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312:ゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/23(木) 00:00:00.71 ID:OQO1NHFH0
 ある秋の日のこと。
「キャンプに行こう!」
 唯先輩がまた突拍子もないことを提案してきた。
「キャンプ……ですか」
 正直、今までに何度も同じようなことがあったために、あまり驚かない。
 だけど、やっぱり気になることは気になってしまう。
「どうして今頃キャンプなんかに……?」
 特に何の記念日でもなかったはずだけど……。
「うん? なんとなくだよ~」
「そ、そうですか……」
 やっぱり思い付きだったんですか、先輩……。
「どこに行きたい?」
「どうして私が行くことが前提なんですか」
「来ないの……?」
 うるうる。
 あぁ、またこの眼ですか……。
「行きますよ。行きますからそんなに寂しそうな眼をしないでください」
「ほんと!? やったぁ!」
 きらきら。
 それまでの雰囲気はどこにいったのか、先輩はすっごく楽しそうだ。
 ……わざとやってるんじゃないのかな。
「じゃあじゃあ、どこに行くっ?」
 でも、楽しそうな先輩を見てるとなんだか嬉しいな。
「ここなんかどうでしょう?」
「え~? それならこっちのほうが絶対いいよぉ~」
 こうやって何かを一緒に考える時間を大切にしなきゃ。
 ……せっかく、一緒の時間を過ごせてるんだから。
「――じゃあここにしよっ」
「ここですか、わかりました」
 場所も決まったことだし明日に備えて今日は早く寝よう。
338 :ゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/23(木) 00:23:14.12 ID:OQO1NHFH0
 翌朝。
 私は思ったより早く目が覚めてしまった。
 時計を見てみる――5時30分。
 ……思った以上に楽しみだったみたい。
 特にやることがないから散歩でもしてみよう。
「唯先輩を起こさないように、そっと……」
 どきどき。
 抜き足……差し足……忍び足……。
「……ふぅ。やっと玄関まで来れた」
 それにしても、そっと歩いたのに結構音がみしみしなるんだな……。結構怖い。
 靴を履いて、ドアを開ける。
 そぉっと、そぉっと……。
『ギイィ――』
 !?
『ぃ――バタン』
 ……ふぅ。やっと外に出られた。
「それにしても――」
 寒い。ただひたすらに寒い。
「今の時期ってこんなに寒かったっけ……?」
 問いかけてみるけど、当然誰も答えてくれない。
「やっぱり、朝だからなのかな」
 今までこんなに早く起きたこともないし、まして外を散歩するなんて初めてのことだから解らない。
 それだけ浮かれてたってことかな……。
「まぁ、こんなことを考えてたって意味が無いし、とりあえず歩こう」
351:ゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/23(木) 00:48:45.33 ID:OQO1NHFH0
 ――とはいったものの。
「どこを歩けばいいのかな」
 それ以前に散歩の意味っていったい……。
 脳内辞書で検索――あった。
 えっと……?
『[名](スル)気晴らしや健康などのために、ぶらぶら歩くこと。散策。「公園を―する」』
 へぇ。
「――って意味とかどうでもいいの! それよりも早く散歩しないとっ」
 でも、気晴らしとかする必要なかったよね……?
 特にストレスが溜まってる訳じゃないし。
「健康に気を使うような歳じゃないし……」
 まだまだ若い……よね?
 ――ってこれじゃ散歩する意味ないじゃないっ!
 どうしよう……。意味も無く散歩してもなぁ……。
『ごろごろ~』
 そこでなぜか唯先輩のことを思い出した。
 ――そうだ。
「唯先輩が起きてたら何かして、寝てたら布団に潜り込もう」
 そうと決まれば早く家に帰らないと。
392:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:16:23.71 ID:OQO1NHFH0
「ただいま……」
 そぉっと、そぉっと。
 あくまで音をたてずに廊下を移動する。
 どうしてそこまで慎重になる必要があるのかと聞かれると答えられない。
 だけど、行くときもそうだったんだから帰りもそうあるべきだと思う。
 だから私は音をたてない歩き方を覚えておきたい。
 ……いつか夜這いするときに必要だろうし。
477 :ゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/23(木) 12:55:13.47 ID:OQO1NHFH0
 がちゃっ。
「失礼します……」
 そろーりそろーり。
 ようやく唯先輩の部屋に入ることができた。
 さて唯先輩は――
「すやすや」
 ――すっごく気持ちよさそうに寝ていた。
「……まぁ、普通は寝てて当然だよね……」
 私が異端なだけだろうし。
 ……でも、ちょっと残念。唯先輩も早起きしてくれてたら嬉しかったのに。
「むにゃむにゃ……あずにゃぁん……」
 ……夢に私が出てるのかな。
「――あ」
 すっかり忘れてた。
 唯先輩が寝てたら布団に潜り込もうって決めたんだった。
「せまくなりますが、我慢してくださいよ……」
 聞こえる訳がないけど、一応断っておく。
 ……ふかふかだ。
 なんだか唯先輩に包まれてるみたいで気持ちいい。
 ぎゅっ。
 そんなことを考えていると、急に体を抱きしめられた。
「唯先輩……?」
 もしかして起きてるんですか?
