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灼熱のファイヤーデスマッチ!の巻 ◆hjKFqNAi/U



――スバル・ナカジマは、走っていた。
朝日が差し始めた森の中、ただひたすらに走っていた。

「待て、スバル二等陸士! 急ぐのはいいが、もっと慎重に……」
「待ちません!」

目の端から零れる涙を拭いもせず、そして背後からの静止の声も聞かず、スバルは駆ける。ただ駆ける。
邪魔になる装備は既にデイパックに仕舞いこみ、バリアジャケットのみの身軽な姿で、駆け続ける。
彼女の涙の理由、そして彼女が急ぐ理由は……先の放送。その中に含まれていた、1つの名。
フェイト・T・ハラオウン。

(フェイトさんが、殉職っ……! くっ……!)

スバルは溢れそうになる涙を、唇を噛んで堪える。
フェイトはなのはとはまた違う意味で、尊敬できる上司だった。憧れてもいた。
彼女がそう易々と誰かの手にかかるなど信じられなかったが、しかし、自分の開始時の状況を鑑みれば。
フェイトの手元にデバイスが無かった可能性はとても高く……そして、その程度で生き方を変える人ではない。

危険人物に出会ってしまったのか、誰かを庇おうとしたのかは分からない。けれども、きっと。
デバイスもなく、実力の半分も出せない状況下で、それでもきっと、フェイトは自らの生き方を貫いたのだ。
きっと、殉職、と呼ぶに相応しい最期を遂げたのだ。そう分かってしまう。

で、あれば、尚更のこと――スバルは、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
本当は泣き出したい。彼女の死を悼みたい。放送の真偽を疑って駄々を捏ねていたい。
けれども……今、スバルの手元には、『力』があるから。
自分には過ぎた程の『力』。なのはのデバイス、『レイジングハート・エクセリオン』があるから。

(フェイトさんの、分まで、私がっ……!)

目指すは、東の火災現場。
スバル自身のトラウマと思い出に重なる状況設定。危険人物や助けを求める人物が居ると思われる場所。
同行者が『敵性宇宙人』と呼んだ、翼の生えた人影が飛んでいった方向。
北西の方から聞こえた悲鳴も気にはなったが、しかしその方角も距離も曖昧で。
もしももう少し情報があれば、そちらに向かって駆け出していたのかもしれないが……

(あっちは、セインたちが行ってるはずっ!
 あいつらがちゃんと動くかどうか、不安だけど……逆に言えば、「こっちの方」は私たちが行かなきゃ!)

喫茶店で出会った、セインと灌太。
セインに対しては未だ完全には心を許していないものの、それでも彼らとは1つの約束をしている。
それは、2手に分かれて島を回ろう、という約束。そして、スバルたちのチームの担当は東回り。
ゆえにスバルは東に向かう――スバルは妙なところで律儀な性格でもあるのだった。

そうして、スバルは駆けて、駆けて、駆け通して――
ついでに、同行する小さな影も、彼女に文句をいいつつ遅れることなく駆け通して――
彼女たちは、その火災現場……博物館前に、到着した。


    ☆   ☆   ☆


「……って、あれ? なに、これ……」
「……だから言ったのだ、スバル二等陸士。状況を良く見ろ、と」

博物館前。
『無人の』草原が延々と燃えている光景を目の前に、スバルは呆然とし、そして同行者は呆れた声を出す。
辺りを見渡した限りでは、助けを求める負傷者も、待ち構えている人物もいない。
火災が広がっている様子もない。博物館に燃え移っているようなこともない。
ただ、『地面が燃え続けている』。
無秩序に燃え広がることもなく、生えていた草があらかた燃え尽きても、なお、炎が消えずに残っている――
不可解な『火災』を目の前に、ケロン軍所属A級侵略部隊隊長、ガルル中尉は冷静に状況を把握する。

