「K.S.K.~切れ者?セクハラ?危険人物?~」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「K.S.K.~切れ者?セクハラ?危険人物?~」(2009/01/06 (火) 00:23:37) の最新版変更点
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*K.S.K.~切れ者?セクハラ?危険人物?~ ◆h6KpN01cDg
「……ちっく……しょう……あの野郎!よくもやりやがったなあ!」
川辺で一人の男が吠える。
その手に、二度と動かない女の体を抱えて。
遠くから彼の姿を見ているものがいれば、親しい女性の死に遭遇し、自らを責め敵に復讐を誓う戦士の姿に見えたかもしれない。
しかし―――彼が次に吐き出す言葉は、おおよそヒーローとは180度かけ離れたものだった。
「俺の姉妹丼を……!畜生、俺のセインとノーヴェとぐへへへへ、その後なのはさんとスバルも加えてうはうは大作戦が台無しじゃねえか!!」
己の欲望に一ミリたりとも反しない叫び。
「……ぜってえ殺す」
男の瞳には炎が宿っていた。
憎き仇を見るような、鋭い眼光。
「絶対絶対絶対絶対ぶっ殺してやる!あの蛇野郎がああああああ!」
そう全力で声を張り上げる。草木がその振動に反応して震えた。
再び、静寂が落ちる。
「くっそ……許さねえからな…………!!!!」
拳を地面にたたきつけ、歯ぎしりをする。
理由さえ知らなければ、その姿はある程度様になった。
「…………さて、こいつ……どうしようかな」
しばしの沈黙の後、男・灌太は、ようやく周りを見渡し、動かない女・セインを見やる。
彼女は人間ではなかった。機械の身で、あの男の攻撃から自らを庇おうとしたのだ。
他人のために自分を犠牲にする人間など、ほとんど灌太は知らなかった。
「別に今更悼むなんてことはしないが……まあ、俺の女になる予定だったしな」
このまま地面にほっぽり出しておくのはどうにもいただけない。灌太は、セインを川岸に寝かせた。
「こんなに水が馬鹿みたいに流れてるところなら、文句ないだろ」
彼にとって水は宝にも等しい存在、その傍に寝かせてやったのは同行者を思いやろうとした故か。
灌太は安らかな死に顔のセインを見やる。周囲には誰もいないことは分かっている。
敵が近づけば、すぐにでも行動に移れる準備は万全だ。
「あーあ、惜しい女を亡くしたぜ」
口調は軽いが、そこからは悔しさがにじみ出ている。
同行者が亡くなったことに対するショックは、やはり少しはある。―――例え、性的な意味であったとしても。
「ボインってほどでもなかったが、感触はなかなかだったからなあ……ってちょっと待てよ!?」
セインから突然視線を外し、頭を抱える灌太。
酷く真剣に唇を噛む。
「……おい、じゃあノーヴェとやらを見つけてもこいつは俺の女になれないってことじゃねえか!……ってことはつまりノーヴェは俺の妹にはならないってことだよな?……し、姉妹丼できないってレベルじゃねーぞ!」
……すごく下らないことだった。
「……いや、待て待て、まだスバルがいる。それになのはさんとやらも、正体も知らないボインだっているかもしれない。まだ俺のボインに囲まれて動けないぜひゃははは計画は終了してないぜっ……!」
両手をわきわきさせながら、不謹慎極まりない妄想にふける灌太。
セインが生きていたなら、本気で背中から刺し殺したくなるだろう。
「……まあセイン、お前の依頼は果たしてやる。妹は探す。んで、もちろんあの蛇野郎は見つけたらぎったぎたにしてやるよ」
少しの沈黙の後、灌太は口を開く。
動かない、わずかの間だけだったが行動を共にした、一人の『女』に。
「だから、安心して眠っておけ」
強く、揺るがない決意がそこには秘められていた。
「契約は、変更してやるから」
そして顔を、上げる。
「……まあその代わりお礼無しってのは俺の信念に反するから、妹に俺の女になってもらうからな!それでチャラってこった」
最後に全てを台無しにするセリフを付け足すところは、紛れもなく砂ぼうずだったのだが。
眠るセインが、少し笑っていた、ような気がした。
※
森の中を歩く、一つの影。
セインの妹を探し、蛇男を殺すと決めたはいいものの、灌太はどこに行くべきか決めかねていた。
今や武器の持ち合わせはほとんどない上に、体も万全とは言い難い。
邪な思考でかき消されがちだが、灌太の怪我は決して軽いものではなかった。歩くだけで全身がぎしりと痛む。
できる限り無駄な行動は避けたい。
「あの野郎はどこに行ったかちっともわからねえし……ここはセインと決めていた方に向かうとするか。えっと……」
どこだったか、考えてすぐに思い出す。
「……温泉か」
温泉。その言葉を繰り返した途端、彼の頭によぎる一つの想像。
「人が集まりそうな場所だ。当初の予定通り、探してみる価値はありそうだな。禁止エリアのこともあるし」
(きっと美人のボインの裸体が見られるぜ!ひゃっほおおおおおい!)
