美恵ルートプロローグ


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 俺は親を知らずに育った。

 小さい頃、保護施設なんて名前だけの場所で虐待を一身に受け
ながら、暴力を覚え、

中学の頃には施設を抜け出して浮浪者のような生活をするように
なった。

しかし今までいくら虐待を受けていたと言っても寝床ぐらいはあ
る生活に慣れてしまっていた俺は、この生活に耐え切れず、恐喝
で収入を得て、その金でホテル暮らしをするようになった。

しかし、そんな生活も長くは続かなかった。

 いつかの恐喝した相手が暴力団の構成員だったのだ。そいつは
俺のことを上に報告し、上は「うちのもんに手ぇ出されて黙っと
ったら。そら、任侠団体の名が泣くっちゅーもんや」

なんてほざきやがった。そして構成員150人で街を捜索され、
勿論俺は見つかり、その後リンチに遭った。

 必死に抵抗した、が数字の上では勝てる筈もなく、現実でも勝
てる訳がなかった。

 動けない。体からの最後の反応。そして俺の最期の反応。

 銃口をこめかみに突きつけられ問われた。

「このまま死ぬか、それとも俺に忠義を尽くして死ぬか、どっち
か好きな方を選ばしたる」

 俺は初めて人の心を魅た。俺に選択する権利を与えてくれたの
はこの人が初めてだった。せめて、訊くだけでも……。

「ん?忠義を尽くして死ぬっていうのは俺の盾になれってことや。
それで。どうする?」

 選択権は俺に与えられた、しかし選択権と呼ぶには相応しくな
い。何故なら答えは決まっているからだ。

「よっしゃ!ええ心がけや!―――」

 あれから30年。俺はあの人の組に貢献してきた。あの人の言
うことならなんでもやってのけた。

 抗争を避ける為の政略結婚だって見事にこなした。娘が生まれ
た。最初は愛の無い生活だったが、今では娘が可愛くてしょうが
ない。嫁が他界してからも娘への愛は変わらなかった。

 今でも時々、思い出す。あの時の言葉。今への原動力となった
あの言葉が―――。

「よっしゃ!ええ心がけや!今日からお前は俺の盾や!どんな敵か
らでも俺を守ってくれよ!」