「アサシンの誇り」(2008/09/23 (火) 17:44:29) の最新版変更点
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*アサシンの誇り ◆YsjGn8smIk
気が付くとラドック=ランザードは木々の中にいた。
急激な視界の変化に僅かに目を細めながら、辺りを見回すと
そこは木々が連なり、その枝葉が空を覆い隠している森の中だった。
薄紅色の花びらが風に舞う中、周囲に人の気配が無い事を確認すると
ラドックは足元に落ちていたバッグをゆっくりと拾い上げ、近くの木の下へと身を潜めた。
「どういう事だ―――これは」
そんな呟きが思わず漏れる。
殺し合いをしてもらう。
ラドックにとって、あの男が言ったその言葉自体はどうでもよかった。
いまさら人を殺す事に躊躇いなど無い。
報酬さえ払っていれば無条件で殺し合いに乗ってもよかったぐらいだ。
問題はゲームマスターを名乗った二人組が、それを知っていたかどうかだ。
それ―――すなわちラドックが殺しを仕事にしている事を。
ラドック=ランザードは―――いやアサシン・ズーマは確かに殺しを仕事にしている。
しかしその秘密は知られるわけにはいかなかった。
知られた場合は誰であろうと、そう―――例え家族であろうとも始末しなければならない。
(問題は奴らがどちらの私を必要としたか、だ)
奴らは表の姿であるラドック=ランザードを生贄として攫ってきたのか、
それとも裏の姿であるアサシン・ズーマに生贄殺しをさせる為に攫ってきたのか。
生贄として攫われてきたのならまだいい。
だが仮に、ズーマであると知られていた場合は―――
いらいらとかぶりを振り、ラドックはとにかくバッグを開いてみる。
情報が少ない現状でこれ以上考えても仕方がないと判断したからだ。
バッグの中には水や食料などの必須品から地図などの細々したものがぎっしりと詰まっていた。
その中で彼の目を引いたのは参加者名簿だった。
ゲームの参加者が書かれていたそれを見て、ラドックは静かに安堵の息を吐く。
そこに書かれていたのが彼の秘すべき名である暗殺者ズーマではなく、ラドック=ランザードの方だったからだ。
(奴らはわたしをズーマだとは知らずに攫ってきたのか)
そう納得しかけたが次の瞬間にはそれも吹き飛ぶ。
『リナ=インバース』
知った名だった。それは彼のズーマとしての知り合い。
殺しを請け負ったターゲットの名前だった。
愕然とする。
偶然というには余りに出来すぎていた。
改めて名簿を見直すとそこにはズーマとしての関係者を見つけることは出来ても、
ラドックとしての関係者を一人として見つけることは出来ない。
(確証はない―――とはいえ、これは)
疑惑を深めながらも彼はバッグを漁り続ける。
出てくるのは紙、筆記用具、そして爪が付いた手甲が一つ。
思考に没頭しながらも自然と手は動きベアークローと書かれたそれをしっかりと右腕に嵌め、大木に向かって軽く突く。
―――ざっ
本当にあっさりと、ベアークローは大木を貫いた。
(なっ―――?)
その威力に思わず目を見張る。予想をはるかに超える貫通力だった。
それは鋭さといい腕の動きを邪魔しない作りといい、格闘と魔法を得意とする彼にうってつけの武器だった。
だが―――
(あまりにわたしに都合が良すぎる)
武器といってまず思い浮かぶのは剣や槍。
剣士や傭兵ではこのベアークローのような特殊な武器は使いこなせないだろう。
何より重要なのは、剣士にも魔道士にも扱えない特殊な武器が今、この自分に支給された。
ラドックにはそれが偶然とは思えなかった。
(確証ではないが―――疑いを持つには十分すぎる)
自らを束縛する忌々しい首輪を撫でながら思考を加速する。
(そもそも奴らはこのわたしをこうもあっさり攫う事が出来た相手―――
人を溶かす首輪型魔法道具といい、わたしがズーマであるという事を知られていてもおかしくは無い)
疑惑はほぼ確信へと変わったがラドックは残りの支給品を確認する事にした。
想像が正しければ次に出てくるのは―――
「やはり―――」
出てきたのは箱。
明らかにバッグに収まる大きさではなかったが彼はそれを気にもしなかった。
何故ならその箱の中には予想通りの物が―――大量の金貨が詰まっていたからだ。
軽く見ただけでも平均的な家族4人が一生楽に遊んで暮らせるほどの金額。
そしてその箱には「依頼料」とだけ書かれていた。
(―――『依頼』、か)
その時、彼の顔に浮かんだのは歪んだ―――笑いだった。
これが何の依頼料か、依頼内容が何なのかは明白。
この会場内の全ての人間を殺しつくせ。
奴らはそう言っているのだろう。
そしてこれはラドック=ランザードがアサシン・ズーマであると知られた決定的な証拠。
もはや疑う余地もなかった。
(―――殺さねばなるまい)
彼は誓う。
(―――正体を知るものを)
その全てを。
(―――知る可能性があるものを)
その悉くを。
(一人も残さず―――殺す)
ラドックはばっと着ていた服に手をかけ、宣言する。
「いいだろう―――踊ってやろう」
バサッ……!
