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「闘将(たたかえ)!古泉仮面」(2008/11/14 (金) 16:32:37) の最新版変更点
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**闘将(たたかえ)!古泉仮面 ◆NIKUcB1AGw
古泉一樹は、トトロと共にずっと夜空を見上げていた。
夜空に輝く星は澄んだ光を放ち、殺し合いという異常な状況に放り込まれた彼を優しく照らしてくれている。
しかし古泉は、星を見て現実を忘れられるほどロマンチストではなかった。
(星については特別詳しいわけではありませんが……。見知った星座が一つも見あたりませんね。
少なくとも、ここは日本ではなさそうです……)
彼の頭脳は、一分一秒を惜しむかのように働き続けていた。しかし、得られた結論はたいしたものではない。
(こんな生物が実在するという事実に比べたら……日本の外に連れ出されたことなどどうでもよく思えてしまいますね……)
隣に寝ころぶトトロ ―ただし、古泉はまだその名を知らない― に視線を向けながら、古泉はため息をつく。
するとトトロが、どうかしたのかとばかりに首をこちらに向けてくる。
「いえ、何でもありません。お気になさらずに」
古泉がそう言うと、トトロは首の向きを空に向け直した。
この短時間の間に古泉は、自分とともにいる不思議生物が人間の言葉を理解することを確信した。
そして積極的に語りかけることにより、トトロの側からの意思表示も何となく理解できるようになってきた。
もっとも、それはあくまで「何となく」であるが。さすがにトトロの考えを完璧に理解するのは、古泉の明晰な頭脳をもってしても不可能だ。
それからさらに、数十分が経過した。トトロからの逃走劇で疲れ切っていた古泉の肉体にも、どうにか動ける程度の体力は戻ってきた。
(さて、そろそろ動きますか)
もとより、古泉にじっとしている余裕などない。
参加者の中に危険人物が何人いるかはわからないが、もたもたしていればそれだけ捜し人たちが殺人者の餌食となる可能性が高まってしまう。
たとえ体力が完全に回復していなくても、一刻も早く行動してハルヒやキョンと合流しなくてはいけないのだ。
(とはいえ、がむしゃらに動いたところで運良く会えるとは思えません。何か目印になりそうなものは……)
古泉は自分の荷物から地図を取り出し、それを広げる。
(ここはどうやら、島の南部の砂丘のようですね。ここから近い施設といえば、北の博物館と西のレストランですか)
古泉は考える。博物館とレストラン。単純な二択だった場合、涼宮ハルヒはどちらを選ぶ?
(はっきり言って、どちらも涼宮ハルヒが向かう可能性は高くない……。
しかし好奇心を刺激されるようなものがあるとは思えないレストランよりは、何かそれらしいものが展示してあるであろう博物館に向かう可能性の方が高そうですね。
いや、待ってください……)
古泉は、地図のさらに西を見る。 そこにあるのは、遊園地や温泉といった施設。
それらの娯楽性の高そうな施設にハルヒが向かう可能性は、博物館に向かう可能性より高いように思える。
とりあえず現在地により近い温泉を見た場合、博物館からでもレストランからでも直線距離はそう変わらない。
しかしレストランから温泉までの道は、どうやら舗装されているようだ。加えて、博物館から温泉にまっすぐ向かうには川を横断しなければならない。
つまり西部の施設の探索を考慮に入れた場合、レストランに向かった方が効率がいいということになる。
