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486 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:24:11.38 ID:jOQV4r5V0 【軽音部の一番長い日】 「はぁ…新しい曲の歌詞、思いつかないなぁ…」 あっ、ついついため息をついてしまった。 私はパソコンの前でぐったりとだれていた。 なんせ、今日は9月のくせに暑い。 もう中旬を過ぎているのに… これがいわゆる残暑なんだなぁ、と思いながら窓の外に目をやる。 「綺麗な月…」 そこには思わず見とれてしまいそうな満月が煌々と輝いていた。 そういえば、小さい頃にお月さまでうさぎさんが餅つきをしているなんて話をよく聞いたっけ。 あの頃の私は今より随分と純粋で…そりゃ今でもよく純粋とか無垢とか言われるけど、そんなの比較にならないくらい。 だから、ホントに信じてた。お月さまにうさぎがいること。 「あ~あ、月にいけたらいいのになぁ」 なんでこんなこと思うんだろう。 私達の生まれてくるずっとずっと前にはもう、アポロ11号は月に行ったって言うのに。 月を見ているうちになんだか眠気が襲ってきて、私はベットに自然と倒れこんでいた。 「おやすみなさい…」 ひとり言のようにつぶやいてから、部屋の電気を消して、私は目を閉じた。 488 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:29:57.49 ID:jOQV4r5V0 次の日、私は珍しくもなくいつもの時間に目を覚ました。 そしていつものようにテレビをつけた。 「なんか面白いニュースあるかなぁ」 歌詞のアイデアは色々な所に石ころのように落ちている。 私はそれを拾っては磨き、拾っては磨いて歌詞にする。 『~それでは天気予報です』 まぁ、詩人的に言えばそんな感じなのかな。 実際はホントにただ詩を書くなんだけど。 『~コトブキインダストリーはあなたの暮らしを豊かにします』 どうやら天気予報が終わってCMに入ったみたいだ。 私はもう朝食は食べてしまって、鞄に荷物も積み込み終わっていた。 だからかもしれない、少し今のCMが気になった。 「コトブキ…インダストリー…?」 コトブキと言うからにはムギの会社の系列なのかな? やっぱり凄いんだな。ムギって。 まぁ、いいや。学校にいかなくちゃ。 私は玄関から外にでた。 「おはよっ、澪っ」 目の前には律がいた。 489 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:31:43.04 ID:jOQV4r5V0 「おはよう、律」 いつものようにあいさつを返した。 「あちゃ~。どうしたの?浮かない顔して」 出会いがしらに突然何を言い出すんだコイツは。 「いや、歌詞が中々思いつかなくて…」 「だからって、朝から暗い顔してたら一日中暗くなっちゃうぞ」 「まぁ、そういうこともあるか」 律が黙って私の顔を見てきた。 「なんか…今日の澪おかしい」 「何が?」 「まさか、ニセモノ?」 「おいっ、そんなわけ…」 言い終わらないうちに、律は私のほっぺたを両手でつまんだ。 490 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:38:35.13 ID:jOQV4r5V0 「むにっ!?」 「変装してるのかっ?」 「むにむにっ!!」 「むむ…どうやらホンモノみたいだな…」 こいつ… 『ゴチン』 「あいたた…やっぱりホンモノの澪だなっ」 「当たり前だ!なんで私がニセモノなんだよっ」 頭をさすりながら、律が遅れてついてきた。 「いや、だって…」 「だって…?」 「なんでもない」 「なんでもない?」 「なんでもない」 「そっか」 私達は再び並んで歩いた。 そして他愛もない話をしていたら、いつのまにか学校についていた。 491 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:42:32.01 ID:jOQV4r5V0 学校につくなり、唯が後ろから抱きしめてきた。 「おはよ~っ!澪ちゃんっ!」 「お、おはよう唯」 はぁ…いつものことだけど、こういうスキンシップって私苦手なんだよなぁ。 でも、今日は昨日とは打って変わって、涼しいどころか少し寒いから、あったかくてちょうどいい。 私も唯の背中に手をまわした。 「唯…あったかいね」 「はわわっ!澪ちゃんが抱きついてくれたっ!」 「唯っ!私の澪を横取りするなよ~」 律にぽかぽか叩かれて、唯はたまらず私から離れた。 あったかかったのに… 「今度はりっちゃんだ~」 すかさず唯は律に抱きついた。 ま、これもいつものことなんだけど。 私は昇降口の喧騒から抜け出し、1人クラスに向かった。 492 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:43:22.93 ID:jOQV4r5V0 教室に入ると、和が黒板に何か書いていた。 「あら、おはよう澪」 「おはよう和。何してるの?」 「生徒会の仕事よ。ほら、もうすぐ選挙だから 「そっか。がんばって」 私はそのまま自分の席まで行って、荷物をおろして座った。 そう言えば、もうすぐ生徒会の選挙だったな。 ま、私には関係ないか… 朝のホームルームまで時間があったので、私は小さなノートを開いた。 