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このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 3』というスレに投下されたものです http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253346269/l50 743 名前:錯覚[sage] 投稿日:2009/10/21(水) 00:38:15 ID:WEwWcpKB 「中野梓さん、私はあなたのことが好きです」 他に誰もいない、二人きりの音楽室。 そう言った唯先輩の顔は、いつになく真剣だった。それだけでこの告白が冗談の類ではないということが分かる。 でも…… 何故私なの? その場を沈黙が支配する。 私の答えは既に決まっていた。決まっていたけど、それを伝えることが出来るかどうかは全くの別問題だった。 「あ、あの、私は」 「他に好きな人がいるの?」 当たっていた。 「…………はい」 「澪ちゃんかな?」 気づかれていた。全部。 これまでの行動を思い返せば、それも当然だとわかる。 だって最近の私は……誰から見ても明らかに澪先輩にべったりだったから。 「そう……です」 私がためらいつつも同意すると、唯先輩はわずかに微笑んだ。 「そうなんだ。急に変なこと言ったりしてごめんね?もう忘れていいから」 そう言って唯先輩は部室を飛び出した。 廊下では、ずっと唯先輩のすすり泣く声が響いていた。 帰宅し、味のしない夕食を終え、私は自室のベッドに潜った。 あの時の唯先輩の作り笑顔と、泣き声が頭から離れなくて。 でも、仕方がなかったんだ。だって私が好きなのは……澪先輩なのだから。 自分の気持ちを無視して唯先輩を受け入れたとしても、そんな関係はすぐに終わってしまうし、第一そんなのは唯先輩に失礼だ。 唯先輩は、私が澪先輩が好きだということに薄々気付いていたようだ。だけど私に告白した。わずかな希望と、自らの勇気を頼りに。 しかし私は唯先輩の告白を受け入れなかった。 そして、先輩を深く傷つけてしまった。 多分、私と唯先輩が昨日までと同じように接することはもう出来ないだろう。 そして唯先輩の澪先輩に対する態度も、どこかぎこちないものになってしまうはずだ。 昨日までの日常はもう戻って来ないのだと思うと……とても寂しかった。そしてその原因が私だと思うと、罪悪感に押し潰されそうになった。 744 名前:錯覚[sage] 投稿日:2009/10/21(水) 00:39:23 ID:WEwWcpKB 「こんにちは……」 次の日、私は静かに音楽室のドアを開けた。 そこには既に私以外の全員が揃っていた。 「こんにちは、あずにゃん」 唯先輩は、一見いつもと変わらない元気な挨拶を返した。 しかし、瞼は赤く腫れていた。昨日あれからずっと泣いていたのだろう。 そして、いつものように私に抱き着いてくることも無かった。 何故だろう。 胸が、痛い。 「唯、どうしたの?なんか元気ないぞ」 泣き腫らした唯先輩の顔を見て、律先輩は尋ねた。 「そんなことないよ~。ほら、ほら」 唯先輩は作り笑いをしながら、大袈裟に手を振って元気をアピールする。 その様子は、見ていて逆に痛々しかった。 それを見かねて、澪先輩は椅子から立ち上がった。 「マジでどうしたんだよ唯!なんかあったなら私たちに相談」 「なんでもないって言ってるでしょ!第一、澪ちゃんには関係ないじゃない!!」 唯先輩が……あの、唯先輩が他人に大声で怒鳴った。 澪先輩たちは目を見開いて驚いている。 そして、その沈黙を破ったのも、唯先輩だった。 「……ごめん」 やっぱり私って最低だね。 そう、呟いた。 胸が、痛い…… 「ごめんね、あずにゃん」 先輩は、こちらを向いた。 聞きたくない。 もう、聞きたくない!! 無意識の内に私は部室を飛び出していた。 745 名前:錯覚[sage] 投稿日:2009/10/21(水) 00:41:28 ID:WEwWcpKB 気がつくと私は屋上まで来ていた。 どうして、どうしてこんなにも胸が痛いの? どうして涙が止まらないの? 私が唯先輩を傷つけてしまったから? 「……違う」 その罪悪感は、昨日感じ、悩んだ。 この胸の……心の痛みは、それとは全く違うものだった。 冷静になれ。 考えてみよう。 この痛みのきっかけは、唯先輩が私に抱きついて来なかったことだった。 さらに、傷ついた唯先輩を見ることで私は痛みに耐え切れなくなった。 つまり、どういうこと? 私の中での唯先輩の存在は、私が思っていた以上に大きかったということなの? この感情は…… と、浮かんだ考えをすぐに破棄する。 だって今私が恋をしているのは、澪先輩なのだから。 澪先輩。 軽音部の実質的な部長。演奏も上手。軽音部唯一の良心。とっても格好いい先輩。 私はこの先輩に恋を……       しているのか? 先程気付いた、私の中での唯先輩の存在の大きさと比べてみる。 澪先輩の存在も、私の中ではとても大きい。とても、とても。 でも、唯先輩とは比べられない。そんな、全く別の大きさだった。 つまり。 わかった。やっとわかったよ、わたしのきもち。 746 名前:錯覚[sage] 投稿日:2009/10/21(水) 00:43:09 ID:WEwWcpKB 「あずにゃん!!」 唯先輩が、ドアを開けて屋上に飛び込んできた。 「本当にごめんね!!私、なんにも考えられなくなっちゃって……あずにゃんのせいじゃないからね!!私がいつまでもうじうじしてるからいけなかったの。そのせいで澪ちゃん達に怒鳴ちゃったりして……」 唯先輩は涙をこぼした。 自分がみんなを傷つけて、さらに私に責任を感じさせてしまったことに対して。 ほんとに、優しい人だ。 「昨日は、本当にすみませんでした。先輩をここまで追い詰めてしまって。澪先輩達を驚かせてしまったのは、私の責任でもあります。だから、後で一緒に謝りに行きましょう」 私はまず謝った。昨日のことについて。さっきのことについて。 そして私は唯先輩の側へ行き、頭を軽く撫でた。 「それより私、気付いたことがあるんです」 唯先輩は私の目を見て、続きを促す。 「私も唯先輩のことが好きです。愛してます」 「……え?」 突然の私の告白に、唯先輩は戸惑っていた。 「今までは澪先輩への『憧れ』を恋だと錯覚して、自分が本当に好きだった人がわからなくなっていたんです」 唯先輩の表情が、驚きから喜びへと変わってゆく。 「本当……なの?」 「ええ。一度失った今ならばはっきりわかります。あなたが私に抱き着いてくることが、どれだけ嬉しかったのか。あなたの笑顔が、どれだけ私に幸せを与えてくれていたのか」 言ってしまった ものすご~く恥ずかしいセリフを。 「あ、あ……」 あれ?何か先輩の様子が…… 「あずにゃ~~ん!!!!!!」 「うにゃ!?」 ものすごい勢いで抱き着いてきた先輩により、私はバランスを崩して見事に転びそうになる。 しかし体が半回転したところで、パシッという音と共に、唯先輩に体を支えられた。 「ご、ごめん……」 「許しません」 そう言いながら私は体勢を立て直す。 「罰ですよ、唯先輩」 私は自分の唇を、唯先輩の唇に強く重ねた。 終 すばらしい作品をありがとう

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