「あの男を殺すことも大切だけどな……セインとの約束を守ることを優先するか」
(とりあえずボインちゃんを俺の女にすることが先決!ああ、あいつ?会ったらぼこぼこにするが自分から男を探す趣味はねえ!)
言葉と思考がまったくかみ合わない状態のまま、灌太は地図を眺める。
このまま北にまっすぐ進めば、目的地である温泉にはたどり着けそうだ。
時刻は……まだ朝。やや距離はあるが、問題ない。
休息は取っておきたいのも事実。あの男は今すぐにでもひねりつぶしたいのは山々だが、灌太は自分の怪我の具合も分からぬほど愚かではない。
温泉のような施設で、体を休めるべきだろう。
(それにしても温泉か……こんな感じか?)
灌太は、名前も知らなかった施設の内部を夢想する。
ほわん、とピンクの靄が視界を覆う。
(女の子がお風呂に入る場所なんだろ?ってことは―――)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※ここからはおんせいのみでおたのしみください。
「ふう……やっぱり温泉はいいよねえ……」
「はい、体があったまりますねえ……」
「ここでは敵も味方も関係なく、仲良くやろうぜ」
「そうだねえ……」
「フェイトちゃん、背中流してあげようか」
「ほ、本当?ありがとう、なのは」
「ふふ、なんか子供の頃みたいだねえ」
「お二人とも肌が綺麗で羨ましいです……私の方が年下なのに……」
「そんなことないよ、スバルも十分綺麗だって」
「それに、お二人ともスタイルも良いですし……はあ、私ももうちょっと胸大きくなりたいなあ」
「フェイトちゃんは本当に胸大きいよねー」
「ひゃん!な、なのはあ……どこ触ってるのー!」
「ごめんごめん、でもよく言うよね、揉んでもらうと大きくなるって」
「へえー……どれどれ」
「ん、ちょ!何であたしなんだよ!」
「あ、ノーヴェも意外と……もみもみ」
「ばっ、お前、やめろ……っひゃあっ……!」
「えへへー、どうだ参ったかー!」
「……てめえ、揉み返してやる!」
「あは、ちょっとくすぐったいよお!」
「……よし、なのはめ、えい!」
「ふぇ、フェイトちゃん、くすぐったいよ、ひゃはははは!」
「こおらみんな!何やってるの!」
「せ、セイン!」
「妹をいじめないでくれない?それに、胸揉んでもらうなら男の人が一番でしょ」
「そんなもんなの?」
「そりゃあそうよ。私もね、さっき灌太に揉んでもらったんだけど……」
「えっ……砂ぼうず!?砂漠の妖怪に!?」
「すっげえな!」
「いいなあセイン!うらやましい!」
「……私も灌太さんに胸揉んでもらいたいな。さっき会ったけど、結局何もなかったし……灌太さん、素敵……!」
「スバルがそう思う人なら、私も」
「なのはがそう言うなら、私も」
「あたしも砂ぼうずに押し倒されたい!」
「「「「We Love Kanta!!」」」」
※妄想主が実際に本人に会っていないため、多少キャラが崩壊しています。ご了承ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……最高だぜ、温泉……!」
盛大に鼻血を吹きながら、灌太は荷物をひっつかみ、全力で駆けだした。
それはもう、怪我など全て忘れたかのように。
「いやっほおおおおおおおおお!水野最高おおおおおおおお!行くぜえええええええ!俺のボインちゃあああああああん!」
同行者の妹を探すために………という名目はともかく、美人の入浴をのぞき見るために。
※
