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243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/19(月) 18:53:52.92 ID:FEfNszdH0 澪「なあ……本当に、行くのか?」 駅のホームで電車が来るのを待つ私と男。 私は手を口に覆うようにしてはあ、と息をついた。 冬の空気に包まれて冷たくなった手を暖める為に。 男「ごめんな、澪。もう会えないかもしれないな……」 彼は、深刻そうな面持ちで言う。 私と男、そして律は幼稚園の頃から一緒だった。 もしかしたらその前から一緒だったかもしれない。 私たちは遊ぶ時も怒られる時も、何をする時も一緒だった。 澪「そ、そんなこというな、よ」 その人が今日限りでいなくなってしまう。 私は涙をこらえてそういうのが精一杯だった。 244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/19(月) 18:56:53.07 ID:FEfNszdH0 唇をかみ締めて涙をこぼさないように俯いてると 隣で噴き出す様な笑い声が聞こえた。 男「ばーか、嘘に決まってんだろー! ちゃんと帰って来るよ」 澪「な、なな……! お、お前ぇ!」 そういって笑う男をぽかぽかと何度も叩く。 私よりもずいぶん大きい背中。 中学生に入るまでは私のほうが身長、高かったのになあ…… そしてすぐに電車は来た。 その電車は私の目の前で静止し、数秒が立ってドアが開いた。 男はこの電車で遠い、遠い所へ行ってしまう。 もう好きな時に会う事もできないと思うと涙は自然と溢れ、 乾いていたコンクリートの上に落ち、小さなシミとなった。 245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/19(月) 18:58:22.15 ID:FEfNszdH0 男「……じゃあ、もう行くな」 そう言って足元に置いていた荷物を持ち、 愛用のギターを肩にかけて電車に乗り込んで行く。 澪「あ……」 言葉を発そうとした途端、ドアが閉まる。 ガラス1枚に私の声は遮られ、男には届かない。 私の気持ちも知らずに電車は動き出していく。 やがて電車は豆粒の様に小さくなり、視界から消えた。 246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/19(月) 18:59:55.08 ID:FEfNszdH0 あれから2年。 私は去年桜ヶ丘高校に進学し、軽音楽部に入った。 男と「バンド組もう」という約束があったので文芸部に入る予定だったけど、 後に「高校卒業まで帰れそうにない」という連絡が来たので、 律の誘いにのって軽音楽部に入る事になった。 律「澪起きてるかー!!」 ガラッと勢いよくドアを開けて私にダイブしてくる律。 それを軽やかにかわし、私はパジャマを着替え始める。 律「……痛い」 澪「知らんがな……ほら、さっさと練習するぞ」 247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/10/19(月) 19:02:39.00 ID:FEfNszdH0 顔も洗って、準備も終わり私はベースをケースから取り出す。 私たちは今むぎの別荘で合宿中だ。 昨日は1日中遊んでしまって、練習ができなかった。 律「ええー? 今日は遊ぼうと思ったのにー」 唯「思ったのにー」 澪「唯、いつの間にいたんだ……」 はあ……『夢は武道館!』じゃなかったのか? いつもこんな調子で流石の私も気が滅入る。 ……あいつとの約束の為にも、練習しないと。 澪「今日は練習するぞ! 練習!」

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