「会議は笑う」(2009/02/19 (木) 17:23:52) の最新版変更点
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*会議は笑う ◆NIKUcB1AGw
C-5、高校。そこにいたのは人の姿を持ちながら、純然たる人ではない者三人。
その三人の前に現れたのは、やはり人のようであって人ではない男。
その男……自称「謎の神官(プリースト)」ゼロスは、じっくりと三人の様子を見つめたあとでおもむろに尋ねる。
「つかぬ事をお伺いしますが……。あなた方は『セイギノミカタ』ですか?」
「はい?」
唐突な質問に、朝倉は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべる。そんな彼女とは対照的に、喜々としてこの質問に答える男が一人。
「うむ、いかにも! 私こそ人類の平和を守る正義超人の筆頭、キン肉スグルだ!」
もちろん、正真正銘の正義の味方であるスグルである。
バカ正直に質問に答えるスグルに、あきれ気味な様子を見せる朝倉。一方、ゼロスはその回答に興味深そうな反応を見せる。
「正義超人? もしやあなたは、ウォーズマンさんのお仲間ですか?」
『ウォーズマン!?』
朝倉とスグル、二人が共に知る名前が出たことで、同時にその名が発せられる。
「えーと、ゼロスくんだったかのう。あんた、ウォーズマンに会ったのか?」
思わず、スグルはゼロスに詰め寄る。ゼロスはその暑苦しさに若干押されつつも、あくまで冷静に言葉を紡いだ。
「ええ、放送の少し後ぐらいでしたか。場所は……すいません、島の真ん中あたりの森だったとしか覚えていません。
近くにこれといって場所がわかるようなものがなかったもので……」
「おそらく、メイちゃんを捜していた時に会ったのね……。結局、メイちゃんは見つかったのかしら?」
「彼は、人捜しをしていたのですか。とりあえず、私と出会った時はお一人でしたが」
「そう」
「で、ウォーズマンは今どこに?」
よほど親友のことが気になるのか、スグルはさらにゼロスに詰め寄る。
「顔が近いですよ、離れてください。ウォーズマンさんとはすぐに別れてしまったので、そのあと彼がどうしたのかはまったくわからないのですよ。
まあ別れたというか……私が彼を怒らせるようなことをしてしまって、慌てて逃げてきたのですが」
「なにぃ? うーん、ウォーズマンの奴、普段は冷静に見えてカッとなりやすいところもあるからのう。
ゼロスくんも他人と接する時はもっと慎重にしないといかんぞ?」
「ははは、今後は気を付けますよ」
苦笑を浮かべながら、ゼロスが言う。だが、その笑みはどうにも胡散臭い。
「ところで、スグルさんでしたか? 先程あなたはご自分をセイギノミカタと仰いましたが……。
実力はどれほどのもので?」
「うむ、何を隠そう、私は史上初の超人レスリングシングル・タッグ二冠を達成した男!
弱いはずがなーい! こんな姿になっていなければのう……」
前半は勢いがよかったスグルの言葉だが、後半にはいると一気に失速してしまった。
「えーと、彼はいったいどうしたのですか?」
がっくりうなだれるスグルを指さし、ゼロスは朝倉に尋ねる。
「まあ、支給品の誤発動ってところかしらね。たしか放送が流れると効果が解除されるって説明書に書いてあったから、心配する必要はないけど」
「ええっ!? それを早く言ってくれ、リョーコちゃん! そうだとわかっていたら、私だってこんなに取り乱さなかったわい!」
「あら、言ってなかったかしら?」
『お取り込み中失礼します、Ms朝倉』
スグルと朝倉の掛け合いに、電子的な声が割り込む。朝倉が所持するインテリジェントデバイス、クロスミラージュだ。
「どうしたの、クロスミラージュ」
『その放送ですが、もうすぐ開始されるものと思われます。ここはいったん会話を中断して、放送を聞くことに集中した方がよいかと』
「ああ、次の放送は十二時でしたか。確かにもう少しですねえ」
時計に目をやりながら、ゼロスが言う。
「確かに、クロスミラージュの言う通りね。ゼロスさん、お話の続きは放送が終わってからでいいかしら?」
「ええ、もちろんです……と、そう言えば、名前をまだお聞きしてませんでしたね。
先程スグルさんからはリョーコちゃんと呼ばれていたようですが」
「私は朝倉涼子。そっちの女の子はヴィヴィオよ」
「わかりました。ではいろいろお伺いしたいことは、放送が終わってからゆっくり聞かせていただきます」
「ええ、こっちからも話を聞かせてもらうわね」
朝倉とゼロスは、共に笑い合う。だが、その笑みが心からのものであるかは、本人たち以外わかるはずもなかった。
◇ ◇ ◇
そして一同は、万全の態勢で放送を聞くことになる。
「やあ、参加者の皆。元気にしているかな?」
6時間前の放送と同じ男の声が、4人の参加者と2個のデバイスに届く。
その後しばらく続く、とりとめのない話。スグルは一人その内容に怒りを募らせるが、朝倉とゼロスはどうでもいいとばかりにそれを聞き流す。
「それでは、皆お待ちかねの禁止エリアの発表といこうかな」
主催者の話は、ようやく本題の一つとも言うべき禁止エリアの発表に入った。
朝倉とゼロスはペンと地図を手に、耳に神経を集中させる。
それを見て、スグルも慌てて自分の荷物から地図を取り出した。
「午後13:00から J-03
午後15:00から E-01
午後17:00から H-05 」
「……え?」
告げられた禁止エリアに、朝倉は思わず驚きの声を漏らす。J-3は1エリアまるまる海。E-1はわずかに陸地が含まれているだけで、ほとんどが海。
わざわざ禁止エリアにしなくても、誰が侵入するというのか。
(なんでこんなところを禁止エリアに?)
強い疑問を感じる朝倉だが、今は深く考えている余裕はない。続いて死者の名前が読み上げられるからだ。
とりあえずは疑問を頭の隅に置き、朝倉は地図を名簿と入れ替える。
「ホリィ」
ゼロスの体が、ピクリとだけ動く。だが、他の面々はそれに気づかない。
「ガルル中尉」
全員が無反応。
「アシュラマン」
「何だと!!」
スグルの怒声が上がる。
「草壁メイ」
「あら」
朝倉の口から、ポロリと声が漏れる。
「セイン」
ヴィヴィオが、わずかに反応を見せる。
「以上5名だよ」
死者の発表は、これで終わりを告げた。朝倉たちは、これで重要な情報の発表は終わりだと考える。
だが、その考えはあっさりと裏切られる。
「……だから、僕は一つ君たちにご褒美をあげることにしたよ」
(ご褒美?)