(どうしたものでしょうね。情報がほとんどない現状では、どちらを選んでもベストとは言い切れない。深く考えても時間の無駄になりそうです。
とは言っても、どうやって決めたものか……)
行き詰まった古泉は、いったん地図から目を離す。すると、隣に寝ている巨大生物の体が嫌でも視界に入ってくる。
「あなたは、どこに行きたいですか?」
ほんの戯れのつもりで、古泉はトトロに尋ねる。しかし、期待していなかった返事が返された。
トトロはのっそりと起きあがり、腕を北の方角に伸ばしたのだ。
「なるほど……。では、一緒に行きましょうか」
古泉の言葉に、トトロはニィッと笑う。それを、古泉は「肯定」の意志と判断した。
◇ ◇ ◇
北に向かって、一人と一匹が歩き始める。その途中、古泉は初めてトトロも自分と同じようにデイパックを背負っていることに気づいた。
それを確認して、古泉の頭脳は再び回り出す。果たしてこの珍獣は、道具を使えるだけの知能があるのかどうか。
仮にあったとしても、人間サイズの道具をあの巨体で使いこなすことは出来なさそうだ。
ならば、彼(?)の支給品も自分が持っていた方がいいのではないだろうか。もし彼のサイズに合わせた支給品が渡されていたとしたら、それはそれで本人に使ってもらえば問題ない。
何にせよ彼の支給品を知っていくことにメリットこそあれ、デメリットはなさそうだ。
「すいません。あなたの背中の荷物、見せてもらってよろしいですか?」
古泉の申し入れに、トトロは再びニィッと笑う。かまわない、ということなのだろう。
「それでは、失礼しますよ」
古泉が、トトロのデイパックを開けるために手をかける。しかし、それだけでもなかなか骨の折れる作業であった。
何せトトロのデイパックは彼の体格に合わせ、他の参加者のものよりはるかに巨大に作られているのだ。
何とかデイパックを開封すると、古泉はトトロの体をよじ登りデイパックに上から手を突っ込む。
どうやら大きさは規格外でも中身の量は他の参加者と変わらないらしく、しばらく古泉の手はむなしく空を切った。
ちなみにその間もトトロはマイペースに歩き続けているため、揺れてよけいに中のものが手に取れない。
それでも古泉はめげず、どうにかデイパックの中にあった何かをつかんだ。
かなりの重量があるそれを、気合いでデイパックの外に取り出す古泉。
それは、透明な袋にぞんざいに詰められた鎧と仮面だった。
デザインとしては中世の西洋で使われていたものに似ているが、若干色合いが派手なような気がする。
少なくとも古泉は、こんな濃いブルーが八割を占める鎧は見たことがない。
とりあえずじっくり見てみようと、古泉はトトロの上から降りる。
そして歩きながら、袋の中に入っていた説明書きを取り出して目を通した。
「ロビンマスクの鎧
歴戦の勇士・ロビンマスクが愛用する仮面と鎧一式」
説明書きには品物の名前と、一行だけの説明が簡潔に書かれていた。
(ロビンマスク……聞いたことのない名前ですね。しかし歴戦の勇士と呼ばれる方が使っていたのでしたら、それなりに防具としては役に立つのでしょう。
もっとも、僕の体力ではこんな重い鎧を着けたらまともに動けなさそうですが……)
冷静に判断を下しつつも、古泉の心にちょっとした好奇心が芽生える。
鎧全部を身に付けるのは無理でも、仮面ぐらいなら……。
古泉は袋から仮面を取り出し、自分の頭部にかぶせてみた。
(サイズは合いますね……。やはり重いですが、着け心地は意外に悪くない……
って、なんでちょっと気に入ってるんですか、僕は!)
