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157 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 20:00:02 ID:GRVM5cz3
夕飯を作りながら主人の帰りを待つ。エプロン姿もだいぶ板についてきたかな。
こんばんは。梓です。
時間を確認するため時計に目をやると、部屋の角に置かれたギターが目に入る。
私は不意に思い出す。
入部希望…なんですけど…
六年ほど前、私は高校に入学し、軽音部に入った。そこで彼女と出会い、素晴らしい時間を過ごした。
そして私が高校三年だった四年前の今日。
その日は私にとって一生忘れることはないだろう。
私の初恋の相手は、私と同じ女の子だった。
だらしなくて、可愛いものと甘いものが大好きな、部活の先輩。私はいつの間にか、その人のことを考えてばかりいた。
初めての気持ちに困惑した。彼女を見るたび、思うたび胸が締め付けられた。
ある日、私は思い切って告白した。これ以上自分の気持ちを隠すことができなかったから。
叶うことのない初恋だと思っていた。涙を堪えきれなかった。
しかし彼女は、そんなわたしを抱きしめてくれた。目に光るものを溜めながら、私の気持ちにこたえてくれた。
私たちは結ばれた。
それからの日々は、幸せ以外の何物でもなかった。毎日が輝いていて、数え切れないほどの思い出ができた。
愛し愛されることの素晴らしさを、彼女は教えてくれた。
先輩方や、友達も私たちを受け入れ、祝福してくれた。
ただただ、幸せだった。
しかし、そんな日々がいつまでも続いてはくれなかった。
先輩が大学に進学すると、会える時間は必然的に減っていった。
そして私の受験勉強が本格化すると、二人の時間は更に無くなった。
幸せだった日々が、段々と薄れていく…。
158 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 20:00:56 ID:GRVM5cz3
ある日の夜、彼女は大粒の涙を溢しながら私に言った。
女の子同士は、いけないことなの…?
私は愕然としながらも、何が起きたか悟った。覚悟はしていたから。そっか、ついにこの時が来たんだ…。
彼女が続けて言う。
どうしたらいいのか、わからないよ…
彼女は大学に進学すると、少なからず友達ができた。親しいと思える人には、恋人のことを打ち明けた。
しかし、大学は女子高とは違う。二人の関係を受け入れてくれる人は殆どいなかった。
彼女は傷ついた。
何度か男性にも誘われるが、彼女はその都度断りを入れた。
恋人がいると主張したかった。けれど出来なかった。また傷つくのが怖かったから。
なんで…
私に会う時間が減っていくにつれて、積もりに積もった不安が彼女を苦しめていた。
悩み事なんて無いような明るいヒトが、涙を流しながら私に訴える。彼女を悲しませている、苦しめている原因は、私…。
そんな私も会えない日々が続き、悩んでいた。
当然勉強も手に付かない。大事な時期にもかかわらず、成績は落ち込んでいた。
このままでいいの?このまま幸せになれる…?
決断の時が来た。
私たちは一晩中泣いた。私は彼女の顔を見つめ、そして決心した。
―これ以上、貴女から笑顔を奪いたくない。
私は彼女に告げる。
…私も、先輩も、このままじゃ幸せになれないんです…。だから、だから……
ジュー
「あちっ」
フライパンの油が手に跳ね、私はふと我に返る。
「あっ、焦げちゃう」
あの日々、あの時があるから、今の私がある。
ガチャ
「梓、ただいま」
「おかえり、遅かったね」
そして―
159 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 20:01:53 ID:GRVM5cz3
「実はね…アイス買ってきちゃった♪」
「ちょ、またですか!?」
「だって今日は、梓がプロポーズしてくれた記念日でしょ?」
「そうだけど…」
「あの日の梓の言葉、今でも覚えてるよ。
『…だから、二人で、二人で一緒に乗り越えていきましょう。唯先輩、ずっと一緒に暮らしてください!』って」
「ゆ、唯…恥ずかしい//」
「私、本っ当に嬉しかったんだよ~」
ギューッ
こうして私が大学に進学して以来、私と唯は二人で暮らしてきた。
私は現在大学生。唯は幼稚園の先生になったので、働いて家を支える主人なのです。へへへ。
「明日は皆と合わせる日だね。ムギちゃんのお菓子なにかなぁ」
そう言って唯は部屋の角に仲良く並んだ二本のギターを見る。
「もう、ちゃんと練習もするからね」
「えへへ、だーいじょうぶだよぉ」
―そして今も彼女の笑顔は、私も前にある。
「梓」
「はい?」
「これからも、よろしくね」
「…こちらこそ、よろしくです」
これからどんな辛い事があったとしても、私たちは二人で乗り越えていく、二人で一緒の道を行く。そう誓ったんです。
どんな道が来ようとも、そこのけそこのけです。
「梓、見てみて~」
「何?今ご飯作ってるのに」
「じゃーん、たい焼きアイス!」
「はうっ!?………………………た、食べたい」
「えへへ、ご飯食べてから♪」
「ううっ…そ、そんなのわかってるもん……ケチッ!」
おしまい
すばらしい作品をありがとう