「理想と妄想と現実」(2008/11/14 (金) 17:46:59) の最新版変更点
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**理想と妄想と現実 ◆bD004imcx.
草原の少し上空を疾走する、空を飛ぶKRR-SP。
車輪などという滑稽なものは存在せず、代わりに使われているのは超科学によって創造されし技術。
地に残る獣道はその意味を成さず、ただ彼らの道のレールとして存在するのみ。
少女によってハンドルが右へ左へ曲げられ、そのたびにKRR-SPはその機体を優雅に揺らす。
そしてKRR-SPに乗っている少年と少女。
二人の顔に風が当たり、その風にあわせて髪が踊る。
顔に流れる朝の冷えた空気は眠気を覚ましてくれる特効薬。
目を覚ます道具としては洗面所の水や朝食時のコーヒー等も挙げられるが、そんな物など比べ物にならない程の爽やかさを、その風は感じさせてくれる。
少女の強化服に備えられた高度なナビに支えられ、二人は目的地の学校へと向かっていく。
というのはもちろん、[もし彼らになんの問題もなかったら]のifの世界の話であり理想の情景。
今のゲンキはケガを負っていて、そのためキョンの妹が彼に代わり運転をしていた。
結果、今の状況は……
「ゲンキくん、手どけてぇ~~~~!?」
「何~!?聞こえないよ~~~~!!もっと大きな声で話してよぉ~~~~~?」
「だぁかぁらぁぁ~~~!胸から手をどけてよぉっ!!掴んでるんだってぇぇ~~~~!」
「何~?掴むって何をさぁっ!!ってうわっ!?落ちるから揺らすなってぇぇぇ!?」
「やぁっ!?力入れないで~~~!!んもぅ~!!ホント、シャレにならないんだからぁぁぁっ!!」
キョンの妹の頼みの綱のナビ達も、
「妹殿っ!?そんなに揺れると危ないのであります!安全運転なのでありますっ!!』
「こらゲンキ貴様!!手も足も出ない少女に何をしている!』
「くっくっく。心配ない。この機体はこんな揺れ程度で壊れやしない』
「これが壊れなくても、僕達が壊れるのですぅ~!うぷぅ……洗面器……』
あまり助けになってはいなかった。
KRR-SPは今やローラーブレードなど足元にも及ばない速さで移動している。
そんな速さになれば、さすがのゲンキも無意識に掴まりやすい所に手を伸ばす事になり。
今、彼はキョンの妹の胸の前で腕を交差させ、しっかりと両手で双方の小さな丘を掴んでいた。
そんな事をされれば、小さいとはいえ女である彼女がパニックになるのは当たり前で。
KRR-SPを右へ左へ無残に揺らしながら、それでもなんとか彼らは学校へ向かっていた。
「だからぁっ!!そんなトコ掴まないでよぉっ!!」
「無理言うなよ!掴まってないと落ちるだろぉ!?」
「じゃぁ、お腹を掴んでよ~!?」
「今の速さで掴んでる位置を変えるのは無理だってぇぇ!!」
「それじゃ少しスピード落とすから、場所変えてよぉっ!?」
言うなり、キョンの妹はKRR-SPのスピードを落とす。
前の事もあり、急に止めるような事はしなかったが、それでもKRR-SPの動きはだんだん鈍くなっていく。
そして、そんな時だった。
彼による放送が聞こえたのは。
「モッチー?嘘だろ?」
「ハル……にゃん?」
放送を聞いた後、KRR-SPは完全にその動きを止めていた。
死者の名前の中には二人の仲間の名が出ていたらしく、呆然としていた。
KRR-SPの上で二人は全身に力が入らず、ただまたがっているだけの状態になっていた。
また、その放送に動揺したのは二人だけではなかった。
『冬樹殿!?そんな……我輩のオリジナルは一体何をしているのでありますかっ!?』
『フッキー……』
『ここが殺し合いの場である以上、避けられない事ではあったかもしれないが……くそ!!』
『ふん。面白くないな』
ナビの擬似人格も声は発してはいたが、それも今の二人には届いていなかった。
「……ハルにゃんって、涼宮ハルヒって人?」
