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優しい隣獣 ◆qYuVhwC7l.



深く深く掘りかえされた茶色い地面、あちこちから顔をのぞかせる闇が広がる洞窟の入り口……
一瞥しただけでこの場所がどこかわかる特徴的な景色を見ながら、古泉は自分の脇腹から胸にかけてを撫でる。
先ほどの戦闘の時は気が高ぶっていたためか苦にもならなかったが、一段落ついた今となってはズキズキとした痛みが断続的にその場所を襲っていた。
アバラにひびでも入っていなければいいが……古泉は一つため息をつきかけ、ズキリとした痛みによってそれを中断する。

「…………ここは…採掘場ですか」

しばらく呼吸を整えた後に、ディパックから地図を取り出して実際の風景と見比べながらポツリと呟く。
つい先ほどまで自分達が居たのが博物館前…エリアH-8。そして今いる場所が採掘場のあるエリアG-7。地図上で見れば、ほぼ1エリア分を一気に移動したという事か。

「全く、大した機動力ですね。僕がどれだけ頑張っても逃げられなかった訳ですよ」

そう言いながら見やるのは、壁のようにそびえ立つ土砂に持たれながら、呑気な表情で星を見上げているトトロだ。
全力疾走によって疲労したのか、戦闘による疲れが残っているのか、はたまたまだ頭が痛むのか…ともかくトトロは浅い呼吸を繰り返したままのんびり休息していた。
出来ればこのまま休ませてやりたい、という気持ちが無いわけではないが、古泉には何よりも確認したい事があった。

「貴方に一つだけ聞きたい事があります」

トトロに向かって歩みよりながら、今までのこの生物の行動を思い返す。
アシュラマンに吹きとばされた時。アシュラマンの怒涛の攻撃が自分達を襲った時。
こちらがアサルトライフルを発砲した時。あの赤球を発射した時。そして、最後の逃走。
一連の行動が行われた状況には、ある共通点があった。

こちらか、相手かは問わない。ただ一つ、あのままこの生物が何もしなかったら確実に―――――



「………貴方は、自分の交流したい相手はもちろんの事、殺し合いに乗っている人物にも……いや……場合によっては主催者ですら………
 『誰にも、傷ついてほしくない』と。………そう思っているのですか」



果たして、トトロは。
古泉の方にゆっくりと顔を向けたかと思うと。


今までに見せた中で、一番楽しそうな顔で笑った。


『ありがとう。わかってくれて、ありがとう』
まるで、そう言って古泉に感謝しているかのように。

それに対して古泉は――――困ったような、ぎこちない笑顔を浮かべる事しか出来なかった。

古泉は、普段見せている温厚な態度が示すように、その性根が万物を愛する博愛主義者、という訳ではない。ただでさえ、この態度は『涼宮ハルヒ』の為の演技なのだ。
彼にとっての今の最優先事項は、『涼宮ハルヒ』と、彼女にとって最も重要な人物である『キョン』を保護することである。
その条件を満たすためならば『役立たずの非戦闘員を切り捨てる』という非情な選択を取ることすら視野に入れている。
だが、今の会話によってその実行は困難である事がはっきりとわかった。
もしも古泉が『切り捨て』を行おうとすれば、トトロは全力でそれを阻止しようとするだろう。
敵であるアシュラマンを、ずっと古泉の攻撃から守り続けていたように。


ならばいっそのこと、ここでトトロを『切り捨て』るか?
それこそ無理な相談だ。先の戦闘でも分るとおり、トトロの強みはその異常なまでのタフさにある。
この場で『切り捨て』る為に全力で戦うなどまさしく愚の骨頂だ。
それに、そのトトロの防御力が非常に役立つ事も古泉がその身をもって体験している。
『切り捨て』るには余りにも惜しい人材だ。

打開策が見えないまま古泉はその場に座り込む。
ともかく今は別の事を考えようと、一先ず自分のディパックの中を漁る。
まだ把握していない、自分に配られた支給品をこの目でしっかりと確認するためだ。
既にアサルトライフルが入っていた事から考えても、既に武器は無いような気もするが。