思わぬ展開に、ゼロスは切り換えかけた興味を再び放送に戻す。
主催者が告げたご褒美、それは「3人殺せばこの放送時点での他の参加者の位置を教える」というものだった。
「それじゃあ、皆頑張って殺し合ってね。また6時間後に会おう」
そして、最後まで明るい調子のまま放送は終わりを告げる。
「くそっ、アシュラマン!!」
最初に反応を見せたのは、スグルだった。怒りに任せ、目の前の机を叩く。
アシュラマン。最初に出会ったのは、敵としてだった。その実力と策謀の前に、自分たち正義超人は何度も追いつめられた。
だが彼は、宇宙超人タッグでの自分たちとの試合で変わったのだ。
決勝戦ではスグルのタッグパートナーであるテリーマンを助けるために姿を現し、続く王位争奪戦ではスグルの兄・アタルのチームメイトとなった。
共に肩を並べて戦ったことはなくても、すでにスグルはアシュラマンを正義超人の一員として認めていた。
(さぞかし無念だっただろう、アシュラマン……。後は私とウォーズマンに任せて、ゆっくり休んでくれ……)
先にあの世へと旅立ってしまった戦友に、思いを馳せるスグル。しかし少しして、周囲から白い目で見られていることに気づく。
「あれ? どったの、みんな」
朝倉は、無言でスグルの足下を指す。そこには、粉々になった机の残骸があった。
「えーと……。これってひょっとして、僕ちゃんがやったの?」
『ひょっとしなくてもそうです、Mrスグル。おそらく元の体に戻ったばかりで、力の制御が上手くいかなかったのでしょう』
スグルに向かい、クロスミラージュが冷静に解説を行う。
「おお! そう言えば若々しいボディーに戻っているではないか! うむ、この張りつめた筋肉! これでこそ私だ!」
「そんなに筋肉にこだわりがあるなら、戻った時点で気づくんじゃないの、普通……」
「いやいや、死んだ仲間のことで頭がいっぱいになっていたものでな」
朝倉の皮肉混じりの指摘に、スグルは素直に言葉を返す。
「アシュラマン、という方ですか。やはりこの方も正義超人ですか?」
「うむ、元々は残虐非道な悪魔超人だったが、私たちとの戦いで友情に目覚め仲間となったのだ」
ゼロスの質問にも、スグルは正直に答えた。もっとも連れてこられた時期の違いという問題から、彼の言っていることは真実とは言い難いのだが。
とは言っても、それを知る術を持つ者はこの場にいない。
(ふむ……セイギノミカタが一人減ってしまいましたか……。これは残念ですね……。
まあ、一人ぐらいならいくらでもカバーできると考えておきますか)
落胆をすぐさま打ち消し、ゼロスは話題を切り替える。
「そう言えば、草壁メイという名前が呼ばれていましたが……。ウォーズマンさんが捜していたのはこの人ですか?」
「ええ。結局助けられなかったみたいね……。残念だわ」
残念という朝倉の言葉に、偽りはない。もっとも、それはスグルがアシュラマンに対して抱いている思いよりははるかに小さいのだが。
それでも、少しの間とはいえ共に行動した人間だ。仇ぐらいは討ってやってもいいという思いはある。
おそらく、殺したのはメイを連れ去った覆面マント男だろう。次に会った時には容赦しない。
「あとはセインという名前に、そちらの女の子……ヴィヴィオちゃんでしたか。その子が反応していたようでしたが、お知り合いですか?」
「えっと、知り合いっていうか……。なんて言えばいいんだろう……」
『私が説明しましょう、Mrゼロス』
言葉に詰まるヴィヴィオの代わりに、クロスミラージュが解説を始める。
『セインと、現在も生存しているノーヴェの二人はかつてヴィヴィオを誘拐したDrスカリエッティの配下、ナンバーズの一員です』
「誘拐犯の一味だと!? 極悪人ではないか!」
『話は最後まで聞いてください、Mrスグル。確かにナンバーズには邪な思考の持ち主も含まれていましたが、この二人はそれほどの悪人ではありません。
単純に主の命令に忠実だったために、罪を犯したと言っていいでしょう。
現在は時空管理局の元で更生プログラムを受けているはずですし、危険人物とは言えません』
「ということは、その人も主催者打倒に協力してくれる可能性があったということですか……。
やれやれ、どうやら今回死んだのは死なせるのは惜しい人たちばかりだったようです」
「グムーッ、私やウォーズマンがいながら、こんな事に……。アタル兄さんや超人血盟軍のみんなになんと申し訳すればいいんじゃー!!」
「あー、スグルさん。少し静かにしてもらえます? はっきり言って、話し合いを進めるのに邪魔なんで」
「う……」
ゼロスにズバリと「邪魔」と断言され、スグルは縮こまってしまった。
「ところでゼロスさん、まだはっきりとは聞いていなかったのだけど……。あなたは殺し合いに積極的ではない。
むしろすすんで殺し合いを破壊しようとしている。これでいいのかしら?」
「ええ、そう思っていただいてかまいません」
朝倉の質問に、ゼロスは笑顔でうなずく。
「そう、それならいいのだけれど……。どうも、あなたの雰囲気が信用できない感じがしてね……。
何というか、悪役っぽいんだもの、あなた」
「おやおや、言ってくれますね。まあ僕は謎の神官ですから、怪しくて当然なんですけどね。
それに、悪役っぽい雰囲気というのならあなたもでは?」
「フフ、否定できないわね」
二人の間に、張りつめた空気が漂う。共に笑顔だが、同時に妙に禍々しいオーラが吹き出ている。
傍らで見ているヴィヴィオが泣きそうになるぐらいである。
「まあ何はともあれ、あなた方も殺し合いに乗っていないことは明白。だとしたら、ここは手を組むべきだとは思いませんか?」
「正論ね。ただ、こちらとしても役立たずはいらないわ。あなたと組むメリットが、私たちにあると証明できる?」
「ちょっとリョーコちゃん、もうちょっと柔らかな言い方を……」
「キン肉マンは黙ってて」
「はい、しーましぇん……」
自分より年下の少女に言われて、あっさり引き下がってしまうスグル。どうにも情けない姿である。
「まあメリットというのでしたら、僕は強いですよ? それに、情報はいくら持っていても困るということはないと思いますが?」
「確かにね。じゃあ、早速情報交換を始めましょうか?」
「ああ、それはちょっと待ってください」
乗り気になった朝倉だが、それをゼロスは引き止める。
「実は、向こうの建物にも殺し合いに乗っていない人たちが二人いまして。
どうせならその人たちと合流してから情報交換した方が効率がいいと思いませんか?
