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本の森の中で…/CODE:N  ◆qYuVhwC7l.



殺し合い……俗に『バトルロワイアル』とも呼ばれる、残虐な遊戯の会場となった孤島の北西部。
その場所に存在する、地図上にも記されている施設・図書館の目の前にて、一人の男性が立っている。
鋼の様な肉体を持ち、ブタ鼻にたらこ唇と言ういささか美男子と言うには難のある顔つき、
そして特徴的すぎる額に輝く『肉』の文字を宿しているその青年の名はキン肉スグル、またの名をキン肉マン。
『奇跡の逆転ファイター』と呼ばれ、数々の悪を倒し正義超人たちの中心となって活躍している彼は今、何とも言えぬ表情で地図と目の前の建物を見比べていた。

「ここは……どう見ても図書館じゃのう」

施設の入口のプレートに刻印された『ksk図書館』という文字をマジマジと見つめながら、一つため息をつく。
この会場へと飛ばされ、支給品及び名簿確認、そして今後の行動方針を決定したスグルは、まず北にある都市部へと向かっていた。
理由は簡単、悪魔将軍のような参加者に危害を加えるであろう悪人を退治するにも、自分たち超人とは違い戦う力を持たない一般人を守るにも、
自分の名前を騙る『キン肉万太郎』なる不届き者をとっちめるにも、ともかく誰か他の参加者と合流する必要性があったからだ。
都市部へと向かった理由は単純に『町の中ならば人も集まるだろう』という予測からであり、
そのなかでも全員に配布されているであろう地図に記されている幾つかの施設ならば、そこを拠点とする参加者もいるはずだ、というスグルなりの考えがあっての事だ。
一先ずは自分が最初にこの会場へと移動させられたD-4からすぐ北西のエリアC-03にある施設、中・高等学校へと向かう事にしていたのだが……

「どうやら、少し方角がずれて北北西の進路を取ってしまったようだな……」

どうりで1エリア分にしては歩けども歩けども目的地にたどり着かなかった訳だわい――
やれやれ、と自分のドジっぷりに少し凹んで頭を振りながらも、気を取り直して図書館内部へ侵入しようと足を進める。
どちらにせよ、中・高等学校で人に出会えなければ次は図書館を探索するつもりだったのだ、多少順番が前後した所で構わないだろう。
ガラス戸の入口を押しあけ、無人の貸出カウンターまで歩を進めたスグルは、両手で簡単なメガホンを作り、その場で叫び始める。

「おーーーーーーい!! 誰か、ここにいないかーーーーーーーー!?」

しばらく待ってみるも、帰ってくる声は何も無い。

「私の名はキン肉スグル!! またの名を正義超人キン肉マンだ!! この殺し合いには乗っていない!!」

今度は自分の名前や、敵ではない事をアピールしつつ再度反応を見る。
やはり、声は全く帰ってこない。

「ウォーズマーーーーン!! アシュラマーーーーーン!!! ここにはいないのかーーーーーー!?」

次に呼びかけるのは自分の友であるまっくろくろすけなロボ超人と六本腕の元悪魔超人の名だ。
それでも、帰ってくるのは静寂ばかり。

「そして、キン肉万太郎とやら!! お前には少し話したい事がある!! 隠れてないで出てこんかーーーーーーーい!!」

最後に、正体不明の自分のパチモン超人(超人かどうかすら怪しい部分もあるが)の名前を叫んでみる。
だが、結局はこの場で得られた物は、度が過ぎて逆に耳が痛くなるほどの、物音一つしない静けさだけだった。

「…………ここには、誰もいないのか?」

人の気配すら感じない図書館の中でスグルがポツリと呟く。
もちろん、それに応える音などある筈も無かった。
結局は取り越し苦労だったかのう―――大声を出したという肉体的な疲労と、完全な空振りであった事による精神的な疲労によってやや肩を落としながらも、
何とは無しにカウンターから更に奥へと足を進める。
当たり前のことだが、そこから先の目の前一杯には棚に整然と詰められた様々な本が並んでいる。
「どうにも、こういう堅苦しい雰囲気は苦手だわい……図書館の中では牛丼も食べられんしな」

一度、図書館の中で本を読みながら牛丼を持ちこんで食べようとした時に、相棒のミートにこっぴどく叱られた事を思い出して苦笑しながら棚を見て回っていたスグルだが、
ふと、その中の一角にポツンと置かれた机の上に、奇妙な物体が鎮座しているのを見つける。

