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このSSは『【けいおん!】唯×梓スレ 3』というスレに投下されたものです
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899 名前:ハロウィンゆいあず1/3[sage] 投稿日:2009/11/01(日) 03:31:57 ID:CJ8fPe1q
「とりっくおあとりーと!」
なんですか、そのひらがな発音は。覚えたての言葉を嬉々として連呼する子供みたいですよ。
まあ、そこがかわいいところではあるんですけどね、唯先輩は。
「えへへ~あずにゃーん。お菓子くれないといたずらしちゃうよ?」
そう言って、じりじり私ににじり寄る唯先輩。その両手は、今にも私に抱きつこうと、うずうず動いてる。
にっこりと、本当に子供みたいな笑顔を浮かべた唯先輩は、思う存分「あずにゃん分補給」ができる口実を見つけたってそんな顔。
だけど、甘いですよ、唯先輩。
ひょいっと手を伸ばし、その右手を捕まえる。ほよっと表情を変えた唯先輩に、にこりと出来得る最高の笑顔を浮かべてみせた。
「はい、お菓子です」
そして、ぽんとその手のひらに、あらかじめ用意しておいた飴玉を置いてあげる。
オレンジ味の大玉のキャンディー。それを目にして、唯先輩はがくぜん!とでも言いたげな表情を浮かべた。
ふふ。先輩の考えることなんて、お見通しなんですから。
「食べないんですか?」
「うぅ、食べるよぅ。あずにゃんの意地悪~」
これくらいで、意地悪呼ばわりは心外ですね。
「美味しいですか?」
「おいしいけど、涙の味がする……」
先輩はそういいながら、本当に少し涙目になってる。先輩の目論見では、本来なら今ぎゅーっと私を抱きしめられてるはずだから。
だけど今はお預け状態。それが悲しいよ、寂しいよ、ってそんな表情。
別に駄目って言った訳じゃないんですから、かまわず抱きついてくれてもいいんですけど。
だけど、先輩は私がちゃんとお菓子をあげたから、悪戯できないってそう思い込んでいる表情。
本当に先輩は、可愛い。本当に可愛すぎて、そう、食べちゃいたくなるくらいに。
「それじゃ先輩、次は私の番ですね」
「ほぇ?」
声をかけると、先輩はきょとんとその様相を変化させた。私の番ってどういうこと?って首を傾げてる。
さっき先輩が使った手ですよ。まさか、自分だけが使えるなんて――そう思っていたんですよね、唯先輩のことですから。
む~と考え込み始めた唯先輩に、その言葉を投げかけてあげる。その、とびっきりの魔力を持った魔法の言葉を。
「Trick or Treat?」
ぴたり、とのその動きを止める唯先輩。一瞬の間を置いて、サーっとその顔から血の気が引く音が聞こえた。
「あ、あいべぐゆあぱーどぅん?」
無理して英語で返さなくてもいいんですよ。つまりは、ちゃんと聞こえてるということですよね。
「さあ、お菓子ですよ、お菓子。なければ悪戯しちゃいますからね?」
「うぅ、お菓子なんて持ってないよ…あ、かばんの中に」
「手元にないと駄目です。猶予期間は無しですから」
「うー!あずにゃんのおにーあくまー!」
酷い言われようだ。
まあ、なんとでも言ってください。負け犬の遠吠えをいくら聞こうとも、痛くも痒くもありませんから。
先輩はしょんぼりと肩を落とす。くーんとうなだれる子犬みたいで、その様子も可愛い。
ああもう、それは食べていいってことなんですよね。
「じゃあ、悪戯ですね」
「うぅ、本当なら私があずにゃんにいたずらするはずだったのにー」
「往生際が悪いですよ?」
「ふーんだ!いたずらするなら、すればいいもん!」
先輩はぷーと膨れて、すねましたって表情。
もう、そんなにすねないでくださいよ。それに、そんなに膨らましたら伸びちゃいますよ?
