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369 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:46:42.94 ID:yy02dRI0

 唯「放課後殺人事件!」

今日も眠い授業が終わり、部活が始まる。
それだけで足取りか軽くなる気がする。

音楽室のドアを開けると、既に紬がいた。
唯「ムギちゃん おはよう」
紬「あら唯ちゃん おはよう」
いつもの微笑みで返してくる。
これだけでも何だか楽しい1日になりそうな気分になる。

唯「ムギちゃん早いね」
紬「今日は何もなかったし それにこれの準備もあるしね」
唯「これ? この箱の中は何?」
紬「じゃーん 今日のお菓子はチョコレートケーキなのよー」
紬が箱の蓋を開けると、チョコレートケーキが1ホールそのままで入っていた。

唯「わぁー すごいすごい!」
紬「ふふ じゃあ6等分に切らないとね」スッ
そう言って紬はおもむろにナイフを出した


370 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:48:30.02 ID:yy02dRI0

唯「あ、私切りたい!」
紬「唯ちゃんが? 大丈夫?」
いきなりの申し出に、紬は少し迷う。
唯「ぶー ムギちゃんまで私を子供扱いする 私だってケーキ切るくらい大丈夫だよー」
紬(その言葉を信用してもいいのかとても迷うわ…。)
紬「そうねえ… じゃあ頼もうかしら。私は紅茶入れてくるわ」
唯「わーい おいしい紅茶を待ってるよ」
結局本人の希望を尊重する事にした。何もないようにと願いながら。
紬「ええ じゃあはい、ナイフね」
唯「うん …!」

紬からナイフを受け取った時、唯は何か不思議な感じがした。
すぐにナイフを手放したほうがいいような、
そうじゃないと闇の奥底へ引き込まれるような…


紬「唯ちゃん? どうしたの?」
唯「いや、何でもないよ!」
紬「そう、じゃあお願いね」
そう言うと紬は奥の戸棚へ向かった。

唯(何だろうこの感覚。よくわからないけど…)
結局わからないなら大した事はないと思って、そのままあまり考えずにケーキを切る事にした。
暫く紬が立てる食器の音だけが部室に響く。


371 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:50:30.48 ID:yy02dRI0
唯「……あ」
ケーキを切り終わって、唯は1つの物事に気づいた。
そしてそれが、取り返しのつかない事なのだとすぐにわかった。
唯(そっか… そういう事だったんだ)
今思い返せばナイフを受け取った時の不思議な感覚は、それに対する警告だったのかもしれない。

唯(どうしよう… 私そんなの嫌だよ。でも…)

ふとけいおん部のメンバー全員の顔が脳裏をよぎった。
その全員の笑顔を、私がこれから壊しちゃうんだ…。

唯は何かを諦めたように、ナイフを持ったまま振り返った。
そのままゆっくりと歩いて、紬の背後へ立つ。
紬「唯ちゃん 切り終わった?」
背後に人が立つ気配を感じて、紬が振り返る事なく聞いてくる。
唯「…ムギちゃん ごめんね」
紬「え?」
振り返った紬の目が見開かれた。

唯が自分に向かって突進してきて、
その手にはナイフがあって、
それで……





372 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:52:31.69 ID:yy02dRI0
……





律「さてと、遅くなったけどそろそろ部活行くか」
澪「だな お、梓だ おーい、梓ー!」
梓「澪先輩、律先輩 こんにちは」
律「おいーす 梓」
用事が終わった3人は、同時に部室へ行く事になった。

澪「今日は唯とムギが先に行ってるはずだが、…練習してると思うか?」
梓「どうせ唯先輩の事だからムギ先輩のお菓子を独り占めしてると思います」
澪「…やっぱりそうだよな」
律「もしそうだったら唯の奴許せん!」
梓(律先輩がまともな事を言った!?)