「ほー、これは…確かマイコンとか言ったか? 最近の図書館ではこんな物も置いているのか」

机の上のその物体――スグルが過ごしていた1980年代にはマイコンと呼ばれていた『パソコン』をしげしげと見つめる。
詳しい事は知らないが、たしかこの機械は随分と高価な物だったように思う。こんな物を置いているという事は、実はこの島はかなりの都会なのかもしれない。
ミートがいれば操作もできるんだろうが、と呟きながら、目の前に設置されたキーボードを人差し指でポチポチと押して遊んだりもしてみるが、
パソコンの画面には何も映る気配がない。

「やれやれ、何が何だかさっぱりわからんな…こういう頭を使う機械はどうにも苦手じゃわい。そういうのはミートの領分だな」

コンコンと天辺をノックしたりもしてみるが、何の反応も見せない事に落胆したスグルは、やがて興味を無くしてその物体から立ち去った。
マイコンが置いてあったりと、施設は整ったいい図書館ではあるようだが、今現在の状況を考えれば人がいなければ意味がない。
本を読むという事にも特に興味は無いし、そろそろ次の目的地へと進もうかと腕を上げて体を伸ばした所、天井から釣り下がった妙なプレートが目に入った。
画用紙を全体に張った上に、ダンボールの切り抜きで文字を作り縁の部分を綺麗なモールで飾ったそれは、
安っぽくはあったが同時に手作り感を漂わせる、どこか微笑ましい物であった。
何とはなしに、そこに書かれた三行の文字を読み上げてみる。

「何々………『華麗な 書物の 感謝祭』………?」

いまいち意味の通っていない文章に「なんのこっちゃ」と顔をしかめながらも、つつつつっと視線をプレートの真下へと移動させる。
そこには棚が設置されており、十冊の本が上下二段に五冊ずつ表紙が見えるように並べられていた
図書館などで定期的に行われている、オススメ図書コーナーという奴だろうか。

「それにしても随分と妙ちきりんな本がならんでおるが」

パパパッとそれぞれの表紙に目を走らせてみるが、学術書のような堅そうな内容のものから絵本とも漫画とも付かない軽そうな物までてんでバラバラだ。
とりあえず、一冊一冊を個別に見てみる事にする。

まず最初の一冊目の表紙には、緑に青と赤と言う目の痛くなりそうになるエンブレムマーク(ZOZ団?と読めない事も無い)が描かれた皿の上に、
ナイフとフォークが置かれた写真が使われている。タイトルは『有機生命体が普遍的に行う栄養摂取方法に関してのレポート』。
「よく分からんが、色々な食事について描かれているようだな…牛丼特集だったらば10冊ほど買っても良かったのだが」

二冊目の表紙には、まるでウォーズマンの様にまっくろくろすけで、真ん丸に目玉がついたような、どことなく可愛らしい生物のイラストが数点使われている。
タイトルは『貴重無機生命体・通称【ススワタリ】の生態について』。
「これは超人……というよりは怪獣に近いの。なんとなくナチグロンを思い出させるわい」

三冊目の表紙には、二人の人物が左右に並んで写っている。右側に移っているのは、白衣を着た紫色の髪に金色の瞳をした、微妙に危なそうな若い男。
左側に写っているのは、黒い髪に、漆黒に染まった妙に胸元が開いている衣装にマントを羽織った妙齢の女性だ。
タイトルは『プロジェクトF ~挑戦者たち~』。
「……何々……プロジェクト………ふぇいと……グムー、さっぱりわからん…パスじゃ、パス!」

四冊目の表紙では、髭もじゃにゴツゴツの肉体を持ちながらも、妙に華美な鎧で着飾っている40がらみのむさいオッサンが、美しい白馬を駆っている。
タイトルは『たたかえ!! 平和主義者・フィル王子!!』。
「王子ぃ~!? どうみてもオッサンではないか!! やはり王子と言うからには、私の様に美しく華麗な容姿をしていなければな!」

五冊目の表紙は、真黒な下地に、真白な楕円の下部分に口の様な突起が付いて、丸い黒目を持つ可愛いとも言えなくないマスコットの顔イラストが載っている。
タイトルは『リリンの極み ~第拾七使徒が選ぶ美しき旋律たち~』。
「ふむ…色々な歌が紹介されているが……なんだ、私の牛丼音頭は無いのか……」

次に、視線を移動させて、下の段においてある六冊目の本を手に取ってみる。
その表紙は、緑色に輝く美しい宝石の拡大写真が貼り付けられているというシンプルな物であった。
タイトルは『超古代国家・ガイア――残された邪悪なる魂と力を秘めし魔石』。
「ム、ムム……ワルモン……ヒノトリ……ファイナルゲート……ダメだ、これもちっともわからんのぅ…」

