【2-Aプロット】
- しばらくしてもえが来る。暗い顔。
- 「やっほー!どうしたの?赤点が怖くなったの~?」
「……。ねぇ。玲子のこと信用していいんだよね?」
「……?。あったりまえじゃないの!相談って何?好きな子でも
できた?それとも悪の巨大組織に追われてるとか?なんでも解決
してあげるから、話してみて」
「……。ふっふっふ~。引っ掛かったな!実はドッキリだったん
だよん!この私に悩みがある……と、でも思ったかー!そんなこ
とだから玲子はいつまで経っても私を超えられないのだよぉ~」
「何よー。折角人が心配して相談に乗ってあげようと思ったのに
~」
なんだ、ドッキリ(?)か。やっぱり、相談なんて、もえらしく
ないと思った。
「ところで陸上部はいいの?あんた副部長でしょ?」
「う~ん、今日はそういう気分じゃないんだにゃ~」
「副部長がそんなのでどうすんのよッ!さっさと、部活行きなさ
いっ!」
「ふにょ~ん……。まあ、いいじゃんか!もう休むって伝えてあ
るしさ。今日は一緒に帰ろ!」
「……うーん。まあ、いいわよ。でも、明日からはちゃんと行き
なさいよ?」
「わかってるって!玲子はいい意味でお節介だな~」
<<省略して>>
「じゃあ、また明日ねー」
「う、うん。また明日」
もえは少し戸惑いながら去っていく。
さて、夕食は冷蔵庫には昨日の残りのハンバーグがある。レンジ
で温めて食べよう。
昨日と同じくテレビを見ながら食べる。
<<シーンは飛ぶ>>
「ふぅ~、いい湯だった~」
プレイヤー心理(そこは飛ばすなよっ!)
「さーて、今日はギリギリセーフだったけど。明日は余裕を持っ
ていかなくちゃね」
3日目7月27日(木)。
- ふと、目が覚める。時計を見ると06:30。随分と余裕があ
る。
枕元の携帯を見るとEメールが一件。
もえ:今日はちょっと気分が悪いから休むね^^;。先生と美恵
ちゃんにもよろしくー。
へー。馬鹿は風邪引かないっていうけど珍しいこともあるもんだ。
「玲子さんおはよう」
「おはよう、美恵。昨日言ったことちゃんと覚えててくれたんだ
ね」
「あと玲子さんは、なしで!」
「はい、わかりました」
あんまり、わかってないよね?
「美恵~。今からもえのお見舞い行くけど一緒に来る?」
「すみません。今日は図書委員で忙しくて……。もえさんによろ
しく伝えください!」
「あ、委員会かー。ごめんね。あと明日から『玲子さん』と敬語
は禁止だからね!」
「はい。わかりました」
やっぱり、そんなにわかってないよね?
「奥平ですけど、もえのお見舞いに来ました」
ガチャ。
「玲子ちゃん、久しぶりね。見ないうちにこんなに大きくなった
のね。さぁ、あがって」
靴を脱ぐ。家ではありえないような綺麗なそろえ方をして。
「やっほー。もえ、調子はどう?」
「あ、玲子。来てくれたんだ……」
ベッドで寝ているもえ。
「まあ、暇だったから―――ね。で、調子はどうなの?」
「え!?べ、別にもう平気かな……。うん、明日はいけるから心
配しないで」
「そっか。よかった。でも馬鹿は風邪引かないっていうのになん
で風邪なんか引いちゃったんだろーね?」
「―――、ちょっと玲子ー!どういう意味っ!一応私、病人なん
だけど!」
「あははっ!ごめんごめん」
<<しばし雑談>>(美恵がよろしくと言っていたというのも忘
れずに)
「じゃあ、そろそろ帰るね」
「あ、うん。ありがとう」
「じゃあ、また明日。学校でね」
「ばいば~い」
階段を下りようとしたとき!