「そもそもスバル二等陸士、おかしいとは思わなかったのか?」
「え、えーっと、何がですか?」
「我々が最初に立ち上る煙を見つけてからここに到達するまで、数十分ほども経過してしまっている。
 日の出までは強行軍とはいえ歩きであったし、放送の記録のために休息も取ったしな。
 が……そもそも、『これだけの時間、自然な火災が続いていたのなら』、あの煙の立ち方はおかしいのだ」

いかつい顔立ちはしているが、ガルルは智将と言ってもいい冷徹な観察眼の持ち主である。
物分りの生徒に講義するような口調で、スバルに理を説く。

「条件が揃えば、自然の山火事も燃え続けることもあるだろう。
 だが、燃えるモノが無くなれば、その場所の炎は消える。燃え広がれば、煙の位置も移動する。
 建物に火災が起きれば煙の移動は無いが、刻一刻と煙の勢いや色が変化する」
「……えーっと、つまりあの、どういうことですか?」
「つまりは、『同じ場所から同じ調子で煙が上がり続ける』という時点で、人工的な要素の介在を疑うべきだ」

ガルルはそう言い切ると、その小柄な身体をさらに屈めて、『燃え続ける地面』を凝視する。
長く続いた炎は地面に生えていた草を全て焼き尽くし、そして、『草の陰に隠れていたモノ』を露出させていた。
つまり……地面から等間隔に顔を出して並ぶ、短い管状の物体。
シュー、シュー、と断続的に上がる噴出音。近づいてやっと分かる独特の匂い。

「……地中に、可燃性のガスが噴き出す仕掛けが仕組まれているようだな。
 これだけの仕掛けだ。参加者が始まってから仕掛けたには、やや大規模過ぎる」
「参加者じゃない、って……」
「大方、主催者側が仕掛けたギミックだろう。その意図はまだ読めんが……」

ずんっ。
言葉の途中で唐突に走った、大地の揺れ。
身を起こしかけていたガルルも、首を傾げていたスバルもそろって身を強張らせる。
小さな振動はやがて大きな地響きとなり、断続的な衝撃となって彼らを襲う。

「じ、地震っ!?」
「いや、違う! あれは……!」

慌てて周囲を見回すスバルに、ガルルは炎の中の一点を指差す。
土煙と共に、炎の中心の大地が割れて『何か』がせり上がってくる。
四角くそこだけ炎が消え失せて、『何か』が姿を現す。この局地的な地震は、その余波に過ぎないのだろう。
やがて、一際大きな金属音と共に『それ』は動きを止める。
土煙の晴れた向こうに、見えたその姿は……。


「えーっと……何ですか、あれ?
 火に囲まれた中に……ボクシングか何かの、『リング』……?」
「……そのようだな……」

そう――大地を割って姿を現したそれは、格闘技などの試合で使われる『リング』、と呼ぶしかない代物。
ちょうど、一面の炎の海の中、3本ロープのリングのキャンバスから上だけが浮かんでいるような格好だ。
どういう素材なのか、あるいはどういう仕掛けなのか、周囲の炎がリングに燃え移る様子もない。
あまりに場違いな、想像もしていなかった光景に、2人は唖然となってしまって――

だから、僅かに反応が遅れた。

「――竜巻地獄っ! カーッカッカッカ!」
「いかんスバル二士、避けろっ!」
「……え?!」

聞き覚えの無い声が背後で技の名を叫ぶのと、ガルルの警告の叫びがほぼ同時。
振り返ったスバルの目に、恐ろしい勢いで迫る1本の竜巻が、急速に迫って……
耳障りな笑い声が響き渡る中、衝撃と共に、彼女の身体は弾き飛ばされた。


    ☆   ☆   ☆


――アシュラマンは、その特異な外見からは一見そうは思えないが、超人の中でもかなりの頭脳派である。
パッと見に目立つのは、筋骨隆々たる6本腕。その迫力から、誰もがパワーファイターをイメージする。
しかし、それは彼の頭についた3つの顔同様、彼の一側面に過ぎない。