「うん。キョンくんの学校の友達。時々一緒に遊んでもらってたんだ。ゲンキくんも、モッチーって人と知り合いなの?」
「ああ。人じゃないけどな。でも、俺とは友達って言葉じゃ言い表せないくらい、仲が良かったんだ……」
互いに死んだ者について語るも、その声は重い。
「ハルにゃん、どうして死んじゃったの……えぐっ、ぐすっ……」
「……泣くなよ」
「どうして!?ゲンキくんは悲しくないの!?」
非難の声をあげるキョンの妹。
だが、声を荒くして気がついた。ゲンキの肩が震えている事に。
彼もキョンの妹ほど涙こそは流していないが、目尻に透明な物が浮かんでいる。
「俺だって、モッチーがいなくなって辛いよ!悲しいよ!けど……」
「だからって落ち込んで、泣いてばっかいても、何も始まらないだろ!?」
「今俺達にできる事。それは、こんな殺し合いを早く終わらせて、元の世界に帰る事だよ」
キョンの妹は彼の言葉を黙って聞いていたが、目の涙を手の甲で拭き、そして。
「ゲンキくん、強いんだね。私なんか、こんなに泣いちゃってるのに」
「つ、強くなんかないよ。けど、涼宮ハルヒって人もこんなに泣いてもらって。いい人だったんだね」
「うん。すっごくいい人だったんだ。それに、古泉さんって人も、みくるちゃんも、……キョンくんも」
「……」
キョンの名前を出されて、ゲンキは口を閉ざす。
彼にあんな事をされた今となっては。
どんなに彼がいい人だったとしても、ゲンキには彼がそれほどいい人とは思えなかった。
そして今のゲンキには、放送の中のあの言葉がキョンに結びつきかけていた。
さっき死んだ五人の中にはねぇ――――長い付き合いの、仲良しの友達に殺された人もいるんだよ。
いやいや、実に立派。
殺し合いだもの、情も思い出も切り捨てる、かっこいいねぇ。
「なぁ、一つ聞いてもいいか?」
「何?ゲンキ君」
「あのキョンって人、つまり君のお兄さんってさ、涼宮ハルヒって人と仲がよかったの?」
「……そうだけど?」
「…………」
そして沈黙するゲンキ。
キョンの妹は、それが何故か分からず、首を後ろに向けたまま彼の顔を見ている。
そんな時。
『ゲンキ。それは考えるな』
彼女の着ている強化服から、ギロロの声がした。
『確かに俺達もそれは考えた。あの男の様子、放送の内容、そして妹の話から、その可能性は高いと踏んだからな』
『だが、その可能性にたどり着くのは一番最後にしておけ。絶対ではないのだからな』
『それに、その話を彼女の前でするのは酷だろうが』
「あ……」
ゲンキはキョンの妹の顔を見た。
彼女は相変わらず呆けた表情をしてゲンキの顔を見ている。
だが、彼からその可能性の話を聞かされたら、彼女はどうなるだろうか。
その事を思い、ゲンキは少し気まずくなった。
「何の話なの?」
「いや、なんでもないよ。ごめん。俺が悪かった」
『俺に謝るな。それに、お前がそう思ったのならそれでいい』
『ヒューヒュー。ギロロ伍長ぉ~、カッコいいですよ~』
『ちゃかすな!』
強化服のナビに諭されるゲンキ。
だが、彼は何故かかなり年上の軍人に諭された気がした。
「ねぇ、ゲンキ君。そろそろ行こうか」
「あ、うん。でも、お前いいのか?」
「うん。確かにハルにゃんが死んだのは悲しい」
「けど、今大切なのは、ゲンキ君のケガを治す事だよ」
「……分かった。じゃぁ行こうか」
ゲンキが再び彼女の前に腕を回し、
「あれ?」
お腹に押されるような感覚。
見ると、今度は胸の上ではなく、お腹の上に手が乗っている。
キョンの妹は、首を後ろに回す。
そこには、頬を赤く染めたゲンキの顔があった。
「ゴメンな、胸ばっか触ってて」
「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?」
その言葉に、彼女は彼以上に顔を赤く染めた。
「すごく柔らかくて、気持ちがよくてさ。ずっと触っていたかったんだ。けど」
「お前が嫌がってるのに、それを無理やりするなんて、俺にはできないよ」
