「マジカル小砂たん第5話「土下座モードで頼み込め!」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「マジカル小砂たん第5話「土下座モードで頼み込め!」」(2008/11/23 (日) 20:58:37) の最新版変更点
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*マジカル小砂たん第5話「土下座モードで頼み込め!」◆321goTfE72
人気のない街。
その隅々で進行形でいくつかの争いが行われている。
ある場所では仲間を守るための知略による戦い。
ある場所では己を守り敵を滅ぼすための決死の戦い。
ある場所ではただただ全てを葬り去るだけの戦い。
そして、ここでは譲れない想いをぶつける戦いが展開されていた。
「お願いします、なんでもしますから師匠!」
「その『師匠』ってのやめよう、ね?」
「なんでですか!?私はもう破門ですか!!?」
「そうじゃなくて…ちょっと頭冷やそう、ね…?」
地面に額を擦り付ける少女と、ほとほと困り果てている若い女性。
そう。高町なのははかなり困っていた。
女の子が何者かと戦闘をしていて殺されかけていたのを発見しすぐさま止めに入った。
その女の子を助けることはできたが犯人を無力化することはできずに逃げられた。
あの様子だと、おそらく彼はそのまま戦い続け、誰かを傷つけるだろう。
一刻も早く対処しなくてはならない。
懸念事項はそれだけではなかった。
というよりもなのはの中ではこれが最も重要だ。
ヴィヴィオ。
なのはの愛娘。
放送で名前を呼ばれていなかったことからまだ無事なはずだ。
でも、もしかしたら怪我しているかもしれない。
何か想像もできないようなアクシデントに見舞われているかもしれない。
―――だと言うのに。
「お願いします!なんでもします!私に魔法を教えてください!!」
「とりあえずここじゃ目立つから…どこかに移動しよっか、ね?」
「いやです!師匠がうん、って言うまでここを動きません!!」
「…弱ったな」
だと言うのに、助けた少女がこの調子なので動くに動けないのであった。
駄々をこねる子供なんて放っておけばいいのだが、
危うく殺されかけてた少女を置いていけるほどなのはは非情ではない。
どうするべきだろうか。しなくてはならないことが多いというのに。
先程の危険人物を放っておいていいのか。
こんなことをしている間に、ヴィヴィオに危険が迫っているかもしれない。
ホテルで加持さんがまだ待っている可能性もある。
だからといってこの少女を置いていくわけにも―――
「―――洗濯炊事から雑用までなんでもします、
後生ですから私に魔法を教授してくださ………って、聞いてますか?」
目の前の少女の呼びかけに、ハッと我に返る。
「え、その…ごめんね」
「聞いてなかったんですか、師匠!?」
「…とりあえずその師匠っていうのやめよ?わたしは高町なのは。
あなたのお名前は?」
「小泉太湖です!通称『便利屋・小砂』!師匠、以後よろしくお願いします!!」
「えーっと…だからできれば名前で呼んでくれると嬉しいかな。
それにわたしは何をお願いされちゃったのかな?」
「だから私に魔法を―――」
苦笑いの表情のまま、なのはは何度と聞いた太湖の頼みを聞き流していた。
完全に堂々巡りだ。
いつ人が来るかも分からない屋外でこんなやりとりを続けるのは
時間の浪費以外の何物でもない。
大人しく自分が折れてしまおうか、とも思えてきた。
だけど小砂に魔力資質があるかどうかは疑わしい。
名前を聞く限りでは日本人、つまり第97管理外世界の人間のようであるし
魔力資質を持っている可能性は低い。
なのはが『魔法を教える』と言うだけで物事は進展する。
だけど小砂が魔法を使えないだろうと推測しているからこそ
騙すようなことをなのははできなかった。
しかし、これ以上こんなコントで時間を費やすわけにはいかない。
結果として、余計にこじれるかもしれないと分かっていながらも
なのははこう言うしかなかった。
「小砂ちゃん…わたしは魔法を教えることはできないの。ごめんね」
「そ…そんな…どうしてですか!?」
「わたしはヴィヴィオっていう子を捜しているの。
状況は分かるよね?ヴィヴィオが無事なうちに見つけないと」
「人捜し…ですか。だったらさっき言ったように私は得意ですよ!」
「それだけじゃないの。待ち合わせている人もいるし…
さっきの人が他の人を襲う前に止めないと」
「………」
「だから、小砂ちゃんに魔法を教える時間はないの、ゴメンね」
「だったら…師匠は待ち合わせ場所に行くなり、
さっきのズーマとかいうおっさんを倒すなりして下さい!