律「私の分を取っておかないような奴は軽音部のメンバーじゃない!」
澪「そう言うと思った…」ガッ
律「痛っ!」
梓(…やっぱり律先輩だった)

階段を半分まで上がったところで何も音がしないと言う事は、やはり練習はしていないのだろう。
澪「やっぱりな…」
そう言って音楽室のドアにかけようとした手を止めた。





373 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:54:38.45 ID:yy02dRI0






 何か嫌な予感がする。

開けたら何かいけないものを見てしまうような、
何処か別の世界に繋がっているような、

律「澪、何やってるんだよ?」
澪「いや 何でもないんだ ああ、何でも」
律「?」
そのまま固まってる澪の横から律がドアをあける。

律「おっはよ…う……?」
いつものノリで言おうとした口調が、部室内の光景を見て失速した。
澪「……」トサッ
後で誰かが倒れた音がした。誰が倒れたのかは見なくても大体わかる。
梓「澪先輩! 大丈夫ですか…」
澪の元へ駆け寄った梓も、部屋の光景を見て何も言えなくなった。

3人の目に最初に写ったのは、壁を背にして怯えきったような唯の姿だった。
それだけならすぐに駆け寄りたいのだが、何かで汚れたナイフを震えている手で握りしめていると近付くのが躊躇われる。
さらにその目線の先には人が倒れている。間違うまでもなく、紬だろう。
3人が入ってきた事に気付いた唯は、顔だけ3人のほうへ向けた。

唯「りっちゃん、澪ちゃん、あずにゃん どうしよう? 私、…やっちゃった」
震えた声でそう言うとやっとの思いで立ち上がり、おぼつかない足取りで3人の元へ歩み寄る。
唯「私がいけないんだ…」
呪詛のようにその言葉を繰り返しながら近付く。


374 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:56:18.17 ID:yy02dRI0

逃げないといけない。
倒れてるムギの元へも行かないと。
間に合うかわからないけど、助けないと。
でもその全てを否定するように足が少しも動かない。
いや、これは後で倒れてる澪を守る為にわざと動いてないんだ。ああ、そうに違いない。
そう自分に思い込ませてる間に、唯が近付いてくる。

唯「りっちゃん、ごめんね…」
律の前まで来てそれだけ言うと、唯が少し勢いをつけた。
律(私、これで死ぬのかな)
梓「唯先輩! やめてください!」
後から梓の悲鳴が聞こえた。
律(あいつも動けないんだろうな。)
澪「律ーーー!!」
律(澪!? 起きたのか?)

そんな事を考えてると、唯の体がぶつかった感覚があった
律(全体重をかけてくるなんて、よっぽど殺意があったんだな。 両腕も背中に回して…)

 まあいいや もう、これで終わったんだ。

 もう目を閉じて、


 ゆっくりと寝よう。







 

375 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:57:56.51 ID:yy02dRI0

……






律「…ん?」
 (待てよ 普通に考えてこの状況、何かがおかしい。)
律は今の状況に違和感がある事に気づいた。

 確かに唯はこっちに向かってきて、ぶつかったと同時に両腕で抱きしめるような感覚で…。

律(もしかして… この体勢って抱きつかれてるんじゃね?)
よく見ると、確かに唯は抱きついていた。右手にナイフを持ったまま。
どうやら刺されてはいないらしい。

唯「りっちゃん、ごめんね。
   切り方間違えちゃった…」

律「……は?」
いきなり何を言い出すんだこいつは。
それとも私はもう死んでてこれはあの世とか言う事なのか?

唯「ケーキ 人数分に出来なかった…」
そう言いながら指を差した先には、4等分されたケーキがあった。
きっと紬が持ってきた今日のお菓子なのだろう。

唯「ムギちゃんが6等分って言ってたのすっかり忘れて家の癖で4等分しちゃった…」
律「…はい?」
唯「ムギちゃんに切りたいって言って切らせてもらったら、間違えちゃった…」


376 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 14:59:53.39 ID:yy02dRI0

何となく唯が言いたい事はわかってきた。
律「…えーと とりあえず1つ聞きたいんだけど、あのムギはどうしたんだ?」
唯「ムギちゃんにもこやって抱きついて謝ったら倒れちゃった…」

とりあえず気になったから後ろを見てみる。
澪はまた気絶しているみたいだから、きっと聞いてないだろう。
その横で腰を抜かした梓が、何とも言えない表情をしている。
律(…分かったよ。お前の分もやっておくから。)

律「…はぁ」ガッ
とりあえず溜め息が出たと同時に、唯の頭を強めに殴っておいた。
唯「痛っ! りっちゃん痛いよー」
律「やかましい! 刃物を持ったまま人に飛び付く奴があるか!」
唯「えー、だってー ケーキ切ったナイフ汚したら嫌じゃん」
律「バカ! それで誰かを刺したらどうする!?」
梓「そうですよ! 唯先輩殺人犯になりますよ!?」
唯「さ、殺人!? あわわ…」ガタガタ

律「全く… 梓、大丈夫か?」
梓「ええ、何とか立てます…」
腰を抜かしている梓に手を差し出して立たせると、次は隣にいる澪を起こした。

律「おーい、澪 起っきろー」ペチペチ
澪「…ん?律か 悪い、寝てたみたいだ よし、部活に行くか」
律「目を覚ませ ここは部室だぞ」
梓(自分の記憶を改ざんした!?)