「ゲンキ君……」
「やっぱり、怒ったよな」
「ううん、そんな事ないよ。やっぱりゲンキ君って優しいんだね」
「だから、そんな事ないって!」
言い合ってはいたが、すでにキョンの妹はデレデレムードに入っていた。
「そんな事あるよ。だから私も、ゲンキ君に初めて会った時からずっと……」
「お前……」
「それに、私の大事な所見たんだからちゃんと取ってもらわないとね。責任」
キョンの妹の言葉に、ゲンキも紡ぐ言葉を失う。
双方の顔は赤く、そして何故か目が潤んでいる。
ゲンキは前を、そしてキョンの妹は後ろを向いたまま、朝日をバックに顔が近づいていく。
『こら、貴様ら!何二人だけの空間を作っている!仮にもここは殺し合いの場なんだぞ!!!ケロロ!お前からも何か言ってやれ!』
『ポップコーンはどこでありますか?こういうシチュエーションを見るには、あれがかかせないのであります!』
『って、お前も何を探している!あれか?心の中では映画のスクリーンを観客席で見ている状態なのか、ああ!?』
『ボクも、いつかは軍曹さんとあんな風に……照れるですぅ~』
『くーっくっくっくっくっ。まだお子様なのに熱いもんだぜぇ。焼けるねえ』
『お!ま!え!らぁ~~~!!』
そんな外野の戯言など耳に入らない二人の顔は、朝の日差しで影になり。
二つの顔の影が、ゆっくりと重なった。
なんて超展開的なことは起きるはずもなく。
ゲンキは止まったら手の位置を変えるという約束を果たし。
キョンの妹はその後無駄に揺らす事なく、安全運転でKRR-SPを学校へ向かわせていた。
『時に、妹殿にゲンキ殿。これだけは言っておきたいのであります』
「「何(だ)?」」
『確かにケガをしたゲンキ殿を治すため、学校の治療施設に向かうというのは良案でありますが』
『同じような考えで、あるいは情報や物資目的で北へ向かう人間もいるのかもしれないのであります』
『その場合、俺達のようにこの殺し合いに乗ってない奴らだけならまだいい。問題は』
『殺し合いに乗った人間も来るかもしれないって事を頭に入れておいた方がいいって事だ。くっくっく』
『まして、片方は怪我人。片方は僕達を装備しているとはいえ、非戦闘員。戦いや殺しに慣れている奴ら相手では、不利になるかもしれないのです』
『そういう事であります。この先、どんな相手が待ち構えているか分からない故、それを考えておいてほしいのであります』
「ああ、分かったよ」
「うん、分かった」
二人は返事を返すと、先に見える学校に向かっていった。
【D-03 北部/一日目・朝】
【名前】佐倉ゲンキ@モンスターファーム~円盤石の秘密~
【状態】重傷(全身強打、行動に支障)
【持ち物】S&WM10(リボルバー)ディパック(支給品一式)
【思考】
1:学校へ
2:キョンの妹を守る。キョンの行動に疑問。
3:自分とキョンの妹の知り合いを探す
4:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る。
5:主催者は絶対に倒すが、長門有希に関してはもう少し情報が欲しい。
【備考】
※キョンがハルヒを殺したのではないかと疑っています
【名前】キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】健康
【持ち物】KRR-SP@ケロロ軍曹、『人類補完計画』計画書@新世紀エヴァンゲリオン、地球人専用専守防衛型強化服、
ディパック(支給品一式)
【思考】
1:学校へ
2:殺し合いを止める。
3:自分とゲンキの知り合いを探す
4:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る。
5:主催者に協力している長門有希のことが気になる。
*時系列順で読む
Back:[[迫り来る闇の声]] Next:[[守りたい者がいる]]
*投下順で読む
Back:[[迫り来る闇の声]] Next:[[守りたい者がいる]]