その間に私がそのヴィヴィオって子を捜してきます!!
だから、その後でいいので魔法を教えてくれませんか?」
必死な表情で太湖はなのはを見上げた。
だが、なのはは俯いて首を横に振るのである。
「ダメだよ。小砂ちゃんを一人にしてさっきみたいなことになったら危ないでしょ?
とりあえず、一緒に行動しよ?」
なのははしゃがんで太湖の目の高さにまで顔を持っていき、
控えめな声量で諭すように言った。
太湖は信じられないといった様子で唖然としている。
「それで、これからどうするかだけど―――」
「今、自分が置かれている状況。自分と相手との力の差。
自分ができることとやらなければならないこと。全てを、瞬時に判断するんだ」
「…え?」
突然、太湖が今までと全く違うトーンで言った。
目を見ると、先程までの少女のような目ではなく大人のような目をしていた。
「私の先生が私に言ったことです。
師匠は魔法を使えますから、もしかしたらできるのかもしれませんけど…
『子供を捜しながら』『危険人物を倒し』『待ち合わせた人物と合流し』『私を守る』
なんてことが同時にできるんですか?」
「…それは」
「差し出がましいようですが!師匠は焦りに焦って
"自分ができることとやらなければならないこと"の境界を
見失っているような気がしました!えー、以上です!!」
しゃがんでいるため、なのははまっすぐに太湖の顔をじっと見ていた。
相変わらず子供とは思えないような強い意志の宿った眼をしている。
「…なんだか小砂ちゃんのほうが師匠みたい」
「いえ、出過ぎた真似をしましたごめんなさい!」
萎縮したようにすぐに土下座姿勢に戻った太湖を
なのはは抱え上げ、優しく頭を撫でた。
驚いたような、戸惑ったような表情で太湖がなのはを見上げる。
「小砂ちゃんにもいい先生がいるんだね」
「いや、スゴイ人ですけどいい先生かどうかはヒジョーにビミョーです」
「ふふふ、先生が聞いたら悲しむよ?
………ありがとう、小砂ちゃん。
そうだよね…できないことをしようとしたってダメだよね」
少しだけ、弱々しいながらも笑みを浮かべてなのはは言った。
ちょっとだけ落ち着いたようにも見える。
「小砂ちゃん。全部が終わった後でなら
ちゃんと使えるようになるかどうかは分からないけど魔法を教える。
だから、それまで一緒に行動してくれないかな?人捜しは得意だって言ってたよね。
まずはヴィヴィオを捜すのを手伝って欲しいな」
真剣な表情だった太湖の顔が、その言葉により一気にほころんだ。
夢見る少女のような輝きを瞳に宿している。
『魔法を教える』とようやく言ってくれたのだ。断る理由は何もなかった。
「はい、喜んで!!」
「うん、ありがとう」
今度はちゃんとした笑顔で、なのはは太湖にお礼を言った。
「それじゃあ、人捜しが得意な小砂ちゃん。
まずはどこに行くのがいいと思う?」
「そうですねー、ちょっと待ってください」
そう言って太湖はなのはの腕からすり抜け、ディバックから地図を取り出す。
なのはもそれを覗き込むようにした。
「迷子が訪ねてくる場所といえば…自警団の詰め所とかですよね。
この街でそれに該当するのは…」
市街地を指差し、それらしい施設を探してうろうろしていた太湖の手を握り
なのはは彼女の手をある施設の上へと導いた。
「警察署、だね。すぐ近くだから丁度いいしとりあえずはそこに行こうか?」
「はい!そこでそのヴィヴィオって子の容姿とか教えてもらっていいですか。
あと知り合いについて情報交換をしましょう!」
元気よく太湖が言った。
はぐれたときのために知り合いについて聞いておきたい、それだけの意図の発言だった。
それだけだったのだが。
「――ってちょっと師匠!?大丈夫ですか!!?」
なのはの顔がみるみるうちに青ざめていき身体も小刻みに震え始めたのだから驚くしかない。
「大丈夫。…大丈夫、だから」
小さな声でそう言うとディバックを持ち、
なのはは警察署の方へとひどく頼りない歩調で歩き始めた。
ラドックとやり合ってた時の覇気が嘘のような、
太湖を抱きしめた時の聖母のような姿が幻だったかのような弱々しい姿だった。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ師匠!」
慌ててウージーとディバックを拾い上げ、太湖は駆け出す。
すぐに追いつき、なのはの顔を見上げると青い顔のまま汗をびっしりとかいていた。
「フェイトちゃん…ヴィヴィオは絶対に守るから…!