「さてと……こっそり覗こうかとも思ったが、あえて正面から胸を揉みにかかった方がスリリングな気もしてきたな……どうすべきか……」
ずっとそんなことを考えながら、気付けば温泉に到着していた。
周囲を警戒しながら歩いていたのだが―――蛇の男どころか、女子供や動物にさえ会うことはなかった。
このあたりに既に人はいない、と見ていいだろう。
「だがしかし!温泉にならきっとボインちゃんがいるに違いない!きひひひひ、待ってろよハニー!」
妙に根拠のない自信を持って、灌太は勢い良く仲に踏み入り脱衣所の扉を開けた。
女の子から攻撃されるのは計算済み。それを交わし華麗にセクハラをするプロットは、既に頭の中に作り上げていた。
「……あら?」
しかし、当てが外れた。そこには、誰もいなかったのだ。
部屋は完全ながらんどう。
いたならいたで、半殺しにされていたかもしれないことを考えれば、いなかったことは幸福だったのかもしれないが。
「……何だよ、ちっ、誰もいねえのかよ」
期待が萎むのを舌打ちで抑え、灌太は脱衣所の中をうろうろと歩きまわる。
「……」
そして、足をぴたりと止めた。
「……濡れてるじゃねえか」
置かれたバスタオルは、ある程度乾いてはいたものの、明らかに誰かが使用したであろう形跡を残していた。
誰かが、ここに来た。それだけは間違いないようだ。
「……まだ完全に乾ききってないってことは、放送の後くらいか?……って、な、なんだってええええええ!?」
冷静に分析している―――と思えば、突然声を張り上げる。
「ちょっと待てよ!じゃあ少し前までここには女の子がいたってことだよな!?……くっそお、こうなったのも全部あの蛇野郎のせいだ、あいつにさえ出会わなければ俺は姉妹丼に加えて女の子と温泉でしっぽりむふふなことができたというのに……っ!」
地団太を踏んで悔しがる灌太は、しかしすぐに視線を元に戻す。
「……はあーあ……ボインちゃんだったかもしれないのになあ……この様子から見るに、敵に襲われて逃げ出したのか?」
温泉内部へとつながる扉は半分開いたままで、入口に敷かれたマットはめくれ上がっている。
慌ててこの場から立ち去った―――いかにもそんな感じだ。
しかし、その割に建物には傷一つない。(性的な意図はなく)温泉の中にまで足を踏み入れてみたが、湯気がもうもうと立ち込めているだけで、特に破壊されている形跡は見当たらなかった。
ここで戦闘は起こらず、ここにいた人物がうまく逃げ切った証拠だろう。
おそらく敵の姿は、外にある温泉の方で確認したに違いない。露天風呂、という名前を灌太は知らなかったが。
「しっかしそれにしても、どうしてここにゃこんなに水があるんだ?」
どぽどぽと無人の状態でも熱湯を吐き出し続ける源泉を、複雑な顔で見つめる。
勿体ない―――その一言に尽きる。
せっかくこんなに沢山水があるのだ。
今のうちに堪能しておかない手はないのではないか。
「入りたいのは山々だがなあ、一人で入ってもな……可愛い女の子と一緒じゃないと」
どうでもいいことを考えつつ、灌太は温泉から脱衣所へと上がる。
そんなに長い時間ここにいるつもりはない。せいぜい十分程度だろうか。
のんびりとしている時間はない。温泉につかれば疲れもとれるかもしれないが、水に慣れていない灌太にとっては温泉も気軽に挑戦するには難しすぎる。
「……仕方ねえ、これからのことでも考えるか」
灌太は女湯に置いてある木製の椅子に座り込むと、地図を広げる。
このような状況でも女の子の胸を揉むことを諦めていないあたり、とんでもない大物だろう。
