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246 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/19(土) 13:58:43.69 ID:YyY+w1RzO
『時雨時』
カチューシャではなくヘアゴムで前髪をまとめている律は現在机に広げた教科書とにらめっこ中である。
「はあ…テスト勉強はかどんねー…ジュースでも飲んで休憩しよっと。」
机に突っ伏したままそう独り言を発した律はキッチンへ向かい冷蔵庫に手を伸ばす。
しかし開いた冷蔵庫の中には麦茶しかなかった…。
「なんもねぇ…。」
我が家の品揃えの悪さに愕然たる思いになった律は散歩がてらコンビニに行くことにした。

248 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/19(土) 14:16:02.51 ID:YyY+w1RzO
自室に戻り前髪をまとめていたゴムを外しカチューシャを頭に乗っける。
「あ、ねーちゃんコンビニ行くの?ついでにじゃがりこ買ってきてー!」
玄関まで進む途中、弟がついで買いを頼んできた。
「あいよー。」
短くそれに答え外の世界に繰り出す…が
「うわぁ…雨降ってたのかよー。もータイミング悪いなぁ…。」
小雨ではあったが傘をささず出ていくこともないのでお気に入りの傘を開き再び歩き出した。

250 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/19(土) 14:25:13.67 ID:YyY+w1RzO
「いらっしゃいませー!」
傘を傘立てにしまい入店。店員が律をうかがっているが彼女は気にせずドリンクコーナーへ向かう。
「あっれーペプシ売り切れかよー…じゃあサイダーで我慢するか…。」
お目当てのペプシは値札こそあれど品物は影も形もなかった。
しかたなく三ツ矢サイダーと頼まれていたじゃがりこをレジに運ぶ。
「ありがとうございまーすまたお越し下さいませー!」
店員の常套句を背に受けながらコンビニを後にすると不運にも雨あしが強まっていた。
「雨が強くなってきたなぁ。」
くるくる傘を回しながら雨粒を撒き散らす。
律は買ったサイダーが妙に重く感じるのは天気のせいだろうなぁなどと思いながらぼーっと歩き続けていた。


251 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/19(土) 14:42:17.62 ID:YyY+w1RzO
「…あ、」
帰り道の途中、道路のど真ん中に座る猫を見つけた。
弱っているのかその場から動かない。
「寒いだろー。ウチにくるかにゃんこ~。」
声をかけ猫に近付くと猫はささっと離れていった。
「なんだよーツレないなー!まあ元気な…」
雨に濡れながらも猫が留まっていた理由に気付く。


そこには子猫が横たわっていた。


子猫は、もう動かないのに寒さで震えているように見える。


252 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/19(土) 14:55:59.63 ID:YyY+w1RzO
「……お前、お母さんかお父さんなのか…?」
電柱の影からこちらを伺っている猫に話し掛ける律は、切ない気持ちを抑えきれなかった。
「…ごめんな。」
一言そう雨に濡れた子猫に語りかけ、抱き抱えた。
そして冷たい子猫を親猫のところまで連れて行く。今度は律をじっと見つめたまま、猫は逃げなかった。
電柱の脇に子猫を下ろし

「…風邪、引くなよ。」
ぽつりとそう呟いた。




「へっくし!う~寒っ…びしょびしょだぁ。風邪引いちゃうよ…。」
濡れた体をバスタオルで拭きながら買ってきたサイダーを開ける。
プシューーッ!
「うわっ!あふれやがった!ちっきしょー、走りながら帰ってきたからなー…」
炭酸の抜けた砂糖水を口に運ぶ。

254 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/19(土) 15:05:39.70 ID:YyY+w1RzO
「おかえりー…どうした姉ちゃん、まさか傘ささないで出てったのか?」
聡が呆れた顔を律に向ける。
「いや…行きはあったんだけどさ…まあ気にするな、ほいじゃがりこ。」
「サンキュー!…姉ちゃん風呂入ってこいよ…ブラ透けてる…。」
まったく色っぽくないけど…と付け足し聡はそそくさと自室へ帰って行った。
「あいつ言うだけ言って……私だってそれなりに気にしてるんだからなーー……。」
すでにそこにいない弟へ文句を垂れながら、律は猫たちのことを思い出していた。

256 :なめたん ◆k05EaQk1Yg :2009/09/19(土) 15:13:20.71 ID:YyY+w1RzO




翌日、猫たちの姿はもうそこにはなく、律の傘だけが電柱に立て掛けられていた。
開いた状態で置きっぱなしにしていたのだが、誰かが畳んでくれたのだろうか。
「…うっし!今日も頑張るか!」
元気に傘を手に取り歩きだした律に声をかける人物がいた。
「律おはよう!今日は随分早いな!」
「おはよーう澪!早いのはたまたまだよんたまたま!」
「おい?どうして傘なんて持ってるんだ?」
「たまたまだよん♪」
律はその場でくるっと一回転して
「さ!早く学校行こうぜ!遅刻しちゃうぞ!」
そう言って駆け出した。
「あ、おい律ー!」



2人の少女が走り出した姿を、少し遠くからじっと見つめている猫がいたことを知るものは誰もいない。


空は、雲一つない快晴だった。

終わり