両手を伸ばして、そのほっぺたに両手を当てる。膨れた分だけきゅっと押して、先輩が頬を膨らませるのを阻止してみる。
先輩はそれでも頑張って頬を膨らませようとするけど、さすがの先輩の肺活量でも、私の両腕の力には及ばない。
むーむーと唸り声のような声を上げるだけ。
さあ、そろそろ大人しくしてください。これからは悪戯時間ですから。
900 名前:ハロウィンゆいあず2/3[sage] 投稿日:2009/11/01(日) 03:33:52 ID:CJ8fPe1q
「え?」
再び頭上にきょとんを浮べた唯先輩に、私はゆっくりと顔を近づけた。
両手を先輩の頬に当てたのは、別に膨れ顔阻止のためだけじゃない。ただ、その角度をあわせるため。
私より背の高い先輩は、少し下を向けて。先輩より小さい私は、少し上を向けて。そのベクトルが、丁度ぶつかり合うように。
何を、とか。何のために、とか。そんなの考えるまでもないこと。
例えば、この光景を傍観者的視点に切り替えたとしたら、まるでドラマのワンシーンの、まさにその一歩手前そのものだろうから。
きっとそんな絵になっている。それくらいに、私の動きは自分でも驚くほどにスムーズで、淀みがない。
先輩がそれに気付いて、何らかの行動を起こす前には、既にそれは触れ合えていると確信できるほどに。
当たり前ですよ、そんなの。だって、この光景は、この瞬間は、今まで何度も何度も夢見て、そして恋焦がれていたものですから。
実践するのは、これが初めてですけど、ね。
その寸前、ようやくそれに気付いた先輩の目は大きく見開かれ、私はそれに微笑みかけるような一瞥を残して、最後の距離をゼロにした。
瞬間、まるでマシュマロのようにふわりと柔らかくて、ほんのり甘くて、やさしく包み込まれるような感触が、一瞬にして私の意識を白く塗り潰してしまう。
私がずっと思い描いていたのと同じ、ううん、それよりもずっと気持ちよくて心地よくて素晴らしくて。
どんな言葉や表現を尽くしても、この感動を表す術なんて、私は思い浮かべられない。
そもそも、そんな余裕なんてどこにもない。冷静に分析できる私なんて、もうどこにも残ってない。
私に残るのは、真っ白に埋め尽くされた世界の中、それでも鮮やかに浮かび上がる唯先輩だけ。
触れあっているのは唇、ほんのちょっとの面積のはずなのに。
きゅっと手を繋いだときよりも、ぎゅーっと強く抱きしめられたときよりも、その他今まで先輩から与えられたどんなスキンシップだって、この瞬間には敵わない。
こんなに鮮やかで深くていっぱいな唯先輩を、私は他に知らない。
「あ、あずにゃ…んぅっ…」
何か言おうとした唇を、啄ばむようにして遮る。
その刺激に少しずつ慣れてきた唇が、貪欲さを帯びていく。
もっと、唯先輩を感じていたい。これくらいじゃ、まだ全然足りない。もっともっと、強く、深く。もっと――
唯先輩を感じたい。そして、私を唯先輩に感じて欲しい。
背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
太腿の間に太腿を差し入れ、ぎゅっと絡めとる。
くたりと先輩の体から力が抜け、床に崩れ落ちそうになのを確認して、私は一度唇を離した。
ほわ、と先輩の唇から声が漏れる。至近距離、だけど少し距離を得たその顔は、おそらくは無意識にもう終わり?という言葉を浮べていた。
大丈夫ですよ。心配しなくても、まだ悪戯は終わってませんから。もっともっと、してあげますから。
とんとソファーの淵に右手を着いて、倒れる方向を調整し、丁度覆いかぶさるような体勢で、二人してふかふかのクッションの上に倒れこんだ。
支えに立てた肘と二の腕の長さ分だけ下にある唯先輩を、そのままじっと見下ろす。
