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275 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:42:42.52 ID:801rwPQ0
という訳で頑張って書きます
一応酉 以下本文



季節は春。
と言ってもその春は終わりかけで、夏になろうかと言う時期。
もちろんかなり前に桜は散ってしまい、葉桜になった。

小鳥のさえずりが目覚まし代わりになり、私は目を覚ます。
窓から太陽のさんさんとした日差しが降り注いでる。
少し体を動かして、寝ながら窓ごしに空を眺めた。
雲ひとつない青空。まるで海のように青い天井。


……こんな日に寝たままはもったいない。
二度寝、という選択肢は頭から削除することにした。



起き上がって、ベッドの上でうーん、と伸びを1つ。
携帯を開いて時刻を確認。まだ7時。
布団をはらいのけて立ち上がり、ぼやけた目で私は部屋を出た。

276 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:46:09.54 ID:801rwPQ0
トイレで洗面所に向かう。
はっきりとしない視界、目をこすりながら水道の蛇口をひねり、
ざばざばと音を立てながら私は顔を洗う。水が少し冷たい。

数分立って洗い終わり、鏡を見ながらタオルで濡れた顔を拭く。
少しハネた髪を櫛でとかし、髪を横に括ってツインテールに。
……うん。朝の準備完了。


洗面所から出て私は再び部屋に入った。
タンスからお気に入りの服を取り出す。
パジャマの服を脱ぎすて、服を着た。

なんてことのないいつもの日常。
でも今日はなんだか特別な気がした。
ふと窓を見ると、電線に止まっている2匹雀がじゃれあっている。
そんな今の私とはかけ離れたほのぼのとした日。

机から携帯とipodやらをポシェットに入れて、家を出た。

277 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:53:49.23 ID:801rwPQ0
まだ7時を少し過ぎた時間なのでひとどおりは少ない。
近所のおばあさんが玄関のお掃除をしていたり。

これからどうしようか。
気分もいいし、天気もいいことだし公園にでも行こうかな。
朝の公園でアコギの弾き語り……なんていうのも悪くない、よね?


そう思いついて、私はまた家の玄関のドアを開けた。

靴を脱いで家にあがる。
小走りで自分の部屋にあるアコースティックギターを手にとり、
ギターケースにチューニング、ピック、カポなどといっしょにしまい、家を出た。



そういや最近、ムスタングばっかりでアコギは弾いてなかったなぁ……

278 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 12:59:15.00 ID:801rwPQ0
お腹が空いたので途中コンビニによっておにぎりを買ったりして、
なんとか公園に到着。
アコギを弾く前に、ベンチに座って買ったおにぎりを食べることにした。

……うん。やっぱり鮭のおにぎりはおいしい。
というか、コンビニのおにぎりは家で作るのと違っておいしい。凄く。
何でおいしいのかはよく分からないけどね。


コンビニで買った二つのおにぎりを食べ終えて、アコギを取り出す。
ヘッドに「Morris」と書かれたギター。
私がエレキギターを始める前から使っていたギターだ。
もっといいギターなんていくらでもあるけど、今では愛着が湧いて中々手放せない。


チューナーで6弦から順に音を合わせていく。


『ねーねーあずにゃん、そのギターに付けてるのなんていうの?』

『へ? これですか? チューナーですけど……』

279 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:05:18.33 ID:801rwPQ0
ふと思い出してしまった。
私が高校時代に入っていたけいおん部のある先輩の言葉。
やたらスキンシップしてくるけど、なんだかんだで一番好きな先輩だった。
いや、恋愛的な意味じゃないよ?

……そういや、学校卒業してから全然会ってないなぁ。
あの頃は「夢は武道館!」なんて言ってたのに。
先輩たちが卒業してから、私の組んでいたバンド「放課後ティータイム」は解散。
いわゆる自然消滅、ってやつ。
卒業してからもバンドは続いていくなんて、甘い考えだった。


梓「って、こんな事考えてる場合じゃなくてアコギ弾かなきゃ」

いつの間にか休めていた手を再び動かす。
ちょっと時間はかかったけど、無事にチューニングは完了。
ピックを口にくわえ、ギターを肩にかけて弾く体制に入る。

何を弾こうかな。
久し振りに「タイムトラベラー」でも弾こうかなぁ。

280 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:14:19.71 ID:801rwPQ0
~~♪

梓「うすぐらい屋根裏でー 見つけたそーのーとびーらー」


ジャカジャカ、とストローク。
流れるようなイントロと、爽やかで哀愁漂うな感じのサビ。
私はこの曲が大好きだった。


梓「時代のすーきーまーへーとー 繋がるーたーそーがーれーに」


道端を歩いて行く人たちが私の方を向いたり、
少したちどまって私の演奏を聴いてくれたり。
朝方だから人は少ないけど、どこかで私の演奏を聴いてくれる人がいる。
それに数は関係ない。 このどこか胸の奥から湧き上がるこの感情。

