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「警戒でしょでしょ?」(2010/01/22 (金) 21:57:45) の最新版変更点
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*警戒でしょでしょ? ◆4etfPW5xU6
「めぼしい物は特に無し。次はこっちですかねぇ」
既に太陽が昇り始め、陽光が一面を照らしている。
丁度、建物と建物の境目。
陽光をその身いっぱいに浴びながら一人の男が呟きを漏らす。
男の目の前には門。
侵入者を防ぐ意味合いがあろうそれも、今は役目を全うする事無く開いていた。
無用心だと思いつつも、男は門を抜け禄に整備もされていない土の上をゆっくりと進んでいく。
男――ゼロスはグルリと辺りを見回しながら、先程まで探索を行っていた建物について思考を巡らせる。
まず行ったのは一階の探索。
二階の校舎に着くまでは失念していたが、もし何者かが自分達より先に訪れていたとしたら。
物音に驚いて……或いは待ち伏せするためにどこかの部屋へ逃げた可能性がある。
自分が居ない隙にゲンキや妹さんが襲われたら。
負傷中のゲンキは勿論、妹さんもただの少女。
明確な殺意を持った、このゲームに乗った者に襲われれば死は免れないだろう。
ホリィのような何の役にも立たない存在なら気にする事は無い。
だが、ホリィと決定的に違うのはあの二人が力を持ったセイギノミカタだという事。
ゼロスの持つ原稿の文字を読める可能性も残っている。
今死なれるのは、惜しい。
ゼロスは一瞬困ったように、しかしすぐにいつもの軽薄な笑みを浮かべて上ったばかりの階段を下り始める。
とりあえずゲンキを治療できる部屋を探す際にいくつかの部屋を確認したが、人の気配を感じる事は無かった。
確認すべきはそれ以外、未確認の部屋。
一階へと戻り、未確認の部屋へ視線を向ける。
『1A』『1B』『1C』のようなプレートが突き出している、数字と英語の組み合わせで区別されている部屋を確認し始める。
最初に入ったのは『1A』
ガララ、と予想以上に響く音をたてながら扉を横滑りさせる。
ゼロスの目に飛び込んできたのは40余りの机と椅子。
続いて、前方に設置された黒い板と一際大きい机。
一切の列の乱れも無く、完璧な調和を示すそれらを眺めながら足を踏み入れる。
一般的に教室と呼ばれるそこを、合点がいったように頷きながら進む。
グルリと部屋中を見回してみるが誰かが居たような気配は無い。
大きな机の下やロッカーの中、窓の外等丁寧に痕跡を探すが、何も見つからず。
この部屋には誰も居ないと判断して次の部屋へとゼロスは向かう。
次は隣の『1B』へ。
先ほどと同じく扉を横滑りさせながら音を響かせ室内に足を踏み入れる。
ゼロスの目に飛び込んでくるのは隣と全く同じ光景。
机の数や一つの乱れも無い配列に多少首を傾げながらも、誰かが居た痕跡が無いかを見て回る。
暫く探してみるが何も見つからず、次の部屋へ。
何度かその行為を繰り返し、一階の全部屋を確認してから二階へと向かう。
二階へ到着。
一階と同じく、一部屋毎にプレートが突き出しており、プレートには『2A』『2B』『2C』……と書いてある。
一階が『1』二階が『2』と言うことはおそらく『2』が階数を、『A』や『B』がそれぞれの教室の区別をしているのだろう。
先ほどまでと同じ行動を繰り返し、一部屋一部屋丁寧に見て回ったが、一階と同じく人の気配や魔力のようなものも感じられなかった。
罠が無いかも探してみたが、結局見つかったのは使い古された布切れ一枚。
持ち歩く必要性が感じられず、その場に放置。
最後は三階。
階下と同じような繰り返し。
扉を開き、一部屋一部屋見て回る。
残り一部屋を残して、どこの部屋にも全く何の気配も感じられず。
とりあえずここに訪れたのは自分達が最初なのだろう、ゲンキや妹さんが自分の居ない隙に襲われる可能性は低くなる。
後は、外からの侵入者がここを訪れる前に自分が戻れば良い。
そう思いながら開けた最後の扉。
そこには、何度も繰り返した通り確かに人の気配は無かった。