|[[Here we go! go!]]|キョンの妹|[[]]|
|[[Here we go! go!]]|佐倉ゲンキ|[[]]|
**理想と妄想と現実 ◆bD004imcx.
草原の少し上空を疾走する、空を飛ぶKRR-SP。
車輪などという滑稽なものは存在せず、代わりに使われているのは超科学によって創造されし技術。
地に残る獣道はその意味を成さず、ただ彼らの道のレールとして存在するのみ。
少女によってハンドルが右へ左へ曲げられ、そのたびにKRR-SPはその機体を優雅に揺らす。
そしてKRR-SPに乗っている少年と少女。
二人の顔に風が当たり、その風にあわせて髪が踊る。
顔に流れる朝の冷えた空気は眠気を覚ましてくれる特効薬。
目を覚ます道具としては洗面所の水や朝食時のコーヒー等も挙げられるが、そんな物など比べ物にならない程の爽やかさを、その風は感じさせてくれる。
少女の強化服に備えられた高度なナビに支えられ、二人は目的地の学校へと向かっていく。
というのはもちろん、[もし彼らになんの問題もなかったら]のifの世界の話であり理想の情景。
今のゲンキはケガを負っていて、そのためキョンの妹が彼に代わり運転をしていた。
結果、今の状況は……
「ゲンキくん、手どけてぇ~~~~!?」
「何~!?聞こえないよ~~~~!!もっと大きな声で話してよぉ~~~~~?」
「だぁかぁらぁぁ~~~!胸から手をどけてよぉっ!!掴んでるんだってぇぇ~~~~!」
「何~?掴むって何をさぁっ!!ってうわっ!?落ちるから揺らすなってぇぇぇ!?」
「やぁっ!?力入れないで~~~!!んもぅ~!!ホント、シャレにならないんだからぁぁぁっ!!」
キョンの妹の頼みの綱のナビ達も、
「妹殿っ!?そんなに揺れると危ないのであります!安全運転なのでありますっ!!』
「こらゲンキ貴様!!手も足も出ない少女に何をしている!』
「くっくっく。心配ない。この機体はこんな揺れ程度で壊れやしない』
「これが壊れなくても、僕達が壊れるのですぅ~!うぷぅ……洗面器……』
あまり助けになってはいなかった。
KRR-SPは今やローラーブレードなど足元にも及ばない速さで移動している。
そんな速さになれば、さすがのゲンキも無意識に掴まりやすい所に手を伸ばす事になり。
今、彼はキョンの妹の胸の前で腕を交差させ、しっかりと両手で双方の小さな丘を掴んでいた。
そんな事をされれば、小さいとはいえ女である彼女がパニックになるのは当たり前で。
KRR-SPを右へ左へ無残に揺らしながら、それでもなんとか彼らは学校へ向かっていた。
「だからぁっ!!そんなトコ掴まないでよぉっ!!」
「無理言うなよ!掴まってないと落ちるだろぉ!?」
「じゃぁ、お腹を掴んでよ~!?」
「今の速さで掴んでる位置を変えるのは無理だってぇぇ!!」
「それじゃ少しスピード落とすから、場所変えてよぉっ!?」
言うなり、キョンの妹はKRR-SPのスピードを落とす。
前の事もあり、急に止めるような事はしなかったが、それでもKRR-SPの動きはだんだん鈍くなっていく。
そして、そんな時だった。
彼による放送が聞こえたのは。
「モッチー?嘘だろ?」
「ハル……にゃん?」
放送を聞いた後、KRR-SPは完全にその動きを止めていた。
死者の名前の中には二人の仲間の名が出ていたらしく、呆然としていた。
KRR-SPの上で二人は全身に力が入らず、ただまたがっているだけの状態になっていた。
また、その放送に動揺したのは二人だけではなかった。
『冬樹殿!?そんな……我輩のオリジナルは一体何をしているのでありますかっ!?』
『フッキー……』
『ここが殺し合いの場である以上、避けられない事ではあったかもしれないが……くそ!!』
『ふん。面白くないな』
ナビの擬似人格も声は発してはいたが、それも今の二人には届いていなかった。
「……ハルにゃんって、涼宮ハルヒって人?」