「……時間的に既にF-2とE-10は禁止エリア、かねえ」
E-10は今のところあまりかかわりがないから良いが、やはりF-2がふさがれたのは痛かった。
禁止エリアの集まり方から遊園地に何かあるだろうと踏んだのはいいものの、最短距離が塞がれているのだ。
回り道をするにも、このままの装備ではやや心もとない。それに、ここにいたであろう人物のことも気になる。
スバル(とガルル)に合流するためにはそう寄り道している時間もないだろう。
「……遊園地は禁止エリアに囲まれているから無理として……そうすればこの近くにある建物っていや……廃屋と神社か?」
近く、というには距離があるが、仕方ない。そもそもこの島は北に建物が偏り過ぎているのだ。
おそらくは北部に人を集めて殺し合いを促進させるための作戦なのだろう。
もし何者かに襲われた人間がいるとする。少人数なら一息つくために建物に行きつく可能性は高いし、仮に数人のグループだったとすれば、逃げる際に散り散りになっているとも考えられる。
そうなればやはり、集合場所を建物にするのが一番分かりやすい。
例え温泉にいた人物でなくても、建物の内部に誰かがいる―――そしておそらく、殺し合いに乗るつもりのない人物が―――のではないか。
協力、なんてうそ寒いことをするつもりはない。蛇男やノーヴェの行方を知っているか聞き出すくらいのことはしたい。……美人だったら是非同行したいが。
もちろんいきなり近づくなんて真似はしない。危なそうな相手だったら避けるか、始末できるなら始末する。今は戦闘に興じている状況ではないのだ。
(うし、とにかく神社に向かうとするか。誰もいなかったら廃屋、後はスバルと合流だ。なのはさんも見つけられたら最高だが……うへへへへへ)
ディパックの中に全て所持品が入っているのを確認して、砂ぼうずは立ち上がる。
「……まさか、雨蜘蛛に会ったりなんかしないよな?……うえええええ、考えたくもない」
理由はともあれ、方針は決まった。
セインが死ぬ前に言っていた異世界のことなど考えは尽きないが、ここにいても推測や妄想の域を出ない。
実際に何か情報を得てから考えるべきだろう。その際に何か武器が見つかれば儲けものだ。手榴弾一つではさすがに戦いにくい。
「ともかくノーヴェとやらだけは見つけないとな。セインとの契約を肩代わりしてもらわにゃならない。……当然美人だろうな?」
口ではそう言いながらも、もしかしたら意外に一人の人間としてセインのことを気にいっていたのかもしれない。
その証拠に、瞳は、どこか真剣だったのだから。
「よし、待ってろよ、スバル、ノーヴェ……そしてまだ見ぬボインちゃん!」
かくして砂漠の妖怪は―――再び歩き出す。
【G-02 温泉/一日目・昼前】
【水野灌太(砂ぼうず)@砂ぼうず】
【状態】中ダメージ、やや冷静
【持ち物】ワイヤーウィンチ(故障)@砂ぼうず、オカリナ@となりのトトロ、 手榴弾×1@現実
ディパック、基本セット、 手書きの契約書、ディパック、基本セット、不明支給品0~2(セインが見た限り強力な武器や防具は無い)
【思考】
1.何が何でも生き残る。脱出・優勝と方法は問わない。
2.神社・廃屋を回って話を聞きたい。その後は北の市街地に向かい、昼の十二時にホテルでガルルたちと落ち合う。
3.ノーヴェを探す。そして……いっひっひっひ
4.蛇野郎(ナーガ)は準備を万全にしてから絶対に殺す。
5.温泉にいたであろう人物が気になる(色々な意味で)
6.関東大砂漠に帰る場合は、小泉太湖と川口夏子の口封じ。あと雨蜘蛛も?