「…………ん…これは……?」

手に当たった小さな硬い物体に反応して、ゆっくりとそれを取り出して確認する。
そしてそれが何かが分かった瞬間、古泉の精神に衝撃が走る。
―――今までずっと、自分の『引き』運は限りなく悪い物と思っていたが、案外捨てた物でもなかったらしい。

「すいません、少しよろしいですか?」
「?」

再び星を見上げていた相棒に声をかければ、頭にクエスチョンマークを浮かべながらもその視線はまだ好意的だ。
おそらく、行ける。

「貴方に一つ頼みたい事があるのです」

にっこりと笑みを浮かべながら、出来るだけ優しく古泉はトトロに話しかけた。






「探して欲しい人がいるんですよ」

古泉のディパックに入っていた支給品――それは何の変哲もない『デジカメ』だった。
一見すれば明らかなハズレアイテムであるそれだが、古泉にとっては…いや、場合によっては他の参加者にとっても重要なアイテムであるのかも知れない。
しばらくデジカメを馴れない様子で操作していた古泉だったが、やがて目当ての画像データを見つけるとトトロに向かってそれを見せる。

「探して欲しいのは、こちらの女性です。名前は『涼宮ハルヒ』」

デジカメの液晶に写っているのは、晴天の青い海の中、水着を着て幼い子供と戯れている少女の姿。
その少女の方を指でぐるぐると囲みながら、古泉はゆっくりとトトロに説明する。

このデジカメの正体。それは、夏休みの始めに行われた『SOS団特別合宿』なる小旅行にて持ち込まれた物である。
もちろんその画像データには、『朝倉涼子』を除いたこの殺し合いに関わっている自分の顔見知り全員の姿がしっかりと残っている。
そう、『顔見知り全員の姿』が。

「それと、もう一人………ほら、こちらの男性です。名前は…本名は別なのですが、名簿に記された物を借りれば『キョン』と呼ばれていますね」

しばらく幾つかの画像データが表示されたのち、次に液晶に映し出されたのは不機嫌そうな顔でぼんやりとしている少年の姿だ。
その姿を同じように指で囲みながら、古泉はトトロの様子を見る。
流石にこの超生物も『デジカメ』に触れた事は無かったようで、興味津津といった表情でじっとその画面を見つめている。
一瞬だけ古泉の姿が映った画像が見えた時は、明らかに驚いた様子で古泉の顔と見比べていた。

「この二人は僕の友人なんです。今すぐにでも探しだして…ぶしつけなお願いですが、貴方に守って頂ければ、と」

真剣な表情で古泉がトトロを見つめて訴える。いや、実際に真剣だった。
『涼宮ハルヒ』、そして『キョン』。この二人のどちらかが欠けても、『世界』に大きな被害が出るであろう事は間違いないのだ。

「お願いします。貴方の足の速さならばきっと、すぐにこの島を回る事が出来るでしょう。
 僕の事は心配しないでください、多少は戦いの心得もありますし、逃げ足が中々なのは貴方も知っていますよね?
 …………本当に、お願いします」

途中で冗談めかしたセリフを言いながらも、古泉は最後には真剣な表情のまま、ゆっくりとトトロに頭を下げる。

巨大で毛むくじゃらな腕が優しくその背中に置かれるまでに、そう時間は掛らなかった。

顔を上げれば、いつものニンマリとした笑顔を浮かべたトトロが既に立ち上がっている。
『任せとけ』。その笑顔が雄弁にその言葉を発している。
そして、突然トトロが大きく息を吸い、思い切りのけぞった所で………ピタリとその体が止まった。
10秒。20秒。30秒。のけぞったままのトトロは全く動く気配を見せない。

「……………どうしたのですか?」

流石に不審に思った古泉が声をかけると、トトロはプシューッ! と息を吐きだしながら再び体を戻した。
その顔に大きなクエスチョンマークを浮かべて。

「大丈夫ですか? 一体何が………?」

古泉の疑問には答えずしばらくポリポリと頭を掻いた後に、トトロは諦めたようにそこに棒立ちになった。

「………少し、いいでしょうか? 彼らを発見した時に、渡して貰いたい物があるのですが…」

とりあえず、こちらには理解できなかったが何かしらの結論を出した様子のトトロに、古泉は自分の要件を進める。
ディパックの中をしばらく漁ってメモ用紙を取り出すと、乱雑な字で文章を書いていく。