「うん。キョンくんの学校の友達。時々一緒に遊んでもらってたんだ。ゲンキくんも、モッチーって人と知り合いなの?」
「ああ。人じゃないけどな。でも、俺とは友達って言葉じゃ言い表せないくらい、仲が良かったんだ……」
互いに死んだ者について語るも、その声は重い。
「ハルにゃん、どうして死んじゃったの……えぐっ、ぐすっ……」
「……泣くなよ」
「どうして!?ゲンキくんは悲しくないの!?」
非難の声をあげるキョンの妹。
だが、声を荒くして気がついた。ゲンキの肩が震えている事に。
彼もキョンの妹ほど涙こそは流していないが、目尻に透明な物が浮かんでいる。
「俺だって、モッチーがいなくなって辛いよ!悲しいよ!けど……」
「だからって落ち込んで、泣いてばっかいても、何も始まらないだろ!?」
「今俺達にできる事。それは、こんな殺し合いを早く終わらせて、元の世界に帰る事だよ」
キョンの妹は彼の言葉を黙って聞いていたが、目の涙を手の甲で拭き、そして。
「ゲンキくん、強いんだね。私なんか、こんなに泣いちゃってるのに」
「つ、強くなんかないよ。けど、涼宮ハルヒって人もこんなに泣いてもらって。いい人だったんだね」
「うん。すっごくいい人だったんだ。それに、古泉さんって人も、みくるちゃんも、……キョンくんも」
「……」
キョンの名前を出されて、ゲンキは口を閉ざす。
彼にあんな事をされた今となっては。
どんなに彼がいい人だったとしても、ゲンキには彼がそれほどいい人とは思えなかった。
そして今のゲンキには、放送の中のあの言葉がキョンに結びつきかけていた。
さっき死んだ五人の中にはねぇ――――長い付き合いの、仲良しの友達に殺された人もいるんだよ。
いやいや、実に立派。
殺し合いだもの、情も思い出も切り捨てる、かっこいいねぇ。
「なぁ、一つ聞いてもいいか?」
「何?ゲンキ君」
「あのキョンって人、つまり君のお兄さんってさ、涼宮ハルヒって人と仲がよかったの?」
「……そうだけど?」
「…………」
そして沈黙するゲンキ。
キョンの妹は、それが何故か分からず、首を後ろに向けたまま彼の顔を見ている。
そんな時。
『ゲンキ。それは考えるな』
彼女の着ている強化服から、ギロロの声がした。
『確かに俺達もそれは考えた。あの男の様子、放送の内容、そして妹の話から、その可能性は高いと踏んだからな』
『だが、その可能性にたどり着くのは一番最後にしておけ。絶対ではないのだからな』
『それに、その話を彼女の前でするのは酷だろうが』
「あ……」
ゲンキはキョンの妹の顔を見た。
彼女は相変わらず呆けた表情をしてゲンキの顔を見ている。
だが、彼からその可能性の話を聞かされたら、彼女はどうなるだろうか。
その事を思い、ゲンキは少し気まずくなった。
「何の話なの?」
「いや、なんでもないよ。ごめん。俺が悪かった」
『俺に謝るな。それに、お前がそう思ったのならそれでいい』
『ヒューヒュー。ギロロ伍長ぉ~、カッコいいですよ~』
『ちゃかすな!』
強化服のナビに諭されるゲンキ。
だが、彼は何故かかなり年上の軍人に諭された気がした。
「ねぇ、ゲンキ君。そろそろ行こうか」
「あ、うん。でも、お前いいのか?」
「うん。確かにハルにゃんが死んだのは悲しい」
「けど、今大切なのは、ゲンキ君のケガを治す事だよ」
「……分かった。じゃぁ行こうか」
ゲンキが再び彼女の前に腕を回し、
「あれ?」
お腹に押されるような感覚。
見ると、今度は胸の上ではなく、お腹の上に手が乗っている。
キョンの妹は、首を後ろに回す。
そこには、頬を赤く染めたゲンキの顔があった。
「ゴメンな、胸ばっか触ってて」
「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?」
その言葉に、彼女は彼以上に顔を赤く染めた。
「すごく柔らかくて、気持ちがよくてさ。ずっと触っていたかったんだ。けど」
「お前が嫌がってるのに、それを無理やりするなんて、俺にはできないよ」