ただ、ゼロスは何か奇妙な違和感を感じていた。
そこにあったのは一つの箱のような白いモノ。
ヴーンとよく判らない音を出している箱。
部屋の中央にある机の上に鎮座したその箱へゆっくりと近付いていく。
「これは……何かのマーク? いや……SOS? 誰かが助けを求めている?」
箱にある透明の画面。
そこには奇妙なモノが描かれていた。
水色や緑、紫に黄緑色で書かれた奇妙な円形の模様。
何を意図するかさっぱりわからないその模様の真ん中にはかろうじてSOSと書かれているのがわかる。
ゼロスの持つ知識に当てはめてみれば、誰かが助けを求めていると取れる。
だが、誰がどこで助けを求めているのか、この模様からは全くそれを読み取る事が出来ない。
或いは、ゼロスの持つ知識以外の言葉……あの原稿を書いた人物と同じ世界の人物からのメッセージの可能性もある。
暫くそれを見てゼロスが出した結論は――保留。
わからないモノをいくら考えても仕方ない。
後でゲンキ達にでも聞いてから、それでも遅くは無いだろうと思い、その場に留まることなく、あっさりと元来た扉へ踵を返す。
そして今に至る。
校門を抜け陽光を浴びながら進むゼロス。
ふと気が付けば目の前には校舎の壁、そしてそこに大きく開いた穴があった。
(ここで戦闘でもあったんですかねぇ……それにしては、被害が少ないようですが……)
そこらに飛び散った破片から壁は内側から破壊された事は容易に想像できる。
おそらくこの中で戦闘を行い、不利になった何者かが咄嗟に壁を破壊、逃走したのだろう。
だが、それにしては内部の破壊が少なすぎる。
破壊された壁以外の損傷は見つからず、蛍光灯や窓も割れてはいない。
どういう事だろうか?
穴の開いた壁を通りながらゼロスは首を傾げる。
ここで戦闘を行っていないなら、この壁を壊す必要はない。
外へ行きたいのなら、ちゃんと出口があるのだから。
なのにそれをしなかった理由は?
「元は……ばリョー…ちゃん………っ!!」
思考の海に沈みかけるゼロスを、不意に聞こえた声が引き上げる。
どうやら声はこの先の部屋から発せられたらしい。
さて……そこにいるのは、セイギノミカタかゲームに乗ったものか、はたまた何の力もない弱者なのか。
にこにこと邪悪な笑みを浮かべ、木造の床をギシリと鳴らしながら、ゼロスは件の教室へと歩を進める。
(セイギノミカタなら仲間に、ゲームに乗っている方ならここで始末、ただの足手まといなら……実験材料にでもなってもらいましょうかねぇ♪)
+++
『知り合いの捜索と言うなら、まずは中学校・図書館・小学校の順に訪れて行ってはどうでしょうか? Ms朝倉。
貴方の話では、Mr古泉、Ms朝比奈、そしてMsSisterのどれも学校の存在を知っています。
ならば、そこから捜索していくのが妥当だと思われますが』
「うーん、それもそうよね。メイちゃんのお姉ちゃんも小学校に来ているかもしれないし」
「グスン……超人選手生命が……独身で中年……」
『Ms草壁もそうですが、何も力を持たない一般人が訪れるのは学校か警察でしょう。
警察は勿論、学校は日常の象徴とも言える建物です。また、広さや設備等もありますし
とりあえず学校を目指したとしてもなんら不思議ではありません』
「現に私やヴィヴィオちゃん、キン肉マンに……涼宮ハルヒにキョン君も学校に集まってきている。
他にも、日常を求める人やそれを探す人が来ても、おかしくはない……」
「えっと、元気出して? とってもだんでぃで似合ってるよ?」
『えぇ。ですから、まずは学校に関係する施設を。続いて警察署に向かうのが現状の最善かと思われます』
「なら――あぁもう、うじうじとうるさい。
なら、もうすぐ放送みたいだし少し待ってからの方が良いわね」
「えっと……とりあえず涙拭こ?」
「ヌワァー!ヴィヴィオー!!!」
『……少し、静かにしていただけませんか? Mrスグル。
時刻は11:30、放送まで確かにあと僅か。
ならば、もう少しここで待機していましょう』
「うん。それが最善……かしらね?」
「リョーコちゃんもクロスミラージュもしどい……」
「うぅ……えーっと、ほら! バルディッシュも慰めてあげよ!」
