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白く還りし刻 ◆S828SR0enc



「―――治癒(リカバリィ)!」

 朝もや立ち込める森の静寂を乱すように、息を切らした男の声が響く。
 どこからか吹いてきた風が木々を揺らし空気をかき乱せば、そこにはゼルガディスの姿が明らかになった。
 どっしりとした幹を構える木を背にし、力なく座り込んでいる。

「……よし、少しはマシになったか……」

 ふぅ、と力なく息が漏れる。
 全身に及ぶ、常人ならば死んでいたであろう大火傷。
 攻撃を受けた時に纏っていた白のローブはほとんどが黒く焼け焦げてしまった。
 そこから露出する肌も、元の岩石じみた薄灰色のところどころが黒ずんでいる。
 針金に変化した髪のあちこちがあまりの高熱に溶けちぎれた様が、男が受けた攻撃の凄まじさを物語っていた。

 男を焼き焦がした攻撃者――謎の桃色のモンスターの姿はない。
 逃げのびたのか、それともここから離れたところで力尽きているのか。
 最大出力の攻撃を受けて一瞬意識が飛んだとはいえ、ゼルガディスは確かに自分の攻撃が相手に命中したことを感じている。
 いずれにせよ、奴はしばらくはまともに動けないだろうと思えた。

「しかし、まったく……」

 だらりと手を膝からたらし、ゼルガディスは嘆息する。
 実際に使ってみて気がついたのだが、普段よりも魔法の威力が低く、術後の疲労も倍化している。
 おかげで先ほどの戦闘と今の数回の治癒のために、魔力が底を尽きかけていた。
 その上、治癒したとはいってもせいぜい重傷から命に関わらない程度に回復しただけで、全快の状態には程遠い。
 無理に動けばろくでもないことになるであろうことは、男自身が一番よくわかっていた。

(しばらく休むしかないか……)

 太い幹に背を預けたまま、ゼルガディスはゆるりと顔を空に向けた。
 濃紺の夜空は薄青い昼の空へと姿を変え、薄い雲がひらひらとなびいている。 
 そこだけが場違いなくらいに平和だった。

 別に、人を傷つけるはこれが初めてではない。
 元の体に戻るために、「残酷な魔剣士」だのなんだのと人の口にのぼるような悪事も色々とやってきた。
 だから先ほどあの少女たちを襲ったことを後悔してなどいない。
 元の体に戻るためだ。それ以上の優先事項はない。
 だというのに――――

(――くそっ、俺も思ったより甘くなったものだな)

 今のゼルガディスの脳裏によぎるのは、明るすぎる巫女姫や能天気な剣士、あるいはこの地のどこかにいるはずの少女。
 奴らと一緒にいると、いつもペースを崩された。
 よく笑い、よく泣き、よく騒ぎ、どこに行っても厄介事を引き起こす連中だった。

 無駄に乱暴でがめつく、そのくせ肝心なところで非情になりきれない、不思議な魅力を持つリナ。
 脳みそが筋肉とはよく言ったものといった風に呑気で阿呆で、それでいて心優しかったガウリィ。
 正義だ愛だと喚き散らしては高いところに登るお転婆娘だが、その心はどこまでも温かったアメリア。

 何ということもない日々が、こんな状況だからか、不思議に懐かしくてたまらない。
 些細なことで言い争い、仲直りし、周りを騒動に巻き込んで、時折洒落にならない事態に追い込まれた。
 あちこちで敵に出会い、人に出会い、ときに世界を救った。
 一日一日を、共に旅していた。

 無差別に女子供を殺そうとする自分が、その日々からずいぶんと遠い所に来てしまったように感じられた。
 心の中にあった温かなものを自ら崩していく感覚に、ふと指先が震える。

(―――だが!)

 ゼルガディスは何かを断ち切るように手を振り払った。
 思い出も、優しさも今は必要ない。
 必要なのは願いを叶える方法、そのために情を捨てる覚悟だ。

(情を捨てきれず、先ほどの戦いで俺は何度ためらった?何度攻撃を躊躇した?
 ……その結果がこのザマだ!)

