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このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 3』というスレに投下されたものです http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1253346269/l50 939 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/11/05(木) 04:06:17 ID:xETI3J6K 「あずにゃん、アイス食べたくない?」 「は?」 今まで何度かその機会はあったけど、この瞬間ほど唯先輩の正気を疑ったことは無い。 外気温は約10度程度。吹き抜けていく風は、真冬のそれほどではないとは言え、寒風というに相応しい様相で容赦なく体温を奪い去っていく。 さっきまで焼け石に水程度の暖を与えてくれていたお日様も、今はもう地平線の下にもぐりこんでしまい、僅かなオレンジを空に残すのみ。 そんな中、この人は一体何を言い出すのか。 「先輩に自殺願望があるなんて知りませんでした」 「もー、そんなのないよ!ただ、アイス食べたいなーって思っただけだもん」 この寒空の下でそんなことを言い出す辺り、そうとしか思えないんですけど。 それともなんですか、実はマゾっ気があるとか言い出すつもりなんですか。先輩がその気なら、少し頑張ってもいいですよ。 なんて言ってみても、所詮私は猫なんですけど。ええ、あずにゃんですから。でもいつか下克上して見せます。 と、思いっきり話が逸れた。それもあらぬ方向に。 とりあえず、アイスは却下です。間違いなく風邪を引きますから。そうなると苦労するのは憂と私なんですよ。 だからやめてくだ――ってもういない!? 「あずにゃーん!」 遠くから聞こえてくる声。つい一瞬前まで私の前であいすーあいすーと言ってた唯先輩は、いつの間にかはるか先、両手にアイスを持ってこちらに駆け寄ってきていた。 これは、唯先輩の行動力と素早さに驚愕するべきなのか、考えに没頭するあまりその行動を看過してしまった自分の迂闊さを呪うべきなのか。 ああ、もう。どっちだっていい。どっちにしたって、目の前の現実は変わらないから。 「はい、あずにゃんの分」 そう言いながら、満面の笑みで左手のアイスを私に差し出してくる唯先輩が私の目の前にいるということは。 「…ありがとうございます」 こう差し出されてしまっては、受け取るしかない。受け取ったからには、食べるしかない。 ナイスタイミングで吹き抜けていく風。寒い。掛け値なしに寒い。そしてそれよりも確実に冷たいであろう白い塊が、今は私の手元に握らされている。 なんて拷問ですか、これは。 そんな私の心情なんて露も知らないって笑顔で、先輩ははむっとアイスにかじりついてる。 「おいしいよーあずにゃん!」 ええ、見ればわかりますよ。そんな幸せそうな笑みを浮かべてるんですから。 はあ、と溜息一つ。食べればいいんでしょう、食べれば。何でこんな寒い中アイスなんて食べなきゃいけないんだか、全然わかりませんけど。 親の仇のようにそれを睨みつけ、その冷たさに最大限の覚悟を固めつつ、私はぺろりとその表面に舌を這わせた。 940 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/11/05(木) 04:07:14 ID:xETI3J6K 「…おいしい」 「でしょ~」 うかつにもそう口にしてしまった私に、唯先輩はにこっと笑ってみせる。 本当にうかつ。だけど、仕方がない。だってそれは、自分でも驚くほどに美味しかったのだから。 「寒い中で食べるアイスって、かくべつだよね!」 「……そうですね」 はむっともう一口、今度は大きくかじりながら、そう答える。実際、認めるしかない。自分でそう口にしたことだし、それに本当にこれは美味しいから。 確かに、冬に食べるアイスは美味しいって聞く。私も、コタツで食べるアイスは別格だと思っていたし。 でも、なんかそれだけじゃない。それだけじゃ、自分はここまで思えない。 「えへへ~」 じゃあどうしてかなって思ったとき、隣で幸せそうに笑う唯先輩が目に入った。 私にこの美味しさを伝えられたってことが嬉しいんだろう。ちらちらとこちらを見てきて、目が合うとにこっと笑って、またアイスをかじってる。 そして、私はその理由がわかった気がした。 「なんかしあわせ~」 そう言って、くすくす笑う唯先輩。 きっとそれは、アイスが美味しいからだけじゃない。確かに、このアイスはとても美味しいと思うけど。 だけど、これがこんなに美味しいのは、寒さのスパイスってだけじゃなくて、きっと唯先輩と一緒だから。 美味しいって思うことを私に分けてくれて。唯先輩はそれを、私に分けることができて。 そして、今それを分け合って、一緒に味わってるってことがそうなんだ、ってことだと思う。 だって、今の私がまさにそんな気持ちだから。 「私もですよ、先輩」 空いている手で、きゅっとその肘にしがみつく。すると唯先輩は、慣れた仕草でするりと腕を絡めてきた。 さっきよりも近いその距離で、少しだけ見つめあって、くすりと笑い合う。 そしてまた、はむっと二人並んでアイスを口にする。本当に、本当に美味しくて、そして幸せ。 冷たくて凍えそうだけど。実際私の唇は冷え切ってしまっていて、きっと青みがかってしまっているのだろうけど。 だけど、そんなのたいした問題じゃない。だって。 もう少ししたら、先輩が優しく暖めてくれるだろうから。今口にしたアイスより、もっと、ずうっと甘い方法で。 そうですよね、唯先輩? (終わり) すばらしい作品をありがとう

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