『…………………………………………………………』
「なんじゃその沈黙はーー!!!」
殺し合いの舞台に似つかわしくない、騒がしくて呑気な声が部屋中に響く。
声の主は四人――いや、三人と一機。
率先して話し合っていたのは、朝倉涼子。そしてクロスミラージュ。
一人と一機は、支給された地図と向き合いながら、今後の方針を話し合っていた。
まず優先して探すことになったのは、古泉一樹・朝比奈みくる・キョンの妹・草壁メイ・草壁サツキの五人。
クロスミラージュは、高町なのはやスバル・ナカジマとの合流も考えたが、自分達のいる北の施設を訪れる
であろう確立は先の五人よりも低く、朝倉涼子・キン肉スグルの存在もあり優先順位が下がったため保留に。
放送を待ち、近い建物から順番に回り探し人を探索する事に決めていた。
そして、途中途中に邪魔をしていたのがキン肉スグル、ヴィヴィオの両名。
邪魔を、とは言えヴィヴィオは落ち込むスグルを慰めていただけなので罪は無い。
悪いのはいつまでも愚痴を溢すスグルだ! と、見事に気持ちがリンクしていたのか、時折放たれる辛辣な言葉は一人にしか向けられていなかった。
事の発端は朝倉のせいでスグルが年をとってしまったことなのだが、それは既に忘れられていて。
二人は呑気に落ち込み、慰め、怒り、宥め、また落ち込み、を繰り返していた。
落ち込むスグル、慰めるヴィヴィオ、諌めるクロスミラージュ、毒吐き朝倉。
それに無言のバルディッシュを加えた五者は、出会って間もないが、既にある程度の信頼を結んでいた。
クロスミラージュはスグルの優しさ、力強さ、そして懐の大きさを。
朝倉は、クロスミラージュの冷静さ、そして判断力を。
ヴィヴィオは、朝倉の温もり、芯の強さ、そして優しさを。
スグルは、ヴィヴィオの頑張り、想い、意志の強さを。
バルディッシュはそれらを寡黙に、ただ感じ取っている。
この殺し合いの舞台で、気の置ける仲間を得た彼らは、当面の活動指針である放送を待つ。
その間も、「元はと言えばリョーコちゃんがーっ!!」やら「今すぐ戻して? ――うん、それ無理」等、言い争いもあったのだが。
――放送まで残り二十分。
突如それは訪れた。
『Alert』
今までに殆ど声を発しなかったバルディッシュが警告を発する。
『魔力を持った何者かがこの部屋に接近してきます』
ワンテンポ遅れてクロスミラージュが相手をサーチ。
慌てふためくスグルを手で制し、朝倉がクロスミラージュを構える。
「バルディッシュ……セット、アップ」
恐る恐るながらもしっかりと扉を見据え、ヴィヴィオもバルディッシュを構える。
臨戦準備完了。
朝倉はクロスミラージュを構えて一歩扉のほうへ。
その後ろでは、バルディッシュを構えたヴィヴィオと、力を衰えさせられながらもファイティングポーズをとるスグルが互いを守るようにしている。
少し警戒しすぎ。
もしかしたら自分達のような参加者がここを訪れたのかもしれない。
頭の中に浮かんだ考えを朝倉は頭を振って追い出す。
近付いてくる相手は魔力を持っている。
警戒するに越したことは無い。
ジリ……と張り詰めた緊張感が部屋中に現れる。
そして、その緊張を吹き飛ばすようにガラガラと扉が開かれる。
そこから現れたのはローブのような黒い服を着た若い男。
にこにこと笑いながらこちらの方を見ている。
その声も姿もただの一般人にしか思えない。
だが朝倉の、直感が告げていた。
これは人ではない、と。
朝倉の警戒を見抜いたかのように男は笑みを崩さないままに口を開く。
「そんなに警戒しないでくださいよ。
僕はゼロス、ただの謎の神官(プリースト)です♪」
+++
「そんなに警戒しないでくださいよ。
僕はゼロス、ただの謎の神官(プリースト)です♪」
反応は中々。
目の前の相手を見て、ゼロスはそう思う。
外まで漏れる声で話すのは褒めがたいが、油断は無く。
きちんと警戒もしている。
その部屋に居たのは三人。
まず、後ろの二人を庇うように立っている少女。
立ち振る舞いにも脅えた様子はなく、警戒を解くことなく此方へ武器を向けている。
そして庇われている少女と中年の男。
互いを守るように構えてはいるが、少女の方は見るからに頼りなく、中年の方はとても戦えそうには見えない。
