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迫り来る闇の声  ◆S828SR0enc



「ふぃ~、極楽極楽ゥ♪」

 薄オレンジ色の湯の中でぐぅっと手足を伸ばす。
 先ほどの闘争で凝り固まった筋肉がほぐれ、全身がぽかぽかして傷の痛みが薄れていく。
 場違いに鼻歌さえうたいながら、リナ=インバースは温泉を楽しんでいた。
 少なくともその姿からは、殺し合いに放りこまれた緊張感など欠片も感じられないくらいに。

「あー、にしてもアメリアとか喜んだろうなーこういうの。
 せっかくだからガウリィとかも連れてきてさー」

 ぶつぶつと平和な愚痴をこぼしながら、手足を縮めては伸ばす。
 時折湯をすくいあげては、足でばしゃばしゃとお湯をかき乱す。

 今の彼女は、どう見ても温泉を楽しんでいる入浴客。
 それに偽りはない。実際にリナは温泉をこれ以上なく満喫している。
 それでもその瞳から警戒が消えることはなく、すぐ傍に置かれたデイパックが遠ざけられることもない。

(一応警戒しておくに越したことはなし、と)

 ぱしゃん、と湯に足を戻して一人頷く。
 リナの感覚が正しければ、あと十分もしないで放送が始まる。
 禁止エリア、そして死者が実際に発表されれば、島中の平和主義者たちもそれぞれ動き始めるだろう。
 そうなったら、いくら「ドラまた」のリナであってものんびりしているわけにはいかない。

(一番いいのは誰も死なないことだけど、それはかなり無理があるしね。
 出来るだけ少ない死者で収まってくれればいいんだけど……)

 ゆるりと髪をかきあげ、湯からあがる。
 外が見えるようにとわざわざ露天風呂を選んだために、冷たい風が肌をなでるがそれは無視だ。
 脱衣所から持ってきたタオルで水滴をぬぐいつつ、リナはふと首輪に手をあてた。

 金属質の、冷たい感触。
 首に隙間なくぴたりと張り付いたそれからは、かすかな機械音らしきものが聞こえる気がする。

(魔術なら、あたしの専売特許なんだけどな)

 あいにくと、機械的な知識はさしてリナにはない。
 むしろそういった面なら今はロビーでおとなしくしているであろうドロロの方が詳しいだろう。
 一度ゆっくり、首輪のことについて話し合った方がいいかもしれない。
 そう思って、何となくくるりと露天を振り返ったときだった。

「―――――っ」

 視界の端を、何かがよぎった。
 そうリナの脳が訴えた瞬間、はじけるように体が動く。
 タオルを鞄に突っ込み、浴衣をはおり、デイパックをひっつかみ、そのまま全速力でロビーへ駆け込んで、

「……リナ殿? 何かあ―――」

 呆けていたドロロを小脇に抱え、リナは窓の外へと飛び出した。


 ◆ ◆ ◆


 ぬめりを帯びた金色の双眸が、湯気を吐き出す施設を捉える。
 鋭い牙が並んだ口が、ニィと笑いの形につり上がる。
 片手のデイパックが不自然なほどに小さく見える、紫の鱗に覆われた体が街道の小石をはねのける。

 ずるり、ずるりと足音を立てつつ、異形の男は「ksk温泉」と銘打たれた建物へ近づいていく。
 その距離、あと五十メートル。


 ◆ ◆ ◆


「り、リナ殿!?」

 舌がもつれるような声で、今は包帯でぐるぐる巻き状態のドロロが声を上げる。
 もちろん、いきなり抱えられて外に連れ出されたことへの文句や、傷だらけの体への配慮を願ってのものでもある。
 が、ドロロが今一番言いたいことは、同行者の少女のあられもない姿についてだった。

 濡れた体をろくに拭きもせず、浴衣を一枚ひっかけただけ。
 最低限大切なところは隠されているが、かわりにツヤツヤの胸元や太ももは惜しげもなくさらされている。
 おまけに水滴をぬぐい切れていないせいで、生地のあちこちが肌にひっつき、その色を透けさせていた。
 温まったためにほんのりピンクになった肌色と相まって、今のリナはなかなかに危険な姿なのである。

