このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 3』というスレに投下されたものです
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549 名前:Heaven's door girl[sage] 投稿日:2009/10/13(火) 21:20:24 ID:zyXgezHW
ピロリロリ-♪

着信音にびくりとした私は恐る恐る表示された名前を見て、それが唯先輩である事に恐怖と安堵を同時に覚えていた
その類稀な才能で今をときめくトップミュージシャンになった唯先輩と、秘密の二人暮らしを始めてから二年が経つ
とても世間に言えるようなものではない女同士の関係だけど、私は幸福だった

      • ついこの間までは

「こんばんゎ!まだ起きてた?十時なんかに寝ないかー あはは」
「ゆっ・・・唯、先輩」
「ごめんねえ、色々おしちゃって今帰ってるとこなの。寝てていいからね!」
「・・・・・・唯先輩・・・・・・その・・・どうともないんですか?」
「どうともないって?」
「それは、その・・・私の作ったお弁当、食べました?」
「あたりきしゃりき!完食したに決まってるじゃーん!どしたの?」
「だ、だって・・・・・・あれには」
「コーヒーに毒が入っていた?」
「!!」
「なんかねえ、舌にぴりっときたんだよねえ。それでわかっちった。あ、これ飲んだら死ぬなって」
「・・・だったら何で最初にそう言わないんですか」
「なんでだろうねえ。でもやっぱり夜はこんばんゎじゃん?こんばんみとか終わってるよね!あ、これオフレコね」
「・・・やめてください。私は・・・唯先輩を殺そうとしたんですよ」
「熱愛報道のせい?」
「!!!」
「ジョダギリさんはただのお友達。本当だよ」
「・・・信じてましたけど。じゃああの写真は何なんですか。ジョダギリさんのマンションの前で撮られたっていう・・・」
「だからあの時はスタッフみんなで行ったんだってば。コンビニに買出しに行っただけで」
「最近12時前に帰ってきた事が無いし」
「年末用に色々撮りだめしないといけないんだよー」
「仕事減らしてくれって言っても誤魔化したり・・・怒ったり」
「私だけの都合で仕事が決まるわけじゃないんだよ。私が働かない事で色んな人に迷惑がかかるの。怒ったのは、ごめん」
「どんどん二人の気持ちが離れてくみたいで・・・」
「うん・・・」
「だ、だから・・・・・・私・・・あんな」
「・・・うん・・・」
「だって・・・だって・・・・・・本当に好きなんだもん。うえっ・・・ひっく」
「泣かないで。もう済んだ事だよ」
「でもでも・・・無事だったからそんな事言えるけど、もしあれを飲んでたら」
「飲んだよ」
「・・・え?」
「これ飲んだら死ぬなって思ったんだけど。飲んじゃった」
「な、何言ってるんですか。飲んだら無事なはずありません・・・私、殺そうと思ったんですよ」
「だから、死んだの」
「・・・・・・え?」
「死ぬなって思った時にわかったの。どれだけあなたを悲しませてたか。それで、この人になら殺されてもいいって思った」
「・・・」
「だから一息に飲んじゃった。そうしなきゃいけないと思った。そうしなきゃもう、会う資格が無いって思った」
「ゆっ、唯先輩・・・それじゃあ、この電話って」
「・・・うん。未練たらしいなって思ったけど、最後のわがまま。ねえ。こんな私が会いに行ったら怖い?」
「・・・・・・」
「・・・だよね。私、やっぱり」
「会いたい」
「え」
「唯先輩に・・・ひっく。会いたい。会いたいですっ・・・」
「・・・うん。ありがとう」
550 名前:Heaven's door girl[sage] 投稿日:2009/10/13(火) 21:22:07 ID:zyXgezHW
それきり電話は切れてしまって、私はじっと窓から外を眺めていた
ふとヘッドライトが暗闇を切り裂いて、マンションの前に停まったタクシーから見知った人影が降り立ったのが見える
幽霊でもタクシー使うのかな?・・・唯先輩ならやりかねないな
そんな事を思って涙が零れそうになるのを必死にこらえた
別れの時の前に余計な事を考えてしまうのを必死に制して、ただ唯先輩の事だけを思った
ぴんぽーん
インターホンの音
怖くなかったと言ったら嘘になってしまう
でも躊躇いは一瞬だけで、私は確認もせずにドアを開けた
そうしなくてはいけないと思った
そこには暖かな笑顔を浮かべた唯先輩が、靴でとんとんリズムを取りながら立っていた
      • え?・・・足がある・・・・・・?・・・幽霊じゃない?

「やっぱり夜は・・・こんばんゎ、だよね」
「唯先輩!!」

駆け寄ってがっちりと抱きつくと、確かな感触と体温
夢じゃない・・・生身の唯先輩だ!

「おっとと。こんな熱烈な歓迎されるなんて愛されてるなあ。芸能人って得だね!」
「茶化さないでください!私・・・私は・・・・・・」
「ま、ま。とりあえず中はいろうよ。目立っちゃう」

かちゃり
ドアを閉める時も唯先輩の温もりを確かめるように、私はその体から離れなかった

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「やめてってば。キミの知ってる唯先輩はこんな時どうする人だっけ?怒る?泣く?違うよね」
「私・・・私、唯先輩に笑ってもらう資格なんて無い」
「資格とか関係ないよ。私がこうしたいからこうするの。平沢唯は、ちっともまったく1ミリも中野梓を恨んでませーん。だって・・・」
「だって・・・?」
「・・・好きなんだもん。殺してしまいたいほど自分を好きでいてくれたってわかって・・・嬉しいんだもん」
「先輩・・・私」
「私もきっとこうするよ!とか言ったら怖い?えへへ。唯は梓を許します。だって心の底から愛してるから。それでいいじゃん!」
「・・・・・・はい」

ぎゅっと先輩の温もりに甘えている
ずっとこうしていたい
もう二度と間違わないように

「でも・・・生きていてくれてよかった。私、もう絶対、こんな事しませんから」
「ううん。だから死んだんだってば」
「・・・・・・え?」
「ああ、それとね」

「お姉ちゃんは許しても、私は許さないから・・・・・・」

Fin

すばらしい作品をありがとう

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最終更新:2009年11月09日 00:38