 もっと非情に徹することが出来れば、いくらでも確実に仕留めるチャンスはあったはずだ。
 それを逃したのは、自分の甘さに他ならない。

(捨てる……俺が持っていたもの全てを捨ててでも、俺は)

 望みをかなえるために積み重ねてきた日々の果てに、この機会が用意されていたのだ。
 一パーセントでもいい、そこに可能性が残されているのならば。
 願いをかなえることが、出来るというならば。

「…………」

 かすかに木の葉を鳴らして吹く風は、ゼルガディスの硬い髪を揺らしはしない。
 自ら動かなければ、何も世界は変わらない。
 ならば、今までの自分は捨てよう。捨てて、ただ血と殺戮に染まった「化け物」になろう。
 全てはいつの日か、「ヒト」に戻るそのために。

「……さよならだ」

 誰に言ったともわからない呟きが、蒼い空に溶けて消える。
 その跡を追うように、ゼルガディスはゆるりと立ち上がり、

「――――っ!?」

 ザン、という音とともに木を貫いた刃の先が、彼の髪先を斬り落とした。


 ◆ ◆ ◆


 (迂闊だった……!)

 生い茂る草木をかき分けるように走りながら、ゼルガディスは苦々しく毒づいた。
 先ほどの桃色のモンスターとの戦闘、そしてそれ以前にあの女子供もろともを襲ったとき。
 その両方の戦いで銃や魔法を連発し、向こうも惜しげもなく使ったために相当の戦闘音がしていたのは間違いない。
 感傷に浸りそのことを失念していたために、すぐ傍に襲撃者が潜んでいる可能性に気付けなかったのは明らかなミスだった。

 木が、草が、岩が、ゼルガディスの行く手を阻む。
 最初の一撃をかわすことが出来たのは、本当に純粋な幸運に過ぎない。
 気配もなく、音もなく立ち回り、機械のごとくどこまでもどこまでも対象を追って刃を振り上げる黒い影。

「ズーマっ……!」

 このような状況で、その男に会ってしまったのは最悪としか言いようがなかった。

(マズい、マズすぎる――!)

 木に刃が刺さった次の瞬間、襲撃者の顔も見ずにゼルガディスは反転、身一つで森の中へと走り出した。
 否、見る必要などなかった。
 全身を覆う黒い布、その手甲と一体化した刃。
 そして真実影の如くに希薄な存在感でありながら、確かに自分を追いかけてくる殺意。
 その男は豪華客船の船上でリナを襲った、あの暗殺者に違いなかったのだから。

 ザザザザ、と葉をかき分ける音がする。
 ズーマ自身の足音はなく、一瞬遅れて彼にはじかれた障害物たちの出す音だけが頼りだ。
 視界の悪い森の中、影は何一つ違うことなくゼルガディスを正確に追ってきている。

(――くそっ!)

 底を尽きかけの魔力に、激しく動くと激痛の走る体。
 加えて、「治癒」の術のためにその傷の回復と引き換えに奪われた残り少ない体力。
 これならば魔族さえ相手取れると思えた魔法槍は先ほどの戦闘で壊れてしまった。

 最悪という言葉にこれ以上当てはまる状況があるというなら、教えてほしいくらいだった。

「―――――」
「っくぅ!」

 膨れ上がった殺気にとっさに体をひねれば、開いた空間に黒い体躯が飛び込んでくる。
 目と鼻の先に降り立った影の瞳には、ただ殺意とその対象であるゼルガディスが映るのみ。
 一切の躊躇いも感情も浮かべない瞳に、背筋を悪寒が走った。

「火炎(ファイア)――」
「遅い」

 呪文を唱えようとした喉に拳が入り、疲労と相まって声が途絶える。
 その瞬間、影の右腕がゼルガディスを襲った。

「――ぐっ」

 右肩に、左腕に、鋭い一撃が食い込む。
 走り続ける足に、何度も蹴りが、刃が、手刀が撃ち込まれ、走行を妨害する。
 喉元に、胸に、腹に、太ももに、何度も何度もきらめく凶器の刃が襲いかかり、突き刺さろうとする。
 全身の急所を隙あらば打ちすえられ、ゼルガディスの体は悲鳴を上げた。

「く、炎の矢(フレア・アロー)!」

 今何の武器も手にしていないゼルガディスに出来るのは、残りの魔力を振り絞り魔法を放つことのみ。
 何か剣でもあれば――それこそ先ほどの槍があれば、多少斬り合うことはできたかもしれない。
 だがそれが不可能な以上、ゼルガディスは魔法に頼るしかない。
 そしてそれは、相手の詠唱を許さぬ速度でもって攻撃を仕掛けてくるズーマ相手には、二手も三手も遅れを取るやり方でしかなかった。

 隙を見て必死に詠唱し火矢を放つが、全てをあっさりとかわされてしまう。
 時折影の動きが鈍ったようになり、その時はこちらの攻撃が体をかすめたりもするのだが、一発としてまともに入らない。