※セインから次元世界の事を聞きました
※H-02 川付近にセインの死体があります
*時系列順で読む
Back:[[魔将考]] Next:[[蛇男症候群]]
*投下順で読む
Back:[[麗しくも強き女王の駒]] Next:[[命の選択を:序]]
|[[胸の奥に溢れるのは涙よりも愛にしたい]]|水野灌太(砂ぼうず)|[[舌は踊り、血は騒ぐ]]|
*K.S.K.~切れ者?セクハラ?危険人物?~ ◆h6KpN01cDg
「……ちっく……しょう……あの野郎!よくもやりやがったなあ!」
川辺で一人の男が吠える。
その手に、二度と動かない女の体を抱えて。
遠くから彼の姿を見ているものがいれば、親しい女性の死に遭遇し、自らを責め敵に復讐を誓う戦士の姿に見えたかもしれない。
しかし―――彼が次に吐き出す言葉は、おおよそヒーローとは180度かけ離れたものだった。
「俺の姉妹丼を……!畜生、俺のセインとノーヴェとぐへへへへ、その後なのはさんとスバルも加えてうはうは大作戦が台無しじゃねえか!!」
己の欲望に一ミリたりとも反しない叫び。
「……ぜってえ殺す」
男の瞳には炎が宿っていた。
憎き仇を見るような、鋭い眼光。
「絶対絶対絶対絶対ぶっ殺してやる!あの蛇野郎がああああああ!」
そう全力で声を張り上げる。草木がその振動に反応して震えた。
再び、静寂が落ちる。
「くっそ……許さねえからな…………!!!!」
拳を地面にたたきつけ、歯ぎしりをする。
理由さえ知らなければ、その姿はある程度様になった。
「…………さて、こいつ……どうしようかな」
しばしの沈黙の後、男・灌太は、ようやく周りを見渡し、動かない女・セインを見やる。
彼女は人間ではなかった。機械の身で、あの男の攻撃から自らを庇おうとしたのだ。
他人のために自分を犠牲にする人間など、ほとんど灌太は知らなかった。
「別に今更悼むなんてことはしないが……まあ、俺の女になる予定だったしな」
このまま地面にほっぽり出しておくのはどうにもいただけない。灌太は、セインを川岸に寝かせた。
「こんなに水が馬鹿みたいに流れてるところなら、文句ないだろ」
彼にとって水は宝にも等しい存在、その傍に寝かせてやったのは同行者を思いやろうとした故か。
灌太は安らかな死に顔のセインを見やる。周囲には誰もいないことは分かっている。
敵が近づけば、すぐにでも行動に移れる準備は万全だ。
「あーあ、惜しい女を亡くしたぜ」
口調は軽いが、そこからは悔しさがにじみ出ている。
同行者が亡くなったことに対するショックは、やはり少しはある。―――例え、性的な意味であったとしても。
「ボインってほどでもなかったが、感触はなかなかだったからなあ……ってちょっと待てよ!?」
セインから突然視線を外し、頭を抱える灌太。
酷く真剣に唇を噛む。
「……おい、じゃあノーヴェとやらを見つけてもこいつは俺の女になれないってことじゃねえか!……ってことはつまりノーヴェは俺の妹にはならないってことだよな?……し、姉妹丼できないってレベルじゃねーぞ!」
……すごく下らないことだった。
「……いや、待て待て、まだスバルがいる。それになのはさんとやらも、正体も知らないボインだっているかもしれない。まだ俺のボインに囲まれて動けないぜひゃははは計画は終了してないぜっ……!」
両手をわきわきさせながら、不謹慎極まりない妄想にふける灌太。
セインが生きていたなら、本気で背中から刺し殺したくなるだろう。
「……まあセイン、お前の依頼は果たしてやる。妹は探す。んで、もちろんあの蛇野郎は見つけたらぎったぎたにしてやるよ」
少しの沈黙の後、灌太は口を開く。
動かない、わずかの間だけだったが行動を共にした、一人の『女』に。
「だから、安心して眠っておけ」
強く、揺るがない決意がそこには秘められていた。
「契約は、変更してやるから」
そして顔を、上げる。
「……まあその代わりお礼無しってのは俺の信念に反するから、妹に俺の女になってもらうからな!それでチャラってこった」
最後に全てを台無しにするセリフを付け足すところは、紛れもなく砂ぼうずだったのだが。
眠るセインが、少し笑っていた、ような気がした。
※
森の中を歩く、一つの影。
セインの妹を探し、蛇男を殺すと決めたはいいものの、灌太はどこに行くべきか決めかねていた。
今や武器の持ち合わせはほとんどない上に、体も万全とは言い難い。
邪な思考でかき消されがちだが、灌太の怪我は決して軽いものではなかった。歩くだけで全身がぎしりと痛む。
できる限り無駄な行動は避けたい。
「あの野郎はどこに行ったかちっともわからねえし……ここはセインと決めていた方に向かうとするか。えっと……」
どこだったか、考えてすぐに思い出す。
「……温泉か」
温泉。その言葉を繰り返した途端、彼の頭によぎる一つの想像。
「人が集まりそうな場所だ。当初の予定通り、探してみる価値はありそうだな。禁止エリアのこともあるし」
(きっと美人のボインの裸体が見られるぜ!ひゃっほおおおおおい!)