その人たちには見回りをしてくるといって別れたんで、僕の帰りが遅いと心配させてしまうかも知れませんし」
「まあ、それでもかまわないけど……。その二人っていうのは?
ひょっとしたら、私たちの誰かの知り合いかも知れないから、名前ぐらいは先に聞いておきたいんだけど」
「片方はゲンキという少年です。もう片方は、名簿にキョンの妹という名前で載っている少女ですね」
「!」
キョンの妹。その名前に、朝倉とヴィヴィオは大きく反応を見せる。
「おや、本当にお知り合いでしたか?」
「知り合いの妹ね。実際に会ったことはないわ。向こうは私の存在を知ってるかどうかも怪しい。
それ以上に問題なのは……私は、その子の兄を殺したいと思ってることね」
朝倉の発言に、その場の空気は凍り付いた。
「殺したいとは、穏やかではありませんね。では、ここは会わない方が……」
「待って……」
ゼロスの言葉に、弱々しい声が割り込む。それは、ヴィヴィオが発したものだった。
「どうしたの、ヴィヴィオちゃん」
「私は……その人に会いたい……。会って、話がしてみたい……」
「ほう、なぜです」
「この子も、キョンくんとはちょっと因縁があってね」
朝倉が、ヴィヴィオに代わってゼロスの質問に答える。
「伝えたいことがあるの……。たぶん、その人にとっては聞くのが辛いことだと思うけど……。
でも、伝えなくちゃいけないことだと思う」
途切れ途切れになりながらも、ヴィヴィオははっきりと自分の意見を述べた。
「そう。なら行きましょうか」
「いいの?」
「別にかまわないわよ。ああは言ったけど、別にキョンくんの妹さんまで取って喰おうとは考えてないから。
まあ、多少感情的になっちゃうかも知れないけどね。その時はフォローよろしくね、クロスミラージュ」
『了解しました、Ms朝倉』
「あのー……僕ちゃんには頼らないわけ?」
こっそりと呟くスグルだが、朝倉には軽くスルーされてしまう。
「それじゃあゼロスさん、二人のところまで案内お願いできる?」
「もちろんです。それではまいりましょう、皆さん」
さわやかな笑顔を浮かべながら、ゼロスは先陣を切って廊下へと出て行った。
◇ ◇ ◇
高校の廊下を歩く一同。その途中、朝倉はふいにゼロスに話しかける。
「ゼロスさん、ちょっといい?」
「何でしょうか、リョーコさん」
「あなたは少なくてもあっちの二人よりは頭が良さそうだから、意見を聞きたいのだけど……。
今回の禁止エリアについてどう思う?」
「どう思う、と言いますと?」
「三つの禁止エリアのうち、二つは放っておいても誰も行きそうにない海ばかりのエリア。
もう一つは、入れなくても大して不自由しない島の中心の森。これじゃあ、禁止エリアの意味が薄いじゃない。
何の意味があってこんなところを禁止エリアにしたのか、それについて考えがあれば聞きたいのだけど」
「意味ですか……。意味なんてないんじゃないですか?」
「え?」
予想外のゼロスの返答に、朝倉は思わず気の抜けた声を漏らす。
「つまり、ゲームマスターであるあの二人は適当に禁止エリアの位置を決めているんじゃないかということですよ。
あの人たちの目的がなんなのかはわかりませんが、仮に『娯楽』の要素が含まれているとすればこの可能性も高くなります。
娯楽というのは不確定要素が多いほど楽しくなるものですから。尤も、あまり多すぎるととんでもない方向に行ってしまうこともありますけどね」
「でも、それにしては遊園地の周りに禁止エリアが偏りすぎているような……」
「偶然は時として偏りを生みます。たまにあるでしょう? さいころで三回連続1が出たり、よく切ったはずのトランプで同じ数字が続いたり」
「なるほど……」
ゼロスの意見に、朝倉は感嘆の声をあげた。
長門の人となりを知っているがゆえに、彼女の思考は自然と「あの長門が意味のないことをするはずがない」という方向に向かっていた。
しかしゼロスは、そうした先入観がないゆえに朝倉のとうてい思いつかぬ仮説を持ち出してきた。
それだけで朝倉の中でのゼロスに対する評価は大きく上がったのだが、ゼロスはさらに続ける。
「不確定要素といえば、支給品もそうです。単純に殺し合いを加速させたいなら、支給品なんて全部武器でいいんです。
なのに原稿やら人を老化させる道具やら、とても人を殺すのに使えるとは思えないものも混じっている。
これもゲームを面白くするための不確定要素と考えられると思いませんか?