一見すれば一人のセイギノミカタと二人の足手纏いに見える。
だが、そう判断するのは焦燥。
にこにこと笑いながらゼロスはじっくりと三人を観察する。
果たして自分の役に立つのか立たないのか、ただそれを見極めるために。
【C-3 高校・宿直室/一日目・昼前】
【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】わずかな精神的疲労
【持ち物】デイパック×2、基本セット×2(地図一枚紛失)、不明支給品1~4
草壁タツオの原稿@となりのトトロ
【思考】
0.首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1.当面はゲンキを保護。ゲンキが自力で動けるようになったら別れる
2.目の前の相手が使えるか判断。使えるなら仲間に、使えないなら実験材料に
3.ゲンキの力(ガッツ)に興味
4.セイギノミカタを増やす
5.見回りが終わったら原稿をゲンキとキョンの妹に読ませてみる
6.ついでに奇妙なマークについても確認してもらう
【備考】
※簡単な漢字を少しずつ覚えていっています
※ウォーズマンの名前と容姿を覚えました。
※中学校三階の部屋でSOS団のシンボルマークが表示されたPCを発見しました
※それが原作と同じ効果を及ぼすのか別の何かを起こすのかは次の書き手さんにお任せします
【名前】 朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】 健康
【持ち物】ボウイナイフ、鬼娘専用変身銃@ケロロ軍曹、クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
不明支給品0~1(武器では無い) 、メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱、
デイパック(支給品一式) 、新・夢成長促進銃@ケロロ軍曹
【思考】
0:キョンを殺す
1:長門有希を止める
2:古泉、みくる、キョンの妹、草壁姉妹を探すため北の施設(中学校・図書館・小学校の順)を回る
3:目の前の男に対処
4:基本的に殺し合いには乗らない
5: まともな服が欲しい
6:万太郎じゃなくてスグル?
7:できればゲーム脱出時、ハルヒの死体を回収したい
※長門有希が暴走していると考えています
※クロスミラージュを改変しました。元に戻せるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
【名前】キン肉スグル@キン肉マン
【状態】両方の二の腕に火傷跡と切り傷、脇腹に中度の裂傷(処置済み)、老化(中年)
【持ち物】タリスマン@スレイヤーズREVOLUTION、ディパック(支給品一式×4)
ホリィの短剣@モンスターファーム~円盤石の秘密~、 SOS団団長の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、
金属バット@現実、100円玉@現実 不明支給品0or1
【思考】
0:選手生命が……
1:目の前の男に対処
2:少女(ヴィヴィオ)は保護する。
3:朝倉に頼んでウォーズマンと再会したい
4:キン肉万太郎を探し出してとっちめる。
5:一般人を守り、悪魔将軍を倒す。
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、疲労(小)
【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
0:大人になり損ねちゃった……。
1:なのはママ、スバル、セイン、ノーヴェをさがす
2:なんか……不気味な人だな……
【備考】
※ヴィヴィオの力の詳細は、次回以降の書き手にお任せします。
*時系列順で読む
Back:[[さらば愛しき中トトロ!! の巻]] Next:[[少年少女よ大志を抱け]]
*投下順で読む
Back:[[新たなる戦いの予感]] Next:[[第一印象がいい奴にロクな奴はいない]]
|[[朝日とともに這い寄るモノ]]|ゼロス|[[会議は笑う]]|
|[[麗しくも強き女王の駒]]|朝倉涼子|~|
|~|キン肉スグル|~|
|~|ヴィヴィオ|~|
----
*警戒でしょでしょ? ◆4etfPW5xU6
「めぼしい物は特に無し。次はこっちですかねぇ」
既に太陽が昇り始め、陽光が一面を照らしている。
丁度、建物と建物の境目。
陽光をその身いっぱいに浴びながら一人の男が呟きを漏らす。
男の目の前には門。
侵入者を防ぐ意味合いがあろうそれも、今は役目を全うする事無く開いていた。
無用心だと思いつつも、男は門を抜け禄に整備もされていない土の上をゆっくりと進んでいく。
男――ゼロスはグルリと辺りを見回しながら、先程まで探索を行っていた建物について思考を巡らせる。
まず行ったのは一階の探索。
二階の校舎に着くまでは失念していたが、もし何者かが自分達より先に訪れていたとしたら。
物音に驚いて……或いは待ち伏せするためにどこかの部屋へ逃げた可能性がある。
自分が居ない隙にゲンキや妹さんが襲われたら。
負傷中のゲンキは勿論、妹さんもただの少女。
明確な殺意を持った、このゲームに乗った者に襲われれば死は免れないだろう。
ホリィのような何の役にも立たない存在なら気にする事は無い。
だが、ホリィと決定的に違うのはあの二人が力を持ったセイギノミカタだという事。
ゼロスの持つ原稿の文字を読める可能性も残っている。
今死なれるのは、惜しい。
ゼロスは一瞬困ったように、しかしすぐにいつもの軽薄な笑みを浮かべて上ったばかりの階段を下り始める。
とりあえずゲンキを治療できる部屋を探す際にいくつかの部屋を確認したが、人の気配を感じる事は無かった。
確認すべきはそれ以外、未確認の部屋。
一階へと戻り、未確認の部屋へ視線を向ける。
『1A』『1B』『1C』のようなプレートが突き出している、数字と英語の組み合わせで区別されている部屋を確認し始める。
最初に入ったのは『1A』
ガララ、と予想以上に響く音をたてながら扉を横滑りさせる。
ゼロスの目に飛び込んできたのは40余りの机と椅子。
続いて、前方に設置された黒い板と一際大きい机。
一切の列の乱れも無く、完璧な調和を示すそれらを眺めながら足を踏み入れる。
一般的に教室と呼ばれるそこを、合点がいったように頷きながら進む。
グルリと部屋中を見回してみるが誰かが居たような気配は無い。
大きな机の下やロッカーの中、窓の外等丁寧に痕跡を探すが、何も見つからず。
この部屋には誰も居ないと判断して次の部屋へとゼロスは向かう。
次は隣の『1B』へ。
先ほどと同じく扉を横滑りさせながら音を響かせ室内に足を踏み入れる。
ゼロスの目に飛び込んでくるのは隣と全く同じ光景。
机の数や一つの乱れも無い配列に多少首を傾げながらも、誰かが居た痕跡が無いかを見て回る。
暫く探してみるが何も見つからず、次の部屋へ。
何度かその行為を繰り返し、一階の全部屋を確認してから二階へと向かう。
二階へ到着。
一階と同じく、一部屋毎にプレートが突き出しており、プレートには『2A』『2B』『2C』……と書いてある。
一階が『1』二階が『2』と言うことはおそらく『2』が階数を、『A』や『B』がそれぞれの教室の区別をしているのだろう。
先ほどまでと同じ行動を繰り返し、一部屋一部屋丁寧に見て回ったが、一階と同じく人の気配や魔力のようなものも感じられなかった。
罠が無いかも探してみたが、結局見つかったのは使い古された布切れ一枚。
持ち歩く必要性が感じられず、その場に放置。
最後は三階。
階下と同じような繰り返し。
扉を開き、一部屋一部屋見て回る。
残り一部屋を残して、どこの部屋にも全く何の気配も感じられず。
とりあえずここに訪れたのは自分達が最初なのだろう、ゲンキや妹さんが自分の居ない隙に襲われる可能性は低くなる。
後は、外からの侵入者がここを訪れる前に自分が戻れば良い。
そう思いながら開けた最後の扉。
そこには、何度も繰り返した通り確かに人の気配は無かった。
ただ、ゼロスは何か奇妙な違和感を感じていた。
そこにあったのは一つの箱のような白いモノ。
ヴーンとよく判らない音を出している箱。
部屋の中央にある机の上に鎮座したその箱へゆっくりと近付いていく。
「これは……何かのマーク? いや……SOS? 誰かが助けを求めている?」
箱にある透明の画面。
そこには奇妙なモノが描かれていた。
水色や緑、紫に黄緑色で書かれた奇妙な円形の模様。
何を意図するかさっぱりわからないその模様の真ん中にはかろうじてSOSと書かれているのがわかる。
ゼロスの持つ知識に当てはめてみれば、誰かが助けを求めていると取れる。
だが、誰がどこで助けを求めているのか、この模様からは全くそれを読み取る事が出来ない。
或いは、ゼロスの持つ知識以外の言葉……あの原稿を書いた人物と同じ世界の人物からのメッセージの可能性もある。
暫くそれを見てゼロスが出した結論は――保留。
わからないモノをいくら考えても仕方ない。
後でゲンキ達にでも聞いてから、それでも遅くは無いだろうと思い、その場に留まることなく、あっさりと元来た扉へ踵を返す。
そして今に至る。
校門を抜け陽光を浴びながら進むゼロス。
ふと気が付けば目の前には校舎の壁、そしてそこに大きく開いた穴があった。
(ここで戦闘でもあったんですかねぇ……それにしては、被害が少ないようですが……)
そこらに飛び散った破片から壁は内側から破壊された事は容易に想像できる。
おそらくこの中で戦闘を行い、不利になった何者かが咄嗟に壁を破壊、逃走したのだろう。
だが、それにしては内部の破壊が少なすぎる。
破壊された壁以外の損傷は見つからず、蛍光灯や窓も割れてはいない。
どういう事だろうか?
穴の開いた壁を通りながらゼロスは首を傾げる。
ここで戦闘を行っていないなら、この壁を壊す必要はない。
外へ行きたいのなら、ちゃんと出口があるのだから。
なのにそれをしなかった理由は?
「元は……ばリョー…ちゃん………っ!!」
思考の海に沈みかけるゼロスを、不意に聞こえた声が引き上げる。
どうやら声はこの先の部屋から発せられたらしい。
さて……そこにいるのは、セイギノミカタかゲームに乗ったものか、はたまた何の力もない弱者なのか。
にこにこと邪悪な笑みを浮かべ、木造の床をギシリと鳴らしながら、ゼロスは件の教室へと歩を進める。
(セイギノミカタなら仲間に、ゲームに乗っている方ならここで始末、ただの足手まといなら……実験材料にでもなってもらいましょうかねぇ♪)
+++
『知り合いの捜索と言うなら、まずは中学校・図書館・小学校の順に訪れて行ってはどうでしょうか? Ms朝倉。
貴方の話では、Mr古泉、Ms朝比奈、そしてMsSisterのどれも学校の存在を知っています。
ならば、そこから捜索していくのが妥当だと思われますが』
「うーん、それもそうよね。メイちゃんのお姉ちゃんも小学校に来ているかもしれないし」
「グスン……超人選手生命が……独身で中年……」
『Ms草壁もそうですが、何も力を持たない一般人が訪れるのは学校か警察でしょう。
警察は勿論、学校は日常の象徴とも言える建物です。また、広さや設備等もありますし
とりあえず学校を目指したとしてもなんら不思議ではありません』
「現に私やヴィヴィオちゃん、キン肉マンに……涼宮ハルヒにキョン君も学校に集まってきている。
他にも、日常を求める人やそれを探す人が来ても、おかしくはない……」
「えっと、元気出して? とってもだんでぃで似合ってるよ?」
『えぇ。ですから、まずは学校に関係する施設を。続いて警察署に向かうのが現状の最善かと思われます』
「なら――あぁもう、うじうじとうるさい。
なら、もうすぐ放送みたいだし少し待ってからの方が良いわね」
「えっと……とりあえず涙拭こ?」
「ヌワァー!ヴィヴィオー!!!」
『……少し、静かにしていただけませんか? Mrスグル。
時刻は11:30、放送まで確かにあと僅か。
ならば、もう少しここで待機していましょう』
「うん。それが最善……かしらね?」
「リョーコちゃんもクロスミラージュもしどい……」
「うぅ……えーっと、ほら! バルディッシュも慰めてあげよ!」
『…………………………………………………………』
「なんじゃその沈黙はーー!!!」
殺し合いの舞台に似つかわしくない、騒がしくて呑気な声が部屋中に響く。
声の主は四人――いや、三人と一機。
率先して話し合っていたのは、朝倉涼子。そしてクロスミラージュ。
一人と一機は、支給された地図と向き合いながら、今後の方針を話し合っていた。
まず優先して探すことになったのは、古泉一樹・朝比奈みくる・キョンの妹・草壁メイ・草壁サツキの五人。
クロスミラージュは、高町なのはやスバル・ナカジマとの合流も考えたが、自分達のいる北の施設を訪れる
であろう確立は先の五人よりも低く、朝倉涼子・キン肉スグルの存在もあり優先順位が下がったため保留に。
放送を待ち、近い建物から順番に回り探し人を探索する事に決めていた。
そして、途中途中に邪魔をしていたのがキン肉スグル、ヴィヴィオの両名。
邪魔を、とは言えヴィヴィオは落ち込むスグルを慰めていただけなので罪は無い。
悪いのはいつまでも愚痴を溢すスグルだ! と、見事に気持ちがリンクしていたのか、時折放たれる辛辣な言葉は一人にしか向けられていなかった。
事の発端は朝倉のせいでスグルが年をとってしまったことなのだが、それは既に忘れられていて。
二人は呑気に落ち込み、慰め、怒り、宥め、また落ち込み、を繰り返していた。
落ち込むスグル、慰めるヴィヴィオ、諌めるクロスミラージュ、毒吐き朝倉。
それに無言のバルディッシュを加えた五者は、出会って間もないが、既にある程度の信頼を結んでいた。
クロスミラージュはスグルの優しさ、力強さ、そして懐の大きさを。
朝倉は、クロスミラージュの冷静さ、そして判断力を。
ヴィヴィオは、朝倉の温もり、芯の強さ、そして優しさを。
スグルは、ヴィヴィオの頑張り、想い、意志の強さを。
バルディッシュはそれらを寡黙に、ただ感じ取っている。
この殺し合いの舞台で、気の置ける仲間を得た彼らは、当面の活動指針である放送を待つ。
その間も、「元はと言えばリョーコちゃんがーっ!!」やら「今すぐ戻して? ――うん、それ無理」等、言い争いもあったのだが。
――放送まで残り二十分。
突如それは訪れた。
『Alert』
今までに殆ど声を発しなかったバルディッシュが警告を発する。
『魔力を持った何者かがこの部屋に接近してきます』
ワンテンポ遅れてクロスミラージュが相手をサーチ。
慌てふためくスグルを手で制し、朝倉がクロスミラージュを構える。
「バルディッシュ……セット、アップ」
恐る恐るながらもしっかりと扉を見据え、ヴィヴィオもバルディッシュを構える。
臨戦準備完了。
朝倉はクロスミラージュを構えて一歩扉のほうへ。
その後ろでは、バルディッシュを構えたヴィヴィオと、力を衰えさせられながらもファイティングポーズをとるスグルが互いを守るようにしている。
少し警戒しすぎ。
もしかしたら自分達のような参加者がここを訪れたのかもしれない。
頭の中に浮かんだ考えを朝倉は頭を振って追い出す。
近付いてくる相手は魔力を持っている。
警戒するに越したことは無い。
ジリ……と張り詰めた緊張感が部屋中に現れる。
そして、その緊張を吹き飛ばすようにガラガラと扉が開かれる。
そこから現れたのはローブのような黒い服を着た若い男。
にこにこと笑いながらこちらの方を見ている。
その声も姿もただの一般人にしか思えない。
だが朝倉の、直感が告げていた。
これは人ではない、と。
朝倉の警戒を見抜いたかのように男は笑みを崩さないままに口を開く。
「そんなに警戒しないでくださいよ。
僕はゼロス、ただの謎の神官(プリースト)です♪」
+++
「そんなに警戒しないでくださいよ。
僕はゼロス、ただの謎の神官(プリースト)です♪」
反応は中々。
目の前の相手を見て、ゼロスはそう思う。
外まで漏れる声で話すのは褒めがたいが、油断は無く。
きちんと警戒もしている。
その部屋に居たのは三人。
まず、後ろの二人を庇うように立っている少女。
立ち振る舞いにも脅えた様子はなく、警戒を解くことなく此方へ武器を向けている。
そして庇われている少女と中年の男。
互いを守るように構えてはいるが、少女の方は見るからに頼りなく、中年の方はとても戦えそうには見えない。
一見すれば一人のセイギノミカタと二人の足手纏いに見える。
だが、そう判断するのは焦燥。
にこにこと笑いながらゼロスはじっくりと三人を観察する。
果たして自分の役に立つのか立たないのか、ただそれを見極めるために。
【C-3 高校・宿直室/一日目・昼前】
【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】わずかな精神的疲労
【持ち物】デイパック×2、基本セット×2(地図一枚紛失)、不明支給品1~4
草壁タツオの原稿@となりのトトロ
【思考】
0.首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1.当面はゲンキを保護。ゲンキが自力で動けるようになったら別れる
2.目の前の相手が使えるか判断。使えるなら仲間に、使えないなら実験材料に
3.ゲンキの力(ガッツ)に興味
4.セイギノミカタを増やす
5.見回りが終わったら原稿をゲンキとキョンの妹に読ませてみる
6.ついでに奇妙なマークについても確認してもらう
【備考】
※簡単な漢字を少しずつ覚えていっています
※ウォーズマンの名前と容姿を覚えました。
※中学校三階の部屋でSOS団のシンボルマークが表示されたPCを発見しました
※それが原作と同じ効果を及ぼすのか別の何かを起こすのかは次の書き手さんにお任せします
【名前】 朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】 健康
【持ち物】ボウイナイフ、鬼娘専用変身銃@ケロロ軍曹、クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
不明支給品0~1(武器では無い) 、メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱、
デイパック(支給品一式) 、新・夢成長促進銃@ケロロ軍曹
【思考】
0:キョンを殺す
1:長門有希を止める
2:古泉、みくる、キョンの妹、草壁姉妹を探すため北の施設(中学校・図書館・小学校の順)を回る
3:目の前の男に対処
4:基本的に殺し合いには乗らない
5: まともな服が欲しい
6:万太郎じゃなくてスグル?
7:できればゲーム脱出時、ハルヒの死体を回収したい
※長門有希が暴走していると考えています
※クロスミラージュを改変しました。元に戻せるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
【名前】キン肉スグル@キン肉マン
【状態】両方の二の腕に火傷跡と切り傷、脇腹に中度の裂傷(処置済み)、老化(中年)
【持ち物】タリスマン@スレイヤーズREVOLUTION、ディパック(支給品一式×4)
ホリィの短剣@モンスターファーム~円盤石の秘密~、 SOS団団長の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、
金属バット@現実、100円玉@現実 不明支給品0or1
【思考】
0:選手生命が……
1:目の前の男に対処
2:少女(ヴィヴィオ)は保護する。
3:朝倉に頼んでウォーズマンと再会したい
4:キン肉万太郎を探し出してとっちめる。
5:一般人を守り、悪魔将軍を倒す。
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、疲労(小)
【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
0:大人になり損ねちゃった……。
1:なのはママ、スバル、セイン、ノーヴェをさがす
2:なんか……不気味な人だな……
【備考】
※ヴィヴィオの力の詳細は、次回以降の書き手にお任せします。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|[[朝日とともに這い寄るモノ]]|ゼロス|[[会議は笑う]]|
|[[麗しくも強き女王の駒]]|朝倉涼子|~|
|~|キン肉スグル|~|
|~|ヴィヴィオ|~|
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