『涼宮さん、もしくはキョン君へ
 この手紙を受け取ったという事は、無事に僕の大きな友人と合流できたのでしょう。
 この生物は、僕が殺し合いに放り込まれた中で一番最初に遭遇した相手です。
 巨大な爪や口など、見た目こそやや恐ろしいですが、その性質はいたって温厚で平和的。
 その事は、しばらく共に行動して幾度となく危険を救ってもらった僕自身が保証します。
 彼には、貴方がたの保護をお願いしてあります。
 戦闘こそ好まない様子ですが、間違いなく貴方達の助けとなってくれるでしょう。

 さて、この手紙を手に入れた時点で、貴方がた二人が揃っていれば言う事は無いのですが、現実はそう甘くないでしょう。
 とりあえず彼には貴方がた二人の身体的特徴を教えてありますので、恐らく既に行動を開始している物と思いますが、
 引き続き彼と共にお互いの捜索を行ってください。

 僕の事についてですが、心配はなさらなくて結構です。
 どうやらくじ運が良かったようで、僕は彼に続いて頼れる人物と合流する事ができました。
 共に行動していればおそらく僕も生き残れるはずです。
 本人たっての希望により名前を記す事はできませんが…。

 貴方がたもきっと生き残れるように、幸運を願っています。  古泉一樹 AM03:52・記す

 PS.
 本来ならば朝比奈さん、朝倉さん、キョン君の妹についても彼に教えておきたいところだったのですが、
 文化の違いという事もあり中々意志の伝達が上手く行かず、断念せざるを得ませんでした。本当に申し訳ありません。』



一気に書ききった所で一息つき、そのメモ用紙を渡そうとしたところで、ふとその動きが止まる。

「そう言えば……貴方の名前をまだ聞いていませんでしたね。教えていただけ―――――」


「ヴォォォォォォォォォォォォォブォォォォォォォォォォォォォルォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」


ビリビリビリビリと空気が震えた気がした。大きく開かれたトトロの口の中を見ながら、
その風圧でメモが吹き飛ばされないように必死で押さえながら古泉は足に力を入れて踏ん張る。

(……先に名前を聞いておかなくて、正解でしたね)

自分の頭などあっさりと擦り潰せそうな臼歯を見ながら、ふとそんな事を考えた。

とりあえず、彼らへの手紙にもう少し文章を追加。


『PS2.
 この生物の名前は、【トトロ】と言うようです。少しばかり声が大きいですが、誓って優しい生物ですので安心してください』








古泉の手紙を受け取ったトトロは、古泉をしばらく見つめた後に風の様な速さで採掘場から飛び出して行った。
その後ろ姿を微笑みながら手を振ってその後ろ姿を見送っていた古泉だったが、やがて深く息を吐いて手を下ろす。

「どうにかなりましたね…」

トトロの優しすぎる性格は、自分に取っては少しばかり余計な物だが、涼宮ハルヒ及びキョンについてはその限りではないだろう。
どちらも、真っ向からこの殺し合いに反発し、好きこのんで誰かを傷つける性格では無い。
トトロの恐るべき防御力も、彼らと共に行動する上では遺憾なく発揮されるはずだ。

「さて、僕がすべきことは………っ!!」

ズキリと自分の胸部に走った痛みに息を詰まらせながら、その場にうずくまってしばらく息を整える。
やがて、どうにか状態を持ち直した所で、古泉はヨロヨロと採掘場内に立っていた古びた掘立小屋へと足を進める。

「ひとまずは、体力の回復が急務ですね……この痛みが休息で回復するかは、少し疑問ですが……」

やはり、肋骨にヒビぐらいは覚悟しておかなければいけないだろうか。
それ以外にも疲労の原因として思い浮かぶ事はある。
アシュラマンとの戦いの中で最後に自分が放ったあの赤球による攻撃。あの直後に、多少の精神的な疲労感が古泉を襲っていた。
例えて言うなら、『MPを消費した』と言った所か。
これよりも軽い物ではあったが、あの仮面での火炎放射を行った時も精神疲労は感じられた。

