179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 04:40:31.74 ID:cyi/BwTkO
うあー。まさかこんな恋するなんてねー。
あたし田井中律は軽音部一の人気者で頭脳明晰、容姿端麗、ドラム技術もすごいっ!……んだけど最近ちょっと悩みで調子上がんないんだよねー。
その悩みってのがさー……。
「律。行くんだったら早く行くぞ! わたしは律みたいにヒマばっかりじゃないんだ」
あたしの部屋で二人っきり。澪と。今までだってたくさんこんな状態になってんだけどね。
なんでこんなに意識しちゃうんだろ。あー。好きだよ澪ぉ……。
「……まったく。人を呼び出しといて準備もしてないってどういうことだ」
「あ、梓までぇ……」
いつもは真面目にやりたがってる梓まで澪に食いついてる。我ながらグッジョブなことしたわねー。
……やっぱり澪は綺麗だしかわいーなー。そんでもってなんだかんだあたしのわがまま聞いてくれるし。
「……律? こ、これでドラム叩ける……だろ?」
顔真っ赤にしてちょっと涙ぐんでる澪を見たのは何回目だろーか。かわいーんだよなー。
でもこれ以上やったらさすがにキレるだろうし、これくらいにしとくか。
「おっしゃあ! お菓子も食べて澪も着替えてやる気充分! みんな合わせるぞー!」
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 04:51:50.94 ID:cyi/BwTkO
「律。最近なんか……わたしで遊びすぎじゃないか?」
二人の帰り道。もう2年も高校を一緒に帰ってるんだなー。
「そっかな? だって澪と一緒にいれるのって放課後ばっかりじゃんっ?」
おりょ? 今なんでこんなこと言ったんだろ?
「そ、それはクラスが違うから仕方ないだろ!」
そうなんだよね。今は違うクラス。澪は和とばっかり一緒にいる。
なんでそこにいるのがあたしじゃないんだろ。唯とかムギといるのも楽しいけど……なんか違うんだよね。
「あ、悪い。今日はこっから別の道だから」
……へ? なんでそんな変な道に行こうとしてんだろ?
「今日はちょっと和に詞を見てもらうんだ。興味があるらしくてな」
ズキン。胸が痛い。澪との時間が終わっちゃう。
秋頃にはちょっと和に妬いてたけど今はそんなことない。じゃあなんで胸が痛いんだろ?
「いや」
あたしは一言だけつぶやく。まだ澪と一緒がいい。
「いやって言われてもな。わがまま言う……な……」
あー。なんか泣いてる。バカみたいだな、あたし。何が起こってんだろ。自分の中で。
「り、律! なんで泣いてるんだよ!」
187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 04:53:41.47 ID:cyi/BwTkO
そんなのあたしが聞きたい。澪と離れたくない気持ちでいっぱい。バカみたいだな。バカ律だ。
「わ、わかった! なんでも一個だけ言うこと聞くから今日は……な?」
ってことで今日遊びに行くって話になったんだけど……。
「早くしろってば、律!」
これは恋だねぇ。澪の顔をまともに見れない。いやー、参ったね。あたしはそっちの気があったらしいね。
でもその対象が澪だから不思議と嫌じゃない。だからこやって二人でいたいなって思う。
「澪ぉー」
「なんだ?」
「今日のおでかけ中止ね」
「はぁ!? 何をいまさら……」
だって澪と二人きりがいいから外には出ない。とか言ったら怒るかな? なんかあたしら出かけると絶対に唯とかに会っちゃうんだよね。今日は二人だけでいたいからなー。
「今日はあたしに付き合うって約束じゃん。久しぶりに一緒に寝よ?」
いつも通りに言えてるあたしはすごいっ! とか言いつつこんなこと言う自体がいつも通りじゃないってゆーね。
「り、律……。何かあったのか? 体がきつかったりとかじゃないか?」
やっぱり普通はそーゆー反応になるよな。澪はあたしを一番知ってるから。
