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『ねーねーあずにゃん、そのギターに付けてるのなんていうの?』◆I2uP4Cqq/s」(2010/07/09 (金) 16:58:41) の最新版変更点

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275 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:42:42.52 ID:801rwPQ0 という訳で頑張って書きます 一応酉 以下本文 季節は春。 と言ってもその春は終わりかけで、夏になろうかと言う時期。 もちろんかなり前に桜は散ってしまい、葉桜になった。 小鳥のさえずりが目覚まし代わりになり、私は目を覚ます。 窓から太陽のさんさんとした日差しが降り注いでる。 少し体を動かして、寝ながら窓ごしに空を眺めた。 雲ひとつない青空。まるで海のように青い天井。 ……こんな日に寝たままはもったいない。 二度寝、という選択肢は頭から削除することにした。 起き上がって、ベッドの上でうーん、と伸びを1つ。 携帯を開いて時刻を確認。まだ7時。 布団をはらいのけて立ち上がり、ぼやけた目で私は部屋を出た。 276 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:46:09.54 ID:801rwPQ0 トイレで洗面所に向かう。 はっきりとしない視界、目をこすりながら水道の蛇口をひねり、 ざばざばと音を立てながら私は顔を洗う。水が少し冷たい。 数分立って洗い終わり、鏡を見ながらタオルで濡れた顔を拭く。 少しハネた髪を櫛でとかし、髪を横に括ってツインテールに。 ……うん。朝の準備完了。 洗面所から出て私は再び部屋に入った。 タンスからお気に入りの服を取り出す。 パジャマの服を脱ぎすて、服を着た。 なんてことのないいつもの日常。 でも今日はなんだか特別な気がした。 ふと窓を見ると、電線に止まっている2匹雀がじゃれあっている。 そんな今の私とはかけ離れたほのぼのとした日。 机から携帯とipodやらをポシェットに入れて、家を出た。 277 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:53:49.23 ID:801rwPQ0 まだ7時を少し過ぎた時間なのでひとどおりは少ない。 近所のおばあさんが玄関のお掃除をしていたり。 これからどうしようか。 気分もいいし、天気もいいことだし公園にでも行こうかな。 朝の公園でアコギの弾き語り……なんていうのも悪くない、よね? そう思いついて、私はまた家の玄関のドアを開けた。 靴を脱いで家にあがる。 小走りで自分の部屋にあるアコースティックギターを手にとり、 ギターケースにチューニング、ピック、カポなどといっしょにしまい、家を出た。 そういや最近、ムスタングばっかりでアコギは弾いてなかったなぁ…… 278 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:59:15.00 ID:801rwPQ0 お腹が空いたので途中コンビニによっておにぎりを買ったりして、 なんとか公園に到着。 アコギを弾く前に、ベンチに座って買ったおにぎりを食べることにした。 ……うん。やっぱり鮭のおにぎりはおいしい。 というか、コンビニのおにぎりは家で作るのと違っておいしい。凄く。 何でおいしいのかはよく分からないけどね。 コンビニで買った二つのおにぎりを食べ終えて、アコギを取り出す。 ヘッドに「Morris」と書かれたギター。 私がエレキギターを始める前から使っていたギターだ。 もっといいギターなんていくらでもあるけど、今では愛着が湧いて中々手放せない。 チューナーで6弦から順に音を合わせていく。 『ねーねーあずにゃん、そのギターに付けてるのなんていうの?』 『へ? これですか? チューナーですけど……』 279 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:05:18.33 ID:801rwPQ0 ふと思い出してしまった。 私が高校時代に入っていたけいおん部のある先輩の言葉。 やたらスキンシップしてくるけど、なんだかんだで一番好きな先輩だった。 いや、恋愛的な意味じゃないよ? ……そういや、学校卒業してから全然会ってないなぁ。 あの頃は「夢は武道館!」なんて言ってたのに。 先輩たちが卒業してから、私の組んでいたバンド「放課後ティータイム」は解散。 いわゆる自然消滅、ってやつ。 卒業してからもバンドは続いていくなんて、甘い考えだった。 梓「って、こんな事考えてる場合じゃなくてアコギ弾かなきゃ」 いつの間にか休めていた手を再び動かす。 ちょっと時間はかかったけど、無事にチューニングは完了。 ピックを口にくわえ、ギターを肩にかけて弾く体制に入る。 何を弾こうかな。 久し振りに「タイムトラベラー」でも弾こうかなぁ。 280 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:14:19.71 ID:801rwPQ0 ~~♪ 梓「うすぐらい屋根裏でー 見つけたそーのーとびーらー」 ジャカジャカ、とストローク。 流れるようなイントロと、爽やかで哀愁漂うな感じのサビ。 私はこの曲が大好きだった。 梓「時代のすーきーまーへーとー 繋がるーたーそーがーれーに」 道端を歩いて行く人たちが私の方を向いたり、 少したちどまって私の演奏を聴いてくれたり。 