「ある意味彼女好みの設定とも言えますが……さて、果たしてどちらの手による物なのか……」

思い浮かべる少女は二人。一人は、超常現象的な力を持ち自分たちが『超能力者』となれる場を作り出す事の出来る、涼宮ハルヒ。
もう一人は、情報統合思念体と呼ばれる、宇宙を統括する超存在に対してのコンタクトを可能とし、この殺し合いの主催者でもある、長門有希。
かつてのカマドウマ空間で使えたものよりもさらに弱体化しているとは言え、自分がこの力を使えるという事は間違いなく二人のうちのどちらかが関与しているからだろう。
手に握っていたデジカメに目を落し、しばらくボタンを操作した後にある画像データを呼び出す。
それは、合宿の中で撮影された『全員集合写真』だ。
涼宮ハルヒを中心に、彼女に笑いながら抱きついているキョンの妹、呆れ顔で涼宮ハルヒを見つめているキョン、
ポーズを取ろうとして奇妙な体勢になってしまっている朝比奈みくる、そして澄ました笑顔を見せている古泉一樹に―――無表情のままで写っている長門有希。

「この写真は両刃の剣ですね………」

この写真を見せればで、『自分と主催者には少なからず面識がある』と言う事は簡単に説明できる。
それが『主催者の情報を持っている』とプラスに働くのか、『主催者の手下かもしれない』とマイナスに働くのかは、使い方によって変わってくるだろう。
まだ見ぬ第三者との情報交換の際に使用するかしないかは、熟考の余地があるだろう。
ともかく、しっかりと考えて行動しなければ―――――。

デジカメを自分のポケットにしまい込んだ古泉は、ある事を見落としていた。
長門有希が何よりもパソコン等の電子機器に対する扱いに長けていた事。
そして、デジカメもまた電子機器類に分類されている事。
つまりは―――長門有希という『主催者』からの、何らかのメッセージがこのSOS団の思い出が詰まったデジカメに入り込んでいるかも知れない事に。

生き残るために何が必要なのか。
それは、涼宮ハルヒという名の神に選ばれた『超能力者』にすらも、はっきりと見る事が出来ない。


【G-7 採掘所/一日目・明け方】




【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】疲労(大)、脇腹・胸部に痛み(肋骨にヒビ?)、精神的疲労(中)
【装備】ロビンマスクの仮面@キン肉マン
【持ち物】ロビンマスクの鎧@キン肉マン、デジカメ@涼宮ハルヒの憂鬱、不明支給品1、デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:ひとまず、体力回復の為に休息。
2:涼宮ハルヒとキョンの保護。
3:SOS団メンバー、キョンの妹と合流。朝倉涼子は警戒。
4:他の参加者は利用。使えないのなら切り捨てる。

【備考】
※ほんの僅かながら、自分の『超能力』が使用できる事に気付きました。
※『超能力』を使用するごとに、精神的に疲労を感じます。

※ロビンマスクの仮面による火炎放射には軽度な精神的な疲労を伴いますが、仮面さえ被れば誰にでも使用できます。



【トトロ@となりのトトロ】
【状態】頭部にでかいタンコブ、左足の付け根に軽い火傷(毛皮が焦げている)、腹部に中ダメージ
【持ち物】デイパック(支給品一式、不明支給品0~2)、古泉の手紙
【思考】
1:誰にも傷ついてほしくない。
2:涼宮ハルヒとキョンの保護。古泉からもらった手紙を渡す
3:???????????????

【備考】
※人間と交流したいようです。
※ネコバスが呼び出せない事に気付きました。


【デジカメ@涼宮ハルヒの憂鬱】

『孤島症候群』にてSOS団が持ち込んだ、何の変哲もないただのデジカメ。
しかし、その中には合宿中の団員の思い出が何枚も写されている。
確認できる人物は『キョン』、『涼宮ハルヒ』、『キョンの妹』、『古泉一樹』、『朝比奈みくる』、『長門有希』の6人。
もしかしたら、長門有希の手によって何らかのメッセージが残されているかも知れない。


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Triple 『C』 ~超人/超能力者/超…生物?~ 古泉一樹 殺戮を大いに行う涼宮ハルヒのための団
トトロ 片道きゃっちぼーる




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