「リナ殿、女人がたやすくそのような――」
「しっ!」

 言い募ろうとしたドロロに、鋭いリナの叱責が飛ぶ。
 そこに含まれた緊張感に、本当的にドロロの喉は動きを止めた。

 なにか、あったのでござるか。

 声を出さずにドロロが口を動かすと、返事代わりにリナの目線が静かに動く。
 その先、温泉に密接する街道を見て、ドロロはもう一度、今度は息ごと喉の動きを止めることになった。

 紫の鱗におおわれた、下半身が蛇の生き物がそこにはいた。
 鋭いえらが張りだした頭を静かにめぐらせ、油断なくあたりを見回しながら、ゆっくりと温泉に近づいてくる。

「リナ殿、あれはいったい……」
「露天風呂からちらっと見えたのよ。どー見ても明らかにやばいっしょ」
「それには心から同意でござるが……」

 出来る限り声量を抑えながら、ふたりはそろそろと草むらを後退する。
 幸いに生い茂った草は背が高く、風で揺れていることも手伝って二人の姿を完璧に隠してくれた。

 静かに、足音をたてないように。
 草むらで行うには至難の技を、リナは経験で、ドロロは特性ゆえに着実にこなしながら進む。
 それでも相手に気づかれないようにと、その足取りはそれこそ蛇のように遅い。
 そうこうしている間にも、紫の異形は温泉施設へとたどり着いていた。

「まずいわね……」

 ぽそり、とリナがこぼす。
 リナが医療器具その他諸々を探して施設を荒らした跡は、ドロロが暇つぶしに全て片づけておいた。
 とはいえ、人がいた痕跡をすべて拭うことはできない。
 リナが飛び出してきた露天風呂の辺りはまだ濡れているだろうし、浴衣やタオルがなくなっているのもよく見ればわかるだろう。

「気付かれる前に、離れるしかないでござるよ」
「本当はコソコソ逃げるのって嫌いなんだけど、あたしもまだ回復しきってないしね。
 それに、アイツがさっきの変なオッサンみたいな奴だったら困るし……」

 リナの必殺の技、ドロロの忍術の極意を受けてさえすぐに立ち上がる例に先んじて出会ったのは、幸か不幸か。
 疲労も傷も回復しきっていない二人は、いつも以上に慎重になっていた。
 そしてそれゆえに、温泉から離れようとする歩みは遅々として進まない。

(あの蛇、ただものではないでござる……)

 アサシンとして、忍者として鍛え上げられたドロロにはスカウターじみた観察眼がある。
 しかしそれを用いなくとも、さきほどの紫の異形が見かけ倒しでないことはよくわかっていた。
 油断なく周囲に配る目線と威圧感。
 それでいて、悠々自適ともいえるほどに堂々とした足取り。
 先ほど戦ったギュオーと並んでもおかしくない、そう思えるだけの相手に思えたのだ。

 その異形の蛇は、一度温泉の玄関であたりを見渡すと、するりと中に入っていった。
 それでも、露天設備などがあるため中から外が見えないわけではない。
 草の動きが不自然でないように、細心の注意を払って二人は進む。

(あの蛇が施設から出てくる前に、離れきることが出来れば……)

 祈るような思いで足を進め、そっと振り返る。
 おりしも、折り返すようなタイミングでその蛇が外に出てきたところだった。

「っち」

 舌打ちをしたのはリナの方だが、ドロロも同じ心境だった。
 どうやら施設の検分は後にして、まずは周りを散策することに決めたらしい。
 ひょっとしたら、入口のあたりで周りに誰かがいるのを察せる様な痕跡を見つけたのかもしれないが。

 朝日の中でも不気味に輝く瞳が、草はらを見渡す。
 ドロロもリナも、今は蛇に睨まれた蛙そのもののように動きを止めていた。
 風は凪ぎ、太陽が昇ったために見晴らしもよくなっている。
 無駄に動けば見つかる。そう二人とも悟っていた。

「…………」

 じりじりと緊張感が高まりながらも、息をひそめるしかない。
 リナが竜破斬(ドラグスレイヴ)を撃てたら、ドロロが零次元斬を使えたら、すぐにでも勝負を挑みたいくらいだが、