「あったかぁい……すやすや」
 ……やっぱり寝てる。
「抱き枕……にされてるのかな」
 暖かいし唯先輩に抱きしめられてるしですごく気持ちいい。
「それじゃ、おやすみなさい」
 ――今ならよく眠れるかな……。
720:支援代わりにゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/23(木) 20:00:04.09 ID:OQO1NHFH0
「……ずにゃん、あずにゃん起きて」
「ん……」
 誰かの声と揺さぶられる身体のおかげで目が覚める。
「あ、起きた」
「ぇ……?」
 まだぼんやりする頭で声のしたほうを見てみると――
「おはよっ、あずにゃん」
 ――そこには、寝巻き姿の唯先輩がいた。
「あ、どうも、おはようございます……」
 ……そうじゃないっ。
「どどどどうして唯先輩がいるんですか!?」
 そう、私の隣で寝巻き姿の唯先輩がいるという事実がおかしい。
 いつの間に入ってきたんだろう……?
「どうしたもこうしたも……ここ、私の部屋だよ?」
「へっ?」
722:支援代わりにゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/23(木) 20:01:12.34 ID:OQO1NHFH0
 辺りを見渡してみる。
 ……片付いていない部屋は、確かに唯先輩の部屋だ。
「じゃあ、どうして……」
「そんなの、こっちが聞きたいよ。どうして私のベッドで寝てたの? いつの間に潜り込んだの?」
「え……」
 確かに、ここが唯先輩の部屋なら私が潜り込んだということになる……よね。
「どうしてだろ……」
「その様子だと自分でも解らないのかな? まあ、そんなことはいいや」
 そう言うと、唯先輩はドアに向かってしまう。
「あれ、どこにいくんですか?」
「朝ごはんを食べにね~。あずにゃんも目が覚めたら降りてきてね~」
「あ、はい」
 ……ばたん。
 唯先輩がいなくなったせいで、なんだか寂しくなってしまう。
 それにしてもどうして――あ。
「ああああ!!!」
 今朝の行動を思い出してしまった。
 ……その後かなりの時間悶絶してしまったのはここだけの秘密。
885 :ゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/23(木) 22:38:57.14 ID:OQO1NHFH0
 あの後、ありったけの恥ずかしさを放出してからリビングへと向かう。
「あ、やっと降りてきた」
 ドアを開けると、唯先輩はイスに座って待っていた。
 テーブルの上には、トーストやスクランブルエッグなどが置かれている。
「えっと……もしかして、待っててくれてたんですか?」
「そだよ」
 さも当然のように頷く先輩。
「べ、別に、先に食べててくれて構わなかったのに……」
 正直、すっごく嬉しいけど、それは唯先輩には伝わらないようにする。
 ……ぜったいからかわれるもん。
「だって、人と一緒に食べたほうが楽しいもんっ」
「それはそうですが……」
 それだけのために朝ごはん食べるのを待つような人じゃないでしょう。
「それに、あずにゃんの感想も聞きたかったしね」
 びくっ。
「そ、そうですか……」
 そういえば、これ唯先輩が作ったんだった……。
「さ、食べて~」
「は、はい」
 どきどき。
 恥ずかしいときとは別の意味で心臓の鼓動が速くなる。
309 :ゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/24(金) 16:28:55.19 ID:j2aVnGUo0
「そ、それじゃ――」
「うん」
 ぱくっ。
「ん……もきゅ……もきゅ」
「ど、どうかな……?」
「――おいしい」
 本当に、これを唯先輩が作ったのだろうかと思うほど。
「ほ、ほんと!?」
「はい、ほんとにおいしいです」
「よかったぁ~」
 その後は、二人しておいしいおいしい言いながら朝ごはんを平らげた。
310 :ゆいあずでキャンプとか ◆/BV3adiQ.o :2009/07/24(金) 16:30:55.57 ID:j2aVnGUo0
「それじゃ、朝ごはんも食べたことだし」
「やっと出発ですね」
「うん!」
 靴を履いて荷物を持ち、新たな冒険への扉を開く。
 ――唯先輩と一緒なら、きっと楽しいはずだよね?



Fin