邪念を払うかのように、大きく頭を振る古泉。
(だいたい、顔を隠していては出会う相手に不信感を与えかねません。使うとしたら、身に危険が迫った時だけにしておきましょう)
袋に戻そうと、古泉は仮面に手をかける。
その時だった。彼の耳に、「カーカッカッカ!」という特徴的な笑い声が飛び込んできたのは。
◇ ◇ ◇
時間は少しさかのぼる。
魔界の王子、アシュラマンは上機嫌だった。
「博物館など初めて来たが……なかなか面白いではないか!」
アシュラマンが博物館を訪れたのは、戦う相手を求めてのことだった。
闇雲に島の中を歩き回るよりは、地図に記されている何らかの施設に行った方が他の参加者と遭遇しやすいだろうと考えたのである。
つまり「人と出会ってどうするか」という点を除いて、彼の考えは古泉と似たようなものだったのだ。
しかしアシュラマンが博物館を訪れた時、そこに他の生物の気配はなかった。
すぐに他の場所に移動してもよかったのだが、まだゲームは始まったばかりだというのにそう焦る必要もない。
アシュラマンは、しばらく博物館で獲物を待ちかまえることにしたのだ。
ただ待っているだけでは退屈なので、彼は博物館の中をくまなく回っていた。
そしてそこに展示されていた『超人レスリングチャンピオンベルトのレプリカ』や『シベリアで発見された2万年前の冷凍マンモス超人』などの珍品にいたく感動したのである。
もっとも展示物の中には、『ムーの円盤石のレプリカ』やら『破損したエヴァ初号機の装甲』やらといったアシュラマンには意味不明のものも混じっていたのだが。
それでも博物館を十分に楽しんだアシュラマンは、その地を後にしようとしていた。
「結局、誰も来なかったか……。まあいい、他の場所を探してみるか」
博物館の入り口で、次はどこへ行こうかと考えるアシュラマン。その時、彼は巨大な影がこちらへ向かってきているのに気づいた。
「あれは……何という大きさの超人だ!」
アシュラマンの口から、思わず感嘆の声が飛び出す。それほどまでに、その影は巨大だった。
遠目でははっきりとはわからないが、悪魔超人きっての巨漢だったザ・魔雲天や、自らの相棒であるサンシャインもあの大きさには及ばないかも知れない。
「なるほど……世界にはまだ見ぬ強豪超人が潜んでいるものだな……」
強敵と思われる相手を前にして、アシュラマンの体は武者震いを起こす。
さらに彼は、巨大超人の横からちらりとのぞく仮面の男に気づいた。
「ロビンマスクだと!? やつの名前は名簿に乗っていなかったはずだが……。
そうか、他のジェネラル・パラストに振り分けるはずが、何かの手違いでこちらに紛れ込んだのだな?
何という凡ミス、完璧超人が聞いてあきれるわ! カーカッカッカ!」
笑いながら、アシュラマンは走る。未知の強豪と、正義超人の突撃隊長であるロビンマスクのタッグ。相手にとって不足はない。
「カーカッカッカ!」
草原を駆けながら、アシュラマンはもう一度狂おしく笑った。
◇ ◇ ◇
古泉一樹は、ひどく混乱していた。目の前に、いきなり怪人が飛び出してきたからである。
その男の外見は、三つの顔に六本の腕。先にトトロと出会って未知の生物に対する免疫が出来ていなかったら、古泉は現実を受け入れられず思考停止を起こしていたかも知れない。
しかも目の前の男は、自分たちを敵視している。どうやら彼はこの仮面の持ち主であるロビンマスクと敵対しており、しかも自分をロビンマスク本人だと勘違いしているらしい。
「待ってください。僕は、この仮面の本来の持ち主ではないんです」
なるべく落ち着くよう自分に言い聞かせながら、古泉は仮面を脱いでみせる。
「む……? 確かに、ロビンマスクは敵の前で自分から素顔を晒すような真似をする男ではないな。
それに、よく見ればロビンマスクとは似ても似つかない貧弱な体。