ヴィヴィオ…ヴィヴィオ…」
痛々しい顔のまま、小さく呟いている。
太湖は今のなのはに対し"『ヴィヴィオを守る』ことにすがっている"印象を受けた。
(フェイトって…確か放送のときに日向冬樹の後に呼ばれてた名前…
そっか。だから"知り合いについて情報交換"って言ったらこんな風になったわけか)
多分、そのフェイトっていう人は大事な人だったのだろう。
そしてヴィヴィオという子もとても大事なのだろう。
なら、もしヴィヴィオも死んだらこの人はどうするのだろうか。
※想像中
「ししょーこれからどうするんですかー」
「ごめんねー小砂ちゃんー。優勝してフェイトちゃんとヴィヴィオを生き返らせるのー」
ず が ん !
「うぎゃー。いきなり何をするんですかししょー」
「ごめんねー。わたしのために死んでー」
「そんなーひどいー」
「さようなら小砂ちゃんー。お墓はばっちり作ってあげるから成仏してねー」
「うう、こんな所で死んじゃうなんてー。凄腕魔法少女になりたかったーがくっ」
【こすな@砂ぼうず しぼー】
※想像終わり
(ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!!)
やりかねない。あれだけのことでこれだけ焦燥するこの人を見ると本当にやりかねない。
素直そうだから主催者の『なんでも願いを叶える』ってのも鵜呑みにしてる可能性あるし。
魔法少女になるためにはヴィヴィオを捜し出さなければいけない。
だが、日向冬樹のような失敗は許されない。
失敗すれば待つのは………。
ヴィヴィオの生存を心の底から願いつつ、
あわよくば警察署にヴィヴィオがいることを期待しつつ、
太湖はなのはの横を歩いていった。
魔法少女への道のりは険しい。
【B-4 市街地/一日目・朝】
【小泉太湖(小砂)@砂ぼうず】
【状態】腕に銃弾が掠り僅かな痛み、疲労(中)
【持ち物】IMIミニウージー(9mm口径短機関銃)(18/32)@現実
ディパック、基本セット
【思考】
0. 生き残る
1.「高町なのは」に弟子入りして魔法を教わる。そのためにもヴィヴィオを見つける
2.「川口夏子」と合流する
3. 警察署で情報交換する
4. B-7の『ksk喫茶店』に戻り、危険人物のことなどを報告する
5.「碇シンジ」、「惣流・アスカ・ラングレー」、「加持リョウジ」、「ケロロ軍曹」、「ガルル中尉」を探して接触する
6.「水野灌太」、「雨蜘蛛」には会いたくない。「水野灌太」の存在だけはきちんと確認したい
7. ネブラと合流出来た場合のみ、ネブラとの約束を守るため"闇の者"達を討伐する
※「高町なのは」を魔法使いと認識しました
※「ズーマ」を危険人物と認識しました。ただし本名は知りません
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(中)、強い悲しみと決意と困惑と動揺 、制服が血まみれ
【持ち物】基本セット(名簿紛失) ディパック
ハンティングナイフ@現実 コマ@となりのトトロ
【思考】
0.ヴィヴィオをはじめとしたみんなを守りたい。誰にもこれ以上死んでほしくない
1.警察署で小砂と情報交換する
2. できればホテルに向かい加持と合流する
3.ホテル、デパート方面に向かい仲間を増やし、ヴィヴィオやほかのひとの情報を得る
※「ズーマ」を危険人物と認識しました。ただし本名は知りません
※小砂を10歳ぐらいの子供だと思ってます
*時系列順で読む
Back:[[胸の奥に溢れるのは涙よりも愛にしたい]] Next:[[夏子と、みくる]]
*投下順で読む
Back:[[ネオ・ゼクトールの奇妙な遭遇]] Next:[[夏子と、みくる]]
|[[師匠と、弟子]]|高町なのは|[[ ]]|
|~|小泉太湖(小砂)|[[ ]]|
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*マジカル小砂たん第5話「土下座モードで頼み込め!」◆321goTfE72
人気のない街。
その隅々で進行形でいくつかの争いが行われている。