別に人が聴いてくれるから弾く、って訳じゃない。
でも、このどこかモヤモヤした様な感情が私は好きだ。


梓「さーあー 僕が産まれるまーえーのー さーあー」

281 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:21:12.61 ID:801rwPQ0

「タイムトラベラー」の演奏も終了。
さっき公園で買ったお茶をのびながらのんびりすることに。
……少し休憩してからまた何か弾こうかな。


唯「あれ……あず、にゃん……?」

突然後ろの方から声が聞こえた。
私が高校時代の時、嫌っていうほど聞いた先輩の声。
いきなり声掛けられたもんで、びっくりして少しお茶を吐いてしまった。
……うぅ、はしたない。


梓「唯……先輩?」

唯「あ、やっぱりあずにゃんだ!!」


振り向くとあの頃と何も変わらない唯先輩の姿。
変わった所と言えばいつもつけてたヘアピンを外している。
こどもっぽかった先輩が凄く大人に見えた。

282 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:26:16.11 ID:801rwPQ0
唯「すっごい久し振りだねーあずにゃん!」

何一つ変わらない笑顔で私に抱きついてくる先輩。
持っていたお茶がこぼれそうになる。


梓「ちょ、先輩……苦しい」

そう言う私の言葉なんて聞かないように頬ずりしてくる。
昔と変わらない、あったかくてやさしい。
なんだか、久し振りに会ったことと、
色々な気持ちが混ざって少し泣きそうになってしまう。


……あ、お茶こぼれた。

283 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:35:54.78 ID:801rwPQ0
梓「先輩、そろそろはなしてくだひ……」

唯「あ、ごめんごめん。あずにゃんに会えたのが嬉しくて」


えへへ、と彼女は笑った。
怒ろうとしたのに、先輩の笑顔を見るとそんな気じゃなくなる。
どうやら今と昔も変わらないらしい。
……卑怯だ。

梓「久し振りですね、先輩」

唯「だねー、もう4,5年振りくらいかな?
  でもびっくりしたよ、収録に向かう途中の道であずにゃんに会うなんて」

梓「……そういや唯先輩、今はもう人気ミュージシャンですもんね」

唯「えへへ……それほどでもないよ」


そういってまた照れた様に笑った。

284 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:48:02.53 ID:801rwPQ0
唯先輩は2、3年前にメジャーデビューした。
彼女は本当に1教えると10覚える様なタイプの人間で、
みるみるうちにギターの腕は上達して行って、私より上手くなってしまった。
歌も上手だし。
それになんだか先輩の演奏は惹かれるものがある。
彼女がプロになって、人気が出るのはさほど時間はかからなかったらしい。

……先輩がプロデビューするのは必然だったんだ。
そう、自分に言い聞かせる。


唯「あずにゃんはここでなにしてたの?」

梓「ああ、せっかくの休みなんでギターの弾き語りをちょっと」

唯「ほえー……私は今日も仕事だよ……」

羨ましそうに私を見る。
不思議な気持ち。本当に昔と変わらない。
会えたのは凄く嬉しいけど、それに反して嫌な気持ちが私の中を渦巻く。

285 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 13:58:21.24 ID:801rwPQ0
なんで放課後ティータイムは消滅してしまったんだろう。
お菓子食べて、まったりしたりもしたけど、
私はあの緩い空気が嫌いじゃなかった、むしろ好きだった。
卒業しても、ずっと続くと思っていた。
傲慢かもしれないけど、私たちならきっとプロになれる。そう思っていた。

でも、先輩たちが卒業してから、唯先輩に連絡が取れなくなってしまった。
そして、バンド活動ができなくなって消滅。
……私たちの高校時代はなんだったんだろう。


唯「あずにゃん? どうしたの?」

梓「……で」

唯「え?」

梓「なんで唯先輩はプロになったんですか?」

唯「そりゃ音楽が大好きだからかなぁ。やっぱり音楽って――」

梓「ならなんで連絡してくれないんですか!!」

286 : ◆I2uP4Cqq/s :2010/05/16(日) 14:06:31.03 ID:801rwPQ0
唯「あ、あずにゃ……」

梓「私は信じてたんですよ!? いや、私だけじゃない。
  澪先輩も律先輩もムギ先輩も……みんな……」

梓「卒業しても放課後ティータイムは不滅って、言ったじゃないですか!!」

梓「なのに、先輩は電話してもメールしても帰ってこないし……
  メンバーが一人でも欠けたら放課後ティータイムじゃない。
  だから唯先輩から連絡してくれるまで私たちは練習しなかった」

梓「そして少しずつ私たちの関わりも無くなっていって……」

梓「放課後、ティー、ぐすっタイ、ムは…ぁ…!!」

唯「…………」


気がつくと私は泣いていた。
ぽろぽろと私の涙がアコギに落ちる。
水滴はボディを滑って、私の足元の地面に吸い込まれていった。

 *未完*