「あの男を殺すことも大切だけどな……セインとの約束を守ることを優先するか」
(とりあえずボインちゃんを俺の女にすることが先決!ああ、あいつ?会ったらぼこぼこにするが自分から男を探す趣味はねえ!)
言葉と思考がまったくかみ合わない状態のまま、灌太は地図を眺める。
このまま北にまっすぐ進めば、目的地である温泉にはたどり着けそうだ。
時刻は……まだ朝。やや距離はあるが、問題ない。
休息は取っておきたいのも事実。あの男は今すぐにでもひねりつぶしたいのは山々だが、灌太は自分の怪我の具合も分からぬほど愚かではない。
温泉のような施設で、体を休めるべきだろう。
(それにしても温泉か……こんな感じか?)
灌太は、名前も知らなかった施設の内部を夢想する。
ほわん、とピンクの靄が視界を覆う。
(女の子がお風呂に入る場所なんだろ?ってことは―――)
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※ここからはおんせいのみでおたのしみください。
「ふう……やっぱり温泉はいいよねえ……」
「はい、体があったまりますねえ……」
「ここでは敵も味方も関係なく、仲良くやろうぜ」
「そうだねえ……」
「フェイトちゃん、背中流してあげようか」
「ほ、本当?ありがとう、なのは」
「ふふ、なんか子供の頃みたいだねえ」
「お二人とも肌が綺麗で羨ましいです……私の方が年下なのに……」
「そんなことないよ、スバルも十分綺麗だって」
「それに、お二人ともスタイルも良いですし……はあ、私ももうちょっと胸大きくなりたいなあ」
「フェイトちゃんは本当に胸大きいよねー」
「ひゃん!な、なのはあ……どこ触ってるのー!」
「ごめんごめん、でもよく言うよね、揉んでもらうと大きくなるって」
「へえー……どれどれ」
「ん、ちょ!何であたしなんだよ!」
「あ、ノーヴェも意外と……もみもみ」
「ばっ、お前、やめろ……っひゃあっ……!」
「えへへー、どうだ参ったかー!」
「……てめえ、揉み返してやる!」
「あは、ちょっとくすぐったいよお!」
「……よし、なのはめ、えい!」
「ふぇ、フェイトちゃん、くすぐったいよ、ひゃはははは!」
「こおらみんな!何やってるの!」
「せ、セイン!」
「妹をいじめないでくれない?それに、胸揉んでもらうなら男の人が一番でしょ」
「そんなもんなの?」
「そりゃあそうよ。私もね、さっき灌太に揉んでもらったんだけど……」
「えっ……砂ぼうず!?砂漠の妖怪に!?」
「すっげえな!」
「いいなあセイン!うらやましい!」
「……私も灌太さんに胸揉んでもらいたいな。さっき会ったけど、結局何もなかったし……灌太さん、素敵……!」
「スバルがそう思う人なら、私も」
「なのはがそう言うなら、私も」
「あたしも砂ぼうずに押し倒されたい!」
「「「「We Love Kanta!!」」」」
※妄想主が実際に本人に会っていないため、多少キャラが崩壊しています。ご了承ください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……最高だぜ、温泉……!」
盛大に鼻血を吹きながら、灌太は荷物をひっつかみ、全力で駆けだした。
それはもう、怪我など全て忘れたかのように。
「いやっほおおおおおおおおお!水野最高おおおおおおおお!行くぜえええええええ!俺のボインちゃあああああああん!」
同行者の妹を探すために………という名目はともかく、美人の入浴をのぞき見るために。
※
「さてと……こっそり覗こうかとも思ったが、あえて正面から胸を揉みにかかった方がスリリングな気もしてきたな……どうすべきか……」