「っく、が、ぐふっ……」
「……ちっ……」

 相手に何らダメージを与えられないまま、ゼルガディスのみが削られていく。
 それでも未だ彼が生きているのは、またしてもその合成獣の体のおかげだった。
 至近距離で受けた砲弾にさえ傷一つ負わないその硬い岩の肌は、べアークローの鋭い刃を易々とは通さなかった。
 並みの刃物ならまったく通さなかったかもしれないというほどに、ゼルガディスの肌は強固だった。

 そのことにズーマ自身も苛立っているのか、執拗に同じ個所に刃を打ち込んでくる。
 肌のひときわ硬い箇所に触れたのか、べアークローの四つの刃のうちのひとつが欠けた。

「…………」
「!?」

 ふと一瞬、ズーマの気配が遠のいた。
 思わず顔や急所をガードしていた手をどける。
 その瞬間、立ち止まり、木の幹にその両足を押しつけたズーマが、ばねのように飛びかかって来るのが見えた。

「――――っ!!」

 凄まじい激痛を放つ足を無理矢理動かし、体をひねる。
 ゼルガディスの頬をかすめて飛んだ刃は、その先にあった大木の幹をごっそりと抉り取った。
 ズーマの瞳が笑みに歪むのが見えた気がした。

(まずい、あれを食らったら――)

 さしものゼルガディスの硬い肌も、間違いなく貫かれてしまう。急所に食らえば一巻の終わりだ。
 とっさに身をひるがえし、より草木の生い茂る方へと逃げる。
 少しばかり距離が開いたが、ズーマは大して速度を落とさずに追ってくる。
 次の一撃で仕留めようというのだろう、すでにその刃はドリルの如くに構えられていた。

(だが――)

 ふ、と殺気が遠のく。
 視界の端で、ズーマが木に両足をついて今まさに飛びかからんとするのが見えた。

(それがお前の命取りだ!)

 勢いを殺さないために、ズーマはゼルガディスに対し一直線に飛びかかってくるしかない。
 つまり、こちらが何らかのアクションを起こしたとしても、そこを突っ切るしかない。
 一瞬あいた距離と、コースのわかっている軌道。
 逆に言えば、これほど魔法を撃つに適した瞬間もなかった。

「火炎球(ファイア・ボール)!!」

 ズーマが飛び込んでこようとしたまさにその時、発動した火炎を纏う球が一直線にズーマに向かって飛び、


 一瞬の躊躇もなく、自ら勢いを殺してズーマはそれをよけ、ゼルガディスに肉薄した。

「な……!?」

 予想と違う相手の行動に、一瞬脳が動きを止める。
 影のごとき暗殺者にとっては、その一瞬で十分すぎた。

 影の右腕より生えた刃は、魔術を撃とうと手を振り上げたためにがら空きになった顔面にまっすぐにのび、
 青みを帯びたゼルガディスの瞳に突き刺さり、
 角膜を、水晶体を、硝子体を、網膜を斬り裂き、
 視神経を巻き込みながら頭蓋をのぼり、視床下部から中脳を駆け上がり、その脳に深々と突き立てられた。

 ぐるり、と影が腕をひねる。
 合成獣と化した体の中で、ヒトの柔らかさを保っていた眼球と脳髄とが、ぐちゃりと鳴った。



 ◆ ◆ ◆


 朝もやは晴れ、木々の間からは朝日が差し込みつつある。
 そのさわやかな空気に似合わぬ死臭を撒き散らす死体を前に、ズーマはあちこちに飛び散った血を拭っていた。

 森の苔むした地面に似合わない、真っ赤な水たまり。
 その中に浮かぶ蒼い岩肌に焼け焦げたローブをまとった死体は、いまや顎より上がなくなっていた。
 代わりに、針金の髪の混じった奇妙な様相をなす脳髄と肉の混合物とでも言うべきものがそこに残されている。
 眼球も耳も鼻も肉塊となった顔の下、上顎から上を粉砕されたために残された下あごに綺麗に並んだ歯が滑稽だった。

「…………」

 死体に興味を失ったように、ズーマはくるりと踵をかえす。実際、彼は死者に興味はない。
少し歩くと、おそらくは先ほど殺した男と、それと争った誰かのものであろうデイパックが少し離れたところで見つかった。
 ちらりと中をのぞき見て、二つのデイパックを背負いあげる。
 近くに落ちていた壊れた槍には目もくれず、用途不明の円盤状の物体を少し迷った末にそのままにし、影は早々にその場を後にした。


