124 :午後の麦茶 ◆aozzrhnk3A :2009/07/21(火) 18:09:45.66 ID:F7Llbh4hO
「うおおおおおっ!」
闇夜にとどろく声が一つ。
それは、お姉ちゃんの叫び声でした―――
何事かと思い、私はお姉ちゃんの部屋へ駆けていきます。
「お姉ちゃん、うるさい!何時だと思って――――」
そこには、お姉ちゃんの姿はありませんでした。
窓は破られ、ギターもありません。
どこに行ったんでしょう…?
129 :午後の麦茶 ◆aozzrhnk3A :2009/07/21(火) 18:13:52.60 ID:F7Llbh4hO
こんばんは、平沢唯です!
今日の私はなんだか違う!体中の血がたぎってくるの!
「ひゅ~…さっぶぅい!でも足が止まんない!」ダッダッダッ
いてもたってもいられなくて、冷たい夜を駆け抜ける私。
相棒のギー太も一緒です。
132 :午後の麦茶 ◆aozzrhnk3A :2009/07/21(火) 18:19:44.89 ID:F7Llbh4hO
しばらく走っていると、雨が降ってきました。
「あ、雨だ!負けてらんないね、ギー太!」
今は夢へ一直線。とりあえず練習がしたい気持ち。
「まずはりっちゃんちだ!いっくぞー!」
「ふぅ…そろそろ寝るか」
そして、寝ようとしてみる。なにやら外が騒がしい…
すると、玄関が叩かれる音がした。
ドンドン!ドンドンドン!
136 :午後の麦茶 ◆aozzrhnk3A :2009/07/21(火) 18:30:48.78 ID:F7Llbh4hO
「な、何だ!?新手の強盗か!?」
掃除機を分解して、筒を武器にして降りる。
「こ、こわくなんかねーぞ!つ、通報してやり(いてっ、噛んだ)」
「はぁーーーっ!!」ドォオオーーン!
「うわあああ!?破られたぁ!」
…そこに立っていたのは、手が血だらけの唯だった。
「りっちゃん!練習しようよ練習!血がたぎって仕方ないんだ!」ハァハァ!
「お、おい待て何で興奮してるんだお前は?」
「りっちゃんもこれを聞けばわかるよ!」
唯にイヤホンを渡されたので、聞いてみることにした。
♪…熱くなーれ!夢見た明ー日ーをー!
必ずいつか捕ーまえる!
走り出ーせ!振り向くことーなーくー!
…私の中で、ぷちんと何かがはじけた。
140 :午後の麦茶 ◆aozzrhnk3A :2009/07/21(火) 18:35:22.22 ID:F7Llbh4hO
「…おい唯、上がれよ」
「ふふ、さすがりっちゃん。血がたぎるでしょう?」
ああ、最高の気分だ―――
そして、私は階段を駆け上がる。
一段、二段。いつしか三段跳びで駆け上がっていた。
「うっしゃあ唯!飛び出すぞうおおあああ!!!」ダダダダダ!
「りっちゃん隊長!どこまでもついて行きます!」ダダダッ!
ガッシャァァアーーーン!!!
…こうして、私は初めて空を飛んだ。
142 :午後の麦茶 ◆aozzrhnk3A :2009/07/21(火) 18:44:48.10 ID:F7Llbh4hO
―――眠れない。
私、秋山澪は夜の繁華街に繰り出していた。
なんだか、眠れないのだ。体中がなぜか火照っている。
自由って何だろう。私が眠れないのはどうしてだろう。
ビルの隙間で考えたりしてみたけど、わからなかった。
のどは渇いている。いっそ、荒野でも目指すか?
「…いや、無茶な考えだな」
そのとき、一陣の風が吹いた。
「欲望なんて解き放てばいいんだよ、澪ちゃん!」
な…んだと…?なぜ唯がここに―――――
「誰にも止められないんだろ?そのあふれる胸のざわめきは」
律…ああ、そうか―――私が眠れないのは…
「クックックッ…」
と、私は笑う。不気味なほどに。
「練習だ。練習がしたいぞ律ぅうーーー!!」
冷たい夜の繁華街に、私の叫びが響いた。
145 :午後の麦茶 ◆aozzrhnk3A :2009/07/21(火) 18:54:28.72 ID:F7Llbh4hO
部屋中に響くピアノの旋律。
ベートーベンは私の憧れだった。
いつか私もこんな曲を弾いてみたい―――そんな思いで、私はピアノを始めたのだ。
だけど―――――
「まだ、足りない…何かが…!」
「ムギちゃんに足りないもの…それは燃える心だよ!」
ハッとして振り返る。
「唯ちゃん!?」
「ほら、動き出せよ。その程度じゃ満足できないんだろ?」
「ハヤク、レンシュウ、シヨウ………!!!」ハーッハーッ
りっちゃん、澪ちゃん…
そうか、この子たちも何かが足りないと思ったから、練習を―――
「ふふ…やるわ、私やるわよ………!音楽の教科書にも載ってやる……!!!!」
パリィイイン!!!
強化ガラスを体一つで打ち破り、私は宙と一つになった―――――
こうして生まれたのが、ふわふわ時間である。
完
最終更新:2009年07月22日 14:52