ウェザーデスマッチを得意とする彼は、地形の利用という面において他の超人から抜きん出た才能を持つ。
特殊な悪魔の道具を使いこなす才もある。策略や作戦立案の才もある。
だからそんな彼が、この「博物館前に用意されていた仕掛け」の存在に気付いたのも、必然だった。

他の参加者が誘き寄せられるのを待っていた彼は、すぐに目の前の火災の異常性に気が付いた。
ガルルが発見したガス管を見つけ、それが主催者側の仕込みであることを素早く見抜き。
そしてすぐに、ガルルが思いつきもしなかった「事の真相」に思い至った。

(『ファイヤーデスマッチ用の特設リング』……カカカッ、あの完璧超人どもも、粋な計らいをしてくれる。
 どうやら、あの自称『超能力者』の小僧の最後の攻撃で、地中の仕掛けの一部が誤作動したようだが……
 それでもこうしてリングさえ出現すれば、こっちのものだ! カーッカッカ!)

博物館のすぐ近く、というこの立地条件下に、こんな仕掛けがあるのは偶然とは思えなかった。
おそらくここだけでなく、地図に載っているいくつかの施設には似たような仕掛けがあるのだろう。
改めて博物館の中を探索したアシュラマンは、警備員の詰め所の中に特設リングの起動スイッチを発見。
それをONにしたところ、こうしてリングが出現したというわけだ――
スイッチを押す前、博物館の館内で少し休憩を取っている間に『獲物』が来ていたのは、予想外であったが。

「しかしこうしてデスマッチの条件を整えれば、今度は逃げられることもあるまい!
 1人ずつ、順番に始末してくれる! ――竜巻地獄ッ!」

不意打ちで放った竜巻地獄は、『獲物の1人』を見事に捕らえ、リングの中に放り込むことに成功していた。
さらに重ねてもう1本の竜巻を発生させると、アシュラマンはなんと、自らその中に飛び込んだ。
回転する空気が彼の身体を弾き飛ばし、燃え盛る炎を飛び越えさせる。リングの中央に綺麗に着地する。
身構える敵、炎の外側で息を飲んで見守る敵の仲間。
双方を睥睨しつつ、アシュラマンは高らかに笑う。

「カーカッカ! 予め言っておくが、このアシュラマンが油断するとは思わないことだ!
 似たような体格ながら、その頭脳で我らを散々苦しめたアレクサンドリア・ミートの例もある。
 そしてカエルの超人よ、貴様が先ほど見せた身のこなしは、それだけで警戒に値する!
 超人レスラーのプライドに賭けて、まさしくカエルのように叩き殺してくれるわ~~っ!!」

そう。
リングの中、アシュラマンの巨躯を鋭い眼で見上げているのは、スバル・ナカジマではなく、ガルル中尉。
当初アシュラマンは、比較的体格のマシなスバルを『最初の対戦相手』と考え、竜巻地獄を放ったのだが……
竜巻が彼女の身体を舞い上げる直前、ガルルが割って入ったのだ。
結果、彼に突き飛ばされたスバルは今も呆然とリングの外で呆けた表情を浮かべたまま。
こうして、ガルルの方が見事にリングインしてしまった、というわけだ。

期せずして『敵の得意とする戦場』に放り込まれてしまったガルルは、しかし動じない。揺るがない。
ガルルの力を認めつつ、なお余裕と自信を崩さぬアシュラマンを、不敵な笑みで睨みつける。

「ほう――なかなかどうして、見る目のある敵性宇宙人のようだな、アシュラマンとやら。
 確かに我らケロン人は、体格という点ではペコポン人などに大きく劣る。それで油断する敵も少なくない。
 だが……このガルル、伊達や酔狂で『ゲロモンの悪夢』などと呼ばれているわけではないぞ。

 その傲慢――『教育』、してやる」


    ☆   ☆   ☆


――そして、今まさに戦いが始まらんとしていたリングのすぐ近く。
試合の様子を余さず見て取れる、特等席と言ってもいい博物館の屋根の上、という場所で。
第4の人物が、息を潜めて事の成り行きを見守っていた。