ずっとそんなことを考えながら、気付けば温泉に到着していた。
周囲を警戒しながら歩いていたのだが―――蛇の男どころか、女子供や動物にさえ会うことはなかった。
このあたりに既に人はいない、と見ていいだろう。
「だがしかし!温泉にならきっとボインちゃんがいるに違いない!きひひひひ、待ってろよハニー!」
妙に根拠のない自信を持って、灌太は勢い良く仲に踏み入り脱衣所の扉を開けた。
女の子から攻撃されるのは計算済み。それを交わし華麗にセクハラをするプロットは、既に頭の中に作り上げていた。
「……あら?」
しかし、当てが外れた。そこには、誰もいなかったのだ。
部屋は完全ながらんどう。
いたならいたで、半殺しにされていたかもしれないことを考えれば、いなかったことは幸福だったのかもしれないが。
「……何だよ、ちっ、誰もいねえのかよ」
期待が萎むのを舌打ちで抑え、灌太は脱衣所の中をうろうろと歩きまわる。
「……」
そして、足をぴたりと止めた。
「……濡れてるじゃねえか」
置かれたバスタオルは、ある程度乾いてはいたものの、明らかに誰かが使用したであろう形跡を残していた。
誰かが、ここに来た。それだけは間違いないようだ。
「……まだ完全に乾ききってないってことは、放送の後くらいか?……って、な、なんだってええええええ!?」
冷静に分析している―――と思えば、突然声を張り上げる。
「ちょっと待てよ!じゃあ少し前までここには女の子がいたってことだよな!?……くっそお、こうなったのも全部あの蛇野郎のせいだ、あいつにさえ出会わなければ俺は姉妹丼に加えて女の子と温泉でしっぽりむふふなことができたというのに……っ!」
地団太を踏んで悔しがる灌太は、しかしすぐに視線を元に戻す。
「……はあーあ……ボインちゃんだったかもしれないのになあ……この様子から見るに、敵に襲われて逃げ出したのか?」
温泉内部へとつながる扉は半分開いたままで、入口に敷かれたマットはめくれ上がっている。
慌ててこの場から立ち去った―――いかにもそんな感じだ。
しかし、その割に建物には傷一つない。(性的な意図はなく)温泉の中にまで足を踏み入れてみたが、湯気がもうもうと立ち込めているだけで、特に破壊されている形跡は見当たらなかった。
ここで戦闘は起こらず、ここにいた人物がうまく逃げ切った証拠だろう。
おそらく敵の姿は、外にある温泉の方で確認したに違いない。露天風呂、という名前を灌太は知らなかったが。
「しっかしそれにしても、どうしてここにゃこんなに水があるんだ?」
どぽどぽと無人の状態でも熱湯を吐き出し続ける源泉を、複雑な顔で見つめる。
勿体ない―――その一言に尽きる。
せっかくこんなに沢山水があるのだ。
今のうちに堪能しておかない手はないのではないか。
「入りたいのは山々だがなあ、一人で入ってもな……可愛い女の子と一緒じゃないと」
どうでもいいことを考えつつ、灌太は温泉から脱衣所へと上がる。
そんなに長い時間ここにいるつもりはない。せいぜい十分程度だろうか。
のんびりとしている時間はない。温泉につかれば疲れもとれるかもしれないが、水に慣れていない灌太にとっては温泉も気軽に挑戦するには難しすぎる。
「……仕方ねえ、これからのことでも考えるか」
灌太は女湯に置いてある木製の椅子に座り込むと、地図を広げる。
このような状況でも女の子の胸を揉むことを諦めていないあたり、とんでもない大物だろう。
「……時間的に既にF-2とE-10は禁止エリア、かねえ」
E-10は今のところあまりかかわりがないから良いが、やはりF-2がふさがれたのは痛かった。
