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ゆいあずでポッキーゲームとか ◆/BV3adiQ.o」(2009/09/23 (水) 22:08:56) の最新版変更点

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「ねぇねぇあずにゃん」 「なんですか」  ある日の休日、いつもどおり唯先輩のお部屋にお邪魔して、ベッドの上をごろごろしていたら、不意に唯先輩が声をかけてきた。  返事はしたものの、私はごろごろするのを止めずに、目線だけを動かして唯先輩を見る。  ベッドの上をごろごろして、だけど視線だけは一点に集中している……、冷静に考えるとかなり不気味だ。  だけど一々起き上がるのも億劫だし、そのままの状態で唯先輩の次の言葉を待つ。ここら辺のだらけ具合は絶対に唯先輩から感染されたものだろうなぁ……。  まぁそれも悪くないか……、なんて考えながら唯先輩を見ていると、おもむろにテーブルの上に置いてあったポッキーの袋を持ち上げて一言。 「ポッキーゲームしよっ」 「はぁ!?」  唯先輩の予想もしなかった言葉に、思わずごろごろしていた体をがばっと起き上がらせた。だらけている場合じゃないッ! 「ちょ、何言ってるんですか先輩」 「ん~? だから、ポッキーゲームしよって」 「どうしてそうなるんですか!」 「だって、ポッキーがあったから」 「な……」  この人はそんな理由でポッキーゲームをしようと思ったのか……。唯先輩の短絡思考に呆れて、開いた口が塞がらない。  相変わらずこの人の思考回路はよく解らない。本当に天然なのだろうか。狙ってやっていたとしたら物凄く質が悪いけど。  そんなことを考えている間に、唯先輩はポッキーの袋を開けて中身を取り出し、その中の一本を無造作に掴んで、チョコの付いている方をその小さな唇で銜えた。  そしてアイコンタクトで『あずにゃん、はやく』と伝えてくる。  ……や、まだやるなんて言ってないですよね? 勝手に始めないでくださいよ。  私がなかなか参加しないのに痺れを切らしたのか、唯先輩はポッキーを銜えたまま立ち上がり、私の目の前まで歩いてきた。 「ん」  そしてそのまましゃがみ込んで、私の口元にチョコが付いていない方を差し出してくる。それをすぐに受け取るのに躊躇して唯先輩の顔を見て、そして後悔した。  かなり時間が経ったからか、唯先輩が銜えている部分のチョコが溶けて、どことなくエロチックな雰囲気を醸し出している。  そして、その光景はポッキーゲームの終焉――キスをするという行為を嫌でも考えさせられる。  こんな形で唯先輩とキスをするのは嫌だと思う自分と、だけどこれを逃したら今後チャンスは無いだろうと予感している自分。  どっちも自分の本心なだけに、すぐに結論が出てこない。そして、私が考えている間にも、チョコはどんどん溶けていき、唯先輩の顔をべとべとに汚していく。  その光景を目にして、余計恥ずかしい気持ちになって、考えが空回りする。ぐるぐる、ぐるぐる。  そして、それなら早く決めてしまわなければと焦っても、考えが纏まる訳が無くてますます悪循環。  もういっそのこと唯先輩が無理やり唇を奪ってくれればいいのに。そうすれば私はただ身を任せるだけで済む。何も考える必要が無い。  そう考えて、どこまでも卑怯な私に苦笑する。唯先輩はポッキーゲームをしようと提案してくれて、なかなか決心できない私のためにずっと待っててくれてるのに。  これ以上、唯先輩に頼るのはだめだ。  唯先輩を見てみる。チョコが口元を汚しているのを気にせずに、ずっと私が反対側を銜えるのを待ち続けている唯先輩。  普通の人なら諦めるぐらいの時間が経っているはずだけど、唯先輩は諦めなかった。それは多分、私のことを信じてくれているからだろう。……自惚れ、かもしれないけど。  だけど本当に信じてくれていたら、その期待に応えないといけない。何にせよ、決心はついたんだから。 「唯先輩」  ずっと私を待ち続けてくれていただいすきなひとの名前を呼ぶ。すると、唯先輩は私の声ににっこりと微笑んで、改めてポッキーの端っこを私に向けてくる。  今度は躊躇せずにそれを銜えて、唯先輩にアイコンタクトで『よろしくお願いします』と伝えると、先輩は『こちらこそ』と返してきた。  そして、ポッキーゲームが開始される。唯先輩が溶けているチョコ付きの部分をを食べていき、私は上から垂れ下がってくるチョコに苦戦しながらも、なんとか齧っていく。  夢中でポッキーを食べていると、次第に唯先輩の唇が近付いてくる。そして―― 「……」  私と唯先輩の唇の間には、上下から押されてきたチョコの塊。それを確認すると、私と唯先輩は同時に動きをストップする。  ゴクリと、喉が鳴る。本当に目と鼻の先にある唯先輩の顔をまともに見れない。この緊張感、期待感を、先輩も感じてくれているのだろうか。  ふと、先輩はどんな顔をしているのだろうかと思って、視線を唯先輩に向けると、唯先輩はにやりと笑って、そして―― 「んちゅー」 「んぅ!?」  ――あっさりと、唇を奪われてしまった。                                                       初めてのキスは、チョコレートの味がしました。by中野梓 Fin

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