「フォッフォッフォ……! おかしなことになったものだな……!」

ホッケーマスクのような奇怪な仮面に、背中に背負った巨大な手。
先ほどまでツバメの翼を生やして宙を飛んでいた、ジ・オメガマンである。

火災現場を目指して進んでいた彼は、ちょうど、アシュラマンが再度博物館に入っていく後姿を確認。
ちょうど放送の時間と重なっていた事もあり、即座の接触を避け、屋根の上で様子を窺っていたのだが……。
少年のような少女とカエルの怪人の到着。特設リングの唐突な出現。そして1対1のデスマッチ開始。
彼はすっかり、事態に介入する機を逸してしまっていた。

「しかし、アシュラマン、か……。これは思わぬ大物がいたものだ……!」

オメガマンは『超人ハンター』の異名を取る賞金稼ぎである。
そして過去の仕事の中には、超人閻魔の依頼による、超人墓場からの脱走超人のハントも含まれている。
狩りというのは本来、綿密な下調べを伴うもので……だから、オメガマンは知っていた。
かつてその首を狩った悪魔超人『サンシャイン』。そのタッグパートナーである、『アシュラマン』のことも。

「悪魔六騎士が1柱、クモの化身、魔界の王子(プリンス)、タッグマッチの名手……!
 フォッフォッフォ、まさしく、このオメガマンの全力をもって狩るに値する獲物だな……!」

アシュラマンの首を取ることが出来れば、スエゾーによって傷つけられた自信もプライドも回復できるだろう。
もちろん、彼我の超人強度や、悪魔超人と完璧超人という「格」の違いを考えれば、格下の相手ではある。
本来なら倒したところで威張れる相手ではないのだが……先の戦いでの不覚が、オメガマンを慎重にさせる。
彼はその身を屋根の上に隠したまま、小さく笑う。

「フォッフォッフォ。焦ることはない……! 『最後の戦士』オメガマンは、最後に現れるのだ……!」


    ☆   ☆   ☆


スバル・ナカジマは、未だ悩んでいた。
それは――ガルル中尉に突きつけられた、1つの課題。

 『ガルル中尉、もしこの先にゲームに乗った人がいるのなら、私がその人を止めて見せます。
  拘束も、監視も私がなんとかします。……これが、わたしの答えです!』
 『いいだろう。その理想、どこまで貫けるか見せて貰おう。
  だがお前の手に余ると私が判断した場合は……わかっているな』

目の前には、明らかに殺し合いのゲームに乗っているらしい、6本腕の怪人。
その腕を振るうだけで巨大な竜巻を巻き起こし、またガルル中尉の姿を見ても油断をしない、恐るべき敵だ。
いざ、そんな存在を前にして、どうやって「止めれ」ばいいのか。
ガルル中尉がスバルの代わりにデスマッチ用リングにいる今、彼に任せてしまうべきではないのか。

(……いや、そんな弱気でどうするっ! 私たちの思い、諦めてたまるかっ!)

思わず折れかけた心を奮い立たせ、スバルは立ち上がる。
炎の向こう、リングの中には、ガルル中尉が彼の最後の支給品――スリングショットを構えた姿が見える。
Y字型の柄にゴム紐がついた、いわゆるパチンコとも呼ばれるもの。
子供のオモチャとしても知られる道具だが、なかなかどうして、シャレにならない威力を秘めている。
ゴムの強さ、そして弾丸の選択次第で、制音性と携行性に優れた暗殺用・狙撃用の武器に化けるのだ。
ガルル中尉に支給されたのは、まさにそのような「兵器としての使用に十分に耐える」スリングショットだった。

その構造上、人間(ペコポン人?)用のサイズでありながら、ケロン人にも問題なく扱える稀有な射撃武器。
そしてケロン軍の名スナイパーであるガルル中尉の手にかかれば、その鋼鉄球はおそらく百発百中。
当たりさえすれば、骨をも砕く威力を発揮するに違いない。
十分に、ヒトが死ぬ。