いつもの見慣れた顔。だけど、これからもずっと見飽きることはないだろうと予感できる、先輩の顔。
それはほんのりと赤くなって、とろんと熱を帯びた瞳で私を見上げていた。
「あ、あずにゃ…」
何か喋ろうとしたその口に、ぺしと人差し指をのっけて遮る。
「まだです」
「はわ…ぁ」
私の短い返答、その意図を察したのか先輩は更に赤くした顔で、更に熱をこめた眼差しで私を見上げた。
正解です、なんて小さくつぶやいて、再び唇をあわせる。
ソファーに強く押し付けるような強さで、ぎゅうっとその体を抱きしめる。
強く、強く、壊してしまうくらいに強く。それが私と先輩の境界をなくして、一つになってしまえばいいのにと願うように。
901 名前:ハロウィンゆいあず3/3[sage] 投稿日:2009/11/01(日) 03:34:26 ID:CJ8fPe1q
「は…んぅ…」
耳を打つ、甘くかすれるような声。薄く開けた瞳に移る、熱にうなされるような切なげな先輩の目元。
息苦しさからか先輩の口が僅かに開かれて、まるでそれに導かれるような自然さを持って、それをこじ開けようと私の舌が動く。
くいっと上あごを押し上げると、一瞬の硬直の後、それを受け入れようとするかのようにふわりとその力が抜けてくれた。
ゆっくりと差し入れられた私に、先輩のそれが触れる。おそらくは反射的に、絡めあうように私を捉えてくる。
その感触は、与えられるその感覚は、私を何度溶かしつくしても冷め切らないほどの高熱。
声にならない声が喉の奥からあふれそうになって、だけど私は懸命にそれを押し殺した。
絡みつく舌をゆっくりとおびき寄せ、ぱくりと唇で挟み込んで吸い上げる。私の中に引っ張り込まれたそれを、ツンツンと舌先でなぞってあげる。
瞬間、先輩の体がぴくんと跳ね上がり、だけど覆いかぶさる私はその動きを許さないようにぎゅうっとまたクッションへと沈み込ませて、封じ込めた。
堪えるように、ぎゅうっと私の背中、ブレザーを握り締める先輩の手。ふるふる震えて、ぴくぴく震えて、それでも私を離さないその手。
だから私も離さない、離してあげない。生まれた嗜虐心に忠実に、私は先輩を貪っていく。もっと強く、もっともっと深くまで。
そう、まだ終わりません。これくらいじゃまだ駄目ですよね。先輩が本当に満足するまで、終わらせてあげませんから。
ですよね、唯先輩――

完全にその体から力が抜けたのを確認してから、私はひょいっと舌先でそれを掬い上げ、口に含むと、唇を離した。
漏れる吐息と、細い光の糸を一瞬だけ作った唾液に、最大限の名残を残しつつも、私はソファーの上身を起こして、まだ横たわる先輩を見下ろす。
私の口の中には、先輩とのキスの味――今先輩から奪い取ったオレンジキャンディーが転がっていて、私はそれを見せびらかすように舌先にひょいっとのっけて小さく開けた口元から覗かせて見せた。
「お菓子、もらえたから、悪戯は終わりです」
ぐったりと、呼吸を整えながら私を見上げていた先輩の目が、きょとんと丸くなる。
その顔は、すっかりそれを忘れていたと言う顔。あんなにしちゃったから、無理もないですけど。
「もう、こんな悪戯、反則だよぅ」
「いやでしたか?」
「まさかぁ」
そう言うと、先輩はむくりと上体を起こして、私と同じ高さ、視線を合わせてきた。
「だけど、やられっぱなしは嫌だよ」
先輩はふわりと両手を伸ばして私を抱きしめると、押し倒すように私ごとソファーに倒れこむ。丁度、さっきとは正反対の体勢。
そして耳元で小さく、優しく囁いた。もう既に、答えの分かっているその言葉を。

ええ、次は先輩の番ですから。
だから、ちゃんと悪戯してくださいね、唯先輩。

(終わり)



すばらしい作品をありがとう