大きく服が翻り次の瞬間その場には黒装束を纏ったアサシン・ズーマがいた。
今この瞬間にアサシン・オブ・アサシンはゲームに乗った。
(―――今だけは、な)
正体を知ったものを生かして置く気はない。
例え依頼者であろうとも。
今だけは首輪を嵌められ飼われてやろう。だが、首輪から開放されたその時こそ―――
誓いを胸中に潜めアサシン・ズーマは夜の闇を駆け出した。
【D-06/森の中/一日目・未明】
【名前】 ラドック=ランザード(ズーマ) @スレイヤーズREVOLUTION
【持ち物】ベアークロー(右)@キン肉マンシリーズ、金貨1万枚@スレイヤーズREVOLUTION、デイパック(支給品一式)
【思考】
1、参加者を全て殺す
2、リナ=インバースを殺す
3、ゲームの関係者を全て殺す
注意:金貨1万枚は依頼料と箱に書かれていただけで、本当に主催者からズーマへの報酬かどうかは不明です。
*時系列順で読む
Back:[[怪奇! 格闘カエル男の恐怖]] Next:[[○ッ○全開! ハートばっくばくだぜ~っ!!]]
*投下順で読む
Back:[[怪奇! 格闘カエル男の恐怖]] Next:[[○ッ○全開! ハートばっくばくだぜ~っ!!]]
|&color(cyan){GAME START}|ラドック=ランザード||
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*アサシンの誇り ◆YsjGn8smIk
気が付くとラドック=ランザードは木々の中にいた。
急激な視界の変化に僅かに目を細めながら、辺りを見回すと
そこは木々が連なり、その枝葉が空を覆い隠している森の中だった。
薄紅色の花びらが風に舞う中、周囲に人の気配が無い事を確認すると
ラドックは足元に落ちていたバッグをゆっくりと拾い上げ、近くの木の下へと身を潜めた。
「どういう事だ―――これは」
そんな呟きが思わず漏れる。
殺し合いをしてもらう。
ラドックにとって、あの男が言ったその言葉自体はどうでもよかった。
いまさら人を殺す事に躊躇いなど無い。
報酬さえ払っていれば無条件で殺し合いに乗ってもよかったぐらいだ。
問題はゲームマスターを名乗った二人組が、それを知っていたかどうかだ。
それ―――すなわちラドックが殺しを仕事にしている事を。
ラドック=ランザードは―――いやアサシン・ズーマは確かに殺しを仕事にしている。
しかしその秘密は知られるわけにはいかなかった。
知られた場合は誰であろうと、そう―――例え家族であろうとも始末しなければならない。
(問題は奴らがどちらの私を必要としたか、だ)
奴らは表の姿であるラドック=ランザードを生贄として攫ってきたのか、
それとも裏の姿であるアサシン・ズーマに生贄殺しをさせる為に攫ってきたのか。
生贄として攫われてきたのならまだいい。
だが仮に、ズーマであると知られていた場合は―――
いらいらとかぶりを振り、ラドックはとにかくバッグを開いてみる。
情報が少ない現状でこれ以上考えても仕方がないと判断したからだ。
バッグの中には水や食料などの必須品から地図などの細々したものがぎっしりと詰まっていた。
その中で彼の目を引いたのは参加者名簿だった。
ゲームの参加者が書かれていたそれを見て、ラドックは静かに安堵の息を吐く。
そこに書かれていたのが彼の秘すべき名である暗殺者ズーマではなく、ラドック=ランザードの方だったからだ。
(奴らはわたしをズーマだとは知らずに攫ってきたのか)
そう納得しかけたが次の瞬間にはそれも吹き飛ぶ。
『リナ=インバース』
知った名だった。それは彼のズーマとしての知り合い。
殺しを請け負ったターゲットの名前だった。
愕然とする。
偶然というには余りに出来すぎていた。
改めて名簿を見直すとそこにはズーマとしての関係者を見つけることは出来ても、
ラドックとしての関係者を一人として見つけることは出来ない。
(確証はない―――とはいえ、これは)
疑惑を深めながらも彼はバッグを漁り続ける。
出てくるのは紙、筆記用具、そして爪が付いた手甲が一つ。
思考に没頭しながらも自然と手は動きベアークローと書かれたそれをしっかりと右腕に嵌め、大木に向かって軽く突く。
―――ざっ
本当にあっさりと、ベアークローは大木を貫いた。
(なっ―――?)