朝方だから人は少ないけど、どこかで私の演奏を聴いてくれる人がいる。 それに数は関係ない。 このどこか胸の奥から湧き上がるこの感情。 別に人が聴いてくれるから弾く、って訳じゃない。 でも、このどこかモヤモヤした様な感情が私は好きだ。 梓「さーあー 僕が産まれるまーえーのー さーあー」 281 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:21:12.61 ID:801rwPQ0 「タイムトラベラー」の演奏も終了。 さっき公園で買ったお茶をのびながらのんびりすることに。 ……少し休憩してからまた何か弾こうかな。 唯「あれ……あず、にゃん……?」 突然後ろの方から声が聞こえた。 私が高校時代の時、嫌っていうほど聞いた先輩の声。 いきなり声掛けられたもんで、びっくりして少しお茶を吐いてしまった。 ……うぅ、はしたない。 梓「唯……先輩?」 唯「あ、やっぱりあずにゃんだ!!」 振り向くとあの頃と何も変わらない唯先輩の姿。 変わった所と言えばいつもつけてたヘアピンを外している。 こどもっぽかった先輩が凄く大人に見えた。 282 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:26:16.11 ID:801rwPQ0 唯「すっごい久し振りだねーあずにゃん!」 何一つ変わらない笑顔で私に抱きついてくる先輩。 持っていたお茶がこぼれそうになる。 梓「ちょ、先輩……苦しい」 そう言う私の言葉なんて聞かないように頬ずりしてくる。 昔と変わらない、あったかくてやさしい。 なんだか、久し振りに会ったことと、 色々な気持ちが混ざって少し泣きそうになってしまう。 ……あ、お茶こぼれた。 283 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:35:54.78 ID:801rwPQ0 梓「先輩、そろそろはなしてくだひ……」 唯「あ、ごめんごめん。あずにゃんに会えたのが嬉しくて」 えへへ、と彼女は笑った。 怒ろうとしたのに、先輩の笑顔を見るとそんな気じゃなくなる。 どうやら今と昔も変わらないらしい。 ……卑怯だ。 梓「久し振りですね、先輩」 唯「だねー、もう4,5年振りくらいかな?   でもびっくりしたよ、収録に向かう途中の道であずにゃんに会うなんて」 梓「……そういや唯先輩、今はもう人気ミュージシャンですもんね」 唯「えへへ……それほどでもないよ」 そういってまた照れた様に笑った。 284 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:48:02.53 ID:801rwPQ0 唯先輩は2、3年前にメジャーデビューした。 彼女は本当に1教えると10覚える様なタイプの人間で、 みるみるうちにギターの腕は上達して行って、私より上手くなってしまった。 歌も上手だし。 それになんだか先輩の演奏は惹かれるものがある。 彼女がプロになって、人気が出るのはさほど時間はかからなかったらしい。 ……先輩がプロデビューするのは必然だったんだ。 そう、自分に言い聞かせる。 唯「あずにゃんはここでなにしてたの?」 梓「ああ、せっかくの休みなんでギターの弾き語りをちょっと」 唯「ほえー……私は今日も仕事だよ……」 羨ましそうに私を見る。 不思議な気持ち。本当に昔と変わらない。 会えたのは凄く嬉しいけど、それに反して嫌な気持ちが私の中を渦巻く。 285 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:58:21.24 ID:801rwPQ0 なんで放課後ティータイムは消滅してしまったんだろう。 お菓子食べて、まったりしたりもしたけど、 私はあの緩い空気が嫌いじゃなかった、むしろ好きだった。 卒業しても、ずっと続くと思っていた。 傲慢かもしれないけど、私たちならきっとプロになれる。そう思っていた。 でも、先輩たちが卒業してから、唯先輩に連絡が取れなくなってしまった。 そして、バンド活動ができなくなって消滅。 ……私たちの高校時代はなんだったんだろう。 唯「あずにゃん? どうしたの?」 梓「……で」 唯「え?」 梓「なんで唯先輩はプロになったんですか?」 唯「そりゃ音楽が大好きだからかなぁ。やっぱり音楽って――」 梓「ならなんで連絡してくれないんですか!!」 286 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 14:06:31.03 ID:801rwPQ0 唯「あ、あずにゃ……」 梓「私は信じてたんですよ!? いや、私だけじゃない。   澪先輩も律先輩もムギ先輩も……みんな……」 梓「卒業しても放課後ティータイムは不滅って、言ったじゃないですか!!」 梓「なのに、先輩は電話してもメールしても帰ってこないし……   メンバーが一人でも欠けたら放課後ティータイムじゃない。   だから唯先輩から連絡してくれるまで私たちは練習しなかった」 梓「そして少しずつ私たちの関わりも無くなっていって……」 梓「放課後、ティー、ぐすっタイ、ムは…ぁ…!!」 唯「…………」 気がつくと私は泣いていた。 ぽろぽろと私の涙がアコギに落ちる。 水滴はボディを滑って、私の足元の地面に吸い込まれていった。  *未完*

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