 ズーマに獲物をいたぶる趣味はない。
 ましてや、死体をなぶりたいと思うはずもない。
 だが、あの男は明らかにただの人間ではない、合成獣だった。人にはない再生力を持っている可能性もある。
 暗殺者として仕事を確実に成し遂げるために。
 そのために、ズーマは死体の頭部を完膚なきまでに破壊したのだ。


 森の木々をかき分け、ズーマは走る。
 走りながらも、その思考はそれだけに囚われない。

(やはり、何らかの術がかけられた可能性があるな……)

 自らの身体能力、魔法。あらかじめ自分の身に何らかの枷が付けられていることはわかっていた。
 だが、どうやらそれは自分だけではないらしい。
 先ほど戦ったリナ=インバースの仲間の男、彼の魔法も以前に比べ格段に威力が落ちていた。
 身体の消耗具合を差し引いても、その差は明らか。
 この場にいる異能者のほとんどが何らかの制限を受けている可能性があるという結論に、ズーマは次第に達しつつあった。

「…………」

 ざ、と足を止め、周りに人の気配がないことを探る。
 しばしの静寂ののち、ズーマは背負った三つのデイパックのひとつから、おもむろに銃を取り出した。
 彼の知らぬ鉄の塊。
 砂漠の便利屋・小砂の愛用するMINI UZI。
 それのあちこちを探り、指をひっかけて動かすと思わしき場所を見つけると、彼は慎重な手つきでそれ――引き金を軽く引いた。

―――ばららっ

 軽い音とともに、数発の弾丸が飛び出す。
 銃口の向けられた先にあった木の幹に、見えない矢に貫かれたような穴がばらばらとあいた。

「……なるほど」

 ひとり呟き、それを再びデイパックにしまう。
 そして銃声を聞いた誰かがやってくる前にと、ズーマは再び北に向かって走り出した。


 ◆ ◆ ◆


 しばらく走り、予定通りに森を抜ける。
 そこはズーマにとっては見覚えのない形状の建造物が並ぶ市街地であった。
 とはいえ立ち並ぶ似たような形の建物は、どことなく彼の世界の「家」に似ている。おそらく同じものだろう。
 そのうちの適当な一つにあたりをつけ、影はするりと鍵のかかっていない入口から中へと侵入した。

 長く延びた廊下を歩き、意図のわからないもの――電化製品の置かれた部屋を通り過ぎる。
 人の気配がないことを慎重に確かめながらひとつ、ひとつ扉を開け、中を窺う。
 途中で洗面所に辿り着いたズーマは、彼にとっては未知の文明に多少戸惑いつつも水道を使うことが出来た。
 その水でべアークローを染め上げる鮮血を流し、ついでに近くにあったタオルで顔を拭う。
 そうして民家をめぐっていた彼が最後にたどり着いたのは、紺色のベッドが置かれた寝室だった。

「ここでいいか……」

 部屋に陣取り、三つのバッグを床に並べる。
 ひとつは自分のもの、もうふたつは拾ったもの。
 その中身を慎重に取り出して並べ、バッグ内の説明書を読みながら、彼はしばらくの間消耗した体を休めた。

(食糧、水も……せいぜい三日分、か?)

 自分に支給されたパンを口にし、水でのどを潤しながら考える。
 毒が入っているか否かの警戒は必要ない。わざわざ殺しを依頼した自分に毒を含ませてもどうしようもないからだ。
 とはいえ、念には念を入れて慎重にパンを咀嚼しながら、他のバッグの中身を見やる。
 自分をはじめ参加者たちに支給された食糧は、皆一日か二日程度の分量であり、水もさほどの量はないようだ。

(必要以上に持っていく必要はない)

 暗殺者であるがゆえに、彼自身は数日間まったく飲まず食わずで動くことが出来る。
 自分のものと、そして念のためにもう一日分の水と食料を他のバッグから取り、自分のデイパックにしまった。
 地図や名簿も、自分のものと比較し違いがないことがわかれば元のバックに戻す。
 そうすると床に残ったのは、支給品と思わしきどんぐりと銃が二丁だけになった。

(これは必要ないな……)

