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83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/21(月) 14:01:25.03 ID:vWGa9W0s0 「はあっ、律のやつしつこいんだから・・・・・・ふうっ」  廊下で立ち止まり、息をつく。  振り返ると律の姿は無く、どうやら逃げ切れたようだ。   「力になってあげたいのはやまやまだけど・・・・・・私はやっぱり文芸部だ」  みんなの前で楽器を持って立っている自分を想像するだけで、くらっときてしまう。  その点、文芸部はなんて気楽なことか。 「えーと、部室は・・・・・・ここ、か」  探し回り、ようやく見つけた。  何の変哲もないドアの奥にある世界。  想像するだけで、わくわくするものがある。 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/21(月) 14:10:49.06 ID:vWGa9W0s0 「す、すみませーん、入部希望・・・・・・」  ガチャリ、と扉を開ける。  瞬間、私は息を呑んでしまった。  私は確かに、清冽な空気を肌で感じた。  崇高で気高く、それであってどこかなじみやすい・・・・・・ 「・・・・・・はっ」  私は我に返った。  よく見てみると、部室内にはうず高く本が積み上げられて、そうして出来た山は今にも崩れそうだ。  お世辞にも清潔と言えるものではない。  なのにさっき覚えたあの感覚―― 「気のせい・・・・・・?」 「気のせいなんかじゃないわ」  凛、とした声が聞こえた。  私は慌てて、声のした方向へと振り向く。   91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/21(月) 14:16:33.84 ID:vWGa9W0s0 「今、あなたが覚えたその感覚・・・・・・」  そこには、一人の少女がいた。  パイプ椅子に体育座りをして、文庫本をぺらぺらとめくっている。  傍から見ればただ行儀悪いだけのその姿勢も、何故かその少女だとしっくりくる。  茫然とした私をよそに、その少女は言の葉を紡ぐ。 「私は想像するけれど、大好きなケーキを切り分けて嬉々として口に入れた時のような・・・・・・   そんなものじゃないかしら?」     93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/21(月) 14:22:31.83 ID:vWGa9W0s0  ……一体この人は何者なんだろう。  今まで私は、自分の気持ちを食べ物に喩える人になど会ったことがない。 「あ、あなたは……?」  つい、口から言葉が漏れてしまう。  私は、それくらい目の前の人のことが気になったのだ。 「私の名前は……」  そう言うと、少女は息を吸い込み 「私の名前は、天野遠子。ご覧の通りの”文学少女”よ」    平坦な胸を反らしながら、続けた――  

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