92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/15(水) 15:55:38.90 ID:qLB+CNF/O
彼女が「肉」に興味を持ったのは他愛ない出来事がきっかけだった。

彼女が妹とじゃれ合っていた時、何となしに妹の腕に噛みついた。
それはよくある子どもの悪ふざけであった。
しかし、彼女は「肉」に噛みついた時の感触、そして「肉」の周りに染みついた味
に、悪ふざけで抱く思い以上のものを感じた。
以来、彼女の中ではしばしば「肉」へ惹かれる気持ちが生まれた。
だが、「肉」を味わうことが何を意味するのかという常識が、その気持ちを抑え込ん
でいた。
そうして、彼女は、歪んだ好奇心、ずれた欲望とともに、常識的に生きてきた。

しかし、最近ではその気持ちが殊に頻繁に生まれ、かつ強いものとなっていた。

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/15(水) 16:00:14.41 ID:qLB+CNF/O
彼女は「常識」を壊したくなかった。
しかし、沸々と湧き上がる強い「欲望」は、ついに彼女の「常識」を超えてしまっ
た。
部活を終え暗くなった帰路についた彼女は、「常識」の埒外にいた。

人気のない暗い公園の茂みの中、彼女は中学生の少女、おそらく彼女の妹と同じくら
いの年齢の少女と共にあった。
少女は既にこと切れていた。
そのツインテールの少女は、既に彼女の「欲望」の犠牲となっていた。
いや、正確には、「欲望」の犠牲となるのはこれからなのだが。

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/15(水) 16:06:07.13 ID:qLB+CNF/O
彼女は勢いよく少女の腕にかぶりついた。
しかし、骨が邪魔をして、少女の細腕を噛み切るのは、容易ではなかった。
彼女は鞄からナイフを取り出した。
そして、太ももの厚い肉にナイフをあて、それを切り取った。

血の滴るそれを、彼女は口へやった。
彼女は静かに咀嚼した。
口の中に広がる言い知れぬ味。
そして、それを胃の腑へ送った時、彼女に満ち足りた思いが芽生えた。

同時に、飽くなき「欲望」が。

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/15(水) 16:12:27.44 ID:qLB+CNF/O
それから、彼女はしばしばこれを行った。
その度に、彼女の中には、満ち足りた思いと、さらに求める思いとが生まれた。
そして、繰り返すごとに、求める思いが肥大化していった。

「欲望」の波は、恐ろしい速さと強さで彼女を支配した。
とうとう、彼女は最愛の妹さえも、「欲望」の犠牲としてしまった。

彼女の中で、何かが崩れる音がした。

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/15(水) 16:18:41.12 ID:qLB+CNF/O
彼女の「欲望」を満たすための行為は、常に人目のない所で行われていた。
それは、「常識」のなせる技であった。
しかし、もはや彼女の意識の中に、そのようなことは存在していなかった。

その翌日、彼女は部室で凶行に及んだ。
黒いロングヘアーの少女を殺害し、まさに食らわんとしていた。
遅れて部室にやってきた二人の少女が、狂気に満ちた彼女を取り押さえ、その後、かけつけた警官により、彼女は逮捕された。

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/15(水) 16:24:07.22 ID:qLB+CNF/O
彼女は留置場にいた。
その狭い世界の中に、彼女の「欲望」を満たすものがあろうはずはなかった。
彼女は煩悶した。 彼女は狂乱した。

だが、彼女は気づいてしまった。
「欲望」の贄がすぐそばにあることに。



終わり

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最終更新:2009年07月15日 20:13