882 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 03:09:15 ID:qwPxADol
ピンポーン
憂「いらっしゃい梓ちゃん、あがって?」
梓「おじゃまします…」
ある平日の夕方、私は平沢家を訪れていた。といっても、遊びに来たというわけではない。
梓「それで、先輩の具合は?」
憂「まだ辛そうなの…熱がなかなか下がらなくて」
そう、お見舞いに来たのだ。唯先輩は学園祭以来の風邪をひき、学校を休んでいた。
梓「これ、ムギ先輩から…律先輩も澪先輩も用事で来れないけど、お大事にだって」
憂「ありがとう…お姉ちゃん、早く良くなるといいけど…」
憂の表情を見て、朝から胸に抱いていた不安感が大きくなる。そんなに具合が悪いのだろうか。
883 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 03:10:43 ID:qwPxADol
唯の部屋
憂「お姉ちゃん?梓ちゃんがお見舞いに来てくれたよ?」
梓「こんにちは…」
おでこに湿布を貼ってベッドに横たわる唯先輩は、想像以上に辛そうだった。
顔は真っ赤で、息も荒い。まさかここまでとは。
唯「あ…あずにゃんだ…いらっひゃーい…」
梓「先輩…」
唯「ところでうい、あいしゅ…まだ…?」
憂「うん、今買いに行くよ!梓ちゃん、ちょっとお姉ちゃん見てて?私アイス買ってくるから」
梓「うん、まかせて」
あわてて出ていく憂を見送ると、私は唯先輩を見つめる。
その姿に、昨日までの元気はどこにもなかった。
唯「あず…にゃん…きてくれて…ありがとね…」
梓「先輩…大丈夫ですか?」
唯「えへへ…ちょっと…きついかも…」
梓「先輩…」
普段私と話す時は笑顔を絶やさない唯先輩が、本当に辛そうだった。
そんな先輩を見ていると、言い様のない悲しみでたまらなくなる。
884 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 03:12:10 ID:qwPxADol
梓「先輩…私…」
唯「あずにゃん…もう、部屋出た方がいいよ…風邪、移っちゃう…」
辛そうなのに、頭も持ち上げられないほどに弱っているのに、唯先輩は私の心配をしていた。
そんな先輩が、たまらなくいとおしくなる。私は気付くと、先輩の頬に触れていた。
唯「あず…にゃん?」
梓「私なら…大丈夫ですから…だから、傍にいさせてください」
唯「でも…」
梓「いさせてください」
やや強い口調で言うと、私はそのまま唯先輩の頭を撫でる。先輩は観念したかのように口を閉じた。
それから5分ほど沈黙が続いた後、唯先輩はおずおずと言った。
唯「…あずにゃん」
梓「はい?」
唯「ぎゅって…して?」
梓「ええ?」
唯「いつも私がするみたいに…ぎゅって、して」
突然の頼みに一瞬面食らうものの、私はすぐにそれを聞き入れることにした。
梓「わかりました。制服ですいませんけど…失礼します」
唯「うん」
私はベッドに潜り込むと、唯先輩を静かに抱きしめる。
熱で火照り、汗で湿った体は、少し力を込めれば簡単に壊れてしまいそうなほどに弱々しかった。
梓「苦しく…ないですか?」
唯「大…丈夫だよ…うっ…うえ…グス…」
885 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/09/17(木) 03:14:14 ID:qwPxADol
梓「せっ先輩!?」
唯「ごめん…ごめんねあずにゃん…私、ダメな先輩で…うぇぇぇ…」
そうか、そうなんだ。泣きじゃくる先輩を抱きしめて、私は自分の本当の気持ちに気付く。
私は――私はこの人のことが、大好きなんだ。
梓「先輩…泣かないで?」
唯「グスっ…うぅ…あずにゃん…」
梓「確かに先輩はダメなところもあるけど…それでも先輩は、私の立派な先輩なんですよ」
唯「あずにゃん…」
梓「それに…私は、ダメなところもひっくるめて、唯先輩のことが大好きだから」
唯「え…」
なにかを言おうとする先輩に、私はそっと唇を重ねる。先輩の唇は、とても柔らかかった。
唯「…あず…」
梓「先輩、早く、元気になってくださいね?元気になったら、改めて私の気持ち、伝えたいから」
唯「…うん…あ、ねえあずにゃん?」
梓「はい?」
唯「ありがとう…私も、あずにゃんのこと、大好きだから」
梓「…はい♪」
すばらしい作品をありがとう
最終更新:2009年09月17日 07:49