その威力に思わず目を見張る。予想をはるかに超える貫通力だった。
それは鋭さといい腕の動きを邪魔しない作りといい、格闘と魔法を得意とする彼にうってつけの武器だった。
だが―――
(あまりにわたしに都合が良すぎる)
武器といってまず思い浮かぶのは剣や槍。
剣士や傭兵ではこのベアークローのような特殊な武器は使いこなせないだろう。
何より重要なのは、剣士にも魔道士にも扱えない特殊な武器が今、この自分に支給された。
ラドックにはそれが偶然とは思えなかった。
(確証ではないが―――疑いを持つには十分すぎる)
自らを束縛する忌々しい首輪を撫でながら思考を加速する。
(そもそも奴らはこのわたしをこうもあっさり攫う事が出来た相手―――
人を溶かす首輪型魔法道具といい、わたしがズーマであるという事を知られていてもおかしくは無い)
疑惑はほぼ確信へと変わったがラドックは残りの支給品を確認する事にした。
想像が正しければ次に出てくるのは―――
「やはり―――」
出てきたのは箱。
明らかにバッグに収まる大きさではなかったが彼はそれを気にもしなかった。
何故ならその箱の中には予想通りの物が―――大量の金貨が詰まっていたからだ。
軽く見ただけでも平均的な家族4人が一生楽に遊んで暮らせるほどの金額。
そしてその箱には「依頼料」とだけ書かれていた。
(―――『依頼』、か)
その時、彼の顔に浮かんだのは歪んだ―――笑いだった。
これが何の依頼料か、依頼内容が何なのかは明白。
この会場内の全ての人間を殺しつくせ。
奴らはそう言っているのだろう。
そしてこれはラドック=ランザードがアサシン・ズーマであると知られた決定的な証拠。
もはや疑う余地もなかった。
(―――殺さねばなるまい)
彼は誓う。
(―――正体を知るものを)
その全てを。
(―――知る可能性があるものを)
その悉くを。
(一人も残さず―――殺す)
ラドックはばっと着ていた服に手をかけ、宣言する。
「いいだろう―――踊ってやろう」
バサッ……!
大きく服が翻り次の瞬間その場には黒装束を纏ったアサシン・ズーマがいた。
今この瞬間にアサシン・オブ・アサシンはゲームに乗った。
(―――今だけは、な)
正体を知ったものを生かして置く気はない。
例え依頼者であろうとも。
今だけは首輪を嵌められ飼われてやろう。だが、首輪から開放されたその時こそ―――
誓いを胸中に潜めアサシン・ズーマは夜の闇を駆け出した。
【D-06/森の中/一日目・未明】
【名前】 ラドック=ランザード(ズーマ) @スレイヤーズREVOLUTION
【持ち物】ベアークロー(右)@キン肉マンシリーズ、金貨1万枚@スレイヤーズREVOLUTION、デイパック(支給品一式)
【思考】
1、参加者を全て殺す
2、リナ=インバースを殺す
3、ゲームの関係者を全て殺す
注意:金貨1万枚は依頼料と箱に書かれていただけで、本当に主催者からズーマへの報酬かどうかは不明です。
*時系列順で読む
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