 どんぐりをのけ、「地球動物兵士化銃」という名の銃を取り上げる。
 照射された動物を人間化する銃だと説明書にはあったが、自分が使うこともないだろう。
 必要以上のものを持つのは暗殺者にとって愚策である。
 ズーマは躊躇なくそれを他のバッグに戻した。
 そして最後に残ったMINI UZIを自分のバッグにしまい、他の二つのバッグを箪笥の中に隠す。
 身支度を終えて立ち上がれば、窓から差し込んだ朝日が彼の足もとを照らしていた。

 先ほど使用した銃について、「外」の知識のない彼はよくわかっていない。
 だが、それが何かを射出して対象を破壊する、貫通力の高い凶器だということは理解していた。
 問題があるとすれば、反動が強いために正確に銃を使いたいなら両腕がふさがることになりそうだ、ということくらい。
 彼自身はあくまで速度を武器にした接近戦を好むが、身体能力が制限されている状態で贅沢は言っていられない。
 銃の構造がわからないために射出物の残量がわからないのが欠点だったが、彼はあまり気にしなかった。

(陽動程度には使えそうだ……使えなくなったらその場で破棄してしまえばいい)

 そう考え、確かめるようにバッグに触れ、そして手甲を見る。
 先ほどの戦いによる「汚れ」は洗い流したが、刃の一本の先が欠けたのをはじめとして万全の状態とは言えない。
 さきほどキッチンと思わしき部屋からとってきたナイフなどで、適度に補助してやらねばならないだろう。

 ぐ、と背筋を伸ばし、わずかに固まった体をほぐす。
 疲労も大体は回復した。
 これよりは闇に紛れ込むことのできない太陽の時間である以上、迅速かつ慎重に動かなくてはならない。

「さて、行くか……」

 ズーマは寝室を後にし、外に出る。
 地図を広げてみれば、名前のつけられた施設のいくつかはここからさほど遠くないようだった。

(『公民館』、『デパート』、『ホテル』……まずはどちらから行くべきか……)

 施設の配置を頭に入れながら、ズーマは考える。
 先ほどの移動中に幾度か南の方で起こった轟音。
 あれを聞いた弱者は間違いなくそちらに近づこうとはせず、隠れられる施設のあるこちらに向かうだろう。
 だが、強者はどうだろうか?

(探索が終わり次第、南に向かうことも考えておかなくてはな)

 殺せるものを、ただ殺す。殺せなくとも必ず殺す。
 殺意の塊、殺すために殺す影。
 それがアサシン・ズーマだ。それが俺だ。

 ズーマの右手にはめられたべアークローは、次の犠牲者を待ちわびたようにぎらぎらと輝いている。
 建物の蔭から蔭へと縫うように走りだしながら、まだ見ぬ殺戮の予感にズーマは静かに目を細めた。


【B-6 市街地/一日目・明け方】

【ラドック=ランザード(ズーマ)@スレイヤーズREVOLUTION】
【持ち物】ベアークロー(右)(刃先がひとつ欠けている)@キン肉マンシリーズ、金貨1万枚@スレイヤーズREVOLUTION、
      MINI UZI(8/20)@砂ぼうず、ナイフ×10、包丁×3、デイパック、基本セット(食糧と水が一日分増加)
【状態】疲労(小)
【思考】
0.参加者を全て殺す
1.市街地の名前のある施設をめぐり、参加者を探して殺す。一通りめぐり終わったら南へ向かうか検討する
2.リナ=インバースを必ず殺す
3.ゲームの関係者を全て殺す
※魔法や身体能力の制限に気づきました。自分だけでなく異能者全員にかかっているのではと思っています

※【B-6】の民家の寝室の箪笥の中に、以下のものが破棄されています
 デイパック×2、基本セット×2(一部食糧不足)、地球動物兵士化銃@ケロロ軍曹、どんぐり五個@となりのトトロ


 ◆ ◆ ◆




 血だまりに風が吹く。
 顔を失くした青年の体は木々の下で、ただ黙って風に吹かれている。
 最後の瞬間にその脳裏に浮かべた景色を、彼がその口で語ることは決してない。

 ただ、その胸に願いと思い出とを抱いて、ゼルガディスは白い朝日の中で眠っている。


【ゼルガディス・グレイワーズ@スレイヤーズREVOLUTION 死亡】


※【C-6】の森、ゼルガディスの死体から少し離れた所に、以下のものが落ちています
 砕けたストラーダ、モッチーの円盤石、モッチーの首輪



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闇の中の暗殺者 ラドック=ランザード(ズーマ) 師匠と、弟子
風がそよぐ場所に僕らは生まれて ゼルガディス・グレイワーズ GAME OVER




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