このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 2』というスレに投下されたものです
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432 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/19(水) 00:35:56 ID:t6U7ZYJP
「あ~ずにゃん」
音楽室へと向かう私の後ろから耳に届くその人専用の私のあだ名。直後、周りの目を気にすることなく私を優しく抱きしめる。
それはいつもと変わらない唯先輩のスキンシップ、……と思ったらいつもと違うところがひとつだけ。
「何ですか、その紙?」
唯先輩の手には一枚の紙が握られていた。
「あ、これ?まあ読んでみて」
私は促されるままに唯先輩から渡された紙に目を通す。
「えーと……、
 『小さいからって見くびるな!なめてかかるとケガするぜ!ツインテールをなびかせながら、じゃじゃ馬だって乗りこなす。
  ネコミミつけたらたちまちみんながメロメロに!軽音部の小さなアイドル!ギター、あずにゃん!』
 ……何ですかこれ?」
「ライブのときのメンバー紹介に使えないかな、と思って考えたんだけど」
唯先輩は、どうだと言わんばかりの表情で私を見ている。
「あの……、保留でお願いします」
「えー、ダメだったー?」
ついさっきまでの自信満々の表情とはうってかわって、唯先輩は不満そうな顔を私に向ける。
「いや、ダメっていうわけじゃないんですけど……。こればっかりはライブでやることなので他の先輩の意見も聞いてみないといけませんし」
「そっか、そうだよね。じゃあみんなにも提案してみるよ」
たぶん律先輩が一蹴しちゃうんだろうなあ、そう思ったけど言わぬが仏、私はダンマリを決め込んだ。
「そうだあずにゃん。私のも考えてみてよ。あずにゃんならどんなふうに私を紹介してくれるのかな?」
唯先輩の突然の注文に、私は普段の、そしてライブのときの唯先輩を思い浮かべながら考える。
「うーん、そうですね……
 『いつもはふわふわ癒し系。でもやるときはやるんです。愛しのギー太を抱えれば、ミュージシャンへと大変身。
  音楽の楽しさを知った私を止めることは誰にもできない!それじゃあ今日もいっちゃうよー!
  ボーカル&ギター、平沢唯!』
 こんな感じでどうでしょうか?」
「おおっ、あずにゃん凄い!すぐに思いつくなんて。私なんか、さっきのつくるのに二時間近くかかったのに」
――私のことを考えてくれてたのはうれしいですけど、せっかくだからその時間、ギター練習にあてましょうよ……
もちろんそんなこと言えるはずもなく、ありがとうございますとだけ答えて私はその場をやり過ごす。
そんなやり取りを交わしながら音楽室に到着すると、すでに他のみなさんはティータイムを楽しんでいた。
「よっ!悪いけど先にお茶してたぞ」
「りっちゃん、これ見て。今度のライブのメンバー紹介のときに使えないかなと思って考えてきたんだけど」
律先輩の形だけの謝罪の言葉を無視して唯先輩はついさっき私に見せた紙を律先輩に渡す。
早く自作のメンバー紹介文、というより私の紹介文を見てほしくて仕方ないようだった。
私は心配しながらその様子を眺める。
――律先輩、あまり強く否定してあげないでくださいよ。唯先輩の悲しむ顔は見たくありませんから。
「ん?なになに……、おお、結構面白いじゃないか!」
「ええっ!?」
その日、音楽室に最初に響いたのは律先輩のドラムでも唯先輩のギターでもなく、私の驚きの声だった。 




すばらしい作品をありがとう

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最終更新:2009年08月19日 16:25