ある場所では仲間を守るための知略による戦い。
ある場所では己を守り敵を滅ぼすための決死の戦い。
ある場所ではただただ全てを葬り去るだけの戦い。
そして、ここでは譲れない想いをぶつける戦いが展開されていた。
「お願いします、なんでもしますから師匠!」
「その『師匠』ってのやめよう、ね?」
「なんでですか!?私はもう破門ですか!!?」
「そうじゃなくて…ちょっと頭冷やそう、ね…?」
地面に額を擦り付ける少女と、ほとほと困り果てている若い女性。
そう。高町なのははかなり困っていた。
女の子が何者かと戦闘をしていて殺されかけていたのを発見しすぐさま止めに入った。
その女の子を助けることはできたが犯人を無力化することはできずに逃げられた。
あの様子だと、おそらく彼はそのまま戦い続け、誰かを傷つけるだろう。
一刻も早く対処しなくてはならない。
懸念事項はそれだけではなかった。
というよりもなのはの中ではこれが最も重要だ。
ヴィヴィオ。
なのはの愛娘。
放送で名前を呼ばれていなかったことからまだ無事なはずだ。
でも、もしかしたら怪我しているかもしれない。
何か想像もできないようなアクシデントに見舞われているかもしれない。
―――だと言うのに。
「お願いします!なんでもします!私に魔法を教えてください!!」
「とりあえずここじゃ目立つから…どこかに移動しよっか、ね?」
「いやです!師匠がうん、って言うまでここを動きません!!」
「…弱ったな」
だと言うのに、助けた少女がこの調子なので動くに動けないのであった。
駄々をこねる子供なんて放っておけばいいのだが、
危うく殺されかけてた少女を置いていけるほどなのはは非情ではない。
どうするべきだろうか。しなくてはならないことが多いというのに。
先程の危険人物を放っておいていいのか。
こんなことをしている間に、ヴィヴィオに危険が迫っているかもしれない。
ホテルで加持さんがまだ待っている可能性もある。
だからといってこの少女を置いていくわけにも―――
「―――洗濯炊事から雑用までなんでもします、
後生ですから私に魔法を教授してくださ………って、聞いてますか?」
目の前の少女の呼びかけに、ハッと我に返る。
「え、その…ごめんね」
「聞いてなかったんですか、師匠!?」
「…とりあえずその師匠っていうのやめよ?わたしは高町なのは。
あなたのお名前は?」
「小泉太湖です!通称『便利屋・小砂』!師匠、以後よろしくお願いします!!」
「えーっと…だからできれば名前で呼んでくれると嬉しいかな。
それにわたしは何をお願いされちゃったのかな?」
「だから私に魔法を―――」
苦笑いの表情のまま、なのはは何度と聞いた太湖の頼みを聞き流していた。
完全に堂々巡りだ。
いつ人が来るかも分からない屋外でこんなやりとりを続けるのは
時間の浪費以外の何物でもない。
大人しく自分が折れてしまおうか、とも思えてきた。
だけど小砂に魔力資質があるかどうかは疑わしい。
名前を聞く限りでは日本人、つまり第97管理外世界の人間のようであるし
魔力資質を持っている可能性は低い。
なのはが『魔法を教える』と言うだけで物事は進展する。
だけど小砂が魔法を使えないだろうと推測しているからこそ
騙すようなことをなのははできなかった。
しかし、これ以上こんなコントで時間を費やすわけにはいかない。
結果として、余計にこじれるかもしれないと分かっていながらも
なのははこう言うしかなかった。
「小砂ちゃん…わたしは魔法を教えることはできないの。ごめんね」
「そ…そんな…どうしてですか!?」
「わたしはヴィヴィオっていう子を捜しているの。
状況は分かるよね?ヴィヴィオが無事なうちに見つけないと」
「人捜し…ですか。だったらさっき言ったように私は得意ですよ!」
「それだけじゃないの。待ち合わせている人もいるし…
さっきの人が他の人を襲う前に止めないと」
「………」
「だから、小砂ちゃんに魔法を教える時間はないの、ゴメンね」
「だったら…師匠は待ち合わせ場所に行くなり、
さっきのズーマとかいうおっさんを倒すなりして下さい!