ああ、原稿といえば、朝倉さんはあれを読めますかね? まあ、それはゲンキさんたちと合流したあとでもいいですね。
それから、会場になっているこの島も無作為に選ばれた可能性が高い。
こんなに施設が北部に集中していては、自然と参加者も偏ってしまう。
よく吟味したのなら、こんな島を会場に選ぶことはないでしょう」
(この人、興味深い考え方してるわね……。私に足りない部分を補ってくれるかも知れない。
しばらく一緒に行動するのもいいわね。けど、それだとキョンくんの妹とも一緒にいることになっちゃうし……)
「ところでリョーコさん、こちらからも質問してよろしいですか?」
「っと、何かしら?」
一人で考え込みそうになった朝倉だが、ゼロスの方から声をかけられ意識を彼に戻す。
「ご褒美に関しても意見を伺いたいところですが……まあ、それは後でもいいでしょう。
それより、一刻も早く聞いておきたいことがあるんです。リョーコさん、あなた……これを外す当てはありますか?」
自らの首輪を指で叩きながら、ゼロスは尋ねた。
「まあ、自慢じゃないけどそういうのは他の人より得意だと思うわ。外せる可能性はある。
でも、よく考えてみて。自分がゲームマスターだったら、参加者の誰か一人でも外せる可能性があるものを付けさせる?」
「確かに。そんなことはしませんね。いかにここが脱出困難な孤島としても、強制力が失われれば殺し合いはまともに成立しなくなる。
どんなにゲームマスターが適当だったとしても、ここは気を遣うでしょう」
『しかし、それでは殺し合いの破壊は不可能ということになってしまいますが……』
重要な話題と判断したのか、クロスミラージュも会話に参加してくる。
「大丈夫、不可能じゃないわ」
「そう言いきる根拠は?」
「当たり前の話だけど、ゲームマスターのところにあるデータは殺し合いが始まる前のもののはず。
殺し合いの中で私の技術がレベルアップすれば、解除の可能性は出てくる」
「なるほど、想定されたデータを上回ればいいという話ですか。ですが、口で言うほど簡単な話ではないはず。
あなたにそれが出来ますか?」
「出来ると断言は出来ないわ。けど、やらずに後悔するよりやって後悔する方がいいっていうじゃない?
可能性が少しでもあるのなら、私はやるわ。このままあの人たちの思惑通りにあがいて死んでいくなんて嫌だもの」
そう言って、朝倉は満面の笑みを浮かべた。
一方、スグルとヴィヴィオは、前を行く朝倉とゼロスから少し距離を取って歩いていた。
「ふーむ、あの二人、何を話しておるのかのう……」
「わかんないけど、たぶん大事なお話だと思う……」
「むう……。ところでヴィヴィオちゃん、さっきから元気がないのではないか?」
「え……! そ、そんなことないよ!」
スグルの言葉を、慌てて否定するヴィヴィオ。だがその狼狽振りは、スグルが的を射ていることを証明していた。
「なに、子供が大人に気を遣ってどうする! 何か困ったことがあるなら、遠慮なくこのキン肉マンお兄さんに言いなさい!」
「ありがとう、キン肉マンさん……。あのね、ゼロスさんって何となく怖いの……。
ものすごく怖いわけじゃないんだけど、一緒にいるといやな気分になってくるっていうか……」
「なるほどのう……」
ヴィヴィオの言いたいことは、スグルにもわかっている。
あのゼロスという青年、表向きは非常に友好的だが、どこか冷たい雰囲気を持っている。
そう、まるで残虐超人や悪魔超人の「氷の精神」のような……。
「まあ、こちらに危害を加えてくる様子はないから心配はないと思うが……。
ヴィヴィオちゃんがここまで怯えているようなら、情報交換の後別行動を取ってもらった方がいいかのう」
「ごめんなさい、私のせいで迷惑かけちゃって……」
「気にするな! 正義超人はいつでも子供の味方さ!」
豪快な笑顔を見せると、スグルはその大きな手でヴィヴィオの頭をガシガシと撫でた。
廊下を歩く、四つの人影。今は、彼らは殺し合いの破壊という共通の目的の元団結している。
だが、その団結が今後も続くかどうかは、誰も知らない。
【C-3 高校/一日目・昼過ぎ】
【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】わずかな精神的疲労
【持ち物】デイパック×2、基本セット×2(地図一枚紛失)、不明支給品1~4
草壁タツオの原稿@となりのトトロ
【思考】
0.首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1.ゲンキたちと合流し、それから情報交換。
2.当面はゲンキを保護。ゲンキが自力で動けるようになったら別れる
3.ゲンキの力(ガッツ)に興味
4.セイギノミカタを増やす
5.原稿をゲンキとキョンの妹に読ませてみる
6.ついでに奇妙なマークについても確認してもらう
【備考】
※簡単な漢字を少しずつ覚えていっています
※ウォーズマンの名前と容姿を覚えました。
※中学校三階の部屋でSOS団のシンボルマークが表示されたPCを発見しました
※それが原作と同じ効果を及ぼすのか別の何かを起こすのかは次の書き手さんにお任せします
【名前】 朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】 健康
【持ち物】ボウイナイフ、鬼娘専用変身銃@ケロロ軍曹、クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
不明支給品0~1(武器では無い) 、メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱、
デイパック(支給品一式) 、新・夢成長促進銃@ケロロ軍曹
【思考】
0:キョンを殺す
1:長門有希を止める
2:古泉、みくる、サツキを探すため北の施設(中学校・図書館・小学校の順)を回る
3:ゼロスたちと情報交換
4:基本的に殺し合いには乗らない
5: まともな服が欲しい
6:できればゲーム脱出時、ハルヒの死体を回収したい
※長門有希が暴走していると考えています
※クロスミラージュを改変しました。元に戻せるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
【名前】キン肉スグル@キン肉マン
【状態】両方の二の腕に火傷跡と切り傷、脇腹に中度の裂傷(処置済み)
【持ち物】タリスマン@スレイヤーズREVOLUTION、ディパック(支給品一式×4)
ホリィの短剣@モンスターファーム~円盤石の秘密~、 SOS団団長の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、
金属バット@現実、100円玉@現実 不明支給品0or1
【思考】
1:今のところはゼロスと協力。だがヴィヴィオのためになるべく早く別行動をしたい。
2:ヴィヴィオは保護する。
3:ウォーズマンと再会したい
4:キン肉万太郎を探し出してとっちめる。
5:一般人を守り、悪魔将軍を倒す。
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、疲労(小)