「玲子っ!」
「なに?」
「……やっぱり相談があるんだ。明日の放課後教室に残っててよ」
「うん。わかった。じゃあまたね」
「うん。また明日」
今度こそ別れを告げて帰る。
「お邪魔しましたー」
「またいつでもいらっしゃい」
もえの家から帰ってくる途中に買ったハンバーガーを食べる。
風呂に入って、寝る。
4日目7月28日(金)。
- 起床は07:00。まあ、いつもはこれぐらいの時間に起きる。
- 学校に到着。
教室から話し声が聞こえてくる……。
「いやー、昨日はもうダメだ、と思ったんだけど。玲子が突然
私の部屋に入ってきて激しくキスしてきてさ」
「え!?玲子さんがそんなことをっ!?」
「うん。それのおかげで私は今でも何事もなかったかのように学
校生活を―――。ぎゃ、ぐわぁっ!」
後ろから渾身の力を籠めて持っていた鞄でもえを殴る!
「なーに、朝からハードな嘘付いちゃってるわけ~?」
「あ、―――玲子。おはよー……。昨日は助かった、よ」
「玲子ちゃん、おはよう。昨日もえさんの家で……えっと、その
……」
「あ、『玲子さん』のこと覚えてくれたんだ。ありがとーね。で
も、もえの下らない話を間に受けなかったらもっと感謝したんだ
けどな~」
「え!、その、すみません……」
「いいのよー。怒ってないから。責任はこれからもえに取っても
らうし。ね?」
「えぇ!?私が責任取るの?そんなー、濡れ衣だよ~」
「全然、濡れ衣じゃないからっ!だから国語の成績も悪いのよ!
あんたは!」
「……ふにょーん。ごめんなさい。私、玲子さんのことをこんな
にも想っているのに、あなたが振り向いてくれないから、こんな
つまらない嘘を付いてしま―――ぐにゃほぁっ!」
「ほほぉー、まだ言うか?」
「あ、すみません。マジで。お詫びに玲子のスリーサイズをクラ
スの皆に言いふらして好感度を、特に男子のを上げてあげるから、
許してー」
ぶちッ!
「許すわけないでしょー!」
鞄に気を集中してとどめの一撃を放つ。
放物線を描いて吹っ飛ぶもえ。
「これに懲りたらつまらない嘘付くなっ!」
「朝から仲いいですね」
「「どこがだっ!!!」」
二人のシンクロ率は80%!
「あうぅぅ~。すみません」
- 授業中、何度かもえと視線が合った。その度に何かを伝えよう
と睨んでくるのだけども、何が言いたいのかまるでわからない。
そういえば、昨日、もえが相談があるから待っててなんて言って
ったっけ。
しばらくして、もえが来る。
「なに~?またドッキリとか?」
いつになく真剣な表情のもえ。
「私さ、やっぱり玲子のこと信じて相談してみる。このまえは変
にはぐらかしちゃったけど……」
何が言いたいのだろう?
「別に気にしてないからいいって!で、相談って何?」
「……うん。25日の放課後、私の靴箱にこんな手紙が入ってた
の」手紙を手渡される。なになに?
- 『今年の二月から一ヶ月に一人ずつ、この街の女子高生が消え
ているのをご存知ですか?驚くと思いますが、あれは私の犯行で
す。次はあなたを誘拐します。覚悟しておいてください。
誘拐された人はどうなったっかですか?それはもう健気に働い
てくれてますよ。貴方も時機に仲間入りです。
まあ、貴方には特別な待遇を用意してありますが……』
馬鹿げてる。
- ……確かに女子高生が一ヶ月に一度、失踪しているという事実
はある。
でも、それにしたって。これは……手の込んだ悪戯と考えるのが
普通ではないだろう?
でも、もえの怯え方は尋常じゃない。
普段は快活で、どんなことがあっても挫けずに、前向きに物事を
考えるのがもえの取り柄の筈だ。何か……もえを本気にさせるこ
とでもあったのだろうか?
- 「……あのさ。私には悪戯にしか見えないんだけど、何か、も
えを本気にさせることでもあったの?」
「……うん。私の前の学校の友達がね、先月、誘拐されたんだよ。
もともとあんまり素行のいい子じゃなかったんだけどさ。
全然帰ってこないんだよ?連絡もないし。噂になったでしょ?
