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33 :梓は大変なry ◆/BV3adiQ.o :2009/10/06(火) 22:34:14.28 ID:JQ8JrTqnP
 どうすれば唯先輩に私の想いを気付かせられるんだろう。
 今までだって、さり気なくだけど結構な数のアプローチをしてきたはずだ。少なくとも私はそう認識しているし、その好意に気付かないほど先輩も鈍感ではない、とは思う。
 だったらどういうことだろう、気付いていて気付かないふりをしているのだろうか? だけどそんなことをして何の意味が……。
「これは私の憶測だけど多分唯ちゃんは梓ちゃんにちゃんと好きって言ってほしいんじゃないのかしら?」
「わっ」
 びっくりした。
 突然の声に意識を戻すとムギ先輩がいつの間にか私の隣に座っていていつの間に用意したのかミルクティの入ったカップを優雅に口元に運んでいた。
 ……本当に神出鬼没な人だな。さっきまでは私ひとりしかいなかったのにと思いながら時計を見てみる。
 私が席に座ってから実に30分は経っていた。
「…………マジですか」
「どうしたの?」
「いえ、時間の流れについて少し考え事を」
「ふぅん? へんなことを考えるのね」
 いや冗談なんですけど。
 しかしそんなことを訂正するのも面倒くさかったので私はさっきの言葉について質問する。
「あの、あれはどういうことなんですか?」
「あれ? あれって言われてもいろいろあるんだけど。もしかしてえっちなこ――」
「私が唯先輩に好き云々のことです」
 変なことを言わないでほしい。しかもこんな真昼間から。
「ああ、あれね」
 ムギ先輩は言う。
「そのままの意味よ」
「そのままって……」
「だからそのままの意味。本当に言葉の通りでいいの。唯ちゃんが梓ちゃんの想いに気づかない訳がない。あの子はそこまで鈍感じゃない。だったら気付いていて気付かないふりをしていると考えるのが妥当よ」
「はあ、そうですか」
 ってちょっと待って何でばれてるの、え、ちょ、どういうこと?
「あ、あの」
「じゃあどうしてわざわざそんなことをするのか? 答えはひとつしか無いわ。梓ちゃんがいつまでも自分の気持ちに気付かない唯ちゃんに対して痺れを切らして直接的なアプローチをしてくるのを待ってるのよ」
 どうやら質問はさせてくれないらしい。
 まあこの人に限っちゃ心を読むぐらいは平気でしそうだから気にしなくてもいいか。


34 : ◆/BV3adiQ.o :2009/10/06(火) 22:35:04.56 ID:JQ8JrTqnP
「いや普通にバレバレだけど」
「マジッスか」
 どうやらムギ先輩だけじゃなく周囲の人にはバレバレらしかった、不覚。
「だけど私を待つっていうのはどういうことなんですか?」
「だからそれも言葉通りの意味よ。梓ちゃんが唯ちゃんに真正面から、小細工抜きに本心をぶつけるのを待ってるのよ」
 ま、全部私の想像だけどね、と言ってカップを置いてムギ先輩は立ち上がった。
「どこに行くんですか?」
「うん? ふたりの邪魔にならないように、ね」
 最後に軽くウインクをしてムギ先輩は去っていった。
 ……本当に何しに来たんだろう、あの人。
「んー、どうなんだろう」
 ムギ先輩はあんなことを言ってたけど私はただ単に鈍感なだけだと思う。さっきと言っていること――考えていることが違うけどやっぱりそう考えるのがいちばんしっくりくるというかなんというか。
 でも、うん、そっか。鈍感だとしても待っているとしても、私が動かないことには何も変わらないんだ。どっちにしろいつかはやらなきゃいけなかったことだし、別に今言ったって変わらない、かな。
 心の準備ができてないけどそんなのはいつものことだし恥ずかしい思いをするのは慣れている。だから後は唯先輩が来るのを待つだけ。待って、告白したら、それでおしまい。不思議と失敗したときの心配は無かった。
「やっほ~」
 3分も経たないうちに唯先輩がいつものようにやって来た。遅れたことに少しも悪びれてない様子で――実際悪びれてないのだろう、いつものように笑顔を振り撒きながら音楽室に入ってきた。
 2人っきりの音楽室。
「あれ? あれれ? 他のみんなはまだ来てないの?」
「はい、まだ来てません。今は私と2人っきりです」
「そっか。えへへ、あずにゃんと2人っきり~」
 本当はさっきまでムギ先輩がいたのだけどそれは一々言わないでいいだろう。
「それで、唯先輩、少し言いたいことがあるんですけど」
「うん? 何? なになに? どうしたの?」
 大きく息を吸って言葉を吐き出す。不思議と緊張はしなかった。
「唯先輩。私、唯先輩のことが好きです。私と付き合ってください」
「…………」
 唯先輩は、少しの間黙りこくって、そして、口を開く。
「私たちって恋人同士じゃなかったの?」
「……えっ!?」
 ――鈍感なのは私のほうでした。