【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
1:なのはママ、スバル、ノーヴェをさがす
2:キョンの妹に、キョンとハルヒのことを伝えたい。
3:ゼロスが何となく怖い。
【備考】
※ヴィヴィオの力の詳細は、次回以降の書き手にお任せします。
*時系列順で読む
Back:[[驚異の伸縮装甲]] Next:[[それが俺のジャスティス]]
*投下順で読む
Back:[[驚異の伸縮装甲]] Next:[[それが俺のジャスティス]]
|[[警戒でしょでしょ?]]|ゼロス|[[]]|
|~|朝倉涼子|[[]]|
|~|キン肉スグル|[[]]|
|~|ヴィヴィオ|[[]]|
*会議は笑う ◆NIKUcB1AGw
C-5、高校。そこにいたのは人の姿を持ちながら、純然たる人ではない者三人。
その三人の前に現れたのは、やはり人のようであって人ではない男。
その男……自称「謎の神官(プリースト)」ゼロスは、じっくりと三人の様子を見つめたあとでおもむろに尋ねる。
「つかぬ事をお伺いしますが……。あなた方は『セイギノミカタ』ですか?」
「はい?」
唐突な質問に、朝倉は鳩が豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべる。そんな彼女とは対照的に、喜々としてこの質問に答える男が一人。
「うむ、いかにも! 私こそ人類の平和を守る正義超人の筆頭、キン肉スグルだ!」
もちろん、正真正銘の正義の味方であるスグルである。
バカ正直に質問に答えるスグルに、あきれ気味な様子を見せる朝倉。一方、ゼロスはその回答に興味深そうな反応を見せる。
「正義超人? もしやあなたは、ウォーズマンさんのお仲間ですか?」
『ウォーズマン!?』
朝倉とスグル、二人が共に知る名前が出たことで、同時にその名が発せられる。
「えーと、ゼロスくんだったかのう。あんた、ウォーズマンに会ったのか?」
思わず、スグルはゼロスに詰め寄る。ゼロスはその暑苦しさに若干押されつつも、あくまで冷静に言葉を紡いだ。
「ええ、放送の少し後ぐらいでしたか。場所は……すいません、島の真ん中あたりの森だったとしか覚えていません。
近くにこれといって場所がわかるようなものがなかったもので……」
「おそらく、メイちゃんを捜していた時に会ったのね……。結局、メイちゃんは見つかったのかしら?」
「彼は、人捜しをしていたのですか。とりあえず、私と出会った時はお一人でしたが」
「そう」
「で、ウォーズマンは今どこに?」
よほど親友のことが気になるのか、スグルはさらにゼロスに詰め寄る。
「顔が近いですよ、離れてください。ウォーズマンさんとはすぐに別れてしまったので、そのあと彼がどうしたのかはまったくわからないのですよ。
まあ別れたというか……私が彼を怒らせるようなことをしてしまって、慌てて逃げてきたのですが」
「なにぃ? うーん、ウォーズマンの奴、普段は冷静に見えてカッとなりやすいところもあるからのう。
ゼロスくんも他人と接する時はもっと慎重にしないといかんぞ?」
「ははは、今後は気を付けますよ」
苦笑を浮かべながら、ゼロスが言う。だが、その笑みはどうにも胡散臭い。
「ところで、スグルさんでしたか? 先程あなたはご自分をセイギノミカタと仰いましたが……。
実力はどれほどのもので?」
「うむ、何を隠そう、私は史上初の超人レスリングシングル・タッグ二冠を達成した男!
弱いはずがなーい! こんな姿になっていなければのう……」
前半は勢いがよかったスグルの言葉だが、後半にはいると一気に失速してしまった。
「えーと、彼はいったいどうしたのですか?」
がっくりうなだれるスグルを指さし、ゼロスは朝倉に尋ねる。
「まあ、支給品の誤発動ってところかしらね。たしか放送が流れると効果が解除されるって説明書に書いてあったから、心配する必要はないけど」
「ええっ!? それを早く言ってくれ、リョーコちゃん! そうだとわかっていたら、私だってこんなに取り乱さなかったわい!」
「あら、言ってなかったかしら?」
『お取り込み中失礼します、Ms朝倉』
スグルと朝倉の掛け合いに、電子的な声が割り込む。朝倉が所持するインテリジェントデバイス、クロスミラージュだ。
「どうしたの、クロスミラージュ」
『その放送ですが、もうすぐ開始されるものと思われます。ここはいったん会話を中断して、放送を聞くことに集中した方がよいかと』
「ああ、次の放送は十二時でしたか。確かにもう少しですねえ」
時計に目をやりながら、ゼロスが言う。
「確かに、クロスミラージュの言う通りね。ゼロスさん、お話の続きは放送が終わってからでいいかしら?」
「ええ、もちろんです……と、そう言えば、名前をまだお聞きしてませんでしたね。
先程スグルさんからはリョーコちゃんと呼ばれていたようですが」
「私は朝倉涼子。そっちの女の子はヴィヴィオよ」
「わかりました。ではいろいろお伺いしたいことは、放送が終わってからゆっくり聞かせていただきます」
「ええ、こっちからも話を聞かせてもらうわね」
朝倉とゼロスは、共に笑い合う。だが、その笑みが心からのものであるかは、本人たち以外わかるはずもなかった。
◇ ◇ ◇
そして一同は、万全の態勢で放送を聞くことになる。
「やあ、参加者の皆。元気にしているかな?」
6時間前の放送と同じ男の声が、4人の参加者と2個のデバイスに届く。
その後しばらく続く、とりとめのない話。スグルは一人その内容に怒りを募らせるが、朝倉とゼロスはどうでもいいとばかりにそれを聞き流す。
「それでは、皆お待ちかねの禁止エリアの発表といこうかな」
主催者の話は、ようやく本題の一つとも言うべき禁止エリアの発表に入った。
朝倉とゼロスはペンと地図を手に、耳に神経を集中させる。
それを見て、スグルも慌てて自分の荷物から地図を取り出した。
「午後13:00から J-03
午後15:00から E-01
午後17:00から H-05 」
「……え?」
告げられた禁止エリアに、朝倉は思わず驚きの声を漏らす。J-3は1エリアまるまる海。E-1はわずかに陸地が含まれているだけで、ほとんどが海。
わざわざ禁止エリアにしなくても、誰が侵入するというのか。
(なんでこんなところを禁止エリアに?)
強い疑問を感じる朝倉だが、今は深く考えている余裕はない。続いて死者の名前が読み上げられるからだ。
とりあえずは疑問を頭の隅に置き、朝倉は地図を名簿と入れ替える。
「ホリィ」
ゼロスの体が、ピクリとだけ動く。だが、他の面々はそれに気づかない。
「ガルル中尉」
全員が無反応。
「アシュラマン」
「何だと!!」
スグルの怒声が上がる。
「草壁メイ」
「あら」
朝倉の口から、ポロリと声が漏れる。
「セイン」
ヴィヴィオが、わずかに反応を見せる。
「以上5名だよ」
死者の発表は、これで終わりを告げた。朝倉たちは、これで重要な情報の発表は終わりだと考える。
だが、その考えはあっさりと裏切られる。
「……だから、僕は一つ君たちにご褒美をあげることにしたよ」
(ご褒美?)
