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108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 19:39:43.32 ID:qim6yeEAP
二人の少女が机を挟み、額を突き合わせて睨み合っている。
「何でだよ!」
「何でもだ!」
「嘘つくなよ!」
「ついてない!」
額をごりごりとぶつけ合う様子に周りの少女たちは手を出すに出せない。どうして
こんなことになっているのか理解できなかった。概ね仲の良い二人がこんな風に
感情をむき出しにしているなんて。
「言えよ!」
「いやだ!」
音楽室に入った時には既に交戦状態だったので、こういう状態になった経緯もわからない。
「り…律っちゃん?どうして、ケンカ…してるのかな~?」
唯が恐る恐る声をかけると、額を突き合わせたまま律が目だけをきっと彼女に向ける。
「コイツ、裏切ったんだよ」
「裏切ってない!」
「あの、何があったんですか?」
梓の言葉に澪は急にばからしくなったのか、律から離れドスンとイスに腰を下ろす。
「もういいだろ…律」
「よくない!人にさんざん喋らせておいて自分はダンマリか?」
「律が勝手に喋り出したんだろ!」
「聞いてたじゃないか!」
「まあまあ、何があったのか教えてくれる?」
その場をとりなそうとする紬の言葉に二人が同時に主張を始める。

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 19:40:47.37 ID:qim6yeEAP
結局状況が把握できたのは15分以上経ってからのことだった。どうやら男の好みに
ついて律がしゃべくりまくり、澪はそれを聞いていたが自身はそれを語ることを拒否
した結果、この状況に至ったらしい。女子高生らしいといえば女子高生らしいし、
二人らしいといえば二人らしい喧嘩の理由だが。
「うーん…」
当事者以外の少女たちは考え込む。どちらが悪いかといえば先に喋り出した律だが、
それを聞くだけ聞いておいて頑なにそのテの話題を拒絶する澪も少々いただけない。
「もう帰る!」
ぱっと腰を上げ澪は帰り支度を始める。
「逃げるのか!」
「馬鹿ばかしい」
挑発に取り合わず澪はさっさと音楽室を立ち去ってしまった。律は腰を浮かせたものの
追いかけようとはせず、すぐに腰を下ろし机の上に足を投げ出す。
「あ~もう!いつもああなんだよアイツは。ちょっとオトコの話が出るとすぐあれだからな」
「オクテだよね、澪ちゃん」
「殿方に興味がないのでは?」
紬の妄想が膨らむ前に梓が巧みに話題を逸らす。
「お、男嫌いっていうわけじゃないんですよね?」
「嫌いじゃなかったはずなんだけどな。あの事件までは…」

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 19:42:27.12 ID:qim6yeEAP
5分前から音楽室の入口でうろつく少女の姿があった。ドアに手をかけては放し、ぶつぶつ
言いながらうろついては、またドアに手をかける、先ほどからしきりにこれを繰り返している。
「律がわるいんだぞ…」
気まずかった。喧嘩はよくしているがあの手の話題であそこまで衝突したのは初めてだった。
確かに何も話す気がないのに一方的に喋らせたのはこちらが悪かった。しかしやはり律が悪い。
昨日の夜からそれを繰り返しているだが。
「あーもう!」
やがて意を決してドアを開けるが
「あれ…」
誰もいなかった。律だけならまだしも全員が遅刻するのは珍しい。どうせ律は電話で起こして
やらなかったのでほぼ確実に遅刻しているはずだ。
「集合時間まちがえたのかな…8時30分…だよな」
ぶつぶつ言いながら机に近づくと、二つの人形が置かれているのが眼についた。
「あれ」
澪はじっとそれを見つめる。

114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 19:43:23.98 ID:qim6yeEAP
「くしし…寄ってきた寄ってきた」
「本当にあれで大丈夫なんですか?」
「大丈夫、今でもお人形遊びは奴の得意技だからな」
機材室の隙間から4人は息を殺して澪の様子を窺っていた。見ている間にも澪は顔を近づけ、
二つの人形にを交互に見つめる。直後はっと息を飲む仕草で、人形の正体に気づいたのがわかった。
そして人形を恐る恐る手に取る。
「おしっ、食いついたぞ」
やがて澪は周囲に目を配り誰もいないことをたしかめて席についた。
「始まるぞ、ひひ、澪の女の子タイムだ」
澪は右手に男の子の人形、左手に自分の姿をした人形を持ち、向かい合わせる。
「久しぶりだね、澪ちゃん」
まるで人形が喋っているかのように、律が男性の声音で言うと
「うん、久しぶりだね、こーちゃん。こんな所で会うなんて」
唯がそれに応えて澪の台詞でかけあう。
「あの時はごめんね、本当はあんなこというつもりじゃなかったんだ。でも友達がいたから
恥ずかしくて」
「うん、わかってる」
「あのときは言えなかったけど本当は澪ちゃんのことが好きだったんだ」
「嬉しい…ウルウル~」
「…ベタベタですね」
「それが澪ちゃんのいい所ですよ」
二つの人形が抱き合わせられると、律と唯も抱き合う。
「澪!」
「こーちゃん!」
「ずっと一緒だよ」
「うん。しあわせに…してね。チュ~」
「…澪先輩ってその、ぶっ飛んでますね。あの歌詞を作るだけあります」
「ひひひ…これからだぜ、奴の本気は――うわっ?」
律の目の前に何かがぽとりと落ちてきた。落ちてきたそれは彼女たちの足の間をかさかさと
走り抜けていく。一瞬の静寂、直後4人の少女が絶叫と共に機材室を飛び出していった。

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/05(水) 19:46:08.53 ID:qim6yeEAP
人形を手にした澪と4人の少女が対峙する。
「…」
やがて澪の腕がぷるぷると震え始めた。
「み~た~な~」
余りの握力に澪の手の中にある人形がぶしゃっと弾ける。
「ひっ…」
梓が腰を抜かしてぺたんと座りこんだ。
「おい!逃げるぞ!梓!」
「こ、腰が抜けちゃって…」
「すまん梓、お前のことは忘れない!」
即座に律は駆け出す。残る二人は律についていくか梓を助けるか迷い、一瞬躊躇したが、
すぐに律を追って走り出した。
「ひどいです~!」
梓の背後ではでは澪が指をぼきぼきと鳴らしていた。

3人は学内を逃げ回ったがすぐに唯が捕まり、15分後に紬が、その5分後に律が捕まり、
結局全員が捕まってしまった。捕まった4人は揃って正座させられ1時間に渡り説教を受けた。
「いいかお前ら。人の好みなんてものは――」
「第一律が言う異性との交遊関係は要するに――」
「私だって興味がないわけじゃないが――」
「――というわけだ。みんなわかったか?よろしい。ではこの人形は没収する。そうだな。
唯、明日までに憂に直してもらって持ってくるように。な、何笑ってんだ!文句あるのか!
別にいいんだぞ、捨てちゃっても…ただ、ちょっと勿体ないから引き取ってやるだけだ!」

ちゃんちゃん♪