377 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 15:02:44.13 ID:yy02dRI0

現状を思い出したように、急に澪の身体が震えだした。
澪「…いや、律を殺さないで」ガタガタ
律「落ち着け、もう終わった。と言うか私かよ、照れるじゃねーか」ニヤニヤ
澪「……」
梓「…澪先輩の代役です」ガッ

律「んな!?梓にやられた! 澪ー、梓がいじめるー」
澪「……」ポンポン
澪は律を抱き寄せて、頭を軽く叩く。
律「梓、澪は暫くダメそうだ」
梓「そうみたいですね…」

放心状態の澪をそのままにしておいて、二人は紬の方へ向かった。
律「ムギ 大丈夫か?」
紬「ん… りっちゃん?私… 軽音部に入れてすごく…楽しかったよ」ホロリ
律「待て!死ぬなムギ! 傷は全くないぞ」
梓「そうです! ムギ先輩しっかりしてください!と言うか泣かないでください!」
紬「え? …あれ?」
紬が自分の身体を撫でまわしてみるが、確かに傷などあるはずもない。

紬「私唯ちゃんに刺されて、死んだんじゃ…」
律「安心しろ、あれはナイフ持ったまま抱きついただけで刺してはない」
紬「なぁんだ、びっくりしちゃった」
律「だよなー 私もさっき刺されたかと思ったよ。澪もお前を見て気絶してたし」
澪「う、うるさいな あれを見たら本当に唯が刺したように見えただろ!?」
梓「あ、澪先輩が戻った」
唯「刺した… 私が」ガタガタ
律「お前はいい加減戻ってこい」ガッ
唯「痛いよー!」


378 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 15:04:14.00 ID:yy02dRI0



 
律「さてと… 何とか事件沙汰にはならなかったから…」チラ
梓「…あのケーキをどうしようか って事ですね?」
律「ああ、とりあえずさわちゃんに見つかる前にケーキを片付けるか」
唯「おー」
唯が拳を上げながら言う。
律「お前は騒ぎの発端だからケーキなし!」
唯「がーん!」
そのまま唯が固まった。

梓「あ、唯先輩気絶してる」
律「それだけで!?」
紬「まあまあ、唯ちゃん 私のちょっとあげるから。ちょっとならいいでしょ? りっちゃん」
律「個人的には嫌なんだけどなぁ…。 ただいい加減唯が可哀想になってきた」
紬「唯ちゃん あーん」

立ったまま上の空状態な唯の前に、紬が1欠片のケーキを差し出す。
唯「…はっ!」パクッ
梓「な、早いっ!」
唯「美味いっ!」パアア
唯が幸せそうな表情になる。
唯「やっぱり甘いものって美味しいよねー」
律「そこは否定しないけど、何だろうこの心の中のモヤのようなものは…」
梓「それはあんな事を起こした当事者が、今幸せそうな表情でケーキを食べてたらそうなると思います」
紬「ふふ、でもちょっと非日常な感じで楽しかったかも♪」
澪「流石ムギ… 私には真似出来ない…」


 

379 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 15:10:33.27 ID:yy02dRI0



 
いつも通り話をしたり、時々横にいる唯にあげたりしていたら、意外とすぐにケーキを完食した。
律「とりあえず唯は部活中に刃物を持つの禁止な」
唯「えー りっちゃんひどいよー」
律「いや、むしろ反対する意見が出ないと思うんだが…」
周りを見渡せば、全員が頷いている。
梓「唯先輩は今度こそだれか刺しそうなので怖いです」
唯「だ、大丈夫だよ! 私だって殺人犯になりたくないもん!」
澪「ああ、賛成だ。刃物を扱いたいならもう少し憂ちゃんにでも教わってからにしてくれ」
唯「わかった! その内憂に教わってくる!」
律澪梓(本当にわかってるのかなあ?)

澪「はぁ …とりあえず、そろそろ練習するか」
梓「はい! やりましょう!」
律「よーし じゃあやるか!」
紬「ええ! 準備はもう大丈夫よ」
唯「私もいいよー」

こうして今日もまた、部室にいつも通り楽器の音が聞こえだす。





終わりです。