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908 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 19:29:44.07 ID:+WfzUwLxO
『不協64和音』


♪ああ~神様お願い二人だ~けのdreamタイムく~だ~さ~い♪
携帯電話が着信音をがなり立てる。ちなみにこの着うたは文化祭ライブで録音したものを私が編集して作った自作品だ。
「…もしも」
「澪ー!明日ヒマだろー!?」
幼なじみの聞き慣れた声がスピーカーから溢れ出す。
「律、用件を先に言ってくれるか?」
「実はさー――」
909 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 19:35:19.74 ID:+WfzUwLxO
そして私たちは家電量販店にいる。昨日の電話で用件、集合場所のみを伝え聞きやってきた先がここだ。
もっともここに用事のある人物は律ではない。
「電気屋さんってすごい大きいのねー」
初めての遠足に大はしゃぎの小学生みたいなムギが目を爛々と輝かせて感嘆の句を発している横で
「ほわー。迷子になっちゃいそー」
実際昔は迷子になって家族を困らせたであろうにその自覚がまるでない雰囲気の唯が感想を漏らす。
「唯先輩っ!ふらふらして本当に迷子にならないで下さいよ!」
いつの間にか軽音部内で唯の保護者と化した梓が早速くぎを差した。

912 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 19:39:48.90 ID:+WfzUwLxO
いつものクラブメートが部室ではなくて家電量販店に集合し向かった先は携帯電話コーナー
「唯!ほらどれにするんだー!」
律が唯を促し二人は携帯電話売り場へと吸い込まれていく。今回の主役はふわふわしながら律に引っ張られていった。
「澪ちゃん、私たちも見ようよ!」
ムギに誘われ私も歩き出す。
今回の集まりはちょっと前のある出来事がきっかけだ。
少しだけ嫌な空気になったのだけれどそれは別の話と言うことで割愛しておく。
結論だけ言ってしまえば唯のケータイが壊れかけているので見繕ってやろう…ということになったのだ。

915 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 19:45:19.60 ID:+WfzUwLxO
「うわー!なんかいっぱいあるー!あ、これ可愛いな~!」
さっそくあっちやこっちや動き回る唯に
「お!新しいの出てる!私もそろそろ機種変しよっかなー」
すでに目的が変わっている律
「色んなことができるのねー。あ、これだと電話がかかってきたと見せかける機能が使えるのねー」
何やらマニアックな機能にこだわるムギへ
「ムギ先輩!こっちだと裏返しにするだけで着信音を止める機能がー」
などとさらにマニアックな部分を解説する梓。
こないだも言った気がするが、こうなると私以外にまとめる人間がいない。
916 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 19:50:14.45 ID:+WfzUwLxO
仕方ないので唯のケータイ選びを助言することにした。やれやれ。
「唯、見た目も大事だけど機能も確認しなきゃ。ほら、この機種だと電池の持ちが悪いぞ。」
ホントー?なんて聞いてくる唯にヒアリングを行い条件に合った電話を探してやる。
「澪ー、お前携帯電話の販売員に向いてるんじゃないかー?」
冗談。人見知り症候群の私に接客業が務まるはずがない。律の戯れ言を適度に受け流す。
「なーなー、私も電話変えたいから一緒に探してー」
「律、お前はどうせ大した機能使わないから今のままでいいだろ。」
唯の電話選びに集中したかった私は律を一喝した。まあ私が律とお揃いのケータイを使っているので変えてほしくないだけだが。

918 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 19:56:32.23 ID:+WfzUwLxO
「あ!澪ちゃん澪ちゃん!これすっごく可愛い!」
唯が持ってきた電話は小型のスライド式ケータイだ。確かに唯が求める機能もカタログを見る限り入ってるし悪くなさそうだが…
「唯、それソフトバンクの電話だからauの電話じゃ駄目だぞ。」
そう、唯が持ってきた830Nはソフトバンクの電話である。しかし唯は現在auなので、するなら機種変ではなくMNPだ。
「えむえぬぴぃ?」
唯に番号そのままに他社へ移動できる制度だと伝えると
「なんかよくわかんないけどそーする!でも会社によって使えない電話があるなんて不便だねー」
とあっさり移動を決め込んだ。それと後半の不便さについてはそのうち解消されるから我慢してくれ。

920 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 20:01:12.04 ID:+WfzUwLxO
色も鮮やかなオレンジに決めた唯は「これくーださい!」なんて元気よく店員さんに声を掛けていた。

さて、ムギと梓はと言うと…
「すごい!ISO感度が以前の5倍以上!?」
「しかも6軸の手ぶれ補正まで付いてますよ!あ、抗菌パネル搭載してる機種がこっちに…」
さらに深い議論をしていた。

「あきたーもーかえろーぜー」
律がたるそうにしてる。唯がカウンターで契約をはじめてから10分ほど経った。
プランの話とかわかってなさそうな唯だが、はじめはオプション関係一式加入だろうから知る必要もないか。
余談だけど「当店では○○に加入して頂けないと買えません」と言うのは電気通信事業法により違法と定められている。
もし買いに行った店で加入を強制されたら別の店を探すべきかもしれない。
また最近は○○加入で頭金免除とかオプション加入で○円キャッシュバックとかも耳にする。
しかし頭金を払ったりした場合のが安上がりに済むことも多いので注意が必要だ。
921 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 20:05:22.87 ID:+WfzUwLxO
まあ、この辺は加入オプションが自分に必要か否かを見極めて…と唯が帰ってきた。
「おっかえりー!新しいケータイはどーよ!あ、保護フィルム剥がさせろよなー!」
帰れるというのと新しいモノに目がない律は途端に元気娘へ戻る。

「うふふふ…かえなかった。」
…は?
私と律はクエスチョンマークを頭に浮かべた。某ゲームの敵兵が不審に思った場所を調べて「気のせいか」とつぶやくシーンみたいだった。
「なんかねー、本人確認書類がないから駄目とかー未成年だから親の同意書がいるとかー色々言ワレチャッター…」
ぷしゅーと頭から湯気が立ちのぼる唯。
彼女の頭では到底理解しきれない情報量を店員から持ち返されたらしい。

どうやら唯は手ぶらでやってきたらしく、しかも新規加入になるから親の同意書なども必要になるようだった。
「みんなごめんねー。来週お父さんとまたくるよー」
とりあえず買う決意は変わってないので今日の集まりも無駄にはならなそうだ。

925 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/07/30(木) 20:09:34.02 ID:+WfzUwLxO
「しゃー!じゃあ帰りにお茶しよーぜー!」
律に促され私はムギたちを呼びに行く。

「おっお嬢さんこれ以上のサービスはちょっと…」
「もうひとこえー♪」
「オプション加入必須なんて詐欺ですよ詐欺!それを許すんだからせめてこれぐらいは…ですよねムギ先輩!!」

何やら仁義なき戦いを大いに繰り広げていた。

彼女らを説得し、店員さんに泣きながら感謝され店を出るのに小一時間かかった。もう一度言っても良いだろうか。
どうしてこの部活はまとめ役がいないのだろうか…

ため息まじりに
「やれやれ…」
と私は口にした。

まあ…いいんだけどね。

終わり