風上 亜里沙(かざかみ ありさ)っていう名前なんだけど、玲
子は知らないよね?」
彼女は軽く言うが、心の奥では相当傷ついているだろう。
- 「よし!わかった!もえが悪の組織に狙われてるなら私が事件
解決までずっと一緒に居てあげる!」
こういうときは一緒に居てあげよう。たとえ悪戯だったとしても
もえの心は今弱ってる。こんなときに一人にしたら何をするかわ
からないし。
「……え?だって学校で一緒にいたって下校中とか狙われたり…
…自宅を狙われたりするかもしれないし……」
「大丈夫!今日から事件解決のXデーまで私の家に泊まりなさいっ
!」
「えッ!いいの?でも、そんなの悪いって……」
「何言ってんの~。シャーペンで突っついたお詫びだから遠慮し
なくていいのよ!」
「え……。あ、うん。ありがとう。じゃあ、親に電話するねー!」
少しずつ普段の雰囲気を取り戻してきたもえを見て私はホッとし
た。やっぱり、もえはこうでなくっちゃ!
「そうだなー。今日はもえが来るから特別ご馳走を作らないとね
っ!よし!買い物、手伝ってもらうわよ~」
「ニシシシシ。私は沢山食べるよー!今月の食費はきっとピンチ
になっちゃうだろーねー」
普段の明るさに戻ってきた。
「うぅ。それは困る……」
- 二人で買い物~。
- 夕食には定番のカレーを作りました。
「うめーーーー!玲子ー!あんた毎日こんなの食べてたらいつか
死ぬよ?」
そりゃ、いつかは死ぬでしょうね。
「そんな、大げさだって」
「いや、ほんっとに、おいしいから!くっ、最初は二、三日ほど
しか、お世話にならない予定だったけど。こいつは長引きそうで
すぜ?」
ふー。よかった。完全にいつものペースだ。このまま回復するま
で一緒に居てあげよう。
「どうぞ~。私は一人暮らしだから好きなだけいるといいよ」
「なぬ!?冗談で言ったんだけどこれは本気でしばらくお世話に
なっちゃっていい空気ですな!」
「そろそろ、お風呂入っちゃってよー」
「了解っす!……じー」
「なに、見てんのよ?」
「いやー。玲子は一緒に入らないのかなーっと思いましてね」
「ば、馬鹿!なんで一緒に入んのよ!」
「えぇー!折角、クラスで男子のあれな眼差しを独り占めしてる
玲子の裸体が拝めると思ったんだけどな~」
「なにをっ!?いやらしい言い方しないでよっ!別にそんな見せ
るような体してないわよ?」
「そうなの?それじゃあ、私が見て判断してあげるっ!」
玲子に飛びつくもえ。
刹那の手捌きで弾き返す玲子。
「もうっ!いいから一人で入ってきなさーい!」
「うおっ!今朝の悪夢再来の予感……。ここは大人しく従ってお
こう」
「素直でよろしい。でさ、もえ。着替えはどうするの?なかった
ら貸すけど?」
「そこら辺は心配ご無用!私服はいっつも持ち歩いてるから、そ
れで寝るね」
「あ、そうなの。下着はどうするの?」
「うーん。玲子さんのを借ります!」
「やっぱりね。引き出しから好きなの取っていってちょうだい」
「了解!」
なんで満面の笑み?
ちょっと心配だから後をつけてみよう。
「おぉー!玲子のやつめこんな大人っぽい下着を!それにサイズ
が私のと全然違うっ!何食べたらこうなんのかな~?」
案の定。何してんのかと思えば……。仕方ない。
「こいつはクラスの男子に見せてやりたい絶景ですなー!一枚ぐ
らい写―――」
携帯のカメラを構えたところで、私は手に持ったハリセンを振り
下ろす。
「―――つっいってぇ!」
「いってぇ、じゃないわよ!人が親切に下着を貸してあげるって
いうのに、なに、変態みたいなことやってんのよ!」
「いやぁー、それは……。
でも、変態って言ったら玲子も私の後をつけてたじゃん!」
「それとこれとは別でしょッ!私はもえが満面の笑みで何か企ん
でそうで怖かったから、あとをつけたのよ!」
「今のは聞き捨てならないぞ!私が何か企んでるって、私のこと
信用してないんじゃないのっ?」
「そんなことないわよ!信用してない相手なんて家に泊めるもん
ですか!」
「じゃあ、ここはお互いの信用を深める為にも裸の付き合いとい
うことで……どう?」
「な、なんで、そうなんのよ!」
「あ!やっぱり信用してないんだ。私は玲子のこと信用してるか
ら全然一緒に入ってOKだよ。玲子は?」
「う、うぅ。い、いいわよ!やってやろうじゃないの!」
「そうこなくっちゃ!」
<<風呂場>>(イベントCG)
「やっぱり、玲子の体は……あれだね」
「あれって何よ!あれって!」
「知りたいかー。ならば体に教え込んでくれる~」
「うわ!変なとこ触らないでよ!