いくら遠目に見たからといって、こんな事にも気づかぬとは……私も焼きが回ったものよ」
「誤解が解けたようで何よりです」
貧弱と言われたことに若干不快感を覚えながらも、古泉はほっと胸をなで下ろす。
自分には涼宮ハルヒを保護するという使命があるのだ。無駄な争いは避けられるに越したことはない。
しかし古泉の安堵は、アシュラマンの次の一言であっさりと粉砕される。
「まあいい。どっちみち私以外の参加者は皆殺しにするのだからな」
「え……?」
「さあ、野辺の送りのお題目! 人間ごときにはもったいない技だが、ありがたく受け取るがいい!」
アシュラマンが、大きく腕を振る。それによって生み出された強風は螺旋を描き、小さな竜巻となった。
「竜巻地獄!」
(そんな馬鹿な! いくら腕が人間の三倍あるからといって、それを振っただけで竜巻が起こるはずが……)
思わず、心の中で常識に基づいたツッコミを入れる古泉。しかし、常識が目の前に竜巻が迫っている事実を変えてくれるわけではない。
竜巻は古泉に命中し、彼の体は大きく吹き飛ばされる。彼が一人だったら、そのまま地面に叩きつけられ重傷を負っていただろう。
しかし、彼には心強い同行者がいた。ぬっと伸ばされた巨大な腕が、宙に浮いた古泉をすぐさま受け止める。
「あ、ありがとうございます」
礼を言う古泉に、トトロはまたしても笑いかける。だが古泉は、その笑顔に若干の「怒り」を感じ取った。
もちろん、古泉への怒りではない。自分たちを襲ってきた、無法者への怒りだ。
「2対1のハンディキャップマッチか。まあ、片方が人間なら妥当なハンデだろうな。
さあ、試合続行といこうか!」
アシュラマンから発せられるのは、すさまじいまでの敵意。
どうやら、話し合いでなんとか出来る相手ではないらしい。古泉は、そう認めざるをえなかった。
戦えば死ぬかも知れない。だが、逃げ切れるとも思わない。ならば、勝利するしかない。
だから自分の心を落ち着けるために、彼はいつもの「古泉一樹」として振る舞う。
「ふう……。本当に困ったものです」
一つ溜め息を漏らすと、古泉は今一度仮面で自分の顔を覆った。
がんばれ、古泉! 負けるな、トトロ! 怖い悪魔をぶっ飛ばせ!
【H-8 博物館前/一日目・未明】
【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】疲労(中)
【持ち物】 H&K XM8(30/30)、5.56mm NATO弾x90、ロビンマスクの鎧@キン肉マン、不明支給品0~2 デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:涼宮ハルヒとキョンの保護。
2:怪人(アシュラマン)を無力化、もしくは殺害。
3:SOS団メンバー、キョンの妹と合流。朝倉涼子は警戒。
4:他の参加者は利用。使えないのなら切り捨てる。
【トトロ@となりのトトロ】
【状態】健康 、少し怒っている?
【持ち物】デイパック(支給品一式、不明支給品0~2)
【思考】
1:???????????????
【備考】
※人間と交流したいようです。
【アシュラマン@キン肉マンシリーズ】
【状態】健康
【持ち物】 ディパック(支給品一式入り、不明支給品1~3)
【思考】
1:参加者は全員殺すぞ。 悪魔将軍はどうしよう。
2:最後の1人になって元の世界に返るぞ。
3:完璧超人(草壁タツオ、長門)は始末するぞ。
4:まずはこの人間(古泉)と超人(トトロ)を倒すぞ。
【備考】
※アシュラマンは夢の超人タッグ編の途中からの参戦です。22歳のバリバリ現役です。
完璧超人がネプチューンマンたちということを知らないようです。
※悪魔将軍は保留(あとで方針を変えるかもしれません)。