思わぬ展開に、ゼロスは切り換えかけた興味を再び放送に戻す。
主催者が告げたご褒美、それは「3人殺せばこの放送時点での他の参加者の位置を教える」というものだった。
「それじゃあ、皆頑張って殺し合ってね。また6時間後に会おう」
そして、最後まで明るい調子のまま放送は終わりを告げる。
「くそっ、アシュラマン!!」
最初に反応を見せたのは、スグルだった。怒りに任せ、目の前の机を叩く。
アシュラマン。最初に出会ったのは、敵としてだった。その実力と策謀の前に、自分たち正義超人は何度も追いつめられた。
だが彼は、宇宙超人タッグでの自分たちとの試合で変わったのだ。
決勝戦ではスグルのタッグパートナーであるテリーマンを助けるために姿を現し、続く王位争奪戦ではスグルの兄・アタルのチームメイトとなった。
共に肩を並べて戦ったことはなくても、すでにスグルはアシュラマンを正義超人の一員として認めていた。
(さぞかし無念だっただろう、アシュラマン……。後は私とウォーズマンに任せて、ゆっくり休んでくれ……)
先にあの世へと旅立ってしまった戦友に、思いを馳せるスグル。しかし少しして、周囲から白い目で見られていることに気づく。
「あれ? どったの、みんな」
朝倉は、無言でスグルの足下を指す。そこには、粉々になった机の残骸があった。
「えーと……。これってひょっとして、僕ちゃんがやったの?」
『ひょっとしなくてもそうです、Mrスグル。おそらく元の体に戻ったばかりで、力の制御が上手くいかなかったのでしょう』
スグルに向かい、クロスミラージュが冷静に解説を行う。
「おお! そう言えば若々しいボディーに戻っているではないか! うむ、この張りつめた筋肉! これでこそ私だ!」
「そんなに筋肉にこだわりがあるなら、戻った時点で気づくんじゃないの、普通……」
「いやいや、死んだ仲間のことで頭がいっぱいになっていたものでな」
朝倉の皮肉混じりの指摘に、スグルは素直に言葉を返す。
「アシュラマン、という方ですか。やはりこの方も正義超人ですか?」
「うむ、元々は残虐非道な悪魔超人だったが、私たちとの戦いで友情に目覚め仲間となったのだ」
ゼロスの質問にも、スグルは正直に答えた。もっとも連れてこられた時期の違いという問題から、彼の言っていることは真実とは言い難いのだが。
とは言っても、それを知る術を持つ者はこの場にいない。
(ふむ……セイギノミカタが一人減ってしまいましたか……。これは残念ですね……。
まあ、一人ぐらいならいくらでもカバーできると考えておきますか)
落胆をすぐさま打ち消し、ゼロスは話題を切り替える。
「そう言えば、草壁メイという名前が呼ばれていましたが……。ウォーズマンさんが捜していたのはこの人ですか?」
「ええ。結局助けられなかったみたいね……。残念だわ」
残念という朝倉の言葉に、偽りはない。もっとも、それはスグルがアシュラマンに対して抱いている思いよりははるかに小さいのだが。
それでも、少しの間とはいえ共に行動した人間だ。仇ぐらいは討ってやってもいいという思いはある。
おそらく、殺したのはメイを連れ去った覆面マント男だろう。次に会った時には容赦しない。
「あとはセインという名前に、そちらの女の子……ヴィヴィオちゃんでしたか。その子が反応していたようでしたが、お知り合いですか?」
「えっと、知り合いっていうか……。なんて言えばいいんだろう……」
『私が説明しましょう、Mrゼロス』
言葉に詰まるヴィヴィオの代わりに、クロスミラージュが解説を始める。
『セインと、現在も生存しているノーヴェの二人はかつてヴィヴィオを誘拐したDrスカリエッティの配下、ナンバーズの一員です』
「誘拐犯の一味だと!? 極悪人ではないか!」
『話は最後まで聞いてください、Mrスグル。確かにナンバーズには邪な思考の持ち主も含まれていましたが、この二人はそれほどの悪人ではありません。
単純に主の命令に忠実だったために、罪を犯したと言っていいでしょう。
現在は時空管理局の元で更生プログラムを受けているはずですし、危険人物とは言えません』
「ということは、その人も主催者打倒に協力してくれる可能性があったということですか……。
やれやれ、どうやら今回死んだのは死なせるのは惜しい人たちばかりだったようです」
「グムーッ、私やウォーズマンがいながら、こんな事に……。アタル兄さんや超人血盟軍のみんなになんと申し訳すればいいんじゃー!!」
「あー、スグルさん。少し静かにしてもらえます? はっきり言って、話し合いを進めるのに邪魔なんで」
「う……」
ゼロスにズバリと「邪魔」と断言され、スグルは縮こまってしまった。
「ところでゼロスさん、まだはっきりとは聞いていなかったのだけど……。あなたは殺し合いに積極的ではない。
むしろすすんで殺し合いを破壊しようとしている。これでいいのかしら?」
「ええ、そう思っていただいてかまいません」
朝倉の質問に、ゼロスは笑顔でうなずく。
「そう、それならいいのだけれど……。どうも、あなたの雰囲気が信用できない感じがしてね……。
何というか、悪役っぽいんだもの、あなた」
「おやおや、言ってくれますね。まあ僕は謎の神官ですから、怪しくて当然なんですけどね。
それに、悪役っぽい雰囲気というのならあなたもでは?」
「フフ、否定できないわね」
二人の間に、張りつめた空気が漂う。共に笑顔だが、同時に妙に禍々しいオーラが吹き出ている。
傍らで見ているヴィヴィオが泣きそうになるぐらいである。
「まあ何はともあれ、あなた方も殺し合いに乗っていないことは明白。だとしたら、ここは手を組むべきだとは思いませんか?」
「正論ね。ただ、こちらとしても役立たずはいらないわ。あなたと組むメリットが、私たちにあると証明できる?」
「ちょっとリョーコちゃん、もうちょっと柔らかな言い方を……」
「キン肉マンは黙ってて」
「はい、しーましぇん……」
自分より年下の少女に言われて、あっさり引き下がってしまうスグル。どうにも情けない姿である。
「まあメリットというのでしたら、僕は強いですよ? それに、情報はいくら持っていても困るということはないと思いますが?」
「確かにね。じゃあ、早速情報交換を始めましょうか?」
「ああ、それはちょっと待ってください」
乗り気になった朝倉だが、それをゼロスは引き止める。
「実は、向こうの建物にも殺し合いに乗っていない人たちが二人いまして。
どうせならその人たちと合流してから情報交換した方が効率がいいと思いませんか?
