3-Bプロット


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……そうだ。もえのポケットにはネズミのストラップがあったは
ずだ。それを彼に投げつければ、驚くだろう。その隙に逃げ出せ
ば……。
「ねぇ。最後にもえを抱かせて。それだけでいいから。そうした
ら私はこのことは一切、忘れるから。
「そうですね……。私のもえさんが穢れてしまうのは嫌ですけど、
ここまでもえさんを面倒見てきてくれたのは、あなただ。そのお
礼として特別にいいでしょう」
「……ありがとう」
『ありがとう』なんて言うには相応しくない眼差しで私は礼を告
げる。
ガバッ!
私たちは強く抱き合った。
そして、私はもえの耳元で囁く。
「あんたのポケットにネズミのストラップあるでしょ?」
「うん」
「それを私に貸して。返せないかもしれないけど……」
「わかった」
こっそりとストラップを受け取る。
「ありがと」
「もえさんと最後の会話は楽しめましたか?」
「何が?なんで私がもえと最後の会話をするの?最後の会話はあ
なたがするものでしょッ!」
そういって私はネズミのストラップを投げつけた。
「―――ッ!?ネ、ネズミ!!!」
彼は驚いて後ろに飛びのいた。
が、後ろは手すり。
そして、手すりにつまずいた彼は、崖から落下する。
「―――あぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
声ではない。ただの音が、悲鳴が、もえのお気に入りの場所にこ
だました。
  • 私たちは絶句した。ただ、驚かして、その隙に逃げ出そうと思
っていたのに。まさか、高台から落ちて……。
私は万が一の為に高台から下を覗き込む。
下に広がるのは華奢な少年とそれを覆う赤色。
私はその場に膝をついた。
「私は人殺しだ……」
「違うよッ!玲子は何も悪くない!悪いのは私なんだから!あな
たは何も―――」
「で、でも私は―――んんっ!?」
私の口を出ようとした続きの言葉は発せられなかった。
もえの唇によって。
  • そして、ゆっくりともえは口を離す。
「玲子の罪は今ので私に移ったよ!これで玲子は何も悪くない!」
彼女は笑った。
本当に楽しそうな笑顔で。

『ごめんね』
口を飛び出しかけた言葉。今はこれを言っちゃいけない。
そうだ。今はこれを言わなくちゃ。もえにこれを伝えなくちゃ。
「ねぇ、もえ」
「え?なに?」



「ありがとう」