※ここにいる超人以外の者も別の場所でバトルロワイアルをさせられていると考えています。
※トトロを未知の超人だと思っています。
*時系列順で読む
Back:[[さらば! オメガマンの巻]] Next:[[つよきす~mighty heart~]]
*投下順で読む
Back:[[さらば! オメガマンの巻]] Next:[[つよきす~mighty heart~]]
|[[超能力少年、そしてとなりのストーカー]]|古泉一樹|[[Triple 『C』 ~超人/超能力者/超…生物?~]]|
|[[超能力少年、そしてとなりのストーカー]]|トトロ|[[Triple 『C』 ~超人/超能力者/超…生物?~]]|
|[[遠い日の記憶胸に抱きしめて]]|アシュラマン|[[Triple 『C』 ~超人/超能力者/超…生物?~]]|
**闘将(たたかえ)!古泉仮面 ◆NIKUcB1AGw
古泉一樹は、トトロと共にずっと夜空を見上げていた。
夜空に輝く星は澄んだ光を放ち、殺し合いという異常な状況に放り込まれた彼を優しく照らしてくれている。
しかし古泉は、星を見て現実を忘れられるほどロマンチストではなかった。
(星については特別詳しいわけではありませんが……。見知った星座が一つも見あたりませんね。
少なくとも、ここは日本ではなさそうです……)
彼の頭脳は、一分一秒を惜しむかのように働き続けていた。しかし、得られた結論はたいしたものではない。
(こんな生物が実在するという事実に比べたら……日本の外に連れ出されたことなどどうでもよく思えてしまいますね……)
隣に寝ころぶトトロ ―ただし、古泉はまだその名を知らない― に視線を向けながら、古泉はため息をつく。
するとトトロが、どうかしたのかとばかりに首をこちらに向けてくる。
「いえ、何でもありません。お気になさらずに」
古泉がそう言うと、トトロは首の向きを空に向け直した。
この短時間の間に古泉は、自分とともにいる不思議生物が人間の言葉を理解することを確信した。
そして積極的に語りかけることにより、トトロの側からの意思表示も何となく理解できるようになってきた。
もっとも、それはあくまで「何となく」であるが。さすがにトトロの考えを完璧に理解するのは、古泉の明晰な頭脳をもってしても不可能だ。
それからさらに、数十分が経過した。トトロからの逃走劇で疲れ切っていた古泉の肉体にも、どうにか動ける程度の体力は戻ってきた。
(さて、そろそろ動きますか)
もとより、古泉にじっとしている余裕などない。
参加者の中に危険人物が何人いるかはわからないが、もたもたしていればそれだけ捜し人たちが殺人者の餌食となる可能性が高まってしまう。
たとえ体力が完全に回復していなくても、一刻も早く行動してハルヒやキョンと合流しなくてはいけないのだ。
(とはいえ、がむしゃらに動いたところで運良く会えるとは思えません。何か目印になりそうなものは……)
古泉は自分の荷物から地図を取り出し、それを広げる。
(ここはどうやら、島の南部の砂丘のようですね。ここから近い施設といえば、北の博物館と西のレストランですか)
古泉は考える。博物館とレストラン。単純な二択だった場合、涼宮ハルヒはどちらを選ぶ?
(はっきり言って、どちらも涼宮ハルヒが向かう可能性は高くない……。
しかし好奇心を刺激されるようなものがあるとは思えないレストランよりは、何かそれらしいものが展示してあるであろう博物館に向かう可能性の方が高そうですね。
いや、待ってください……)
古泉は、地図のさらに西を見る。 そこにあるのは、遊園地や温泉といった施設。
それらの娯楽性の高そうな施設にハルヒが向かう可能性は、博物館に向かう可能性より高いように思える。
とりあえず現在地により近い温泉を見た場合、博物館からでもレストランからでも直線距離はそう変わらない。