……っ!
ちょ、ちょっとやめて……」
「あははー。ここがいいのかー?それともこっちー?」
「う、ぅぅ。やめてって言ってるでしょ……あっ」
「ん~。聞こえないな~」
最後の力を振り絞って!
「やめろって言ってるでしょーがー!!」
ドガーン。
浴槽から飛び出るもえ。故意にではなく玲子によって。一体どん
な力が働いたのやら。
「ふにゃ~。ごめんらぁさぁーい」
「もう、知らないっ!」
<<シーンは飛んで>>
「はーい」
カチッ。
「ちょっと~狭いんだからもう少しそっち行ってよ」
「狭いのがいいんだよ~。ほら、玲子と肌がぴったりくっついて
さ」
「また朝みたいに飛行する?」
「あ、ごめんなさい」
客人用の布団など一人暮らしの私にはなく、しょうがないので、
もえと同じベッドで寝ていた。
<<雑談>>(この中に含まれる会話は明日は土曜日なので私の
親戚の探偵を紹介するというもの)
少しの間訪れた沈黙。私はもえと語る新たな話題を探す為に口を
止めた。しかし、まどろみの中に落ちていくと這い上がって来れ
ないようで、沈黙が解かれたのは次の日の朝だった。
5日目7月29日(土)。
時計は08:00。もえはまだ玲子の横で寝息を立てている。
こうしてみるとかわいいもんだ。
さーて、もえが起きてくる前に朝ご飯を作ってしまおう。
表現が大げさなもえとわかっていても、ああいう風に褒められる
とかなりうれしかったりするのだ。
よし!ちょっとはりきって、豪華にしちゃおっかな~。
「むにゃむにゃ。おはよー」
いいタイミングで起きてくるなー。もしかして計ってた?
「おはよっ。朝ご飯できてるよー」
「うん……。すごっ!この量はやばいよ、玲子!」
「え、っと、その、昨日褒めてくれたのが―――」
「え?何か言った?二人で割っても相当な量だよ!普段からこん
なに食べるの?もしや、沢山食べるから、このスタイル?」
「んなわけないでしょ!ちょっとはりきっちゃっただけよ!」
<<朝食シーン>><<雑談>>
- 「そういえばさ、昨日、探偵を紹介してくれるって言ってなか
ったっけ?」
「あ、そうだったね。ちょっと電話してみる」
<<TEL!>>
「はい、こちらは浮気からテロまでなんでも対応の堀探偵事務所
です」
「あ、兄さん?玲子だけど」
「あー、玲子ちゃんか。どーしたんだ?」
「友達がストーカーみたいなのに脅迫受けててさ、不安だからう
ちに今泊まってるんだけどね。それを解決して欲しいんだ」
「ん~、仕事としての依頼?」
「まあ、一応そうしとく。引き受けてくれる?」
「なに、言ってんだよ!従兄妹で美人で発育のいい女性の頼みは
断れないだろ!」
「変なの入ったけど、ありがと!」
「じゃあ、今から迎えに行くから玄関の前で待っててくれ」
「わかった。じゃあ、よろしくー」
<<もえと少し話す(健三との関係など)>>
キィッ!
私ともえの前に止まった白い車。
兄さんのことだ、どこぞの外車だろう。
バタン!