その間に私がそのヴィヴィオって子を捜してきます!!
だから、その後でいいので魔法を教えてくれませんか?」
必死な表情で太湖はなのはを見上げた。
だが、なのはは俯いて首を横に振るのである。
「ダメだよ。小砂ちゃんを一人にしてさっきみたいなことになったら危ないでしょ?
とりあえず、一緒に行動しよ?」
なのははしゃがんで太湖の目の高さにまで顔を持っていき、
控えめな声量で諭すように言った。
太湖は信じられないといった様子で唖然としている。
「それで、これからどうするかだけど―――」
「今、自分が置かれている状況。自分と相手との力の差。
自分ができることとやらなければならないこと。全てを、瞬時に判断するんだ」
「…え?」
突然、太湖が今までと全く違うトーンで言った。
目を見ると、先程までの少女のような目ではなく大人のような目をしていた。
「私の先生が私に言ったことです。
師匠は魔法を使えますから、もしかしたらできるのかもしれませんけど…
『子供を捜しながら』『危険人物を倒し』『待ち合わせた人物と合流し』『私を守る』
なんてことが同時にできるんですか?」
「…それは」
「差し出がましいようですが!師匠は焦りに焦って
"自分ができることとやらなければならないこと"の境界を
見失っているような気がしました!えー、以上です!!」
しゃがんでいるため、なのははまっすぐに太湖の顔をじっと見ていた。
相変わらず子供とは思えないような強い意志の宿った眼をしている。
「…なんだか小砂ちゃんのほうが師匠みたい」
「いえ、出過ぎた真似をしましたごめんなさい!」
萎縮したようにすぐに土下座姿勢に戻った太湖を
なのはは抱え上げ、優しく頭を撫でた。
驚いたような、戸惑ったような表情で太湖がなのはを見上げる。
「小砂ちゃんにもいい先生がいるんだね」
「いや、スゴイ人ですけどいい先生かどうかはヒジョーにビミョーです」
「ふふふ、先生が聞いたら悲しむよ?
………ありがとう、小砂ちゃん。
そうだよね…できないことをしようとしたってダメだよね」
少しだけ、弱々しいながらも笑みを浮かべてなのはは言った。
ちょっとだけ落ち着いたようにも見える。
「小砂ちゃん。全部が終わった後でなら
ちゃんと使えるようになるかどうかは分からないけど魔法を教える。
だから、それまで一緒に行動してくれないかな?人捜しは得意だって言ってたよね。
まずはヴィヴィオを捜すのを手伝って欲しいな」
真剣な表情だった太湖の顔が、その言葉により一気にほころんだ。
夢見る少女のような輝きを瞳に宿している。
『魔法を教える』とようやく言ってくれたのだ。断る理由は何もなかった。
「はい、喜んで!!」
「うん、ありがとう」
今度はちゃんとした笑顔で、なのはは太湖にお礼を言った。
「それじゃあ、人捜しが得意な小砂ちゃん。
まずはどこに行くのがいいと思う?」
「そうですねー、ちょっと待ってください」
そう言って太湖はなのはの腕からすり抜け、ディバックから地図を取り出す。
なのはもそれを覗き込むようにした。
「迷子が訪ねてくる場所といえば…自警団の詰め所とかですよね。
この街でそれに該当するのは…」
市街地を指差し、それらしい施設を探してうろうろしていた太湖の手を握り
なのはは彼女の手をある施設の上へと導いた。
「警察署、だね。すぐ近くだから丁度いいしとりあえずはそこに行こうか?」
「はい!そこでそのヴィヴィオって子の容姿とか教えてもらっていいですか。
あと知り合いについて情報交換をしましょう!」
元気よく太湖が言った。
はぐれたときのために知り合いについて聞いておきたい、それだけの意図の発言だった。
それだけだったのだが。
「――ってちょっと師匠!?大丈夫ですか!!?」
なのはの顔がみるみるうちに青ざめていき身体も小刻みに震え始めたのだから驚くしかない。
「大丈夫。…大丈夫、だから」
小さな声でそう言うとディバックを持ち、
なのはは警察署の方へとひどく頼りない歩調で歩き始めた。
ラドックとやり合ってた時の覇気が嘘のような、
太湖を抱きしめた時の聖母のような姿が幻だったかのような弱々しい姿だった。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ師匠!」
慌ててウージーとディバックを拾い上げ、太湖は駆け出す。
すぐに追いつき、なのはの顔を見上げると青い顔のまま汗をびっしりとかいていた。
「フェイトちゃん…ヴィヴィオは絶対に守るから…!