しかしレストランから温泉までの道は、どうやら舗装されているようだ。加えて、博物館から温泉にまっすぐ向かうには川を横断しなければならない。
つまり西部の施設の探索を考慮に入れた場合、レストランに向かった方が効率がいいということになる。
(どうしたものでしょうね。情報がほとんどない現状では、どちらを選んでもベストとは言い切れない。深く考えても時間の無駄になりそうです。
とは言っても、どうやって決めたものか……)
行き詰まった古泉は、いったん地図から目を離す。すると、隣に寝ている巨大生物の体が嫌でも視界に入ってくる。
「あなたは、どこに行きたいですか?」
ほんの戯れのつもりで、古泉はトトロに尋ねる。しかし、期待していなかった返事が返された。
トトロはのっそりと起きあがり、腕を北の方角に伸ばしたのだ。
「なるほど……。では、一緒に行きましょうか」
古泉の言葉に、トトロはニィッと笑う。それを、古泉は「肯定」の意志と判断した。
◇ ◇ ◇
北に向かって、一人と一匹が歩き始める。その途中、古泉は初めてトトロも自分と同じようにデイパックを背負っていることに気づいた。
それを確認して、古泉の頭脳は再び回り出す。果たしてこの珍獣は、道具を使えるだけの知能があるのかどうか。
仮にあったとしても、人間サイズの道具をあの巨体で使いこなすことは出来なさそうだ。
ならば、彼(?)の支給品も自分が持っていた方がいいのではないだろうか。もし彼のサイズに合わせた支給品が渡されていたとしたら、それはそれで本人に使ってもらえば問題ない。
何にせよ彼の支給品を知っていくことにメリットこそあれ、デメリットはなさそうだ。
「すいません。あなたの背中の荷物、見せてもらってよろしいですか?」
古泉の申し入れに、トトロは再びニィッと笑う。かまわない、ということなのだろう。
「それでは、失礼しますよ」
古泉が、トトロのデイパックを開けるために手をかける。しかし、それだけでもなかなか骨の折れる作業であった。
何せトトロのデイパックは彼の体格に合わせ、他の参加者のものよりはるかに巨大に作られているのだ。
何とかデイパックを開封すると、古泉はトトロの体をよじ登りデイパックに上から手を突っ込む。
どうやら大きさは規格外でも中身の量は他の参加者と変わらないらしく、しばらく古泉の手はむなしく空を切った。
ちなみにその間もトトロはマイペースに歩き続けているため、揺れてよけいに中のものが手に取れない。
それでも古泉はめげず、どうにかデイパックの中にあった何かをつかんだ。
かなりの重量があるそれを、気合いでデイパックの外に取り出す古泉。
それは、透明な袋にぞんざいに詰められた鎧と仮面だった。
デザインとしては中世の西洋で使われていたものに似ているが、若干色合いが派手なような気がする。
少なくとも古泉は、こんな濃いブルーが八割を占める鎧は見たことがない。
とりあえずじっくり見てみようと、古泉はトトロの上から降りる。
そして歩きながら、袋の中に入っていた説明書きを取り出して目を通した。
「ロビンマスクの鎧
歴戦の勇士・ロビンマスクが愛用する仮面と鎧一式」
説明書きには品物の名前と、一行だけの説明が簡潔に書かれていた。
(ロビンマスク……聞いたことのない名前ですね。しかし歴戦の勇士と呼ばれる方が使っていたのでしたら、それなりに防具としては役に立つのでしょう。
もっとも、僕の体力ではこんな重い鎧を着けたらまともに動けなさそうですが……)
冷静に判断を下しつつも、古泉の心にちょっとした好奇心が芽生える。
鎧全部を身に付けるのは無理でも、仮面ぐらいなら……。
古泉は袋から仮面を取り出し、自分の頭部にかぶせてみた。
(サイズは合いますね……。やはり重いですが、着け心地は意外に悪くない……
って、なんでちょっと気に入ってるんですか、僕は!)