かっこつけながら車を降りてくる兄さん。毎度のことだ。
「初めまして、お嬢さん。俺の名前は堀 健三(ほり けんぞう)
。お嬢さんは?」
「え!わ、私はもえです。小笠原 もえ」
「もえ、そんなに緊張しなくていいよ。この人は初対面の人には
いつもこうだから」
「もえさんですか……。いいお名前です」
聞いちゃいない。
「あ、ありがとうございます」
- <<健三の事務所に到着(この間にもえと健三の言葉遣いは変
わる)>>
「まあ適当に腰掛けて。で、依頼内容は?」
「えっと、25日の放課後、もえが部活に行くために靴箱で靴を
履き替えるときに靴箱の中からこんな手紙が出てきたの」
そう、言って私は兄さんに手紙を手渡す。
「ほ~。どれどれ?」
目が文字を追っていく。追うたびに兄さんの表情は険しくなって
いった。
「うん~……」
「どうなの兄さん?」
「ちょっと言いにくいんだけどな。実は一ヶ月前にもこれに似た
手紙を持った子が訪ねてきて、事件解決を依頼してきたんだ」
「その子の名前って風上 亜里沙?」
「よく知ってるな。その通りだよ。でも、俺は事件を解決できず、
ある日を境に連絡が取れなくなった……」
「へぇ。そう、なんだ」
もえの方を見ると、とても普段からは想像できないような不安そ
うな瞳で私と兄さんを見ていた。
<<話は続く(内容はこっちでも頑張って捜査してみるよ。だか
ら玲子ちゃんはもえちゃんを少しでも安心させてあげる為に傍に
いてあげるんだ。警察は一ヶ月に一度女子高生が消えるこの事件
は関連した事件ではないし、ただの家出扱いで本格的に捜査をし
ようとはしていない。>>
この白い封筒には見覚えがある……。もえの下駄箱に入ってた手
紙と同じだ。嫌な予感……。
「どしたの玲子ー?固まっちゃって―――」
もえに見られる前にこっそり中身を確認して捨てようと思ってい
た。でも、見付かってしまってはしょうがない。それに、これは
もえに来た手紙だ。私の判断でどうこうしていいものではない。
「……ねぇ、もえ。どうする?」
「……うん。一応、中身見てみる」
「わかった」
『こんにちわ、もえさん。随分と玲子さんと仲が良い様ですね。
私はとても玲子さんが恨めしいです。何故なら私のモノになるも
えさんが、玲子さんの物になってしまいそうだからです。
でも、大丈夫ですよね?私は貴方を信じていますよ。
それでは、また。今度は直接会ってお話するでしょうね。
楽しみです。』
……酷い。もえはこんなに震えてるのに、悪戯の犯人か誘拐犯か
どっちかわからないけど、もうやめてほしい。
ふと、もえを見る、と。
「大丈夫だよ、玲子」
なんて、言って私を安心させようとしているのか。
その笑顔は無理やり過ぎて、とても痛々しかった。
「……もえ。私、決めた。もえに何があっても、私が守るから」
心からの言葉だった。もえのことを守ってあげたいと思った。命
に変えてでも。
「……ありがとう」
少し涙ぐむ、もえ。
それをそっと包み込むように私は抱いた。
<<シーンは流れる。私を安心させる為に、明るく振舞おうとす
るもえ。でも、引きつった笑顔が逆に、私を不安にさせていた>
「私―――だよ。私、嫌だよ!全然知らない人のモノになるのな
んか嫌だよ!ねぇ、玲子!私は玲子のモノになりたいよ。私を命
懸けで守ってくれる玲子のモノに……」
そうか。もえはモノじゃないのに度重なる脅迫で自分が物である
かのように錯覚してしまってるんだ。まともな精神を取り戻すま
で相当な時間を要することだろうけど、もえは事件解決までは自
分がモノだということを疑わないだろう。それならば、事件解決
までは私がもえの所持者であろう。
「わかった。今日からもえは私のモノだよ。もう誰にも渡さない」
6日目7月30日(日)
朝、起きるともえはメールをしていた。
「おはよぉ~。朝はやいのね」
「あ、お、おはよう」
昨日の夜のことが少し恥ずかしいのか、もえは顔を赤くした。
私も思い出したが、やはり恥ずかしい……。
「朝ご飯作るね~」
「え、私も手伝う」
「別にいいよ。もえは私のモノなんだからゆっくりしといて」
「逆でしょ。モノなんだから所有者を手伝わないと」