歌詞を考えるのに使っているノートだ。 「うさぎ…うさぎ…うさぎ…」 口に出していたら、ノート中がうさぎだらけになっていた。 だめだ、集中しないと… と、思ったら担任の先生が教室に入ってきた。 いったん部活のことは置いとくか… 494 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:46:22.09 ID:jOQV4r5V0 気付いたら、あっという間に放課後になってしまった。 なんだか最近、時間がたつのが早い気がする。 授業に集中しているからだろうか? そういえば、年を取っていくにつれて時間がたつのを早く感じるってどこかで聞いたような… 「お~い、澪ぉ!」 教室の入り口から、律が私を呼んでいた。 「一緒に音楽室行こうよっ」 「今行くから、待ってて」 私は鞄とベースを背負うと、律と一緒に音楽室に向かった。 音楽室には、もう先に他の3人が来ていた。 「おいっす、梓」 「こんにちは~」 梓だ。やっぱり梓はいつ見てもかわいい。 私は再び荷物を下ろすと、ベースをケースから出し始めた。 495 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:53:39.80 ID:jOQV4r5V0 「あの、みんな…」 突然ムギが喋り始めたので、みんなムギに注目した。 「あっ、ちょっとお願いなんですけど…」 「どうしたの?ムギちゃん」 「その…モニターさんになってもらえませんか?」 ムギはちょっとうつむいて、可愛らしく眉を上下に動かしながら言った。 「も、もにたぁ」 「何それ?おいしいの?」 こ…こいつら… 「唯先輩、律先輩、モニターっていうのは新製品のお試しをするって意味ですよ」 「新製品?ムギちゃん、新製品を使わせてくれるの?」 唯が目をキラキラさせながらムギに迫る。 496 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 21:58:58.78 ID:jOQV4r5V0 「え、えぇ…」 「何?新製品って何?」 「が、楽器です」 「もしかして、新しいギ―太?」 ムギは黙ってうなずいた。 なんだ、新しい楽器のモニターか。 なんだか面白そうだな。 「面白そうだな、ムギ!やりたいやりたい!」 「ムギ先輩、やってみたいですぅ」 という訳で、私達は新しい楽器のモニターをすることになった。 「私の父の会社の系列で、楽器を作っているところがあるんです」 段ボールのから、その楽器を取り出しながらムギが言った。 …いつからあったんだ、これ… と、思わず箱に書いてある文字に目が行った。 497 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:05:54.14 ID:jOQV4r5V0 「コトブキ、インダストリー?」 「えぇ、コトブキインダストリーです」 「あ、やっぱムギの系列の会社なんだ」 「はい。それがなにか…?」 「いや、朝その会社のCM見たからさ」 「そうですか」 とりあえず全員に楽器が行きわたった。 私にもベースが渡されたが… 「ムギ…レフティある…?」 「あっ、ごめんなさい!こっちでした」 あるんだ… 「みんな、最初はとりあえず楽器をいろいろいじくってみたり、弾いたり叩いたりしてください」 「は~いっ!」 498 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:08:41.12 ID:jOQV4r5V0 という訳で、私はベースをいじり始めた。 そしてすぐに気付いた。 …?弦が無いぞ。 「なぁ、ムギ。弦が張ってないみたいなんだけど…」 「あ、弦はそこのボタンです」 私はムギに指差された、ベースの横の辺りにあったボタンを押した。 「うわっ」 突然ブゥンと音がして、弦が張った。 いや、張ったのか?これ… 本来弦のあるべき場所には、レーザービームが光っていた。 「レーザーベースです」 「レーザー?」 「はい。これでいちいち弦の張り替えを気にすることもありません」 「そ、そりゃそうだけど…ちゃんと弾けるのか?これ」 「もちろんですわ」 疑心暗鬼になりながらも、私は弾いてみることにした。 499 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:12:13.00 ID:jOQV4r5V0 弾けた…弾けてしまった… しかも、ちゃんと実際の弦の感覚が手に残っている。 「わぁっ!すごいっ!」 唯がすっとんきょうな声を上げたので、見てみるとそれからも同じレーザーが出ていた。 「あれは、レーザーギターってことか」 「そうですわ」 ムギはニッコリと笑った。 「凄いな…これ。一体どうなってるんだ?」 「それは、企業秘密ですわ」 「そうか」 なんだかんだいって、ちゃっかりしてるな、ムギも。 それにしても、音がいい。 それと、気付かなかったんだけど、凄く軽い。 まるで自分の体の一部のように扱える。 これはスゴいかも。 「本体には、超軽量の新開発炭素素材を使っていますわ」 「そ、そうなのか…」 やばい…ほしいかも… 501 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:20:27.31 ID:jOQV4r5V0 『ガチャン』 突然、音楽室のドアが開いた。 サングラスをかけた男が、2人立っていた。 「な、なにか用ですか?」 