邪念を払うかのように、大きく頭を振る古泉。
(だいたい、顔を隠していては出会う相手に不信感を与えかねません。使うとしたら、身に危険が迫った時だけにしておきましょう)
袋に戻そうと、古泉は仮面に手をかける。
その時だった。彼の耳に、「カーカッカッカ!」という特徴的な笑い声が飛び込んできたのは。
◇ ◇ ◇
時間は少しさかのぼる。
魔界の王子、アシュラマンは上機嫌だった。
「博物館など初めて来たが……なかなか面白いではないか!」
アシュラマンが博物館を訪れたのは、戦う相手を求めてのことだった。
闇雲に島の中を歩き回るよりは、地図に記されている何らかの施設に行った方が他の参加者と遭遇しやすいだろうと考えたのである。
つまり「人と出会ってどうするか」という点を除いて、彼の考えは古泉と似たようなものだったのだ。
しかしアシュラマンが博物館を訪れた時、そこに他の生物の気配はなかった。
すぐに他の場所に移動してもよかったのだが、まだゲームは始まったばかりだというのにそう焦る必要もない。
アシュラマンは、しばらく博物館で獲物を待ちかまえることにしたのだ。
ただ待っているだけでは退屈なので、彼は博物館の中をくまなく回っていた。
そしてそこに展示されていた『超人レスリングチャンピオンベルトのレプリカ』や『シベリアで発見された2万年前の冷凍マンモス超人』などの珍品にいたく感動したのである。
もっとも展示物の中には、『ムーの円盤石のレプリカ』やら『破損したエヴァ初号機の装甲』やらといったアシュラマンには意味不明のものも混じっていたのだが。
それでも博物館を十分に楽しんだアシュラマンは、その地を後にしようとしていた。
「結局、誰も来なかったか……。まあいい、他の場所を探してみるか」
博物館の入り口で、次はどこへ行こうかと考えるアシュラマン。その時、彼は巨大な影がこちらへ向かってきているのに気づいた。
「あれは……何という大きさの超人だ!」
アシュラマンの口から、思わず感嘆の声が飛び出す。それほどまでに、その影は巨大だった。
遠目でははっきりとはわからないが、悪魔超人きっての巨漢だったザ・魔雲天や、自らの相棒であるサンシャインもあの大きさには及ばないかも知れない。
「なるほど……世界にはまだ見ぬ強豪超人が潜んでいるものだな……」
強敵と思われる相手を前にして、アシュラマンの体は武者震いを起こす。
さらに彼は、巨大超人の横からちらりとのぞく仮面の男に気づいた。
「ロビンマスクだと!? やつの名前は名簿に乗っていなかったはずだが……。
そうか、他のジェネラル・パラストに振り分けるはずが、何かの手違いでこちらに紛れ込んだのだな?
何という凡ミス、完璧超人が聞いてあきれるわ! カーカッカッカ!」
笑いながら、アシュラマンは走る。未知の強豪と、正義超人の突撃隊長であるロビンマスクのタッグ。相手にとって不足はない。
「カーカッカッカ!」
草原を駆けながら、アシュラマンはもう一度狂おしく笑った。
◇ ◇ ◇
古泉一樹は、ひどく混乱していた。目の前に、いきなり怪人が飛び出してきたからである。
その男の外見は、三つの顔に六本の腕。先にトトロと出会って未知の生物に対する免疫が出来ていなかったら、古泉は現実を受け入れられず思考停止を起こしていたかも知れない。
しかも目の前の男は、自分たちを敵視している。どうやら彼はこの仮面の持ち主であるロビンマスクと敵対しており、しかも自分をロビンマスク本人だと勘違いしているらしい。
「待ってください。僕は、この仮面の本来の持ち主ではないんです」
なるべく落ち着くよう自分に言い聞かせながら、古泉は仮面を脱いでみせる。
「む……? 確かに、ロビンマスクは敵の前で自分から素顔を晒すような真似をする男ではないな。
それに、よく見ればロビンマスクとは似ても似つかない貧弱な体。
いくら遠目に見たからといって、こんな事にも気づかぬとは……私も焼きが回ったものよ」
「誤解が解けたようで何よりです」
貧弱と言われたことに若干不快感を覚えながらも、古泉はほっと胸をなで下ろす。
自分には涼宮ハルヒを保護するという使命があるのだ。無駄な争いは避けられるに越したことはない。