「うーん……。それもそうか。じゃあ、手伝って」
「わかった。何すればいい?」
<<二人で朝食を作り食べる。そのあと健三にTEL>>
「うん。昨日こういうことがあってね。うん」
「そうか、こっちはまだ何も掴めてないんだ。すまんな」
「いいよ、兄さん。もともと、あるかすらわからない事件なんだ
から」
「あぁ、でも玲子ちゃんの頼みなら例えなくても全力で捜査する
さ。それに犯人を俺はどうしても許せない……」
兄さんはやっぱり探偵としての正義感をちゃんと持ち合わせた素
晴らしい人間だったのね。
「それは、人の女子高生を自分のモノと言い張るとこだ!全ての
女子高生は俺のモノなのに、こいつは!!」
「うん、じゃあね」
「え!?玲子ちゃ―――」
兄さんの返事を待たずに私は受話器を置いた。あの人を信用した
私が馬鹿だった。
「うん。玲子がそういうなら……」
<<二人で楽しい買い物。クライマックスを前にした思い出作り
の為に。>>
- 昼食のファーストフードの店の中の会話でもえはお守りにネズ
ミのストラップをポケットに入れている。と話す
「玲子!はやくはやく!」
「ん、ハァ。ちょっと待ってって。もえは体力だけはあるんだか
ら……」
私は息を切らしながらもえの誘う場所についた。
瞬間。
私は目の前の景色に言葉を失った。
「ここはね。私のお気に入りの場所なんだ。綺麗でしょ?」
「……うん」
「聞いてる~?」
「あ、ごめん。あまりにも綺麗だったから」
「うん。綺麗だよね!私、この場所大好き!」
赤い日差しを後ろにこちらに満面の笑みで微笑む少女。
その笑顔にはあの痛々しい笑顔は微塵も含まれていなかった。
<<イベントCG>>
中にはもえの写真が数百枚……。
と手紙。
『もうすぐ、お迎えにあがりますよ。それは私からのプレゼント
です。受け取ってください。(今日の買い物を見ていたことを告
げる)』
もえはその場に膝を着いて倒れる。
「ちょ、ちょっともえ!」
「やっと、起きた?ごめんね、あんなの開けちゃって」
「ん、玲子。いいんだよ。私だってどうせ空けるつもりだったか
ら」
<<しばし話し合い>>
お風呂に入っちゃって、それとご飯できてるから。
もえがその両方をこなしている間、玲子は考える。犯人について。
「ふぅ~いい湯だったよー。あと玲子のハンバーグおいしすぎだ
ね!」
「そう?ありがと」
玲子に飛びつくもえ。胸の中で泣いている。
「うぅ……。玲子、私ってとんでもない子だよ。だって、だって
玲子のこと好きになっちゃったんだもん……」
あぁ、私だってもえと同じ立場になったら例え同性でも好きにな
ってしまうだろう。誰が犯人かわからず、外にいるときは楽しん
でた反面、監視されていることに怯えていた。
そんななか、自分でいうのもなんだが。心強い味方がいる。命を
掛けて守ってくれると誓ってくれた味方が。その人愛するな、と
いう方が無理な話だ。だから、私はもえの愛に応えよう。
「……うん。私も大好きだよ。だから、昨日みたいに……ね?」
「……玲子。痛かったら言ってね?」
6日目7月31日(月)
家中を探しても、もえの姿は無い。
さっさと服に着替えて街中を走り回る。
いない。いない。いない。いない。いない―――。
心辺りは全て当たった。
……いや。まだある。
学校でもなく、お気に入りだった喫茶店でもない、もえが大好き
な場所が。
「なんで気付かなかったんだろう」
今まで気が付かなかった自分を腹立たしく思いながらも私は走っ
た。もえのいるかもしれない。いや、もえのいる高台へと。
景色を眺めていた少女が息を切らしている私を見付ける。
「玲子!なんで、こんなとこに……」
「もえは私のモノなんだから。もえのことはなんでもわかるよ」
「それは聞き捨てなりませんね、玲子さん」
赤を背景にした美しい少女の横。負けないぐらい美しい少年が立
っていた。
「昨日まではもえさんは確かにあなたのものでした。でも、今日
からは私のモノです」
この子がもえを脅迫していた……。
「失礼。私は鷺藁 貴意(さぎわら きい)と申します。本日よ
り、もえさんの持ち主になるものです」
この子、ふざけてる!もえはモノじゃないのに!