「カーッカッカ! のっけから凶器の使用か、しかしそれも良かろう! 元よりレフリーもゴングもない試合よ!
 むしろ後から『武器さえ使えれば』、などと世迷い事を言われるより、よっぽど良いわ!」
「フン。これは試合ではない。貴様の得意な『戦場』ではあるようだが……立派な殺し合いだ」

違う。スバルは直感する。
リングの中の高まる緊張を炎の向こうから感じながら、スバルは僅かな可能性を見い出す。
アシュラマンと名乗った6本腕の怪人。その言葉にスバルは、確かな矜持が存在することを確信する。

(あいつは、この『リング』の中での戦いを『試合』と呼んだ。自分のことを『超人レスラー』と呼んだ。
 なら、きっと……!)

答えが出るより先に、身体が動いていた。
スバルは炎に向けて、炎の中のリングに向けて一直線に走り出す。走りながら大きく叫ぶ。

「その勝負……ちょっと待ったぁーーッ!」
「「……何ッ!?」」

まさに弾を放とうとしていたガルルが、襲い掛からんとしていたアシュラマンが、揃って驚きの声を上げる。
彼らの目の前で、火の海に飛び込みかけていたスバルは跳躍する。
とても一跳びでは飛び越えられないような幅の炎の帯、だが……スバルには、『この魔法』がある!


『スバル、警告します。『あの魔法』を使うつもりなら、今の私には自動詠唱できませんが』
「わかってる、レイジングハートっ……『ウイングロード』ッ!」

炎の上に、蒼い帯状魔法陣の橋がかかる。スバルによるスバルのための、スバルだけの「花道」だ。
それでもスバルの足先を高熱が炙るが、構わず駆け抜ける。
そのままの勢いで、トップロープを飛び越えてリングインして……2人の男の間に割って入り、見得を切る。

「そこの変な笑い声のお前っ! 確かさっき、『レスラー』って言ったよね!?
 ってことは、これはあなたにとって『試合』なの?! 『殺し合い』じゃなくって?!」
「おい、スバル二等陸士! この場は……!」
「中尉は黙っていて下さい!」

スバルは何か言いかけたガルル中尉の言葉を遮ると、アシュラマンに向けて臆することなく問い質す。
果たして、少しの思案と共に帰ってきた言葉は。

「カーッカッカ。いかにも!
 もっとも『悪魔超人』の習いとして、我らが勝利する時には敗者の死は避け得ないがな!
 ギブアップなど有りえぬ完全なる勝利、それだけが我ら悪魔の目指す『勝利』よ!」
「なら! 約束して!」

いける。スバルは確信する。
相手は戦う相手の死を厭わず、それどころか喜び誇るような『悪魔』だ。
けれども、その口調の端々から垣間見えるのは、高いプライドと誇り。ならば。
スバルはビシッ! とアシュラマンを指差し、吼えるように叫ぶ。

「私が負けたら、殺すなりなんなり、好きにしなさい!
 だけど、もし私が――私たちが勝ったら、『もう殺し合いはしない』って誓って!」
「スバル二等陸士……!」
「カーッカッカ! それは前提からしてありえん話だ。貴様らはこのリングで無様に死ぬ運命だーーッ!」

対するアシュラマンは、なおも高らかに笑う。自らの敗北など微塵も考えぬ傲慢さで、ただ笑う。
ダメか。諦めの色を顔に浮かべかけたスバルだが、しかし悪魔の気紛れはそんな彼女の弱気さえも嘲笑う。

「だが――良かろう! 万が一にでもこのアシュラマンが負けたなら、何でも言うことを聞いてやる!」
「え……? あ……!」
「まあ、そんなことはまずありえんがな!
 それで……試合形式はどうするのだ? 弱いもの同士、2対1のハンデ戦か?!」

言質は取った! このプライドの高い悪魔から、確かに言質を取った!
思わず心の中でガッツポーズを取り掛けたスバルだが、しかし、試合形式に言及されてしばし迷う。
この言質を活かすためには、ただ『勝つ』だけでは足りないのだ。
相手の心とプライドを、一気にへし折るような勝利でなければ。言い訳でもして逃げられては意味がない。
スバルは一瞬、返答に迷う。
そして、その迷いに応えたのは……!