189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 04:56:36.01 ID:cyi/BwTkO
「んーん。だいじょぶ。ただ今日は家の中にいたいだけ。さっ! こちらへどうぞっ!」
あたしが空けた掛け布団のに澪が戸惑いながら入ってくる。おー……澪がすっごく近い。
「り、律。ほんとにどうしたんだ?」
澪の困ったような顔が目の前にある。言ったらもっと困るかな? あー。でも止まんないや。言っちゃお。
「澪のことが大好きだから。恋してるみたい」
ムギが見たらすっごい喜びそうな展開だよな。澪はやっぱり驚いた顔してるし。
「へ!? え? あ、わ、わたしにか!?」
「そっ! あたし、田井中律はあなた、秋山澪を愛してます!」
なんていつものあたしらしく言ってみちゃったりする。
「わたしは女だぞ!」
「しってる」
「じゃあなんで!」
「澪のこと大好きだから」
あっけにとられるこの顔。やー、ファンクラブが出来るのもわかるわー。
しばらく沈黙。なんだろ。澪は何を考えてんだろね。顔が真っ赤だよ、澪ちゅわぁん。
「わ、わたしも好き……だけどさ……」
おほっ。澪に好きって言われちゃったよ! やー、ニヤニヤが止まんないね。調子に乗っちゃってもいーかな?
190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 04:58:33.07 ID:cyi/BwTkO
「ただの好きじゃないぞ? いーの?」
「……うん」
「カップルだよ?」
「は、恥ずかしいこと言うな……バカ律」
くはぁー! たまんないねぇ! さっきまでのあたしバイバイ! ヤバいヤバい!
「澪ー。あたしたちカップル?」
「う、うん……」
ヤバい。失神しそう。真っ赤な澪ヤバい! これまでに無いほど萌え萌えキュンだぜっ!
「律。わたしも勢い……とかじゃないからな?」
あ、うれしすぎる。両思いだ。あたしだけの澪だ。こりゃもう……。
「澪ちゅわぁん。大好きなあたしに誓いのちゅーを!」
「ふ、ふざけるなっ! 真面目な話じゃないのかっ!?」
「大真面目だよ。だからこそ……な?」
あたしは一つ笑顔を見せて目をつむった。顔見られると澪も恥ずかしいだろーし。やばっ……ドキドキしてる。キャラじゃないなー。あたし。
その瞬間。澪の柔らかい唇があたしの唇に当たった。ほんの一瞬だけ。目を開けるとトマトくらい赤くなった澪がいた。
「り、律ぅ……」
おおぉ……。澪が抱きしめてくれてる。幸せの極みっ!
澪の顔を持ち上げて今度はあたしからキスしてみた。驚いた反応に顔。たのしーなぁ。
192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/27(木) 05:00:19.29 ID:cyi/BwTkO
「改めてよろしくな、澪!」
「……うん」
そっからあたし達は布団の中でいろいろな話をした。唯がバカな話。軽音部の活動の話。クラスの話。そして……。
「律」
「んにゃ? なんだいあたしの澪ちゃん」
「……ちゃんと練習しなかったら嫌いなるからな」
おっとぅ。そういう話にきましたか。でも澪に嫌われたくないからな。
「今まで以上に頑張らせていただきます!」
「そっか。期待してるぞ。……わたしの律」
あたしの唇に澪の唇。もう溶けてなくなりそうですよ。あたしゃ。
「あと……」
「ん?」
あたしはずっと澪と一緒に歩いて行こうと思った。軽音部として。大好きな人として。
「わ、わたしを寂しくさせたらいやだからな!」
他人が知ったら引くかもしれない。変な奴だと思われるかも。でもあたしらはそれでいーんだ。幸せだからねー。
「こちらこそだぞ、澪。あたしゃウサギだから寂しくなったら死ぬからね」
「わ、わかってる。だからこうやって離さないようにしてるから……いつまでも一緒にいよう……な」
おわり
最終更新:2009年08月28日 03:44