「何、言ってんの!もえはモノじゃないんだから、そんな言い方
はないでしょ!」
「おかしいですね。貴方がさっき『もえは私のモノだ』って言
ってましたよね?」
「それは……」
「嘘なの……?」
不安そうにこちらを見つめるもえ。
「そういうことじゃないわよ!もえは、もえは……私の大事な人
なんだから!モノじゃないわよ!」
「ですが、もえさんは、今日から私のモノになりました。勿論、
両者同意の上で」
「そんな馬鹿なっ!もえ?本当なのっ?」
「う、うん」
「なんでそんな条件呑んだの!」
「……」
黙ってしまうもえ。
「ほらね?どうです玲子さん」
「玲子……ごめんね……。貴意さん、玲子と少し話しをさせてく
ださい、どこにも行きませんから……」
「わかりました。じゃあ5分だけ。私はちょっと散歩してきます」
- 「ごめんね……玲子……。今の私にできることは本当のことを
話すだけ。黙って聞いて、お願いだから」
ただ頷くしかない私。
「実はね、あの人とメールをしてたの。メールは玲子に相談する
前に届いたんだ。最初は誰かわからなかったけど、手紙のことを
言われてすぐに誰かわかった。
それでね、玲子に相談したことを何故か知ってて、大人しく私の
モノになれば玲子には危害を加えないって言ってきたんだ。
そんなの呑むしかないじゃない。だって……私、玲子のこと……
前から、好きだったんだから」
私は彼女を守っている気になっていた。
でも、現実は逆だった。彼女は私を守る為に自分を犠牲にしよう
として……今に至る。
「ごめんね……勝手なことして」
「いいの。私こそ、ごめんね。もえのこと何も気付いてやれなく
て」
「うんん。
私、何も言わずにに玲子の前から去ろうとしてたんだけどね。や
っぱりそれは無理だったみたい。
未練がね、やっぱりあったから。玲子に相談したり、この場所を
玲子に教えたりしてしまったんだと思う。
それで……もし、玲子がここにいる私を見つけてくれたら、
二人は助かる。なんて、根拠のない希望を勝手に持っちゃってさ。
私……馬鹿だよね?」
全く、この子は。
「私はもともともえを助ける為に来たのよ?だから、助かるって
いう希望を持つのは当然でしょ?」
もえは下を向いて涙を流す。それは『ごめんなさい』の涙じゃな
く、『ありがとう』の涙だったのだ。
- 「そろそろ5分経ちましたよ?もえさん、行きましょうか」
「は、はい」
震えながらも貴意の方に歩いて行くもえ。
「待って、貴意!」
もえが遠くに行ってしまう。ただ、それを止めたくて私は貴意に
話しかけた。
「なんですか?玲子さん」
とにかく、ここは言葉を紡がないと。
「貴方は他の子も誘拐してるんでしょ?その子達は、今どうして
るのっ!?」
「少し違いますね。誘拐しているのは私ではありません。誘拐し
て私のとこに売りに来る連中がいましてね。そいつらから私が金
を出して買ってるわけですよ。今のところ他の子達は私の屋敷に
いますよ。健気に働いてくれてます」
<<適当に話す。会話の中から貴意がネズミが苦手だと聞き出す
「もういいですか?私は一刻も早く屋敷でもえさんを楽しみたい
んですから」
①もう、我慢ならない!ここは高台だ、突進して貴意を突き落と
せば……。3-Bへ(バッドエンド)
②冷静になって。彼の弱点はネズミだ……。ネズミ、ネズミ……
3-Aへ
最終更新:2007年09月12日 21:30