七冊目の表紙に描かれているのは、妙にトゥーンチックに描かれた、毛糸の帽子を被って背中に小さな翼を付けた少年のイラストだ。
右下に書かれた『623』という数字はイラストレーターのサインのようなものだろうか?
タイトルは『623の俺詩集 ~好きって事さ♪~…Nエディション』。
「イラスト付きのポエム集という奴か。最近はこういうのが流行っているのか?」

八冊目は、今度はSDキャラにディフォルメされた褐色肌に白髪の中年男性のイラストの表紙だ。
中年男性は何故か肩と胸に鎧があるだけの全身タイツを身に包んで、右側には『おはよう諸君!』と文字の入ったフキダシまで載っている。
タイトルは『がんばれ閣下!! 第一巻 あるかんふぇるをぶっとばせ!の巻』。
「これは…マンガか。なんじゃ、最近の図書館はマンガも置いているのか…しかしこの『閣下』とか言う主人公、妙に抜けておるなぁ」

九冊目には、見ているだけで熱気が漂ってきそうな砂漠とボロボロになったビルのような建物を背景に、
古ぼけて朽ちかけているジャージを羽織った「何か」がこちらを不気味に見つめている写真だ。よくよく見れば、この「何か」はロボットのようだが…?
タイトルは『暗黒時代の遺産/白骨都市に眠るモノ』。
「もうこれは中身を見なくとも私には理解出来ん事がわかるぞ! …しかしこのロボットは一体…ウォーズマンのようなロボ超人でも無さそうだが……」

そして、ついに最後の一冊である十冊目に目を向けた瞬間、スグルの精神は軽く一光年ほど吹き飛んだ。
「な、な、な、な、な………!?」
ワナワナと震える手でその本を手に取る。
表紙に移っている人物は、全身が完全に黒づくめにヘルメットとフルフェイスのマスクを被り、熊のような爪がのびた両手を高く掲げている。
この人物……いや、この超人を見間違える筈もない。まさしくこの男は―――

「ウギャァーッ、ウォーズマーーーーーン!?」

…………まさか、探していた友人の姿をこんな処で見る羽目になるとは。
と言っても、ただ本の表紙の写真をこの目にしただけでは何の意味もなさないのであるが。

「し、しかし…なんだってウォーズマンがこんな本の表紙を飾っておるんじゃ!? いったいこの本は……これはーーっ!?」

本のタイトルを確認しようと、背表紙へと視線を動かしたスグルが再び絶叫を上げる。
そこに描かれていたタイトルは………………『ブタ超人でもわかる!ボイルド・エッグ理論攻略法!!』。

「ブ、ブ、ブ、ブタ超人………まさかそれは、私の事だとでも言うのではないだろうなーっ!?」

今でこそ、超人オリンピックを始めとした数々の大会にて華々しい結果を飾っているスグルではあるが、彼が歩んできた過去は相当悲惨な物だ。
初の超人オリンピック出場以前の、怪獣退治を生業としていた日々の中では、大して戦果をあげる事の出来なかったスグルは町の人々に蔑まれ、虐められていた。
顔を合わせればダメ超人だ、ドジ超人だと罵られ、そんな侮蔑の言葉の中にはこの『ブタ超人』という忌々しい仇名も含められている。

「グ、グムーっ!! どこのどいつだ、こんな物を書いて私を馬鹿にしているのはーっ!!」

怒りに震えながらタイトルの文字を見つめていた目を更に動かして、この本の著者の名を調べようとする。
ほどなく、背表紙に書かれたタイトルのすぐ下に著者名と思われる人物の名を発見する事が出来たが、その名前の奇妙さに思わずスグルは眉根を寄せた。
「『YUKI.N』……? なんじゃ、イニシャルでは無いか! 実名も出さずにこんなに人をバカにするような本を書きおって、全くどうしようも……む?」

ぶつくさとしばらく文句を言っていたスグルだが、やがてある事に気づいて手元の本から視線を外して、棚に並べられた九冊の本を調べる。
まず一冊目。二冊目。三冊目、そして四冊目―――――九冊目まで調べ終わったスグルは、低い声で呻くと顎の下に手を当てた。

「ここに並べられている本は、全てこの『YUKI.N』という人物によって書かれているではないか……?」

まさかと思い、特別に用意されたその棚以外に通常通りに収められていた本も幾つか確認してみるが、それらの著者はすべて違う人物であった。
つまりは、この『華麗な 書物の 感謝祭』なるコーナーには、『YUKI.N』という人物が記した図書だけが並べられているという事か…………?