「フォッフォッフォ……! ならば、『タッグマッチ』ではどうかな……!」
「「「!!」」」

どこかで聞いたような笑い声と共に、空から降ってきた、『巨大な握り拳』だった。
咄嗟に3人は散開する。キャンパスの中央に巨人のような拳が突き刺さる。リングが大きく揺れる――!


    ☆   ☆   ☆



そう。ジ・オメガマンは迷っていたのだ。
果たして、ここでアシュラマンを討ってしまっていいのかと。それが最善なのかと。

もちろん、最終的にアシュラマンも狩るつもりなのは変わりない。
ただ――博物館の屋根の上から眼下の経緯を見守るうちに、『あるアイデア』が脳裏をよぎったのだ。
それはおそらく、対スエゾー戦の敗北がなければ考えもしなかったであろうアイデア。

「フォッフォッフォ……。我が名はジ・オメガマン。
 突然で悪いがアシュラマンよ、この場はひとつ、手を組まぬか?」

リング中央に突き刺さった、巨大な右の拳。
それがゆっくりと開くと、中から現れたのは倒立した姿勢のホッケーマスクの怪人。
フェイバリットホールドとしての『Ω・カタストロフドロップ』ではなく、それを上下逆さまにした「ただの落下」。
だが、ただの落下でしかないが、経験豊富な超人レスラーならばそのパワーが一目で分かるはず。
アシュラマン自身もバスター系や飯綱落としのような落下技を得意とするだけに、眼力は確かなはずだ。
果たして、オメガマンの「パフォーマンス」を見せ付けられたアシュラマンは、興味深げな笑みを浮かべた。

「カッカッカ。悪魔超人界には見ない顔だな。正義超人にも見えぬし、残虐超人か? それとも……」
「……今は所属を名乗るも憚られる、『はぐれ超人』よ。今は、な」

アシュラマンの問いかけに、オメガマンは少しだけ語気を弱める。
『完璧超人』だと名乗ろうとしたその瞬間、あのスエゾー戦の無様な敗北を思い出したのだ。
今の自分に、完璧超人を名乗る資格はおそらくない。あのような醜態を晒して、何が完璧だ。
あのような驕り高ぶった過ちを二度と繰り返さぬためにも、今しばらくその名は封印だ。

「カーッカッカ。どこにも所属しない一匹狼の超人か」
「いかにも。そしてこのオメガマンも、貴様と同様、この地での優勝を目指している。
 だが――このルール無用のバトルロワイヤル、戦い抜くには1人では厳しい。
 そこの2人組のように手を組む者どももおる。親しい知り合いがいる者もおるようだしな」
「確かに、な……」

あのスエゾーでさえも、『ゲンキ』とかいう知り合いらしき名前を口走っていたのを聞いている。
目の前の小娘とカエル超人のように、付き合いは浅そうなのに共闘している者もいる。
仮にあの敗戦が無かったとしても、1人きりではいずれ痛い目を見ていたことだろう。
目には目を、歯には歯を、そして、仲間には仲間を、だ。
どうやらアシュラマンの方にも思い当たる節があるらしく、何かを思い出すような様子で頷いている。

「もちろん、いつまでも、とは言わん。いずれ雌雄はつけよう。だが、この場だけでも組もうではないか」
「カーッカッカ。よかろう。奇しくも多くの腕を持つ者同士、この場だけでも同盟と行こうか!」

アシュラマンが倒立の姿勢のままでいたオメガマンに、腕の一本を差し出す。
オメガマンも、その手をがっちりと握り返し、彼の助けを得て一呼吸で起き上がる。
交渉成立。
とりあえずは、目の前の2人組みを始末するまで。互いの働き次第では、延長もあり得る同盟の契約。
そして最後には正々堂々、互いに戦って雌雄を決する――!