「それはコトブキインダストリーの新製品かね」 「そうですけど…」 なんで知ってるんだ? 「みろ、予想通りだぞ」 「大当たりですね、ボス」 「よし、さっさと頂戴するか」 な、頂戴だって!? 「あなた達!企業スパイね!!」 突然ムギが立ち上がって、男達の前に立ちはだかる。 「ほほぅ…これはどうも。お嬢様」 「うるさいわ。どこの者?タマハ楽器?それとも森井製作所?」 「そんなことはどうでもいいだろう。俺達はただ、それが欲しいんだよ」 そう言って、男の一人が私の持っていたベースを指差した。 504 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:27:51.04 ID:jOQV4r5V0 「だめよ!企業秘密は渡さないわ!」 「物分かりの悪いお嬢様だ。そもそもここに持ってきている時点で危険にさらしていることが分からないのか」 「あえて選んだのよ!あなた達には関係のないこだわ!」 「ふふ…泣けますなぁ、友情ってのは」 「だが、それが仇になったな」 男は懐から、何かを取りだした。 『バチバチッ!』 …!スタンガンかっ! 「ほら、おとなしくしないと…」 まずい、ムギが危ない。 「ムギっ!逃げろっ!」 だが、ムギはその場に立ったままだ。 「おとなしく寝てな!!!」 男がムギに飛びかかった。 506 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:36:03.69 ID:jOQV4r5V0 「うがっ!」 突然、男がとび蹴りを食らって吹っ飛んだ。 「お嬢様、お怪我は」 「あ、ありがとう。斉藤」 斉藤さんか… って、どこから入ったんだ? 「ちっ、久しぶりに喧嘩出来ると思ったのに…」 「律、何言ってんだ!」 「冗談冗談」 こいつの冗談は、時々冗談じゃないから困る… 507 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:38:21.58 ID:jOQV4r5V0 「見事にはまってくれましたな」 「な…何だと」 「まだ分からないのですか?」 この音は…パトカーか。 さすが斉藤さん。 「お前…騙したなっ!!」 「おやおや、今になって善人面ですか」 「うるさいっ!おい、逃げるぞ」 「あぁ、今日の所は諦めるか」 2人はそのまま音楽室から逃げ出した。 「無駄だ。外にはもう警察が待機している」 そう言いながらも、斉藤さんも2人の後を追って飛び出していった。 「うっ…」 ムギはその場にへたりこんで泣いていた… 無理もない。もう少しのところで襲われそうだったんだから。 「大丈夫か?ムギ」 「大丈夫よ…それよりみんな、ごめんね…」 508 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:44:21.86 ID:jOQV4r5V0 「な、なんで?すごい楽しかったし、ムギちゃんは悪くないよ」 戸惑いながら唯がムギに近づく。 「違うの…違うの…」 「ムギ先輩…」 「これは、おとりだったの…」 「おとり…?」 「えぇ…  最近コトブキインダストリーで開発している新型に関して  他の会社がその技術を盗み出そうとしているという情報があったの…」 ムギは両手で顔を覆ってしまった。 「それで、しっぽをつかむために…ごめんなさい。私、こんなことになるなんて思わなくて…」 「ムギちゃん…」 「ただ…みんなに新しい楽器を触らせてあげたくて…」 「ムギ、もういいよ。みんな分かってる」 私はムギの背中にポンと手を置いた。 509 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:47:50.41 ID:jOQV4r5V0 ムギが顔を少し上げた。 「みんな…?」 「あぁ。誰もムギを責めてなんていないぞ」 私は何か胸が熱くなっていた。 「澪…ちゃん…」 「ムギ…」 私はムギを抱擁して、背中をさすっていた。 ムギは再び泣いた。 私には何だか分かるような気がした。 ムギの背負ってるもの。 そしてその大変さを。 「これからも…みんなで仲良くしようね…」 「あぁ、これからも、ずっとな…」 「…………」 あ、寝てる。 511 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:54:23.53 ID:jOQV4r5V0 「じーっ」 「なんだ、なんだよ」 「澪…澪、なんか今日やっぱり変だぞ」 「なんだ律。こうしてほしいのか?」 「なっ!そんなわけじゃ…」 …みえみえだよ。 結局、企業スパイはほどなく捕えられ… そんなことはどうだっていい。 私達5人は、あらためて絆を深め合った。 「なんだか、今日はとっても長く感じるなぁ」 ムギをソファーに寝かせて、私はポツンとつぶやいた。 「それが人生ですよ。澪先輩」 「そ、そうなのか?」 「そうですにゃん」 梓…お前って奴は… Fin 512 :ギ―助 ◆CvdBdYFR7. :2009/09/26(土) 22:56:41.70 ID:jOQV4r5V0 律「この話に登場した会社名などは全て架空のものであり、現実とはまったく関係ありません」 澪「分かり切ってる事言わなくてもいいと思うんだけど…」 律「フィクション宣言!!」 澪「はいはい…」

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