禁止エリアの集まり方から遊園地に何かあるだろうと踏んだのはいいものの、最短距離が塞がれているのだ。
回り道をするにも、このままの装備ではやや心もとない。それに、ここにいたであろう人物のことも気になる。
スバル(とガルル)に合流するためにはそう寄り道している時間もないだろう。
「……遊園地は禁止エリアに囲まれているから無理として……そうすればこの近くにある建物っていや……廃屋と神社か?」
近く、というには距離があるが、仕方ない。そもそもこの島は北に建物が偏り過ぎているのだ。
おそらくは北部に人を集めて殺し合いを促進させるための作戦なのだろう。
もし何者かに襲われた人間がいるとする。少人数なら一息つくために建物に行きつく可能性は高いし、仮に数人のグループだったとすれば、逃げる際に散り散りになっているとも考えられる。
そうなればやはり、集合場所を建物にするのが一番分かりやすい。
例え温泉にいた人物でなくても、建物の内部に誰かがいる―――そしておそらく、殺し合いに乗るつもりのない人物が―――のではないか。
協力、なんてうそ寒いことをするつもりはない。蛇男やノーヴェの行方を知っているか聞き出すくらいのことはしたい。……美人だったら是非同行したいが。
もちろんいきなり近づくなんて真似はしない。危なそうな相手だったら避けるか、始末できるなら始末する。今は戦闘に興じている状況ではないのだ。
(うし、とにかく神社に向かうとするか。誰もいなかったら廃屋、後はスバルと合流だ。なのはさんも見つけられたら最高だが……うへへへへへ)
ディパックの中に全て所持品が入っているのを確認して、砂ぼうずは立ち上がる。
「……まさか、雨蜘蛛に会ったりなんかしないよな?……うえええええ、考えたくもない」
理由はともあれ、方針は決まった。
セインが死ぬ前に言っていた異世界のことなど考えは尽きないが、ここにいても推測や妄想の域を出ない。
実際に何か情報を得てから考えるべきだろう。その際に何か武器が見つかれば儲けものだ。手榴弾一つではさすがに戦いにくい。
「ともかくノーヴェとやらだけは見つけないとな。セインとの契約を肩代わりしてもらわにゃならない。……当然美人だろうな?」
口ではそう言いながらも、もしかしたら意外に一人の人間としてセインのことを気にいっていたのかもしれない。
その証拠に、瞳は、どこか真剣だったのだから。
「よし、待ってろよ、スバル、ノーヴェ……そしてまだ見ぬボインちゃん!」
かくして砂漠の妖怪は―――再び歩き出す。
【G-02 温泉/一日目・昼前】
【水野灌太(砂ぼうず)@砂ぼうず】
【状態】中ダメージ、やや冷静
【持ち物】ワイヤーウィンチ(故障)@砂ぼうず、オカリナ@となりのトトロ、 手榴弾×1@現実
ディパック、基本セット、レストランの飲食物いろいろ、手書きの契約書、ディパック、基本セット、不明支給品0~2(セインが見た限り強力な武器や防具は無い)
【思考】
1.何が何でも生き残る。脱出・優勝と方法は問わない。
2.神社・廃屋を回って話を聞きたい。その後は北の市街地に向かい、昼の十二時にホテルでガルルたちと落ち合う。
3.ノーヴェを探す。そして……いっひっひっひ
4.蛇野郎(ナーガ)は準備を万全にしてから絶対に殺す。
5.温泉にいたであろう人物が気になる(色々な意味で)
6.関東大砂漠に帰る場合は、小泉太湖と川口夏子の口封じ。あと雨蜘蛛も?
※セインから次元世界の事を聞きました
※H-02 川付近にセインの死体があります
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