しかし古泉の安堵は、アシュラマンの次の一言であっさりと粉砕される。
「まあいい。どっちみち私以外の参加者は皆殺しにするのだからな」
「え……?」
「さあ、野辺の送りのお題目! 人間ごときにはもったいない技だが、ありがたく受け取るがいい!」
アシュラマンが、大きく腕を振る。それによって生み出された強風は螺旋を描き、小さな竜巻となった。
「竜巻地獄!」
(そんな馬鹿な! いくら腕が人間の三倍あるからといって、それを振っただけで竜巻が起こるはずが……)
思わず、心の中で常識に基づいたツッコミを入れる古泉。しかし、常識が目の前に竜巻が迫っている事実を変えてくれるわけではない。
竜巻は古泉に命中し、彼の体は大きく吹き飛ばされる。彼が一人だったら、そのまま地面に叩きつけられ重傷を負っていただろう。
しかし、彼には心強い同行者がいた。ぬっと伸ばされた巨大な腕が、宙に浮いた古泉をすぐさま受け止める。
「あ、ありがとうございます」
礼を言う古泉に、トトロはまたしても笑いかける。だが古泉は、その笑顔に若干の「怒り」を感じ取った。
もちろん、古泉への怒りではない。自分たちを襲ってきた、無法者への怒りだ。
「2対1のハンディキャップマッチか。まあ、片方が人間なら妥当なハンデだろうな。
さあ、試合続行といこうか!」
アシュラマンから発せられるのは、すさまじいまでの敵意。
どうやら、話し合いでなんとか出来る相手ではないらしい。古泉は、そう認めざるをえなかった。
戦えば死ぬかも知れない。だが、逃げ切れるとも思わない。ならば、勝利するしかない。
だから自分の心を落ち着けるために、彼はいつもの「古泉一樹」として振る舞う。
「ふう……。本当に困ったものです」
一つ溜め息を漏らすと、古泉は今一度仮面で自分の顔を覆った。
がんばれ、古泉! 負けるな、トトロ! 怖い悪魔をぶっ飛ばせ!
【H-8 博物館前/一日目・未明】
【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】疲労(中)
【持ち物】 H&K XM8(30/30)、5.56mm NATO弾x90、ロビンマスクの鎧@キン肉マン、不明支給品0~2 デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:涼宮ハルヒとキョンの保護。
2:怪人(アシュラマン)を無力化、もしくは殺害。
3:SOS団メンバー、キョンの妹と合流。朝倉涼子は警戒。
4:他の参加者は利用。使えないのなら切り捨てる。
【トトロ@となりのトトロ】
【状態】健康 、少し怒っている?
【持ち物】デイパック(支給品一式、不明支給品0~2)
【思考】
1:???????????????
【備考】
※人間と交流したいようです。
【アシュラマン@キン肉マンシリーズ】
【状態】健康
【持ち物】 ディパック(支給品一式入り、不明支給品1~3)
【思考】
1:参加者は全員殺すぞ。 悪魔将軍はどうしよう。
2:最後の1人になって元の世界に返るぞ。
3:完璧超人(草壁タツオ、長門)は始末するぞ。
4:まずはこの人間(古泉)と超人(トトロ)を倒すぞ。
【備考】
※アシュラマンは夢の超人タッグ編の途中からの参戦です。22歳のバリバリ現役です。
完璧超人がネプチューンマンたちということを知らないようです。
※悪魔将軍は保留(あとで方針を変えるかもしれません)。
※ここにいる超人以外の者も別の場所でバトルロワイアルをさせられていると考えています。
※トトロを未知の超人だと思っています。
*時系列順で読む
Back:[[さらば! オメガマンの巻]] Next:[[つよきす~mighty heart~]]
*投下順で読む
Back:[[さらば! オメガマンの巻]] Next:[[つよきす~mighty heart~]]
|[[超能力少年、そしてとなりのストーカー]]|古泉一樹|[[Triple 『C』 ~超人/超能力者/超…生物?~]]|
|~|トトロ|~|
|[[遠い日の記憶胸に抱きしめて]]|アシュラマン|~|
表示オプション
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