ヴィヴィオ…ヴィヴィオ…」
痛々しい顔のまま、小さく呟いている。
太湖は今のなのはに対し"『ヴィヴィオを守る』ことにすがっている"印象を受けた。
(フェイトって…確か放送のときに日向冬樹の後に呼ばれてた名前…
そっか。だから"知り合いについて情報交換"って言ったらこんな風になったわけか)
多分、そのフェイトっていう人は大事な人だったのだろう。
そしてヴィヴィオという子もとても大事なのだろう。
なら、もしヴィヴィオも死んだらこの人はどうするのだろうか。
※想像中
「ししょーこれからどうするんですかー」
「ごめんねー小砂ちゃんー。優勝してフェイトちゃんとヴィヴィオを生き返らせるのー」
ず が ん !
「うぎゃー。いきなり何をするんですかししょー」
「ごめんねー。わたしのために死んでー」
「そんなーひどいー」
「さようなら小砂ちゃんー。お墓はばっちり作ってあげるから成仏してねー」
「うう、こんな所で死んじゃうなんてー。凄腕魔法少女になりたかったーがくっ」
【こすな@砂ぼうず しぼー】
※想像終わり
(ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!!)
やりかねない。あれだけのことでこれだけ焦燥するこの人を見ると本当にやりかねない。
素直そうだから主催者の『なんでも願いを叶える』ってのも鵜呑みにしてる可能性あるし。
魔法少女になるためにはヴィヴィオを捜し出さなければいけない。
だが、日向冬樹のような失敗は許されない。
失敗すれば待つのは………。
ヴィヴィオの生存を心の底から願いつつ、
あわよくば警察署にヴィヴィオがいることを期待しつつ、
太湖はなのはの横を歩いていった。
魔法少女への道のりは険しい。
【B-4 市街地/一日目・朝】
【小泉太湖(小砂)@砂ぼうず】
【状態】腕に銃弾が掠り僅かな痛み、疲労(中)
【持ち物】IMIミニウージー(9mm口径短機関銃)(18/32)@現実
ディパック、基本セット
【思考】
0. 生き残る
1.「高町なのは」に弟子入りして魔法を教わる。そのためにもヴィヴィオを見つける
2.「川口夏子」と合流する
3. 警察署で情報交換する
4. B-7の『ksk喫茶店』に戻り、危険人物のことなどを報告する
5.「碇シンジ」、「惣流・アスカ・ラングレー」、「加持リョウジ」、「ケロロ軍曹」、「ガルル中尉」を探して接触する
6.「水野灌太」、「雨蜘蛛」には会いたくない。「水野灌太」の存在だけはきちんと確認したい
7. ネブラと合流出来た場合のみ、ネブラとの約束を守るため"闇の者"達を討伐する
※「高町なのは」を魔法使いと認識しました
※「ズーマ」を危険人物と認識しました。ただし本名は知りません
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(中)、強い悲しみと決意と困惑と動揺 、制服が血まみれ
【持ち物】基本セット(名簿紛失) ディパック
ハンティングナイフ@現実 コマ@となりのトトロ
【思考】
0.ヴィヴィオをはじめとしたみんなを守りたい。誰にもこれ以上死んでほしくない
1.警察署で小砂と情報交換する
2. できればホテルに向かい加持と合流する
3.ホテル、デパート方面に向かい仲間を増やし、ヴィヴィオやほかのひとの情報を得る
※「ズーマ」を危険人物と認識しました。ただし本名は知りません
※小砂を10歳ぐらいの子供だと思ってます
*時系列順で読む
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|~|小泉太湖(小砂)|~|
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