ヘイロー)で敵拠点付近まで一挙に詰める」 「隊長。迎撃の可能性は?」 「今回の事は相手には伝えてないとは聞いている。ただウチの御偉いさんが外交気にして言わない筈もない。が、可能性は低いだろう」 「……低い、ねぇ。HALOとはいえ、これだけの人数。敵さんも気付かない程馬鹿じゃないだろう」 『Arrived in Kandahar over two minutes later. Please Standby』  機内に降下準備の放送が流れ、各員が物資と機器の最終確認に入る。 「防寒良し、酸素補給良し、装備良し。……Cockpit.」 『Sir.』 「Already standby.」 『Roger. I will open hatch.』  機内後部のハッチが開き、赤ランプが付く。外気と空気が混じり合う。  ランプが緑色へと色が変わり、澪の檄が飛ぶ。 「Go! Go! Go! Go!」 「みんな! 地上でまた会いましょう!」 「旦那様、お嬢様は 「お姉ちゃん……行ってきます!」 「紬、出ます!」  4人が降下し終わり、1人残る澪。もう一度操縦室と通信をする。 「律……日本でまた会おうな……」 「Roger. ……靖国で会おうなんて考えないでくれ。お願いだから生きて帰ってきてくれ」 「勿論」  マスクを嵌め、ハッチの前に立つ。 「アメノムラクモ 秋山澪、出る!」 498 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/14(月) 21:16:28.00 ID:Zfb31HZy0  高度10,000m。それは低酸素、低温の世界。そこから自由落下で高度300mまで降下、パラシュートを開き着地する。これがHALOだ。また、視認しにくくする為に頭は常に地面を向くようにする。 「こちら、BASE LINE。各員、状況を伝えてくれ」 『ザッ、こちらASSULT。オールグリーン。オーバー』 『SEVENTY-SIX、同じく問題無し。オーバー。ザザッ』 『MADDY………高度計に異常。無線によるカバーを要請……』 「了解。開傘のタイミングはこちらから伝える。そのまま待機」 『了解……ザッ』 『CLEVERオールグリーン。少し横向きに空でも眺めようかしら』  確認をしている間にも高度は既に8,000mを切っていた。この高度まで降りてくると、自由落下による加速と空気抵抗との均衡が取れ、約300km/hで安定する。そして上空2,000m地点に達した頃だった。 『ザザッ……こちらMADDY。発光体を確認』 「発光体って! まだ上空2,000mよ!? 相手がそんな視認出来るはず……」 『いやはや、どうやら見つかってしまった様ですぞ。私めも発光体を確認しました』 『これだから外交問題っていうのは困るわ……』 「このままだと一網打尽だわ! 各自散開! ポイントAlphaで合流よ!」 『『『『了解!』』』』 563 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/15(火) 02:33:48.11 ID:+QQnECDw0  ……そして散開から今に至る。  空高く光り輝く太陽は彼女から体力を削り、その反射熱は彼女の精神力を殺ぐ。もうどれ位歩いただろうか? もうどれ位の時間がたっただろうか? PDAに表示されたポイントに到着しても良い頃だ。 「まだ……なの……?」  額に張り付いた前髪をかき上げる。作戦当初輝いたブロンドの髪は今となってはどこか色褪せた色へと変わっていた。 『ゴゴゴ……』  地鳴り、自動車の走る音だ。その場に伏せ、四方の確認に入る。 「太陽から見て7時、距離は1km位かしら。砂塵は……車両が2つ……」  車両の数から判断するに、敵の数は最低でも4人。1人で4人以上を相手にするのは危険極まりない。何より今は集合地点に行くことを最優先しなければならない。この場をやり過ごす為に匍匐状態を崩さずに息を殺す。 『ゴゴゴ……キキッ』  ブレーキ音が聞こえた。バレたのかだろうか。 「ッ……こんな時に!」 「!?????」 (敵だ!)  敵が車から降りてくる。数にして10人余り。が、此方に向かってくる気配が見られない。 「みんな……!」  残り少ない体力を振り絞り、敵背後へと走る。まだ紬に敵は気付いて居ない。この状況ならまだ不意を打てる。  敵背後、距離にして400m。敵は正面に気を完全に取られていた。 「間に合って……!」  敵に見つからないように匍匐状態でバックパックにしまってある、FN FALを取り出す。狙撃用にカスタマイズされたソレはセミオートのみになっており、軽量化と精度の向上がされていた。レールマウントにスコープを固定し、覗き込む。 「数15、死亡3。お願いだからみんな生きててね……!」 『ガウン!』  FN FAL独特の銃声が響き、敵が1人倒れる。 「??? ?????! ?」(どこだ!?) 『ガウン! ガウン!』  そしてまた1人、また1人と倒れていく。 「!??? ?? ????. ????? ?????? ?? ???? ??」(知るかよ隠れてやがるんだ!) 「!??????」(畜生が!)  それが彼らの最後の会話だった。その一言が今際の言葉となるとは知るはずもなかったろう。しかしこれが戦争である以上、何時死ぬのも不自然ではないのだ。 『ザザッ! SEVENTY! 聞こ…るか!?』 「その調子だと大丈夫そうね。背後から片付けてるからそのまま注意引き付けて」 693 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/16(水) 02:02:46.35 ID:q4SDgp8k0  それから数分後銃声は消え、風の走る音だけが聞こえるようになった。 『ザザ……ザッ、こちらBASE LINE。