もえプロローグ


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 子供の頃の話だ。お父様との約束を破って、屋根裏部屋に入った
ことがある。

 ワクワクした。今まで私は屋根裏部屋に入ったことがないから
だ。

 今までずっと暮らしてきた家の中に未開の地があったと知った
とき、不気味と思った、と同時にゾクゾクした。

 後ろの首筋に走る悪寒はジェットコースターの落下の感覚を思
わせた。でも、私は悪寒を快感と感じた。未知のものに対する恐
れは好奇心に打ち消された。

 もう、何も怖くない。何も恐れない。全てが楽しい。未知の快
感に支配された私のテンションは最高潮に達した。

 自分は今屋根裏部屋にいて、見つかってはいけない、というこ
とを忘れて、飛び跳ねてしまったのだ。今思えば愚かしいことこ
の上ない。

 ―――グチャ……。

 足の裏で小さな命が燃え尽きた。一匹のどこにでもいる灰色の
命。ネズミだった。

 私はけたたましく泣いた。もう泣けないネズミの代わりなのか。
親が私を発見しても私は泣き続けていた。

 それ以来、ネズミが怖くなった。本当に怖いのはネズミの命を
奪ってしまった自分の罪なのに、何故か私はネズミを恐れるよう
になった。

 しかし、恐怖という感情の隣。いや、裏側。歓喜を見つけた。

 なんでもないただの灰色の命を奪った感覚は支配者の優越感と
いう毒を私に与えたのだ。毒は同時に蜜であり、その甘さを知っ
てしまった。

 他人を支配すること。思い通りにすること。つまり、服従させ
ること。人であれば誰もが望むことではないだろうか?

 人として生を享けたからには願いを叶えようと努力することを
許される筈だ。

 さあ、願いを叶えよう。夢に向かって突き進め。諦めるな。が
んばれ。綺麗な言葉が私を動かした。

 そして、綺麗な言葉が私を、―――を汚い行動へと動かした。