「落ち着くでござるよ、リナ殿。
 今拙者たちは双方とも満身創痍、少なくとも全快には程遠い身でござる。
 この状態で勝負をしかけても、勝ち目は―――」
「わぁってるわよ、そんなこと」

 にらみを利かせるリナだが、その手元が落ち着きなく彷徨っているのがドロロには丸見えだった。
 今までのリナの振舞いから見て、おそらくこういう時は隠れるよりは打って出るタイプなのだろう。
 その彼女がこうして息を殺して潜むだけというのは、かなりストレスのたまる状態であることはよくわかっていた。
 だが、今正面からしかけても勝てる保証はゼロだ。

「ああ、もう……」

 イライラとリナが呟く。
 その右手をさりげなく抑え、短気に走らないようにと戒めながら、蛇の視線の隙を縫ってドロロ達はゆっくりと動いていく。
 だが、この状況に痺れを切らしかけなのは向こうも同じだったらしい。

「アイ・ビーム!」

 叫びとともに、異形の瞳から直線状に光線が放たれる。
 光線が当たった草むらは、一瞬にして黒こげの大地へと化した。

「あいつ、あんなこともできるわけ?」

 顔を顰め、背を低くしながらリナが毒づく。
 どうやら誰かが潜んでいるか確証が持てないため、相手はああして攻撃してあぶりだすことに決めたらしい。
 金の瞳から放たれる光線が、片っ端から背の高い草むらをなぎ払っていく。
 ススキに似た草が、花が、次々と宙を舞った。

(だが、逆に考えればこれは……!)

 光線を放つ時は、音と光のために蛇の注意も照準先に絞られる。
 逆にいえば、他の草むらへの注意がおろそかになるということだ。

「リナ殿、あいつの攻撃にタイミングを合わせて――――」
「わかってるわよ。
 まったく、こういうのは性にあわないってーのになぁ」

 はぁ、と小さなため息をつきつつ、攻撃に合わせてリナはそろそろと動く。
 ドロロもその後に続きながら、ゆっくりと草むらを回り、相手の死角になる建物の影の方へと進んでいく。
 死角に入ってしまえば、あとはある程度速度を出して後退しても大丈夫だ。

(あと、少し……)

 かさり、かさり、と小さな足音を立てて進む。
 視線は蛇に固定したまま、横目と足の裏で地面の起伏を読む。
 出来るだけ音が立たない、草のない場所を選んで足を上げ、下ろす。
 前を行くリナにぶつからないように、慎重に距離を測り、同じペースで足を動かす。
 呼吸はゆっくりと、音をたてないように浅く。

 かさり、かさり、という草音に、時折ビームによる草が焼き切れる音がかぶさる。
 ゆっくりとではあるが、二人は着実に建物の蔭に入りつつあった。

(――よし、これなら……)

 そうドロロも、おそらくはリナも安心した瞬間だった。


―――ガツン、がさっ

「「!?」」
「誰だ!?」

 ぐるん、と蛇が振り返る。
 見れば、リナの足もとに何か灰色の、ケースらしきものが落ちていた。
 どうやら草影にあったそれを、気付かずに蹴とばしてしまったらしい。

(――まずい!)

 ちょうど光線の合間であったがゆえに、そのケースが立てた音は随分と響いた。
 明らかに蛇の視線は、ドロロ達がいるあたりを捉えている。

(――だーもう、誰よこんなところにケース置いたのは!?)
(今はそんなこと言っている場合じゃないでござるよ、あの蛇が、)
(いちいち言わなくってもピンチなのはわかるから!!)

 頭をかきむしれるならかきむしりたい、というような表情でリナが息をつく。
 ここで動けば確実に気付かれるため、動くことはできない。
 かといって、このままでは明らかにあちらが光線なりなんなりでこの場所を攻撃してくるだろう。
 まさに八方塞がり、万事休す。

(いっそ、一か八かで竜破斬を……!)