その人たちには見回りをしてくるといって別れたんで、僕の帰りが遅いと心配させてしまうかも知れませんし」
「まあ、それでもかまわないけど……。その二人っていうのは?
ひょっとしたら、私たちの誰かの知り合いかも知れないから、名前ぐらいは先に聞いておきたいんだけど」
「片方はゲンキという少年です。もう片方は、名簿にキョンの妹という名前で載っている少女ですね」
「!」
キョンの妹。その名前に、朝倉とヴィヴィオは大きく反応を見せる。
「おや、本当にお知り合いでしたか?」
「知り合いの妹ね。実際に会ったことはないわ。向こうは私の存在を知ってるかどうかも怪しい。
それ以上に問題なのは……私は、その子の兄を殺したいと思ってることね」
朝倉の発言に、その場の空気は凍り付いた。
「殺したいとは、穏やかではありませんね。では、ここは会わない方が……」
「待って……」
ゼロスの言葉に、弱々しい声が割り込む。それは、ヴィヴィオが発したものだった。
「どうしたの、ヴィヴィオちゃん」
「私は……その人に会いたい……。会って、話がしてみたい……」
「ほう、なぜです」
「この子も、キョンくんとはちょっと因縁があってね」
朝倉が、ヴィヴィオに代わってゼロスの質問に答える。
「伝えたいことがあるの……。たぶん、その人にとっては聞くのが辛いことだと思うけど……。
でも、伝えなくちゃいけないことだと思う」
途切れ途切れになりながらも、ヴィヴィオははっきりと自分の意見を述べた。
「そう。なら行きましょうか」
「いいの?」
「別にかまわないわよ。ああは言ったけど、別にキョンくんの妹さんまで取って喰おうとは考えてないから。
まあ、多少感情的になっちゃうかも知れないけどね。その時はフォローよろしくね、クロスミラージュ」
『了解しました、Ms朝倉』
「あのー……僕ちゃんには頼らないわけ?」
こっそりと呟くスグルだが、朝倉には軽くスルーされてしまう。
「それじゃあゼロスさん、二人のところまで案内お願いできる?」
「もちろんです。それではまいりましょう、皆さん」
さわやかな笑顔を浮かべながら、ゼロスは先陣を切って廊下へと出て行った。
◇ ◇ ◇
高校の廊下を歩く一同。その途中、朝倉はふいにゼロスに話しかける。
「ゼロスさん、ちょっといい?」
「何でしょうか、リョーコさん」
「あなたは少なくてもあっちの二人よりは頭が良さそうだから、意見を聞きたいのだけど……。
今回の禁止エリアについてどう思う?」
「どう思う、と言いますと?」
「三つの禁止エリアのうち、二つは放っておいても誰も行きそうにない海ばかりのエリア。
もう一つは、入れなくても大して不自由しない島の中心の森。これじゃあ、禁止エリアの意味が薄いじゃない。
何の意味があってこんなところを禁止エリアにしたのか、それについて考えがあれば聞きたいのだけど」
「意味ですか……。意味なんてないんじゃないですか?」
「え?」
予想外のゼロスの返答に、朝倉は思わず気の抜けた声を漏らす。
「つまり、ゲームマスターであるあの二人は適当に禁止エリアの位置を決めているんじゃないかということですよ。
あの人たちの目的がなんなのかはわかりませんが、仮に『娯楽』の要素が含まれているとすればこの可能性も高くなります。
娯楽というのは不確定要素が多いほど楽しくなるものですから。尤も、あまり多すぎるととんでもない方向に行ってしまうこともありますけどね」
「でも、それにしては遊園地の周りに禁止エリアが偏りすぎているような……」
「偶然は時として偏りを生みます。たまにあるでしょう? さいころで三回連続1が出たり、よく切ったはずのトランプで同じ数字が続いたり」
「なるほど……」
ゼロスの意見に、朝倉は感嘆の声をあげた。
長門の人となりを知っているがゆえに、彼女の思考は自然と「あの長門が意味のないことをするはずがない」という方向に向かっていた。
しかしゼロスは、そうした先入観がないゆえに朝倉のとうてい思いつかぬ仮説を持ち出してきた。
それだけで朝倉の中でのゼロスに対する評価は大きく上がったのだが、ゼロスはさらに続ける。
「不確定要素といえば、支給品もそうです。単純に殺し合いを加速させたいなら、支給品なんて全部武器でいいんです。
なのに原稿やら人を老化させる道具やら、とても人を殺すのに使えるとは思えないものも混じっている。
これもゲームを面白くするための不確定要素と考えられると思いませんか?
