このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 2』というスレに投下されたものです
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235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 18:12:54 ID:aNdU7R/m
「あ・・・降ってきちゃった・・・。」
部室に1人残って練習をしていた私はギターを下ろし、窓に近づいた。さっきまでぐずついていた空はついにこらえきれなくなった様に大粒の雨を降らせている。
「ハア~、参ったなあ~。今日傘持って無いよ・・・。」
そうつぶやいた途端音楽室のドアが勢い良く開いた。反射的に振り返ると先に帰った筈の唯先輩が立っていた。
「あずにゃんまだいたんだあ~♪」
唯先輩が早速飛びついてきた。正直言ってこんなに蒸し暑い日にはあまりくっつかないで欲しい物だ。
私は先輩を素早く避けた。
「ブウ~!あずにゃんのいじわるう~。」
唯先輩は膨れっ面で私に抗議してきた。
「所であずにゃん何してたのお~?」
「私はギターの練習です。せ、先輩こそ何してたんですか?
先に帰った筈じゃあ・・・。」
「私は追試だよ~。この前のテストで赤点取っちゃって・・・。テヘッ♪」
「・・・テヘッ♪じゃ無いですよ先輩。受かったんですか?」
私が半ば呆れ加減で聞くと唯先輩は待ってましたとばかりにカバンの中から回答を取り出した。
「私が本気を出せばこんなモンですよお~!」
確かに回答にはマルがびっしり書かれている。
「澪先輩に教わったんですね・・・?」
「ギクリ!あずにゃん何でわかったの?まさかストーカー・・・?」
「ち、ち、違いますよお~!」
「ふふふ。あずにゃんかあいい~♪
一緒に帰ろっか!」
236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 18:13:55 ID:aNdU7R/m
唯先輩は私に飛びっきりの笑顔を投げかた。
「・・・ヒキョウです・・・。」
笑顔に思わずそんな言葉が漏れる。何時からか唯先輩を特に気にかける様になったのは・・・。

「んん~?あずにゃん傘無いの?なら入れてってあげるよ~♪」
「!!!い、良いですよ!そ、そんな先輩に悪いですし・・・。」
「ダメだよあずにゃんが風邪引いちゃうよ~!」
何故かドキドキと高鳴る心臓・・・一体どうしたんだろう?
「そ、それじゃあお言葉に甘えて・・・。」
「らじゃあ~お言葉に甘えられます!」
唯先輩はそう言ってピンクで花柄の傘をさした。先輩の可愛い物コレクションの一つだろう。私は先輩の隣にいそいそと入り込んだ。
「ではあずにゃん家に出発~。」
「お、お願いします・・・。」
237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/03(月) 20:01:15 ID:drZtKN/u
「でね~」
「そうですか……」
 それから5分ほど。唯先輩はずっと喋ってくれてるけど、私は生返事しか返せない。
 なぜなら、胸の動悸を抑えるのに必死で唯先輩の言葉に耳を向けられないからだ。
「あずにゃん、どうしたの?」
「へ?」
 気がつくと、唯先輩が足を止めて私の顔を覗き込んでいた。
「なんだかぼーっとしてたよ?」
「それは……」
 言えない。唯先輩には絶対に。
「それは?」
「な、なんでもないです。さ、行きましょう」
「う、うん……」
 そして、また二人で歩き出す。
「憂がこの前ね~」
「憂らしいですね」
 それからしばらくすると、ようやく会話ができる程度までには治まった。
「でね――あっ」
 突然、唯先輩が足を止めた。
「どうしたんですか?」
「雨、止んでるよ」
 唯先輩はそう言って傘を畳む。
 すると――
「わぁ……」
 ――雲の隙間から太陽が顔を出していた。
「すっかり晴れですね」
「そうだね~」
「それじゃ、行こっか」
 言いながら右手で私の左手を掴まれる。
「あ、あの……」
「うん? なぁに?」
「この手はいったい……」
「手を繋いだほうが楽しいよ~」
 答えにならない答えを返して、唯先輩は繋いだ手を上下に振り出した。
「子どもですか……」
「さぁ! あずにゃんちにれっつご~っ!」
「……はぁ」
 ――結局、家に着くまでまた胸の動悸を抑えることになった。



Fin



すばらしい作品をありがとう

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最終更新:2009年08月04日 12:57