 ぎりりと歯を食いしばるリナだが、その態度を見るに回復が追い付いていないのだろう。
 ドロロ自身も怪我の具合ゆえに、今すぐにまともに戦えるとは思えない。

(終わりか――)

 一瞬、ドロロの胸中を諦めが支配する。


 だが次の瞬間、


『あー、あー、マイクテスト、マイクテスト』


 まさに天の助けともいうべき声が、温泉の方から聞こえてきた。
 もっともそれを天の助けなどと思えるほど健気な心掛けが、その場にいた者全員にあるはずもなかったのだが。


 ◆ ◆ ◆


『―――君達のがんばり、期待しているからね?』

 耳障りな男の声を最後に、ぶつんっと音をたてて放送が途切れる。
 それに耳を傾けていたナーガは、ふん、と小さく息まくと、温泉施設に向けていた目を再び草むらに向けた。

「アイ・ビーム!」

 輝く光線が、声とともにその双眸からほとばしる。
 その先にあった草むらはじゅっと音をたてて炭になったが、そこには何の姿もなかった。

「……ちっ、逃したか」

 先ほど、確かにそこの草むらに気配と、何かの音を感じた。
 だが、どうやら自分が放送に気を取られている間に、そいつは逃げおおせてしまったらしい。
 とはいえ、自分を前にこそこそと逃げ回る小物をいちいち追いかけるのも面倒だ、とナーガはひとり思う。

 別に、ひとつ逃がしたくらいで問題はあるまい。いずれ殺すのだから。 
 それがナーガの出した結論だった。
 今のナーガには草むらの小物を逃がしてもあまりある満足があったためでもある。

 先ほどの死者発表で、『モッチー』というホリィの仲間のモンスターの名が呼ばれた。
 ホリィやゲンキたちはしぶとく生きているようだが、この放送を聞けば心を痛めるだろう。
 それがナーガにとっては愉快でならないのだ。

「くくく、少ないとはいえ、なかなかやっているようではないか」

 六時間で五人というのは、確かにあの男の言うとおりに少ない数だ。
 とはいえ、確実に死人が出ているという事実は、平和ボケした連中を打ちのめすだろう。
 そしてようやく現実に気づいて恐れをなした馬鹿どもを、この自分が駆逐する。
 それが楽しくないはずがなかった。

「さて、馬鹿どもはどこにいる……?」

 デイパックを肩からおろし、地図を取り出す。
 広げてみれば温泉近くには別荘・コテージ群という施設しかないが、どうやらそこは施設の密集地帯のようだ。
 隠れる場所が多ければ、弱い者はそこに逃げ込む。
 ましてや、放送直後ならば弱者は隠れられる場所に行こうとするだろう。

 とはいえ、先ほどから山頂の方角で聞こえてくる轟音なども気にかかるところだ。
 何やら東の空にはうっすらと煙がたなびいているし、どこからか溶岩のような焦げくさい臭いも漂ってきている。
 火のないところに煙は立たない。
 そしてワルモン四天王として上に立つものとして、そういった痕跡は大いに気になるところだ。

「くくく……」

 焦る必要などない。
 裂けた唇を笑みの形に吊り上げ、ナーガはゆるゆると進む。
 モンスターたる彼には不要な支給品を捨てたために、少し軽くなったデイパックを弄びながら。



【H-2 別荘・コテージ群入口/一日目・朝】

【ナーガ@モンスターファーム~円盤石の秘密~】
【状態】健康
【持ち物】 デイパック、基本セット
【思考】
0.参加者を皆殺しにする(ホリィ、ゲンキたちの仲間を優先)
1.コテージ群で獲物を探す、もしくは戦闘があったらしき東の方へ向かう
2.遊園地の男を襲撃する前に見た、飛んで行った影が気になる。
3.最終的には主催も気に食わないので殺す
※ホリィがガイア石を持ったまま参戦していると考えています
※キョン(名前は知らない)を殺したと思っています。



 ◆ ◆ ◆


「危なかったでござるな……!」

 がさがさと音を気にせずに茂みをかき分けて、リナとドロロは走る。
 すでにナーガの姿は視界から外れて久しく、ゆえに周囲に先ほどのような注意を払う必要はない。

 ナーガに気付かれるか否かというタイミングで、温泉から聞こえてきた放送。
 それにナーガが気を取られた隙をついて、リナたちはあの場所から脱出していた。
 温泉から漂う濃い硫黄臭が二人の体臭と気配を、無駄に音の大きい放送が二人の足音を消してくれたのだ。