「………………ええい、そんな事はどうでもいいわい!! それよりも今はこの本だ!!」

しばらくは難しい表情でこの事実に隠されている何かを探そうとしていたスグルだったが、早々に匙を投げ捨ててドッカとその場に腰を下ろした。
そして、自分の手の中にある『ブタ超人でもわかる!ボイルド・エッグ理論攻略法!!』を怒りを込めて睨みつける。

「ユキだか何だかは知らないが、ともかくこれだけの口を叩いているからには、私にも完全に理解できるだけの内容が書かれているのだろうな!?
 もしも分からない箇所が一つでもあったらば、タイトルに偽りありとして大々的に抗議してくれるわーっ!」

忌々しげに吐き捨てると、スグルはその本を開いて中の文章を眼で追い始めた。
段々と微妙に怒りのベクトルがズレて来ているのだが、残念ながら今この場にその事を突っ込んでやれる第三者は存在していない。

「何々………100万パワーのウォーズマンが、両手にベアークローをはめる事で2倍の200万パワーとなり、そこに2倍のジャンプを加えて400万パワー、
 さらにそこでいつもの三倍の回転を掛ける事によって1200万パワーを得る……なんだ、何一つおかしい所がないぞ?
 100×2、、200×2、400×3、それぐらいの計算は私にだって簡単に解く事が出来るぞーっ!!」

………既にこの時点でスグルは内容を理解できていない事が明らかでも、残念ながら今この場にその事を突っ込んでやれる第三者は存在していないのだ。




十数分、経過。
「ふむふむ……重い物の方が早く落ちる……いや、それも間違ってはいないのではないか?」


さらに十数分、経過。
「…………8の字になる阿修羅バスターを……横にしてやれば∞(ムゲンダイ)……うむ、正しいな……ふわぁ~…」


さらにさらに十数分、経過。
「………………………これをこうして………こうすれば………物理法則も………むぅ………」


さらにさらにさらに、十数分、経過。
「………………………………………ZZZ………ZZZZZ………」




プワァー……プワァー……プワァー………

出来損ないのラッパを吹いているような、間の抜けた音だけが静かな図書館の中に響く。
その音の発生源は、カウンターにもたれかかるように座りながら僅かな動きしか見せないキン肉スグル――――の、鼻の穴である。
ブタ超人なる不名誉なあだ名を生み出すきっかけとなった、無駄にでかい鼻の穴からは定期的に鼻ちょうちんが膨張・収縮を繰り返していた。
間抜けな音は、そのまま延々と等間隔で奏でられ続けるかとも思われたが、やがて『パァン!』という派手な音をしたのを最後に鳴り止んだ。
やがて、ようやく眠りから目覚めたスグルがゆっくりとその目を開き始める。

「………む……むぅ……いかん、本が退屈すぎてつい居眠りを………ハッ!?」

起き抜けの寝ぼけた頭でぼんやりと呟いていたスグルだったが、やがてある事に気づいて一気にその脳が覚醒する。

「外が明るい……!? マズい、幾らなんでも寝過ごしすぎたーーーっ!!」

スグルがこの図書館に到着した時に外を覆っていた暗闇はすでにほとんど消え去り、窓からぼんやりと差し込む光が図書館を照らしている。
慌てて壁にかかっていた時計を見れば、時刻はすでに五時すぎ。
自分がここに到着した正確な時間は覚えていないが、軽く数時間は眠っていた事は確かだろう。

「ええい、こうしちゃおれん! さっさと次の目的地へ向かい、他の参加者を探さなくてはーっ!」

眠気を完全に取り去る為にも、自分で自分の両頬を思い切りひっぱたいた後に、ふと自分の足もとに落ちている一冊の本に気づく。
もちろんそれは、表紙にウォーズマンの写った『ブタ超人でもわかる!ボイルド・エッグ理論攻略法!!』である。

「色々と言いたい事はあるが、今は時間が無い……とりあえず先を急ぐぞ!」

それを持ち上げて『華麗な 書物の 感謝祭』の棚へと乱暴に戻すと、スグルはディパックを引っ掴んで図書館から脱出するべく駆け出した。

「うおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!」

気合いを入れ直す為にも、獣のような雄たけびを上げながらスグルは弾丸のように玄関口から飛び出す。



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キン肉マン、大地に立つ キン肉スグル 心に愛が無ければ、スーパーヒーローじゃないのさ







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