    ☆   ☆   ☆


「ちゅ、中尉……! どうしましょう……!」
「慌てるな、スバル二等陸士。やることは変わらん。奴らを叩きのめす、ただそれだけだ」

炎に周囲を包まれたリングの中、奇しくも赤コーナーを背負うようにして肩を並べた怪人2人。
青コーナーを背に並んで身構えるガルル中尉とスバルは、小さく囁きを交し合う。

「こちらに有利な点があるとすれば、私がスバル二等陸士の能力について、既に知っていることだろう。
 集団戦においては、チームの連携が生死を分かつ。あのような急造コンビなど、ものの数では……」
「カーッカッカ!」
「フォーッフォッフォ!」
「な、なんか笑われてます、中尉ぃ……!」

ガルル中尉の冷静な指摘にも、怪人2人の余裕は揺るがない。
ただ少し、ふと思い出した、といった風情でアシュラマンが首を傾げただけだった。

「熟練した超人レスラーならば、タッグマッチの訓練も重ねておる! ゆめゆめ甘く見ないことだなぁーっ!
 ……とはいえオメガマンよ、貴様は俺のことを知っているようだが、俺は貴様の能力をほとんど知らん。
 何か見せてくれると、有り難いのだがな」
「フォッフォッフォ……そういうことなら……」

アシュラマンの言葉に、オメガマンは何かを探るように周囲を見回す。
ふとガルル中尉に目を向けると……ニヤリ、とマスクの下で笑みを浮かべ……。
唐突に、その両目から不気味な光線が放たれた。
予備動作のないその動きに、流石のガルル中尉も反応しきれない。

「オメガ・メタモルフォーゼ、No.3ーッ!」
「ッ!!」「ガルル中尉っ!」

スバルの悲鳴が響く中、間一髪、身を仰け反らしてガルルはその光線を避ける。
だが……オメガマンの狙いは、最初からガルル中尉本人ではなかった。
彼の手にしていた武器、スリングショットが光の帯に飲み込まれ、消滅する。そして……。

「フォッフォッフォ……これが我が変身(メタモルフォーゼ)能力だーッ!」
「カーッカッカ! これは良い!
 では、ゴング代わりに我ら『急造コンビ』のツープラトン技をお見舞いしてやろう! 行くぞッ、オメガマン!」
「応ッ! 来いっ、アシュラマン!」

ガルルの手の内から消えたスリングショットが、巨大化してオメガマンの背中の手と入れ替わる。
そして事態の推移についていけない2人を他所に、アシュラマンが跳躍する。
跳躍して、オメガマンの背の巨大スリングショットの上に着地して……

「喰らえ、『オメガ超人パチンコ』!」
「地獄のコンビネーション第4番・変法…… 『 阿 修 羅 Ω 火 玉 弾 』 !!」

凶悪なる超人砲弾と化したアシュラマンが、2人の哀れな犠牲者を打ち砕かんと、飛び出した――!


【H-8 博物館前・ファイヤーデスマッチ用特設リング内/一日目・朝】

【赤コーナー側】
【アシュラマン@キン肉マンシリーズ】
【状態】あちこちに軽い火傷、体力小消費。阿修羅火炎弾の姿勢。
【持ち物】 デイパック(支給品一式入り、不明支給品1~3、H&K XM8(10/30)、5.56mm NATO弾x90)
【思考】
1:とりあえず目の前の2人組を、オメガマンとタッグで倒す。
2:参加者は全員殺す。 オメガマンともいずれ戦って雌雄を決して倒す。悪魔将軍については思案中。
3:完璧超人(草壁タツオ、長門)は始末する。
【備考】
※アシュラマンは夢の超人タッグ編の途中からの参戦です。22歳のバリバリ現役です。
 完璧超人がネプチューンマンたちということを知らないようです。
※悪魔将軍は保留(あとで方針を変えるかもしれません)。
※ここにいる超人以外の者も別の場所でバトルロワイアルをさせられていると考えています。
※トトロを未知の超人だと思っています。
※自分の体に課せられた制限にうすうす感づいています。
※ジ・オメガマンが完璧超人に属していることに気付いていません。
※アシュラマンが万が一敗れた場合、スバルとの約束を守る気があるかどうかは不明です。