SEVENTY-SIX聞こえるか? オーヴァー』 「えぇ、大丈夫だったかしら? オーヴァー」  無線機の向こうからは元気な隊長の声が聞こえる。どうやら仲間は無事なようだ。 『あぁ、御陰様ってところだな。取り敢えず敵の車両と武器を鹵獲しよう。今ので相当無駄弾使う羽目になった。オーヴァー』 「了解。車の所で会いましょう。ところで皆無事よね?」 『ザッ……勿論だとも』  紬は高台に上り、四方を確認する。敵影は見えない。問題はないようだ。 「……ふぅ」  乱雑に髪をかき上げ、砂を大雑把に振り落とす。御嬢様としての姿はもうそこにはない。そこに居るのは鉛を銃で売買する1人の兵士だった。  --  敵車両の無線からはスピーカーが割れんばかりの勢いで叫び声がしていた。 『Supply! Supply! Request short count! Again! Request short count!』(補給部隊! 補給部隊! 応答しろ! 繰り返す応答しろ!) 「ASSULT、対応お願い」 「畏まりました」  斉藤が引っ掛けられたマイクを取る。 「HQ,HQ. This is Supply. Over.」(本部、本部。こちら補給部隊。どうぞ) 『Supply,Supply. This is HQ. What's up!? Over.』(補給部隊、補給部隊。こちら本部。どうした!? どうぞ) 「Find the enemy. The annihilation of it. To return immediately. Break over.」(敵を発見。これを殲滅した。 直ちに帰還する。どうぞ) 『Roger. Careful return. and please Responding quickly. Out. 』(了解。気をつけて帰還しろ。それと今度から早く応答してくれ。通信終了)  マイクを無線機に掛け直す。その顔からは笑いが滲んでいた。 「ホッホッホ。助かりました御嬢様。あのままでは包囲されて終っておりましたな」  陽気な笑い。とても死を覚悟しているような兵士とは思えない笑い声。いや、この男は寧ろ、戦争を楽しんでいるのだろうか。 「……まぁ何はともあれ、これで敵陣まで一気に行けるな。憂! 鹵獲した物はどうだった?」 「えーっと。AK-74が12挺、47が7挺。それに……M82A1が1挺とMinimiしかもMK48 Mod0が1機です」 「……バレットは流通してるとして、米軍特殊部隊の銃まで!? どういうことよ!?」 696 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/16(水) 02:25:38.38 ID:q4SDgp8k0 「分かりません。ただ考えられる事の1つとして、一番考えたくない事が有り得ます」 「米軍が裏で糸を引いてる?」 「……かも知れません。M82といい、MK48といい、米国で使われているものですし、また米国で生産されているものです」 「…………」  黙り込む澪と憂に和が否定する。 「有り得ないわ! 麦茶の起こした軍事行動の時だって米軍は協力したのよ!? なのに麦茶を支援する理由なんてどこにあるのよ!」 「ホッホッホ。米国の事です。日本欲しさに麦茶と手を組んだのやも知れません。彼奴らは自国の利益の為ならばどの様にでもなる玉虫色の国ですからな」 「クッ……如何すればいいのよ! 下手に手を出せば全滅かも知れないじゃない!」  足元の砂を蹴り飛ばす和。米軍への信用とそれを崩す証拠が挙げられたことによる不信との葛藤。そして何よりも国が人質に取られているような嫌な感覚。そんなイラつきを抑えられない和を宥める紬。 「落ち着いて和ちゃん。まだアメリカが裏切ったとは限らないわ。今は麦茶を連行することだけを考えましょう」 「…………」 「ね?」 「…………そうね。この際、アメリカが敵に回ったとしても構わないわ。私は私の信念を貫けば良い。それだけよね」 「それでこそ和ちゃんよ」 「落ち着いたなら、荷物をトラックに載せるぞ。2台で行ってもどうせ直ぐにバレる。夜襲をかけられるように準備しよう」 「「「「了解」」」」 513 :目次 ◆INDEX/woDo :2009/09/20(日) 15:26:45.07 ID:yx2Fd1kr0  それから南東へ200km程の距離。既に太陽は地球の影に隠れ、砂漠は灼熱から極寒へと表情を変えていた。 「HQ, HQ, This is Supply. Over.」(本部、本部。こちら補給部隊。どうぞ) 『Supply Supply. This is HQ. Over.」(補給部隊、補給部隊。こちら本部。どうぞ) 「Car failed. Return slowly to repair it. Break over.」(車が故障した。修理するので帰還が遅くなる。以上) 『Roger. Be carefull. Out.』(了解。気をつけろ。通信終了) 「さて、もう日も暮れましたぞ。如何なさいますかな?」  通信を終えた斉藤が問う。  砂漠という丘陵の起伏以外に何もない地は幸いにも新月だった。月明かりがないので、その分敵からの視認もされにくい。 「MADDY。敵の基地まであとどれ位?」 「直線距離にして3km。徒歩だとおそらく1時間前後で行けるかと」 「そう。なら歩きましょう。銃は……まぁ好きにして。取り敢えず飲料だけは準備しておきましょう」  そして準備から数分後。各々が準備を整える。 「……それじゃ行きましょう。私たちの任務を終えるために」 「Sir! Yes sir!」  その声は上官に対する信頼と戦友との絆が強く込められ、これから赴く死地に対する覚悟を改めて感じさせるものであった。 「麦茶……あなたのやった落とし前をつけさせて貰うわ」  ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: