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「舌は踊り、血は騒ぐ」(2009/01/06 (火) 00:23:59) の最新版変更点
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*舌は踊り、血は騒ぐ ◆5xPP7aGpCE
「30分から40分ってとこか…まだ遠くには行っていないらしいな」
島の中央部、こんもりと茂る森を切り開いて建てられた神社の詰め所で砂ぼうずこと水野灌太は床に残った体温からそう判断した。
平時であれば氏子同士の寄り合いが行われるだろう簡素な平屋は現在捲れた床板とその破片が散らばっており、
さらにグレネードの残骸と僅かに残る火薬の匂いから何らかの争いが起こった事は誰が見ても一目瞭然だ。
「こいつは6時間から7時間前ってところか、て事は寝てた奴とは無関係か?」
グレネードの残骸を手に取ると鼻に近づけ、火薬の残り香を嗅ぐ事によって灌太は争いの起こった時間と見当を付ける。
床板には血痕もあったが、その乾き具合からして争いと同時刻に出来たものらしい。
しかしその量からしてここで死人は出ていない、怪我人や死人の臭いを嗅ぎ慣れた砂漠の妖怪は自らの経験から判断する。
どうやら明け方頃にここで何人かが争い、その結果は不明だがうち一人が先程まで横になっていたのだろう。
「全くついてねーな、なのはやノーヴェだったかもしれんのに。いや、まだ見ぬボインちゃんの可能性も…」
僅かの差で入れ違いになった事を愚痴る。
どうやらそのすれ違った人物が自分の好みを逸脱している可能性は考えない性分らしい。
温泉でも数時間差でボインちゃん?を逃していた灌太にとっては文句の一つも言いたくなる結果だろう。
「くそ!水が凄え一杯落ちてくる場所に寄り道しなけりゃ間に合ったかも…」
神社を目指すと決めた灌太は開始直後にメガ・スマッシャーによって切り裂かれた即席の登山道を登る途中、
音を立てて流れる滝に度肝を抜かれて思わず足がそちらに向いたのだ。
直ぐに我に返ったものの砂漠で吹き飛ばされる紙幣を見るようで後ろ髪引かれる思いだったのは確かである。
結果、ウォーズマンとリヒャルト・ギュオーが草壁メイの捜索に出かけた直後ようやく神社に到着したという訳だ。
そして先程の戦闘もあって慎重に周囲を警戒しながらお邪魔した結果、ボインの事を口走りながら逃した魚の大きさを悔やむ灌太がいる。
正直他人が見たら100%危険人物だろう。
「ちくしょー!何か残ってねーのかよ!」
戦闘の混乱で何か忘れ物が残ってないかと見渡すが生憎ハンカチ一つ落ちてない。
灌太はため息を吐くと床から掌を離して―――何かが指に絡み付いている事に気が付いた。
訝しげに指を目の前に持ってきて正体を確かめた時、灌太は思わず叫び声を上げた。
「おおーっ!これはボインちゃんの髪の毛!ツイてる!」
一本だけだが灌太はそれだけで持ち主の容姿体型に早速想像を巡らせた。
しかしその為には最大限手掛かりが必要、灌太は恐るべき集中力でその髪の毛を凝視する。
端と端を持って長さを確かめる、凡そ80cm。
背中から腰までのロングヘアーと判断、灌太の想像がより具体的となる。
より判断しやすくする為名簿の裏に髪の毛を乗せると白を背景に色が映える、青い光沢―――単純な青では無い、青みの有る鴉の濡れ羽色!
青い髪のロングヘアー、想像するだけで灌太の顔がにやけてゆく。
再び手に持って弾力を確かめる、癖は無く柔らかい。真っ直ぐな髪だろう。
青い髪でサラサラのロングヘアー、さらに灌太の顔がにやける。
鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。
シャンプーとリンスの爽やかな香りが鼻腔を満たす。
青い髪でサラサラのロングヘアーのボインちゃんが髪を洗う姿を思い浮かべ灌太の目が血走る。
そして最後は口に含んで味を確かめる。
「ペロ、これはボインちゃん!」
結論、水野灌太は馬鹿である。
髪の毛を大切に仕舞いながら灌太は他にも落ちていないかと床に這いつくばって目を皿にする。
こんな事をしている時間はあるか?と聞きたいが今は誰の言葉も耳に届きそうない。
「ぐふふふ、さらに2本!んん?これは違うボインちゃんの髪か?」
灌太が摘んだ髪は短くて色が違う、どうやら別人の髪らしい。
次はどんなボインちゃんかと早速胸を高鳴らせて検分する。
「髪は茶色、ちょっと癖があるなー。どれどれ早速味見を…」
滅多に見かけない極上の料理を食べる様に灌太は舌の上で髪の毛を転がす。
舌の先で甘味、酸味、苦味、塩味、うま味といった味覚細胞を総動員してボインちゃんの手掛かりを探った。
「最初の髪ほど良い匂いはしない、しかし癖が強いなぁ。最初のボインちゃんがおしとやかなタイプだとするとこれは野性味溢れるボインちゃんか?
少なくとも最初のボインちゃんより年下に違いない!」
茶髪の癖っ毛のボインちゃんを想像しまたもや灌太はにやけた。
そしてまたしても髪の毛を舌の上に乗せる。
「見えるぞ…私にもボインが見える!」
口調まで変わっているぞ、灌太。
ボインちゃんの全身像を幻視しながら砂漠の妖怪は舌を躍ら続ける。
「これが若さか…、ピチピチの若いボインちゃんと早く会いてーっ!」
じっくりと味わってからふやけた髪の毛を口から取り出す。
自分の唾液は完全に拭い去ってからこれまた大切にティバックへと仕舞う。
そしていよいよ三本目である。
人差し指と親指で髪の毛を挟み、地図の裏面に乗せてみるが白の背景では今ひとつ映えない。
今度は表の方で試してみると緑の背景にはよく映える。
「色は金色か?ぐふふふ!このウェーブの掛かり具合、相当大人っぽいボインちゃんかも!」
窓から入る日光を反射してキラキラと輝く髪の毛を、灌太はそれ以上にギラギラした視線で凝視する。
もう一度指先に持ち、片手の指でピンと弾くと驚くほどの弾力を持ってくるっと戻った。
「なんてコシだ!こいつの持ち主は相当いい女に違いねえ!」
性別は既に女で決定済みらしい、灌太はさらに持ち主の正体を確かめるために自らの舌を伸ばし
高鳴る胸を片手で押さえつつ灌太はいただきまーすとそれを含んだ。
「こいつは凄ぇーッ!ボインちゃんの匂いがプンプンするぜッーーーッ!これまで出会ったことがねえほどになァーーーッ!
環境でボインちゃんになっただと?ちがうねッ!こいつは生まれついてのボインちゃんだッ!」
やっぱり言おう灌太、お前違う人間になっていないか?
多幸感に包まれながら灌太は金髪ウェーブヘアの年上のボイン、青いサラサラヘアーの年の近いボインちゃん、茶色の癖っ毛の年下のボインちゃんを想像する。
きっと持ち主はこの殺し合いの中で辛い思いをしているだろう、そこを自分が助ければ感謝されるに違いない。
そんな妄想が下の上に広がる味と共に灌太の脳裏に浮かんでゆく。
「姉妹丼!セインと妹の姉妹丼は果たせなかったが…ご馳走がまだ残ってるとは!! 」
いつの間にか髪の持ち主はボインちゃんの三姉妹と変換され、灌太の中でそれが事実になってしまう。
怪しいドラッグをキメた様にハイになりつつさらなるボインちゃんの手掛かりは無いかと改めて部屋を見渡した。
「こいつは?!くそっ、ヤバイ!」
瓦礫をどかしてそれを見た時灌太の表情がみるみる内に引き締まってゆく。
その視線は床の一点、土足で部屋に踏み込んだ男の足跡に集中していた
「雨蜘蛛、あいつがここを襲いやがったのか!」
改めて確認するが水野灌太は砂ぼうずと呼ばれる砂漠をフィールドとする人間である。
その為、砂に残る足跡には人一倍敏感であり危険人物の足跡も知識として蓄えている。
そこにあったのは妖怪とみなされる事すらある水野灌太でさえ出会いたくない最悪の人物、雨蜘蛛のものに相違なかった。
奴がこの髪の持ち主であるボインちゃんを捕らえたらどの様な行為に及ぶか―――灌太には容易に想像が付く。
「こうしちゃいられん!すぐにボインちゃんを助けねば!」
最後の髪の毛を丁寧に仕舞いつつ灌太は直ぐに神社を飛び出した。
元々人が居ない事を確認した時点で出発するつもりであり留まるつもりは無い。
「雨蜘蛛の野郎、そのボインちゃんは俺のだ!」
恐らく温泉に居たボインちゃんが雨蜘蛛から逃げ、神社へと隠れたが追いつかれさらに逃げたのだろう。
ボインちゃんが逃げるとなると人の多い市街地に向かい助けを求める、まず間違いない。
幸い待ち合わせ場所のホテルは同じ方向、助けるのに問題は無い。
灌太は「ボインちゃん三姉妹を保護してアレコレする妄想」を脳内で展開しつつたちまち森の中に消えていった。
灌太が手にした髪、最初の一本は未明に神社を離れた朝倉涼子のもので確かにイメージ通りの容姿ではあったのだがおしとやかとは言えない性格。
二本目の茶髪は雨蜘蛛に攫われた草壁メイのもの、残念ながら灌太の対象からは大きく外れていたのだが知る由も無い。
そして―――三本目に見つけた白い髪。
年上と判断した灌太は間違っていなかったのだが、生憎ボインちゃんどころか女性でも無かった。
「どうした、ギュオー?」
「いや、何故か妙な寒気がな…まだ疲れが取れていないらしい」
同時刻、神社から下った場所で草壁メイの捜索を行っていた二人の間でそんな会話が成されたとは幸せな灌太には知る由も無かった。
【E-05 森/一日目・昼前】
【水野灌太(砂ぼうず)@砂ぼうず】
【状態】中ダメージ、やや興奮
【持ち物】ワイヤーウィンチ(故障)@砂ぼうず、オカリナ@となりのトトロ、 手榴弾×1@現実 、朝倉涼子の髪の毛、草壁メイの髪の毛、リヒャルト・ギュオーの髪の毛
ディパック、基本セット、 手書きの契約書、ディパック、基本セット、不明支給品0~2(セインが見た限り強力な武器や防具は無い)
【思考】
1.何が何でも生き残る。脱出・優勝と方法は問わない。
2.北の市街地に向かい、ボインちゃんを雨蜘蛛から守る。昼の十二時にホテルでガルルたちと落ち合う。
3.ノーヴェを探す。そして……いっひっひっひ
4.蛇野郎(ナーガ)は準備を万全にしてから絶対に殺す。
5.温泉にいたであろう人物が気になる(色々な意味で)
6.関東大砂漠に帰る場合は、小泉太湖と川口夏子の口封じ。あと雨蜘蛛も?
※セインから次元世界の事を聞きました
※H-02 川付近にセインの死体があります
**時系列順で読む
Back:[[道化は踊り蜘蛛は笑う]] Next:[[悪魔と戦闘機人と学生と(前編)]]
**投下順で読む
Back:[[俺達はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない]] Next:[[っていうか、疑心暗鬼で呉越同舟?(前編)]]
|[[K.S.K.~切れ者?セクハラ?危険人物?~]]|水野灌太(砂ぼうず)|[[Sand Mission]]|
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*舌は踊り、血は騒ぐ ◆5xPP7aGpCE
「30分から40分ってとこか…まだ遠くには行っていないらしいな」
島の中央部、こんもりと茂る森を切り開いて建てられた神社の詰め所で砂ぼうずこと水野灌太は床に残った体温からそう判断した。
平時であれば氏子同士の寄り合いが行われるだろう簡素な平屋は現在捲れた床板とその破片が散らばっており、
さらにグレネードの残骸と僅かに残る火薬の匂いから何らかの争いが起こった事は誰が見ても一目瞭然だ。
「こいつは6時間から7時間前ってところか、て事は寝てた奴とは無関係か?」
グレネードの残骸を手に取ると鼻に近づけ、火薬の残り香を嗅ぐ事によって灌太は争いの起こった時間と見当を付ける。
床板には血痕もあったが、その乾き具合からして争いと同時刻に出来たものらしい。
しかしその量からしてここで死人は出ていない、怪我人や死人の臭いを嗅ぎ慣れた砂漠の妖怪は自らの経験から判断する。
どうやら明け方頃にここで何人かが争い、その結果は不明だがうち一人が先程まで横になっていたのだろう。
「全くついてねーな、なのはやノーヴェだったかもしれんのに。いや、まだ見ぬボインちゃんの可能性も…」
僅かの差で入れ違いになった事を愚痴る。
どうやらそのすれ違った人物が自分の好みを逸脱している可能性は考えない性分らしい。
温泉でも数時間差でボインちゃん?を逃していた灌太にとっては文句の一つも言いたくなる結果だろう。
「くそ!水が凄え一杯落ちてくる場所に寄り道しなけりゃ間に合ったかも…」
神社を目指すと決めた灌太は開始直後にメガ・スマッシャーによって切り裂かれた即席の登山道を登る途中、
音を立てて流れる滝に度肝を抜かれて思わず足がそちらに向いたのだ。
直ぐに我に返ったものの砂漠で吹き飛ばされる紙幣を見るようで後ろ髪引かれる思いだったのは確かである。
結果、ウォーズマンとリヒャルト・ギュオーが草壁メイの捜索に出かけた直後ようやく神社に到着したという訳だ。
そして先程の戦闘もあって慎重に周囲を警戒しながらお邪魔した結果、ボインの事を口走りながら逃した魚の大きさを悔やむ灌太がいる。
正直他人が見たら100%危険人物だろう。
「ちくしょー!何か残ってねーのかよ!」
戦闘の混乱で何か忘れ物が残ってないかと見渡すが生憎ハンカチ一つ落ちてない。
灌太はため息を吐くと床から掌を離して―――何かが指に絡み付いている事に気が付いた。
訝しげに指を目の前に持ってきて正体を確かめた時、灌太は思わず叫び声を上げた。
「おおーっ!これはボインちゃんの髪の毛!ツイてる!」
一本だけだが灌太はそれだけで持ち主の容姿体型に早速想像を巡らせた。
しかしその為には最大限手掛かりが必要、灌太は恐るべき集中力でその髪の毛を凝視する。
端と端を持って長さを確かめる、凡そ80cm。
背中から腰までのロングヘアーと判断、灌太の想像がより具体的となる。
より判断しやすくする為名簿の裏に髪の毛を乗せると白を背景に色が映える、青い光沢―――単純な青では無い、青みの有る鴉の濡れ羽色!
青い髪のロングヘアー、想像するだけで灌太の顔がにやけてゆく。
再び手に持って弾力を確かめる、癖は無く柔らかい。真っ直ぐな髪だろう。
青い髪でサラサラのロングヘアー、さらに灌太の顔がにやける。
鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。
シャンプーとリンスの爽やかな香りが鼻腔を満たす。
青い髪でサラサラのロングヘアーのボインちゃんが髪を洗う姿を思い浮かべ灌太の目が血走る。
そして最後は口に含んで味を確かめる。
「ペロ、これはボインちゃん!」
結論、水野灌太は馬鹿である。
髪の毛を大切に仕舞いながら灌太は他にも落ちていないかと床に這いつくばって目を皿にする。
こんな事をしている時間はあるか?と聞きたいが今は誰の言葉も耳に届きそうない。
「ぐふふふ、さらに2本!んん?これは違うボインちゃんの髪か?」
灌太が摘んだ髪は短くて色が違う、どうやら別人の髪らしい。
次はどんなボインちゃんかと早速胸を高鳴らせて検分する。
「髪は茶色、ちょっと癖があるなー。どれどれ早速味見を…」
滅多に見かけない極上の料理を食べる様に灌太は舌の上で髪の毛を転がす。
舌の先で甘味、酸味、苦味、塩味、うま味といった味覚細胞を総動員してボインちゃんの手掛かりを探った。
「最初の髪ほど良い匂いはしない、しかし癖が強いなぁ。最初のボインちゃんがおしとやかなタイプだとするとこれは野性味溢れるボインちゃんか?
少なくとも最初のボインちゃんより年下に違いない!」
茶髪の癖っ毛のボインちゃんを想像しまたもや灌太はにやけた。
そしてまたしても髪の毛を舌の上に乗せる。
「見えるぞ…私にもボインが見える!」
口調まで変わっているぞ、灌太。
ボインちゃんの全身像を幻視しながら砂漠の妖怪は舌を躍ら続ける。
「これが若さか…、ピチピチの若いボインちゃんと早く会いてーっ!」
じっくりと味わってからふやけた髪の毛を口から取り出す。
自分の唾液は完全に拭い去ってからこれまた大切にティバックへと仕舞う。
そしていよいよ三本目である。
人差し指と親指で髪の毛を挟み、地図の裏面に乗せてみるが白の背景では今ひとつ映えない。
今度は表の方で試してみると緑の背景にはよく映える。
「色は金色か?ぐふふふ!このウェーブの掛かり具合、相当大人っぽいボインちゃんかも!」
窓から入る日光を反射してキラキラと輝く髪の毛を、灌太はそれ以上にギラギラした視線で凝視する。
もう一度指先に持ち、片手の指でピンと弾くと驚くほどの弾力を持ってくるっと戻った。
「なんてコシだ!こいつの持ち主は相当いい女に違いねえ!」
性別は既に女で決定済みらしい、灌太はさらに持ち主の正体を確かめるために自らの舌を伸ばし
高鳴る胸を片手で押さえつつ灌太はいただきまーすとそれを含んだ。
「こいつは凄ぇーッ!ボインちゃんの匂いがプンプンするぜッーーーッ!これまで出会ったことがねえほどになァーーーッ!
環境でボインちゃんになっただと?ちがうねッ!こいつは生まれついてのボインちゃんだッ!」
やっぱり言おう灌太、お前違う人間になっていないか?
多幸感に包まれながら灌太は金髪ウェーブヘアの年上のボイン、青いサラサラヘアーの年の近いボインちゃん、茶色の癖っ毛の年下のボインちゃんを想像する。
きっと持ち主はこの殺し合いの中で辛い思いをしているだろう、そこを自分が助ければ感謝されるに違いない。
そんな妄想が下の上に広がる味と共に灌太の脳裏に浮かんでゆく。
「姉妹丼!セインと妹の姉妹丼は果たせなかったが…ご馳走がまだ残ってるとは!! 」
いつの間にか髪の持ち主はボインちゃんの三姉妹と変換され、灌太の中でそれが事実になってしまう。
怪しいドラッグをキメた様にハイになりつつさらなるボインちゃんの手掛かりは無いかと改めて部屋を見渡した。
「こいつは?!くそっ、ヤバイ!」
瓦礫をどかしてそれを見た時灌太の表情がみるみる内に引き締まってゆく。
その視線は床の一点、土足で部屋に踏み込んだ男の足跡に集中していた
「雨蜘蛛、あいつがここを襲いやがったのか!」
改めて確認するが水野灌太は砂ぼうずと呼ばれる砂漠をフィールドとする人間である。
その為、砂に残る足跡には人一倍敏感であり危険人物の足跡も知識として蓄えている。
そこにあったのは妖怪とみなされる事すらある水野灌太でさえ出会いたくない最悪の人物、雨蜘蛛のものに相違なかった。
奴がこの髪の持ち主であるボインちゃんを捕らえたらどの様な行為に及ぶか―――灌太には容易に想像が付く。
「こうしちゃいられん!すぐにボインちゃんを助けねば!」
最後の髪の毛を丁寧に仕舞いつつ灌太は直ぐに神社を飛び出した。
元々人が居ない事を確認した時点で出発するつもりであり留まるつもりは無い。
「雨蜘蛛の野郎、そのボインちゃんは俺のだ!」
恐らく温泉に居たボインちゃんが雨蜘蛛から逃げ、神社へと隠れたが追いつかれさらに逃げたのだろう。
ボインちゃんが逃げるとなると人の多い市街地に向かい助けを求める、まず間違いない。
幸い待ち合わせ場所のホテルは同じ方向、助けるのに問題は無い。
灌太は「ボインちゃん三姉妹を保護してアレコレする妄想」を脳内で展開しつつたちまち森の中に消えていった。
灌太が手にした髪、最初の一本は未明に神社を離れた朝倉涼子のもので確かにイメージ通りの容姿ではあったのだがおしとやかとは言えない性格。
二本目の茶髪は雨蜘蛛に攫われた草壁メイのもの、残念ながら灌太の対象からは大きく外れていたのだが知る由も無い。
そして―――三本目に見つけた白い髪。
年上と判断した灌太は間違っていなかったのだが、生憎ボインちゃんどころか女性でも無かった。
「どうした、ギュオー?」
「いや、何故か妙な寒気がな…まだ疲れが取れていないらしい」
同時刻、神社から下った場所で草壁メイの捜索を行っていた二人の間でそんな会話が成されたとは幸せな灌太には知る由も無かった。
【E-05 森/一日目・昼前】
【水野灌太(砂ぼうず)@砂ぼうず】
【状態】中ダメージ、やや興奮
【持ち物】ワイヤーウィンチ(故障)@砂ぼうず、オカリナ@となりのトトロ、 手榴弾×1@現実 、朝倉涼子の髪の毛、草壁メイの髪の毛、リヒャルト・ギュオーの髪の毛
ディパック、基本セット、レストランの飲食物いろいろ、手書きの契約書、ディパック、基本セット、不明支給品0~2(セインが見た限り強力な武器や防具は無い)
【思考】
1.何が何でも生き残る。脱出・優勝と方法は問わない。
2.北の市街地に向かい、ボインちゃんを雨蜘蛛から守る。昼の十二時にホテルでガルルたちと落ち合う。
3.ノーヴェを探す。そして……いっひっひっひ
4.蛇野郎(ナーガ)は準備を万全にしてから絶対に殺す。
5.温泉にいたであろう人物が気になる(色々な意味で)
6.関東大砂漠に帰る場合は、小泉太湖と川口夏子の口封じ。あと雨蜘蛛も?
※セインから次元世界の事を聞きました
※H-02 川付近にセインの死体があります
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