【ジ・オメガマン@キン肉マンシリーズ】
【状態】健康、背中の手が巨大なスリングショット(パチンコ)に変形中。
【持ち物】デイパック(支給品一式入り)
【思考】
1:当面アシュラマンとタッグを組んである程度参加者を減らす。
2:アシュラマンもいずれ倒して殺す。
3:スエゾーは特に必ず殺す。

※バトルロワイアルを、自分にきた依頼と勘違いしています。 皆殺しをした後は報酬をもらうつもりでいます。
※ツバメへのメタモルフォーゼは、解除しました。
※ガルルの支給品『スリングショット』(いわゆるパチンコ)を吸収し変身しました。
※Ωメタモルフォーゼは首輪の制限により参加者には効きません。
※プライドと自信が回復するまで、完璧超人の名乗りを封印することに決めました。


【青コーナー側】
【ガルル中尉@ケロロ軍曹】
【状態】健康
【持ち物】デイパック、基本セット、スリングショットの弾×6
【思考】
0.ケロンソルジャーとして秩序ある行動を取る
1.スバルと協力して目の前の2人を倒す。
  勝ってスバルの『約束』を向こうが守るようなら良し、守らないようなら殺してでも……!
2.人を探しつつ東のルートで北の市街地に向かう。昼の十二時にホテルで灌太たちと落ち合う

※レイジングハートと砂漠アイテムセットAをスバルに貸しました
※支給品の最後の1つは『スリングショット@現実』でした。
 が、オメガマンのΩメタモルフォーゼで消滅しました。
 セットで入っていた鋼鉄製の弾丸×6は手元に残されています。


【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(中)、ところどころに擦り傷
【持ち物】デイパック、基本セット、メリケンサック@キン肉マン、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
砂漠アイテムセットA(アラミド日傘・零式ヘルメット・砂漠マント)@砂ぼうず、トウモロコシ@となりのトトロ
【思考】
0.人殺しはしない。なのは、ヴィヴィオと合流したい
1.ガルルと協力して目の前の2人を倒す。そして『もう人を殺さない』と『約束』させる。
2.ガルル中尉とともに東の街道か森を通って、人を探しつつ北の市街地に向かう
3.セインにわだかまり

※参戦時期は第19話「ゆりかご」の聖王の揺り籠が起動する前です


[備考]
地図に記された施設(あるいはそのすぐ近く)には、
超人レスリング仕様の、デスマッチ用特設リングが隠してある場合があるようです。

博物館(正確には博物館前)に用意されていたのは、ファイヤーデスマッチ用の特設リングでした。
デスマッチの説明とリング起動用のスイッチは、博物館入り口近くの警備員の詰め所に配置。
本来の仕掛けとしては、地面を割ってリングが登場した後、その周囲に火が放たれる仕組みでした。
今回、古泉の攻撃が大地を抉ったことによって、地中のガス噴出装置が誤作動。
噴き出したガスにアノアロの杖から放たれていた火種が燃え移り、炎の方が先に広がってしまいました。
火災が博物館に延焼しなかったのも、防火素材の使用など、予め延焼防止の対策が取られていたためです。

炎は、博物館前に設置されたプロレスリングを取り囲むように燃え続けています。
ただし周囲の草は既に燃え尽き、今は可燃性ガスが燃えているだけなので、煙は当初ほどではありません。
リング内にいれば直接火傷を負うことはありませんが、リング外に落下でもすれば大火傷は必至です。
この炎がいつまで続くかは、後続の書き手さんにお任せします。





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