「ま、ラッキーなタイミングだったってことね。
 それで、そっちはどうなわけ?」

 九死に一生を得ながらも、リナの声に安堵感はない。むしろ鋭さを増した声が、足音にかぶさって響く。

「こちらは……冬樹殿が……」
「そ、こっちも知り合いが一人死んだわ。ゼルガディスっていうんだけどね」

 痛恨の表情を浮かべるドロロに対し、リナの声はどこか冷たい。
 とはいえそれは生きるための取捨選択の結果であり、リナは心の奥底で静かな悲しみを感じていた。

(ゼル……)

 長い旅の仲間。暴走しがちな一同のストッパーになることも多かった男だった。
 魔術こそリナには劣るとはいえ、剣をはじめとした高い白兵戦術、そして豊富な知識を持っていたゼルガディス。
 総合してみればリナと並び立つ腕前を持つ彼が、あっさりと死んだということ。

(どういうつもりで動き回ってたかはわからないけど……。
 やっぱり、ゼロス以外にも相当の強敵がいるとみて間違いないわね)

 草をかき分けて走りながら、リナは思考する。
 先ほどの放送で言っていた「長年の付き合いの仲良しに殺された」参加者がゼルガディスという可能性がないわけではない。
 例えばゼロスなら、歴戦の猛者であり古い知り合いのゼルガディスにだってあっさり手を下すだろう。
 あるいは、自分が名前を知らないゼルガディスの知り合いが紛れ込んでいるのかもしれない。

(だとしても、確率は低いはず。
 ゼロスはいきなり手間取るゼルガディス相手に正面から喧嘩吹っ掛けるような奴じゃない。
 あたしの知らない知り合いだって、ゼルの腕前を思えば序盤から戦いを仕掛けたりはしないだろうし)

 となりを行くドロロも何か考え込み、あるいは傷心の様子ではある。
 とはいえ、こちらも「長年の付き合いの仲良し」が、その「フユキどの」を殺した可能性は低い。
 少なくともドロロとの情報交換で、そういった傾向のある知り合いの名前は出てこなかったのだから。

「死者からわかることはゼロ、ってことね」

 あえて声に出すことで、沈みそうな気持ちを引き上げる。
 死者を悼むよりも先に、リナたちにはやるべきことがあるのだから。

「……リナ殿」
「ん、ちょっとは整理ついた?」
「……かたじけないでござる」

 吹っ切れていない様子で、それでも心を奮い立たせたようにドロロが答える。
 さすがに軍事訓練と忍者としての経験を積んだだけあって、心が強い。
 慰めにもならないが、その肩をぽんぽんと叩きつつ、リナは前を見据えて声を上げた。

「んでさ、どう思う?」
「どう、とは?」

 のろりと顔をあげた同行者に、リナは気丈にも笑んで見せた。

「禁止エリアよ。街道二つをふさぐってことは、なんか意図があるってことっしょ?」
「街道をふさぐ意図、でござるか……」

 逃げながらも二人は持ち前の本能のようなもので、必要な情報だけは集めていた。
 禁止エリアは時間差があるとはいえ、東西を走っている街道を遮断する形になっている。

「たとえば、移動手段などどうでござろう?」
「移動手段?」

 つい、と指で草むらの横を走る道路を指差しつつ、ドロロが言う。

「バイクや乗用車といった高速の移動手段が多数存在していた場合、参加者同士の接触は難しくなるでござる。
 それを主催者が懸念し、道路を封鎖する。 
 そうすると道路が使えなければ足場の悪い森や草むらを進むしかなく、高速の移動手段は使えなくなる。
 これにより、参加者の接触を活発化することができるでござるよ」
「ふーん……なるほどねぇ」

 バイクや乗用車といったものはよくわからないが、確かに高速の移動手段は厄介だろう。
 ひょっとしたら主催者が思った以上に、そういうものを利用する参加者が増えているのかもしれない。
 だからこその、道路封鎖。

「なかなか的をついてそうな考えね」

 にやりと笑うと、ドロロも包帯と頭巾の間から見える瞳を細めて見せる。

「リナ殿も、その様子だと何か考えがありそうでござるな」
「ふっふっふ、まぁこのあたしを舐めるなって話よね。
 この禁止エリアの意図は―――ずばり、遊園地ってわけよ」