ああ、原稿といえば、朝倉さんはあれを読めますかね? まあ、それはゲンキさんたちと合流したあとでもいいですね。
それから、会場になっているこの島も無作為に選ばれた可能性が高い。
こんなに施設が北部に集中していては、自然と参加者も偏ってしまう。
よく吟味したのなら、こんな島を会場に選ぶことはないでしょう」
(この人、興味深い考え方してるわね……。私に足りない部分を補ってくれるかも知れない。
しばらく一緒に行動するのもいいわね。けど、それだとキョンくんの妹とも一緒にいることになっちゃうし……)
「ところでリョーコさん、こちらからも質問してよろしいですか?」
「っと、何かしら?」
一人で考え込みそうになった朝倉だが、ゼロスの方から声をかけられ意識を彼に戻す。
「ご褒美に関しても意見を伺いたいところですが……まあ、それは後でもいいでしょう。
それより、一刻も早く聞いておきたいことがあるんです。リョーコさん、あなた……これを外す当てはありますか?」
自らの首輪を指で叩きながら、ゼロスは尋ねた。
「まあ、自慢じゃないけどそういうのは他の人より得意だと思うわ。外せる可能性はある。
でも、よく考えてみて。自分がゲームマスターだったら、参加者の誰か一人でも外せる可能性があるものを付けさせる?」
「確かに。そんなことはしませんね。いかにここが脱出困難な孤島としても、強制力が失われれば殺し合いはまともに成立しなくなる。
どんなにゲームマスターが適当だったとしても、ここは気を遣うでしょう」
『しかし、それでは殺し合いの破壊は不可能ということになってしまいますが……』
重要な話題と判断したのか、クロスミラージュも会話に参加してくる。
「大丈夫、不可能じゃないわ」
「そう言いきる根拠は?」
「当たり前の話だけど、ゲームマスターのところにあるデータは殺し合いが始まる前のもののはず。
殺し合いの中で私の技術がレベルアップすれば、解除の可能性は出てくる」
「なるほど、想定されたデータを上回ればいいという話ですか。ですが、口で言うほど簡単な話ではないはず。
あなたにそれが出来ますか?」
「出来ると断言は出来ないわ。けど、やらずに後悔するよりやって後悔する方がいいっていうじゃない?
可能性が少しでもあるのなら、私はやるわ。このままあの人たちの思惑通りにあがいて死んでいくなんて嫌だもの」
そう言って、朝倉は満面の笑みを浮かべた。
一方、スグルとヴィヴィオは、前を行く朝倉とゼロスから少し距離を取って歩いていた。
「ふーむ、あの二人、何を話しておるのかのう……」
「わかんないけど、たぶん大事なお話だと思う……」
「むう……。ところでヴィヴィオちゃん、さっきから元気がないのではないか?」
「え……! そ、そんなことないよ!」
スグルの言葉を、慌てて否定するヴィヴィオ。だがその狼狽振りは、スグルが的を射ていることを証明していた。
「なに、子供が大人に気を遣ってどうする! 何か困ったことがあるなら、遠慮なくこのキン肉マンお兄さんに言いなさい!」
「ありがとう、キン肉マンさん……。あのね、ゼロスさんって何となく怖いの……。
ものすごく怖いわけじゃないんだけど、一緒にいるといやな気分になってくるっていうか……」
「なるほどのう……」
ヴィヴィオの言いたいことは、スグルにもわかっている。
あのゼロスという青年、表向きは非常に友好的だが、どこか冷たい雰囲気を持っている。
そう、まるで残虐超人や悪魔超人の「氷の精神」のような……。
「まあ、こちらに危害を加えてくる様子はないから心配はないと思うが……。
ヴィヴィオちゃんがここまで怯えているようなら、情報交換の後別行動を取ってもらった方がいいかのう」
「ごめんなさい、私のせいで迷惑かけちゃって……」
「気にするな! 正義超人はいつでも子供の味方さ!」
豪快な笑顔を見せると、スグルはその大きな手でヴィヴィオの頭をガシガシと撫でた。
廊下を歩く、四つの人影。今は、彼らは殺し合いの破壊という共通の目的の元団結している。
だが、その団結が今後も続くかどうかは、誰も知らない。
【C-3 高校/一日目・昼過ぎ】
【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】わずかな精神的疲労
【持ち物】デイパック×2、基本セット×2(地図一枚紛失)、不明支給品1~4
草壁タツオの原稿@となりのトトロ
【思考】
0.首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1.ゲンキたちと合流し、それから情報交換。
2.当面はゲンキを保護。ゲンキが自力で動けるようになったら別れる
3.ゲンキの力(ガッツ)に興味
4.セイギノミカタを増やす
5.原稿をゲンキとキョンの妹に読ませてみる
6.ついでに奇妙なマークについても確認してもらう
【備考】
※簡単な漢字を少しずつ覚えていっています
※ウォーズマンの名前と容姿を覚えました。
※中学校三階の部屋でSOS団のシンボルマークが表示されたPCを発見しました
※それが原作と同じ効果を及ぼすのか別の何かを起こすのかは次の書き手さんにお任せします
【名前】 朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】 健康
【持ち物】ボウイナイフ、鬼娘専用変身銃@ケロロ軍曹、クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
不明支給品0~1(武器では無い) 、メイド服@涼宮ハルヒの憂鬱、
デイパック(支給品一式) 、新・夢成長促進銃@ケロロ軍曹
【思考】
0:キョンを殺す
1:長門有希を止める
2:古泉、みくる、サツキを探すため北の施設(中学校・図書館・小学校の順)を回る
3:ゼロスたちと情報交換
4:基本的に殺し合いには乗らない
5: まともな服が欲しい
6:できればゲーム脱出時、ハルヒの死体を回収したい
※長門有希が暴走していると考えています
※クロスミラージュを改変しました。元に戻せるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
【名前】キン肉スグル@キン肉マン
【状態】両方の二の腕に火傷跡と切り傷、脇腹に中度の裂傷(処置済み)
【持ち物】タリスマン@スレイヤーズREVOLUTION、ディパック(支給品一式×4)
ホリィの短剣@モンスターファーム~円盤石の秘密~、 SOS団団長の腕章@涼宮ハルヒの憂鬱、
金属バット@現実、100円玉@現実 不明支給品0or1
【思考】
1:今のところはゼロスと協力。だがヴィヴィオのためになるべく早く別行動をしたい。
2:ヴィヴィオは保護する。
3:ウォーズマンと再会したい
4:キン肉万太郎を探し出してとっちめる。
5:一般人を守り、悪魔将軍を倒す。
【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、疲労(小)
【持ち物】バルディッシュ・アサルト(6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
1:なのはママ、スバル、ノーヴェをさがす
2:キョンの妹に、キョンとハルヒのことを伝えたい。
3:ゼロスが何となく怖い。
【備考】
※ヴィヴィオの力の詳細は、次回以降の書き手にお任せします。
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|[[警戒でしょでしょ?]]|ゼロス|[[そして私にできるコト]]|
|~|朝倉涼子|~|
|~|キン肉スグル|~|
|~|ヴィヴィオ|~|
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