「ゲンキ君……」
「やっぱり、怒ったよな」
「ううん、そんな事ないよ。やっぱりゲンキ君って優しいんだね」
「だから、そんな事ないって!」
言い合ってはいたが、すでにキョンの妹はデレデレムードに入っていた。
「そんな事あるよ。だから私も、ゲンキ君に初めて会った時からずっと……」
「お前……」
「それに、私の大事な所見たんだからちゃんと取ってもらわないとね。責任」
キョンの妹の言葉に、ゲンキも紡ぐ言葉を失う。
双方の顔は赤く、そして何故か目が潤んでいる。
ゲンキは前を、そしてキョンの妹は後ろを向いたまま、朝日をバックに顔が近づいていく。
『こら、貴様ら!何二人だけの空間を作っている!仮にもここは殺し合いの場なんだぞ!!!ケロロ!お前からも何か言ってやれ!』
『ポップコーンはどこでありますか?こういうシチュエーションを見るには、あれがかかせないのであります!』
『って、お前も何を探している!あれか?心の中では映画のスクリーンを観客席で見ている状態なのか、ああ!?』
『ボクも、いつかは軍曹さんとあんな風に……照れるですぅ~』
『くーっくっくっくっくっ。まだお子様なのに熱いもんだぜぇ。焼けるねえ』
『お!ま!え!らぁ~~~!!』
そんな外野の戯言など耳に入らない二人の顔は、朝の日差しで影になり。
二つの顔の影が、ゆっくりと重なった。
なんて超展開的なことは起きるはずもなく。
ゲンキは止まったら手の位置を変えるという約束を果たし。
キョンの妹はその後無駄に揺らす事なく、安全運転でKRR-SPを学校へ向かわせていた。
『時に、妹殿にゲンキ殿。これだけは言っておきたいのであります』
「「何(だ)?」」
『確かにケガをしたゲンキ殿を治すため、学校の治療施設に向かうというのは良案でありますが』
『同じような考えで、あるいは情報や物資目的で北へ向かう人間もいるのかもしれないのであります』
『その場合、俺達のようにこの殺し合いに乗ってない奴らだけならまだいい。問題は』
『殺し合いに乗った人間も来るかもしれないって事を頭に入れておいた方がいいって事だ。くっくっく』
『まして、片方は怪我人。片方は僕達を装備しているとはいえ、非戦闘員。戦いや殺しに慣れている奴ら相手では、不利になるかもしれないのです』
『そういう事であります。この先、どんな相手が待ち構えているか分からない故、それを考えておいてほしいのであります』
「ああ、分かったよ」
「うん、分かった」
二人は返事を返すと、先に見える学校に向かっていった。
【D-03 北部/一日目・朝】
【名前】佐倉ゲンキ@モンスターファーム~円盤石の秘密~
【状態】重傷(全身強打、行動に支障)
【持ち物】S&WM10(リボルバー)ディパック(支給品一式)
【思考】
1:学校へ
2:キョンの妹を守る。キョンの行動に疑問。
3:自分とキョンの妹の知り合いを探す
4:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る。
5:主催者は絶対に倒すが、長門有希に関してはもう少し情報が欲しい。
【備考】
※キョンがハルヒを殺したのではないかと疑っています
【名前】キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】健康
【持ち物】KRR-SP@ケロロ軍曹、『人類補完計画』計画書@新世紀エヴァンゲリオン、地球人専用専守防衛型強化服、
ディパック(支給品一式)
【思考】
1:学校へ
2:殺し合いを止める。
3:自分とゲンキの知り合いを探す
4:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る。
5:主催者に協力している長門有希のことが気になる。
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