このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 3』というスレに投下されたものです
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774 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/23(金) 22:14:22 ID:iC2HEB2T
私はあずにゃんのことが大好きだ。ただの後輩としてではなく、もっと特別な、恋の対象として。
でも私はその気持ちを打ち明けるつもりはない。なぜなら…

唯「あずにゃ~ん♪」
梓「もう、毎日毎日…よく飽きないですね」
唯「だってあずにゃんかわいいんだもーん♪」
梓「はいはいどうも…」

こんなふうに、先輩後輩のままの、お互いに遠慮のない関係が最善だと思うから。これ以上を望んだら贅沢だ。
それに、仮に告白したとしても今よりいい関係になんてなれないのはわかってる。
そして…今の関係が『特別』じゃないってことも。

澪「梓、そういえば今日新譜の発売日だな」
梓「そうでした!あ、澪先輩、今日一緒にショップ行きませんか?先輩のおすすめとか買いたいです」
澪「そうだな…じゃあ行くか!」
梓「ありがとうございます!楽しみです!」

――だから、あずにゃんが澪ちゃんと楽しそうに話していたとしても、私には何も言うことはできない。
だって私は、ただの先輩だから。あずにゃんにとっての『特別』な存在なんかじゃ、ないんだから。
775 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/23(金) 22:17:24 ID:iC2HEB2T
律「お二人さん、抜け駆けは許さないぜ!私ももちろん行くからな!」
紬「じゃあ私も行くわ♪」
梓「結局全員で行くんですね…唯先輩も来ますよね?」
唯「あ…わ、私はいいや!憂に買い物頼まれてるんだー!戸締まりはやっとくから、皆先行って!」
梓「そうですか?じゃあ、お先に失礼します」
唯「うん、またね」

バタン

唯「……はぁ」

一人きりになった部室で、こらえていたため息が漏れる。
あずにゃんが澪ちゃんと楽しそうに話していた。
ただそれだけのことなのに、恐ろしいほど胸が痛くなる。痛い、痛い、痛い…どうしてこんなに痛いんだろう。
あずにゃんが私を嫌いだって言ったわけでも、澪ちゃんと付き合ってるってわけでもないのに、どうして…?

唯「あ、そっか…私が弱いから…か」

そうだ。原因は私にあるんだ。
今のままでいいだなんて都合のいいこと考えといて、こういうことに耐えられない、私が悪いんだ…
その事を自覚したとたんに、視界が潤んだ。自分の甘えた考え方が情けなくて、溢れる涙をこらえることができなかった。
776 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/23(金) 22:22:07 ID:iC2HEB2T
唯「うっ…うぅ…っ…う…」

泣いたってどうにもならないことはわかってるのに、どうしてもその涙は止められない。
あずにゃんの笑顔とか怒った顔が浮かんで消えない。もう、嫌だ…こんな気持ちになるなら、最初から…

梓「唯先輩…?」

突然後ろから、あずにゃんの怪訝そうな声が聞こえた。私は驚きながらも、なんとか平静を保つ。

唯「ど…どうしたの?皆は?」
梓「帰る途中で憂に会ったんです。そしたら唯先輩に買い物なんて頼んでないって言うから…」
唯「それで…わざわざ戻ってきたの?」
梓「な、なにかあったら困りますから…で、なんで嘘なんかついたんですか?」
唯「あはは、ちょっと勘違いしちゃっただけだよ!」
梓「そうなんですか?もう、唯先輩ったら…」
唯「そうなんだよ~!ごめんごめーん♪」
梓「は、離してください!まったく…」

いつものようにおどけて抱きつくと、あずにゃんはいつもみたいに私に反抗する。
…これでいいんだ。別に恋なんてできなくていい。ずっと今のままでいい。最初から恋なんてしなかったってことにすれば、それで…
梓「先輩、そろそろホントに離してくださいよ。遅くなっちゃいます」
唯「やだ…」
梓「…先輩?」
777 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/23(金) 22:26:15 ID:iC2HEB2T
唯「私…やだよぉ…うええええ…」
梓「ゆ…唯…先輩?」

あずにゃんの胸で、私は思い切り泣いた。ただひたすらに、私は泣いた。
この時あずにゃんがどんな表情をしていたのかは分からない。けど、優しく私を抱き締めて、背中を撫でてくれた。
――そんなあずにゃんへの想いをなかったことにするなんて、私にはできない。

唯「うぅ…ひっく、あ、あず…」
梓「鼻、噛んでください。ひどい顔ですよ?」
唯「ずずー!…あずにゃん…ごめん…」
梓「別に謝らなくてもいいですけど…なにかあったんですか?」
唯「……」
梓「ま、言いたくないならそれでいいです。何かあったら相談してくださいね」
唯「あっ…あずにゃん!」
梓「はい?」

私が名前を呼ぶと、あずにゃんは不思議そうな顔をして私を見つめた。
やっぱり私は、この子の恋人になりたい。『特別』になりたい…

唯「私…あずにゃんのことが好き」
梓「えっ…?」
唯「ずっと、ずっと大好きだった…だから、私と…付き合って、ください」
梓「そ、そんな冗談よしてくださいよ!さ、早く皆さんのとこに」
唯「冗談じゃないよ。私、本気で言ってるの。本気で、あずにゃんのことが大好きなの」
梓「先輩…」
778 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/23(金) 22:30:20 ID:iC2HEB2T
あずにゃんはしばらく黙り込む。何かを必死で考えているような、そんな表情で。
もし…断られたら…私とあずにゃんの関係は壊れてしまうのだろうか?
わからないけど、これだけは言える。もう私たちは、今までのままではいられない。
――やがて、あずにゃんは静かに口を開いた。

梓「…ごめんなさい」
唯「……」
梓「私…唯先輩のこと、そういう目では見られないっていうか…その…」
唯「…そっか」
梓「ホントに…ごめんなさい」
唯「ううん、いいんだよ。急にこんなこと言う私が悪いんだから」
梓「あ、でも…私も唯先輩のこと好きですよ!先輩として、仲間として!」
唯「…ありがと、あずにゃん」
梓「これからも、よろしくお願いします」
唯「うん、よろしくね」
梓「あ、あの…えっと…」
唯「あずにゃん、もう行っていいよ。皆心配してるから」
梓「え、先輩は?」
唯「いいからいいから!早く行かないと澪ちゃん帰っちゃうよ!!」
梓「でも…」
唯「いーいーかーらー!じゃあ、またね!」
梓「ゆ…」

バタン

半ば無理矢理に部室から出されたあずにゃんは、私のことを待っていたのか、しばらく扉の前に立っていたけど、やがてゆっくりと階段を降りていった。
779 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/10/23(金) 22:34:54 ID:iC2HEB2T
その音が聞こえなくなると、私はゆっくりと部室の外に出た。
階段を降りて踊り場まで行くと、ふと窓の外に目をやった。
そういえば、1年の頃、軽音部に入部した時も…こんな風に空を見たっけ。

その空はあの日のような青空ではなく、きれいなオレンジに染まった夕焼け空だった。


終わり



すばらしい作品をありがとう

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最終更新:2009年11月09日 00:44