 びしり、と取り出した地図に指を突きつける。
 それに対し思わず足を止め、ドロロは首をかしげて見せた。

「……確かに禁止エリアが遊園地を囲む形になっているのは確かでござるが……
 リナ殿、それは見え透いた罠というものではござらんか?」
「そっこが甘いのよ!」

 びし!とドロロの鼻先に、リナの指が付きつけられる。

「普通の人間なら、この配置は罠だと考えて遊園地に行かない。露骨すぎるからね。
 でも、だからこそその心理をついて、大事なものがある遊園地を囲んじゃうっていうのもアリだと思うわけ」
「つまり、警戒心をあおってその逆を行くと?」
「そーいうこと」

 にんまりと笑い、地図をしまう。
 ちらりと見た時計は六時十五分を過ぎたあたり。
 まだ余裕があるとはいえ、ぐずぐずしていると自分たちがいるあたりが禁止エリアになってしまう。

「で、禁止エリアになる前に、さ」
「……行くでござるか?」
「とーぜん!このリナ=インバースの勘を信じなさーい!」

 どーん、と浴衣に包まれた小さな胸を叩くリナに対し、ドロロはため息をひとつ。

「……ひょっとしてリナ殿、押すなと言われたスイッチは押したくなるタイプでござるな?」
「げげっ!?」

 思わずのけぞるリナに、ドロロがかすかに笑う。
 それを見て、リナも強がりでない、心からの笑みを小さく浮かべた。

(ゼルガディス、ごめん。たぶんあんたの敵撃ちとかは出来ないわ。
 ……でもまぁ、そこに文句言うあんたじゃないわよね、付き合い長いんだもん)

 荷物を背負いなおし、ついでに指摘されてようやく浴衣も整える。
 何かを振り切るように遊園地に向かって走り出したドロロに続いて、リナも大地を蹴った。

(だから、バイバイ、ゼル。生き残れたら墓くらいは作ってあげるわよ)



 ◆ ◆ ◆


「ところでリナ殿」
「んー?」
「先ほどから持っている、その灰色のケースは何でござるか?」
「いや、さっきこれ蹴とばしちゃったじゃん?そんでさ、もったいないから持ってきたのよ!
 それにこれ、何かものすごいお宝オーラっていうか、おもしろい魔力を感じるのよね。
 開けたらたぶんすっごいものが入ってるわよー!」
「で、ござるか……」
「そうそう。盗賊殺しのリナ=インバース、こけてもタダでは起きないってわけ!」



【F-2 遊園地前/一日目・朝】

【ドロロ兵長@ケロロ軍曹】
【状態】 軽い火傷、疲労(大)、左眼球損傷、腹部鈍痛(全身包帯)
【装備】
【持ち物】匕首@現実世界、魚(大量)、デイパック、基本セット
【思考】
0.殺し合いを止める
1.リナとともに行動し、一般人を保護する
2.ケロロ小隊と合流する


【リナ=インバース@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】 精神疲労(中)、疲労(中)、浴衣姿
【装備】
【持ち物】ハサミ@涼宮ハルヒの憂鬱、パイプ椅子@キン肉マン、浴衣五十着、タオル百枚、服と鎧・装飾品、
     レリック@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デイパック、基本セット
【思考】
0.殺し合いには乗らない。絶対に生き残る
1.F-2が禁止エリアになる前に通り抜け、遊園地にてお宝探し
2.とりあえずはドロロと一緒に行動する
※温泉に入ったために肉体、精神的な疲労がある程度回復しました


【レリック@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
第一級ロストロギアに指定されている、超高エネルギー結晶体。見た目は赤い宝石に似ている。
強大な魔力を秘めており、その性質から外部から大きな魔力を受けると爆発する恐れがある。
灰色のレリックケースに収められた状態で支給されており、このケースには「Ⅶ」のマークが刻印されている。



※【G-2 温泉】の周辺に、ナーガの不明支給品0~2個が落ちている可能性があります


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夢で会いましょう ドロロ兵長 数字、その意味
リナ=インバース
強殖装甲リリカルシスター ナーガ 胸の奥に溢れるのは涙よりも愛にしたい






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